出産や育児へのバックアップ、そしてキャリア形成支援などで注目すべき企業を紹介する本企画。今回は「航空セールス事業」と「地域創生事業」を展開するANAあきんど株式会社をご紹介します。
ANAあきんど株式会社とは
ANAあきんど株式会社の母体となったエーエヌエー・セールス・ホールディングスは、2002年1月に設立された会社です。その後2度の社名変更を経て、2021年4月にANAあきんど株式会社として新たなスタートを切りました。この間、一貫してANAグループの営業部門を一手に担い続けています。
今回の社名変更時には、従来の基幹事業の1つであった「旅行事業」をグループ会社へ譲渡しました。そしてANAあきんど株式会社は既存の「航空セールス事業」に加えて、新規事業として「地域創生事業」への取り組みをスタートしています。
会社名 | ANAあきんど株式会社 |
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住所 | 東京都中央区日本橋2-14-1 フロントプレイス日本橋 |
事業内容 | 地域創生事業 航空セールス事業 |
設立 | 2021年4月 |
公式ページ | https://www.ana-akindo.co.jp/ |
働き方 | リモートワーク制度、フレックスタイム制度 |
今回は、ANAあきんど株式会社の総務人事部人事チームマネジャーを勤める杉下拓也さんに、事業の概要や働き方に関する制度やルール、休暇制度や人事制度をお聞きするとともに、総務人事部人事チームの八木沢美由紀さんに、出産・育児支援に関する諸制度について、経験者の立場からお話しいただきました。またお二人には、採用に関するポイントや求めている人物像などについてお伺いしています。
ANAグループの営業部門を担い、2021年4月に「ANAあきんど」に社名変更
編集部
最初に事業概要の説明からお願いいたします。
杉下さん
弊社は2021年4月に「ANAあきんど株式会社」に社名を変更しました。もともとの設立は2002年1月で、当初の社名は「エーエヌエー・セールス・ホールディングス」でした。その後、「ANAセールス&ツアーズ株式会社」(2003年4月)、「ANAセールス株式会社」(2005年1月)と社名を変更しましたが、この間、一貫してANAグループの営業部門を一手に担ってきている会社です。
なお、今回の社名変更のタイミングでは、それまで運営してきた「旅行事業」をグループ内のANA X株式会社に譲渡しています。そして弊社は、既存の事業である「航空セールス事業」に加えて、新たに「地域創生事業」への取り組みをスタートしました。
編集部
地域創生事業とは、どんなビジネスなのでしょうか。
杉下さん
自治体やNGO・NPOなどと連携して、インバウンドの拡大や国内流通の促進に取り組む事業です。航空輸送をはじめとしたANAグループのリソースをフル活用して、活気ある地域作りに貢献したいと考えています。
地域創生という言葉は、あまり一般的ではないですよね。地方創生といった方が、馴染みがあるかもしれません。ただし地方という言葉には、「都会対地方」のような対比的なイメージがあります。しかしANAあきんどでは、地方だけでなく東京や大阪などの都会も、同じように盛り上げなければいけないと考えています。ですからあえて「地域」という言葉を使っています。
全メンバーが使命感を持って「地域創生事業」を推進
編集部
どのような手法で、地域を盛り上げていくのですか。
杉下さん
ANAあきんどが目指している地域創生事業は、自分たちができることを、そのままお客様に提供するのではありません。そうではなく、まずは地域の方々と一緒になって、地域の課題を考えます。そして、その対策について、ANAグループが持つリソースを使いながら「こういうふうに解決しませんか」という提案をしていきます。
弊社はANAグループの中で唯一、全国に支店を持っている会社なんです。今は全国33拠点をネットワークしています。ですから地域の方々とは、非常に近い場所で課題や悩みを共有でき、解決策を考えることができます。それが弊社の特徴であり強みだと考えています。
編集部
社会的な課題の解決という側面が強そうですね。メンバーの皆さんは、使命感を持たれているのではないですか。
杉下さん
メンバー全員が、そういう思いを持ってやっています。というのも地域の方々との共生は、弊社の伝統でもあるからです。地域創生事業という柱を掲げる以前から全国に支店があり、地域の方々との交流は当たり前でした。これが今回、明確に事業化されたということで、地域創生に使命感を抱くメンバーは非常に多いと思います。
ANAあきんどの福利厚生では、フレックスやワーケーションも導入
編集部
次に働き方について伺います。リモートワークやフレックスタイムについては、どんな運用をされているのでしょうか。
杉下さん
フレックスタイム制度は、コアタイムなしのフルフレックス制度になっています。就業時間は7時から22時までの間で自分の都合に合わせて選べますから、非常に働きやすい環境だと思います。
