隔週で週休3日制を導入する「アジャイルウェア」の自由な働き方とは

アジャイルウェアの革新的な働き方:隔週週休3日制とフルフレックスで実現する理想のワークスタイル

様々な企業の新しい働き方や特徴的な企業文化をお伝えしていくこの企画。今回は、Webシステムの受託開発や自社プロダクトの開発・販売を主な事業とするIT企業、株式会社アジャイルウェアにお話を伺いました。同社は、顧客のニーズに柔軟に対応しながら、革新的なITソリューションを提供しています。

株式会社アジャイルウェアの事業概要:自社プロダクト開発とWebシステム受託開発

プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」のイメージ画像
▲プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」のイメージ画像。幅広い業界、業種で活用されている。

株式会社アジャイルウェアは「Feel Goodな明日をつくる」をミッションに掲げ、プロジェクト管理ツールをはじめとした自社プロダクトの開発・販売のほか、Webシステム受託開発を行うIT企業です。Ruby on Railsを用いたアジャイル開発を強みとし、多様な業界の大手企業と直接契約を結び、長期的な取引関係を築いています。

会社名 株式会社アジャイルウェア
住所 大阪府大阪市中央区谷町1-3-12 天満橋リーフビル8階
事業内容 プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」の提供、運動を促す福利厚生サービス「KIWI GO」の提供、WEBシステム開発
設立 2012年6月
公式ページ https://agileware.jp/

今回は、株式会社アジャイルウェアの岡田さんと光岡さんのお二人に、柔軟な働き方やその背景にある理念などについてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社アジャイルウェア人事責任者の岡田さん

株式会社アジャイルウェア
人事責任者

岡田さん

株式会社アジャイルウェア
広報

光岡さん

強み:アジャイル開発と3つの自社プロダクト

アジャイルウェアの事業紹介
▲アジャイルウェアの事業紹介

編集部

アジャイルウェアさんは、アジャイル開発を強みとされている企業だと伺っています。御社の事業内容についてお話しいただいてよろしいでしょうか?

岡田さん

株式会社アジャイルウェアは、元々ITエンジニアだった代表の川端光義さんが、会社員時代とフリーランス時代を経て設立した会社です。今年で12期目を迎えました。

最初はアジャイル開発による受託開発からスタートしました。社名に「アジャイル」と入っているのは、川端がエンジニア時代に実践していた開発手法だったからです。

アジャイル開発は、顧客満足を高めつつ、開発者側の負荷も抑えられる効率的な手法だと考え、当社でも採用しています。

編集部

受託開発とあわせて、自社プロダクトも開発されているのでしょうか?

岡田さん

はい、現在は主に3つの自社プロダクトの開発・販売を行っています。

1つ目は2014年に販売を開始した「Lychee Redmine(ライチレッドマイン)」です。これはオープンソースソフトウェアRedmineに、タスク管理、進捗管理、情報共有などの拡張機能プラグインを提供するプロジェクト管理ツールです。

導入社数は6,000社を超え、IT分野だけでなく幅広い業界・業種でご利用いただいています。元々はお客様からRedmineのプラグイン開発の依頼があり、そこから自社サービス化して現在は当社のメインプロダクトとなりました。

2つ目は2018年からスタートした「GIJI(ギジ)」です。これは、議事録をWEB上でリアルタイムで作成し、複数メンバーと同時編集・共有できるサービスです。開発元の企業から事業ごと引き継いだものです。

WEB議事録サービス「GIJI」のイメージ画像
▲WEB議事録サービス「GIJI」のイメージ画像。リアルタイムで複数メンバーと共有・編集ができるためリモート環境で人気のサービス。

3つ目は2021年11月にリリースした「KIWI GO(キウイゴー)」です。これはスマホやスマートバンドで運動をアプリに自動記録し、運動習慣化を促すサービスです。運動でコインが貯まり、お菓子やギフトカードと交換できるため、従業員が楽しみながら運動を習慣化できる福利厚生スマホアプリとなっています。

従業員の運動習慣化を促進させる福利厚生スマホアプリ「KIWI GO(キウイゴー)」のイメージ画像
▲従業員の運動を促進する福利厚生サービス「KIWI GO」。個人でも無料体験版で試すことができる。

アジャイルウェアの働き方改革:隔週週休3日制で実現する顧客満足と従業員満足の両立

株式会社アジャイルウェアで働く社員の写真

編集部

次に、社員の皆様の働き方やワークライフバランスについて伺いたいと思います。最近注目を集めている週休3日制について、アジャイルウェアさんも隔週で実施されていますね。昨年から開始されたとのことですが、導入に至った経緯やその後の状況を教えていただけますか?