そしてもちろん、リモートワーク制度も導入しています。ただしフルリモートではなく、社内的には「週3日の出社」が目安になっています。これはあくまでも目安であり、業務の都合や家庭の事情によっては、週3日にこだわらない臨機応変な対応も認められています。なおリモートワークへのサポートとして、会社からはパソコンとiPhoneが支給されています。
編集部
フレックスタイム制度もリモートワーク制度も、かなり自由度が高そうですね。
杉下さん
そう思います。リモートワーク制度については就業場所のルールとして「自宅ならびに出社指示に対応できる自宅以外の場所」があります。ただしこれについても「ワーケーション制度」の申請をすれば、リモートワーク中でも出社指示を受けないというルールになっています。
編集部
ワーケーション制度は、どんな内容なのでしょうか。
杉下さん
ワーケーション制度は、休暇の前後や休暇中に、休暇先での勤務を認めている制度です。この制度の利用で一番多いのは、帰省に関連した活用ですね。実家に帰省して昼間はリモートワークで働き、業務時間外は実家でのんびりするというケースが多いように感じます。
編集部
例えば、リゾート地でワーケーションをすることも可能なのでしょうか。
杉下さん
まったく問題ありません。しかも弊社はANAグループですから、ANAの優待搭乗制度を利用できます。これとワーケーション制度とを組み合わせれば、リゾート地での勤務は簡単に実現できます。
年間最大20日の有休以外に連続4日間の「リフレッシュ休暇」
編集部
では続いて、有給休暇の取得状況について教えてください。
杉下さん
有給休暇は最大で年間20日付与されますが、現状の平均取得日数は13日です。これとは別に連続した4日間で取得できるリフレッシュ休暇があります。ですからリフレッシュ休暇に有休を1日プラスして、その前後を土日で挟む9連休として取得するメンバーが多いですね。
編集部
支店の方々には、何か特徴的な休暇の使い方がありますか。
同席の総務人事部・阿久澤さん
そうですね。支店については、その地域にまったく縁のないメンバーが配属されるケースもあります。まったく知らない土地での生活が始まるわけです。そういったメンバーにとっての休暇は、その地域を知ったり学んだりするための時間にもなっているようです。地元の人しか知らないようなグルメや穴場などを、巡っている方がけっこう多いように聞いています。
勤務時間を1日3時間まで短縮できる「育児時短勤務」
編集部
資料を拝見して、ANAあきんどさんは育児関連の福利厚生が充実していると感じました。「産前・産後休業」や「育児休業」、そして「育児時短勤務」などですね。2013年にはANAセールスとして、厚労省の「くるみん」認定も取得されています。八木沢さんはこうした育児関連制度を、すでにご経験済みだそうですね。
八木沢さん
はい。私には7歳と3歳の娘がおり、産前・産後休業と育児休業を2回取得しています。1回目は2015年の夏に取得して、2016年の春に復職しました。そして2回目は、2019年の夏から2021年の春までです。ちょうど社名が変わったタイミングで復職しました。
編集部
今現在は制度を、どういうふうに利用していますか。
八木沢さん
今は育児時短勤務制度を利用しています。これは子どもが小学校3年生までの間は、勤務時間を1日3時間まで短縮できる制度です。私は1日2時間の短縮を会社に申請しており、9時から16時までの6時間が基本の勤務時間になっています。
主人とは共働きなので、育児を分担しながら仕事と家庭を両立しています。そのために、いろいろと用意されている制度をフルに活用させていただいています。例えばフレックスタイム制度ですね。保育園のお迎えがマストの日には定時に上がったり、繁忙期等で6時間以上勤務する日があればその分遅めに出社する日を設けたりと、月の中で勤務時間を調整しながら働いています。
またリモートワーク制度も月に数回は活用しており、作業に集中したい日や資料作成に没頭したい日には家でリモートワークをしています。そして会議の多い日などは、対面の方がスムーズですから出社しています。こういった感じで、働き方を自分のやりやすいように組み立てられる制度が整っていることが、弊社の一番の魅力だと思います。
育児に関する支援策への理解が全社的に浸透
編集部
育児関連以外の制度も、結果として育児のサポートに繋がっているのですね。
八木沢さん
そうです。育児をしている身として、すごくありがたいのはリモートワーク制度ですね。中抜けが可能なんです。例えば数時間の授業参観や、子供の急な発熱による通院などにも、半休を取らずに対応できます。リモートワーク制度には本当に助けられています。
編集部
そういった柔軟な働き方に対して、メンバーの皆さんの反応はいかがですか。
八木沢さん
職場は、ものすごく理解があると思います。これは私の部署に限らず、会社全体に感じることです。結婚しても退職せずに働き続けたり、出産しても産休・育休を取得して復職したりすることが、もはや当然のような環境になっています。そして育児時短勤務という働き方への理解も、会社全体に浸透しています。
編集部
メンバーの理解は、何よりの育児支援ですね。
八木沢さん