岡田さん

代表の川端は以前から「いつかは週休3日制にしたい」と考えていました。川端がエンジニア時代にアジャイル開発を実践した際、週40時間のプラクティスが生産性を維持しながら、モチベーションと集中力を保ち、短期リリースを繰り返せる開発手法だと感じたそうです。

週40時間が一つの基準でしたが、実際には週何時間労働が最も生産性が高いかはわかりません。週休3日で32時間労働にしたほうが成果が上がる可能性もあります。週休3日でも質の高い仕事ができれば、従業員の満足度が向上し、お客様にもよい影響を与えるはずです。顧客満足と従業員満足を両立できる仕組みとして、以前から導入への意欲が高かったのです。

実際に週休3日制の導入を決めたのは、海外での事例増加に刺激を受けたためです。当初は午後半休の週休2.5日制を検討しましたが、最終的に隔週で丸一日休みを設けることにしました。2022年8月頃から第2、第4水曜日を休日とする隔週の週休3日制を開始しました。

編集部

隔週の週休3日制を導入されて、社員の方からの反応や実際の働き方の変化などはありましたか?

岡田さん

導入から4ヶ月後に、社員の感想を知るためにアンケートを実施しました。週休3日制の良かった点として、「余裕ができ、生産性が向上した」「子どもと過ごす時間が増えた」「副業やスキルアップのための勉強がしやすくなった」といった声がありました。時間的にも精神的にもゆとりが生まれ、仕事もプライベートも充実するようになった社員が多いようです。

タスクの量は変わらず所定時間が短くなりましたが、所定外労働は予想以上に減少し、1人当たりの売り上げは昨年より増加しています。ただし、業務負荷が高まったと感じている社員も4割ほどおり、「打ち合わせが詰まって、作業時間の確保が難しい」という意見もありました。会議の削減や業務効率化などの対策が必要だと考えている社員もいることがわかりました。

課題は残っていますが、9割以上のメンバーが継続を希望していることも判明したため、今後も工夫を重ねながら続けていく予定です。

性善説に基づく自由な働き方:フルフレックス制とリモートワークの実践

アジャイルウェア社員のミーティング風景
▲オフィス出社とリモートワークの社員がWeb会議をしている様子。

編集部

アジャイルウェアさんでは社員の方が勤務場所を選べたり、フルフレックスであったりと働き方の自由度がとても高いと感じます。御社での制度や実際の働き方について教えていただけますでしょうか?

岡田さん

当社では、社員一人ひとりの異なる価値観や事情に合わせて無理なく働ける環境を作るため、コアタイムのないフルフレックス制度や完全自己管理の勤怠、リモート勤務制度を導入しています。

リモートワークは以前まで週3日まででしたが、社会情勢の変化に合わせて2020年2月から原則フルリモートにしています。現在は極力週1日、最低でも月1日は出社するという形で運用しています。出社日は各自が自由に決めており、頻繁に出社するメンバーもいますが、基本的には自宅をベースに働いている社員が多いです。

また、月に1回程度、チームごとに「ふりかえり」という現状や課題を共有する場を設けています。対面の方が話が進みやすいため、その日はチームメンバーで予定を合わせてオフィスに集まるチームもあります。

編集部

非常に柔軟かつ自由な勤務体制ですが、こうした設計にしているのは何か理由などあるのでしょうか?

岡田さん

まず、会社の考え方として「基本的に必要のない制約は作らない」というものがあります。管理の仕組みを入れずとも、「ちゃんとやってくれるだろう」という性善説に基づいて体制を整えているので、制約は極力なくそうというスタンスです。

ミーティングや顧客とのアポイントメントは時間が決まっていますが、それ以外の個人作業に関しては、それぞれが最も生産性が高くなる時間帯で行ってもらうのが最良だと考えています。

勤怠も完全に自己管理なので、「テレワークでさぼるのではないか」といった懸念もあるかもしれません。しかし、そこに焦点を当てた仕組みを作るより、自由な環境で能力を発揮できる人や、自由な環境に魅力を感じて力のある人材がアジャイルウェアで働きたいと思ってくれる、そういったプラス面に注目して仕組みを考える方が会社にとってメリットがあると考えています。

編集部

悪いところに目を向けて制度を設定するよりは、自由な環境であればよりパフォーマンスが出せる人に目を向けた方が会社として向上していくという考え方から、勤務体制を決めていらっしゃるんですね。

柔軟な働き方の推奨:場所、時間、副業の自由選択で社員の成長を支援

株式会社アジャイルウェアの大阪オフィスの写真
▲大阪本社オフィスの写真。昇降可能デスクやハイグレードPCチェアが揃い、働きやすい環境が整っている。

編集部

働き方の自由度が高い御社では、プライベートとの両立も非常にしやすそうだと感じます。実際にワークライフバランスを充実させている社員さんのエピソードなどがあればお聞かせください。

岡田さん

育児や介護に限らず、ご家庭の事情に合わせて時間を確保しながら働いている社員はたくさんいます。お子さんがいらっしゃる方は、保育園や学校などのイベントや予定に合わせて働かれています。

送り迎えなどに合わせて一時的に離席したり、家事を終わらせてから当日残った仕事を夜に少しだけ行うというメンバーも多いです。全体的には、一般的な「9時〜18時勤務で1時間お昼休憩」という働き方をしている人の方が少ないかもしれません。

オフィスは大阪と東京にありますが、それ以外の場所を生活のベースにしたいという方もいます。ご実家にいながら、月に数回東京・大阪に出張ベースで来て、メンバーとコミュニケーションを取りながら仕事をしているメンバーもいます。リモートワークがベースになったことで、定期的な出社を前提にせずに、遠隔地に生活のベースを置いている方の採用も考えられるようになりました。

編集部

週休3日制に関するアンケートで「副業やスキルアップの勉強がしやすくなった」という感想がありました。副業については、会社としてどのようなスタンスなのでしょうか?

岡田さん

当社が提供しているサービスの競合企業だけ避けてもらえれば、自由に副業をしても問題ありません。申請も必要ないので全て把握しているわけではありませんが、働き方の自由度が高いため、副業をしているメンバーは多いと思います。

例えば、9時〜18時と労働時間が決まっている会社で副業をやるなら、朝晩か土日に時間を確保するか、本業をおろそかにするかしかないでしょう。当社の場合、本業の途中に少し抜けて副業先のミーティングに参加することもできます。「本業ではなく副業に力が入りすぎるのではないか」という意見もあるかもしれませんが、先ほどの働き方と同じように、そこまで心配する必要はないと考えています。

社員が副業をすることで、会社の業務に悪影響が出るとは全く思っていません。普段とは違うコミュニティや違う世界に身を置くことで、ウェルビーイングの向上やスキルアップ、経済面も含めた本人の満足感などに繋がるのであれば、プラスになる方を選択してもらえればと考えています。

編集部

働き方と同様に「この人ならプライベートや副業と調整して仕事をやってくれるだろう」という信頼が根底にあるので、そういった運用方法にされているんですね。

ウェルビーイング経営の実践:自社アプリ「KIWI GO」の活用と健康促進施策

株式会社アジャイルウェアが行うウェルビーイング経営のイメージ画像
▲株式会社アジャイルウェアでは、人を大切にするウェルビーイング経営を行う。(採用ページから引用)

編集部

アジャイルウェアさんは、自社プロダクトの「KIWI GO」の利用をはじめ、社員の方の健康を非常に重視されているようですが、詳しくお聞かせいただけますか?

岡田さん

アジャイルウェアでは「人を大切にするウェルビーイング経営」を実践しています。ウェルビーイング経営は社員の健康だけではありませんが、その基盤となるのは心身の健康です。そのため、健康への意識は非常に高いです。特に社会の変化により、従業員の健康に対する潜在的なリスクに気づいたことで、さらに意識が高まりました。

きっかけは、代表の川端が運動不足を実感し、活動量を可視化しようと考えたことです。技術顧問からスマートバンドを勧められ、その使い勝手の良さに感銘を受け、社内で一緒に取り組む仲間を募りました。

その後、社内のビジネスコンテストで「KIWI GO」の原型が生まれ、同様の課題を抱える人々に向けてサービスとしてリリースしました。現在では、社員も実際にアプリを使用して運動に取り組んでいます。

編集部

「KIWI GO」の機能を社内でどのように活用されているのでしょうか。

岡田さん

「KIWI GO」には「ギルド」という社内サークルを作れる機能があり、アジャイルウェアでもバドミントンやフットサルなどのサークルを運営しています。最近では、これらの活動を支援する「ギルド活動費補助」制度も導入しました。

この制度は、直接的な交流がウェルビーイングの向上につながると考え、会社として後押ししたいという思いから生まれました。効果の検証はこれからですが、導入直後からギルドの数が増加しており、社員の関心の高さが窺えます。

アジャイルウェア社内サークル、バドミントン中の写真
▲「KIWI GO」のギルド機能でバドミントンサークルを作り、活動されている。

社員の健康を第一に考えた福利厚生:社会情勢に応じた柔軟な制度設計

株式会社アジャイルウェア、オフィス内のカフェテリアスペース

編集部

御社は社員の健康を重視した経営をされており、制度も充実しています。ワクチン接種特別休暇や出社手当など、社会情勢の変化にも迅速に対応したサポートを用意されていますが、こちらについて詳しくお聞かせいただけますか?