おっしゃる通りです。以前、ある上司からこんな言葉をいただきました。「時短勤務だからといって、『こういう業務しかできない』という制限をかけたくない。たとえ時間の制限によってできない部分があったとしても、それは周囲がカバーすれば十分に成り立つこと。だから、どんな業務にも前向きに取り組んでほしい」。
この言葉はとても励みになりましたし、今でも心に残っています。私は今、採用を担当させていただいていて、とてもやりがいを感じています。ただしフルタイムの方に比べて、時間に制限があることは事実です。ですからいかに生産性を上げて、業務の質を落とすことなくやり切るかということに、日々模索しながら取り組んでいます。
ANAグループとして男性の育休取得を積極的に推進
編集部
育児に関連した取り組みで、ANAグループさん全体として実践している制度などがありますか。
杉下さん
ANAホールディングスには「グループDEI推進部」があります。ここではグループ全体のダイバーシティを、さらに深める活動を行っています。そして2023年度の強化取り組みポイントは、男性の「育児休暇」に関してです。特に育休とは別に設けられている「出産休暇」ですね。これは配偶者が出産したら3日の休みが取れる制度なのですが、この100%取得が重点テーマになっています。
あとは、いわゆる「産後パパ育休」ですね。女性のメンバーは産休・育休を取る方がほとんどですが、男性の取得率はまだまだです。しかし、お子さんが生まれた社員であれば、誰でも取得できる制度なのです。上長からの制度の再周知や、業務上の配慮をしてもらうことなどで、社内への浸透を図っています。
育休からの復職直後でも昇進できる人事制度へと刷新
編集部
女性社員の方はライフステージの変化が多くあります。そんな中で女性のキャリア形成を、会社としてはどのようにサポートしているのでしょうか。
杉下さん
それについては、ANAあきんどに社名変更をしたタイミングで、人事制度を変更しました。
それ以前の人事制度では、産休育休から復職したあとは何年か経たないと、上の資格にステップアップできない仕組みになっていたんです。ステップアップするには直近過去3年間の評価点が重要になるのですが、休業期間はすべて標準評価になっていたため、少なくとも3年以上経たないとステップアップができませんでした。
その後、このルールを刷新しました。復職直後でも意欲があり、本人がステップアップを希望するのであれば、すぐにでも昇格できる仕組みに変更しています。育休を取得すると他のメンバーから遅れを取るというような状況は、大きく改善できたと思います。
あとは女性社員向けの「キャリア研修」ですね。ここではライフイベントがある中で「どうやってキャリアアップをするか」や、「自分のキャリアビジョンをどう描くのか」についての研修を行っています。
女性が実現したいと思う人生を具現化できるANAあきんど
▲ANAあきんどさんの魅力や働き方などについて語ってくださった総務人事部人事チームの杉下拓也さん(左)と八木沢美由紀さん
編集部
では採用に関して伺います。ANAあきんどさんのキャリア採用では、どういった方を求めていらっしゃいますか。
杉下さん
求める人材像をいいますと、少し硬いかもしれないですが「自主的に動ける方」ですね。これを重視しています。世の中は常に変化していますし、受身の姿勢では最新の情報をつかむことが難しくなります。しかも私どもの業界は競合他社が多いですから、自分から能動的に動くことが本当に大切なんです。これは知識の取得においても、行動を起こすという観点においても同様です。
あとは「学んだことを行動に移すこと」が重要ですね。せっかく学んでも、それを知識だけにしておくのでは意味がないからです。そうではなく、学んだことを生かして、失敗してもいいからチャレンジする。そういう気持ちを持っている方が、弊社とマッチすると思います。
編集部
最後に八木沢さん、女性読者に向けたメッセージをお願いします。
八木沢さん
女性には結婚や出産など様々なライフイベントがあります。しかしANAあきんどには、仕事に左右されることなく、自分が実現したい人生を具現化できる環境が整っています。これは制度の充実もそうですが、それだけではありません。何より周囲のメンバーが、温かく受け入れてくれる雰囲気が社内にあります。それが本当にありがたいですね。
こういう風土が醸成されたのは、先輩の女性メンバーのおかげだと思っています。先輩方が結婚や出産をしても、退職することなく会社に貢献し続けてくれたんです。そして他のメンバーに対して、育児休暇や時短勤務などへの理解を促進してくださった。それが今のカルチャーに繋がったのだと思います。
ですから私自身、キャリアと家庭との両立を諦めることなく働き続けます。ANAあきんどとは、そういう会社です。
編集部
ANAあきんどさんの働きやすさとは、先輩の方から代々受け継ぎながら育んできたものなのですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
ANAあきんど:https://www.ana-akindo.co.jp/
採用ページ:https://www.ana-akindo.co.jp/recruit/