岡田さん

2020年2月にリモートワークを基本に切り替えた際、社会情勢が目まぐるしく変化し、先行きが不透明な状況でした。社員の生命と健康を最優先に考え、完全リモートワークを可能にしましたが、業務上出社が必要な社員もいました。

事務のメンバーを中心に、郵便の確認や電話対応のためにオフィスへの出社が必要だったり、クライアント対応で外出せざるを得ないメンバーもいました。そこで少しでも支援しようと、すぐに「こんなときに出社ごめんね手当」という危険手当の支給を決定しました。

その他、リアルイベントの参加手当や既存の出張手当に加え「長距離移動手当」なども導入しました。その時々の社会情勢と社員のリスクに対する認識に応じて、手当の額などを随時調整しています。

アジャイルウェア社内制度一覧表
▲アジャイルウェアの社内制度一覧表

光岡さん

個人的には、ワクチン接種特別休暇が非常に助かりました。先日4回目の接種をしまして、悪寒と筋肉痛で一晩中眠れなかった時に、休むことができて嬉しかったです。休みやすい体制が整っていますし、元々柔軟に休暇を取得でき、柔軟に働けるので、業務への影響も最小限に抑えられました。

編集部

健康リスクを考慮しながらの出社は、ストレスを感じてしまう方もいたかと思います。社員の健康を最優先に制度を整えられているからこそ、皆さん安心して仕事に取り組めるのではないかと感じました。

フラットな組織文化:「自由」をキーワードとする社内コミュニケーション

株式会社アジェイルウェアの社員のコミュニケーションの様子

編集部

では次に、会社や社員の皆さんの雰囲気について、お二人からお話しいただきたいと思います。

光岡さん

弊社は役職がないフラットな組織を目指しており、基本的に部下、上司という関係がありません。

そのため、年齢や所属チームに関係なく、全員がフラットな立場から率直に議論したり依頼したりできる、話しかけやすい雰囲気があります。

業務委託など、外部の立場で働いているメンバーからは「社員一人一人の発言権がここまである会社は見たことがない」と評価されることもあります。代表に対しても役職や立場に関係なく、全体の最適を考えて遠慮なく意見を言えていると感じます。

また、社員の個性を尊重することを大切にしています。趣味を優先して休暇を取ることも周囲が寛容に受け入れてくれます。もちろん業務に支障が出ないよう調整は必要ですが、自分のやりたいことを実現できる会社だと思います。

岡田さん

光岡の言った通りで、会社を表す言葉としては「自由」がふさわしいと思います。働く場所、時間、副業の有無はもちろん、業務内容についても社員に任せる形になっています。川端代表の考えとして、社員の得意分野に集中して力を発揮してもらいたいという方針があるため、自分の好きなことや得意なことがはっきりしているメンバーが多いと感じます。

ただ、自由の裏返しとして、社員同士の交流が減っているのは課題だと感じています。会社として定期的な出社日や合宿の開催など、交流する機会を設けることで、より意識の擦り合わせができ、一体感を醸成できるのではないかと考えています。

おせっかいかもしれませんが、「出社よりも在宅の方が仕事が捗る」と言っているメンバーも、こういったイベントには案外参加してくれるんですよね(笑)。

編集部

「自由」をキーワードとして社員の意思や好みを尊重しながらも、お互いに交流し合うことで一体感を醸成していこうという考えなのですね。

アジャイルウェアの採用方針:多様性の尊重と会社の価値観との調和を重視

株式会社アジャイルウェアの岡田さん

編集部

最後に採用についてお伺いします。御社の自由な働き方に魅力を感じる方は多いと思います。御社にフィットする人材を迎え入れるために重視している点を教えていただけますか?

岡田さん

現在は中途採用のみですが、採用チームと代表で新卒採用も検討しています。その際に話題になったのが「どんな人材を採用するか」ということでした。

弊社のキーワードである「自由」は、多様な価値観を意味します。個々の価値観を尊重すると、採用基準がないように思えますが、実際はそうではありません。会社が大切にしたい考え方や価値観があり、それに完全に共感しなくても、明らかに合わない方の入社は避けたいと考えています。

会社と社員の双方にとって不幸な結果を避けることが重要です。会社を深く理解している我々の役割は、たとえ詳細な会社説明や職場見学を行っても残る情報の非対称性を考慮することです。

価値観の不一致を指摘することは、応募者本人のためにもなると考えています。そのため、採用時には応募者と会社の価値観の一致を重視しています。

編集部

本日はありがとうございました!

■取材協力
株式会社 アジャイルウェア:https://agileware.jp/
採用ページ:https://agileware.jp/careers/