事業の革新性や成長力などで注目すべき企業をインタビューする本企画。今回はフレッシュペットフード(※)市場で国内トップクラスのシェアを獲得し、根強いファンを生み出している株式会社バイオフィリアをご紹介します。
(※)フレッシュペットフード:人間でも食べられる高品質な食材を使ったペットフードのこと。
動物と人の「幸せな共生」を願う株式会社バイオフィリアとは
株式会社バイオフィリアは2017年8月に設立され、2019年6月に現在の主力事業であるフレッシュドッグフード「ココグルメ」の提供をスタートしています。
ココグルメは味や品質はもちろんのこと、独自のマーケティング力やカスタマーサポート力、物流設計を駆使した総合力が消費者から高く評価されています。顧客となる「累計会員愛犬数」は20万を突破しており、国内トップの売上高を誇るフレッシュドッグフード・ブランドへと成長を遂げています。
会社名 | 株式会社バイオフィリア |
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住所 | 東京都目黒区中目黒3丁目5-5 NFビル6階 |
事業内容 | ・ペット関連事業 ・インターネットサービス事業 |
設立 | 2017年8月 |
公式ページ | https://biophilia.co.jp/ |
今回は、そんな株式会社バイオフィリアで代表取締役社長 兼 CEOを務める岩橋洸太さんにインタビューしました。企業として成長を続けている要因や、ペットへの配慮が行き届いた福利厚生制度、インターンの受け入れ体制などを伺いました。
人間用の食材だけを使ったフレッシュペットフード事業を展開
編集部
最初にバイオフィリアさんの事業内容から説明をお願いします。
岩橋さん
バイオフィリアの主力事業は、手作りのドッグフード「ココグルメ」とキャットフード「ミャオグルメ」の提供です。ドッグフードというと、茶色いカリカリしたドライフードを思い浮かべる方も多いと思います。
しかし、ココグルメは普段私たちが口にするような新鮮な食材だけを使って調理した「フレッシュペットフード」に分類されます。これをスーパーなどの量販店に卸すのではなく、毎月、直接ユーザー様にお届けするサブスクリプションモデルで販売しています。
編集部
ココグルメには具体的にどんな特徴があるのか、もう少し詳しく伺えますか。
岩橋さん
特徴は5つあります。1つ目は、人間が口にする食材だけを使っていて、ワンちゃんにとって安心安全だということです。人間が口にしない素材を使うことも少なくない一般的なドッグフードとの一番の違いです。
2つ目として、レシピへのこだわりがあります。バイオフィリアの独自のノウハウで、好き嫌いが激しい傾向にあるワンちゃんも、好んで食べられる味に仕立て上げています。
3つ目は、「このごはんと水だけで必要な栄養が摂れる」という総合栄養食の基準に準拠している点です。ドッグフードは飼い主さんがご自身で調理している家庭もありますが、その場合、栄養のバランスを取ることが難しいという課題があります。一方でココグルメのレシピは、獣医師と栄養士、大学教授の先生方に監修をしていただき、ワンちゃんに必要な栄養をバランス良く盛り込んでいます。
4つ目は、4年間で8度行った商品リニューアルの頻度です。先ほど申し上げた通り、弊社はBtoCのためユーザー様の声を耳にする機会が多く、その意見を基にスピード感を持って商品の改善を繰り返しています。大変な作業ですが、商品をよりよくするためには欠かせないと考えています。
最後の5つ目は、お客様に寄り添う姿勢です。弊社ではSNSに寄せられた投稿全てにコメントを返し、カスタマーサポートにいただく問い合わせにも平均2分で返信しています。
この業務を担う「カスタマーサポート部門」は本当に、お客様から愛されていると感じます。熱心なココグルメファンを、さらに増やしている部門です。
編集部
バイオフィリアさんは、お客様への丁寧な対応もとても大切にされているのですね。ちなみに、カスタマーサポート部門に届く意見には、どういったものがあるのでしょうか。
岩橋さん
例えば、証券会社にお勤めというあるお客様からは「こんなカスタマーサポートは見たことがない。まるでコンシェルジュのようだ」というお言葉をいただいたことがあります。
カスタマーサポート部門は、こういったお客様からいただいた言葉を社内のコミュニケーションツールに投稿し、全社員に共有しています。中には先ほどのような、思わず涙を流してしまうようなものもあります。そのようなご意見は社員にとって財産であり、一丸で仕事に取り組むためのモチベーションになっています。
ペットフード事業立ち上げのきっかけとなった愛犬の死
編集部
バイオフィリアさんが今の事業を立ち上げた背景には、岩橋さんの体験があると伺いました。こちらはどういった経緯なのでしょうか。
岩橋さん
弊社を2017年8月に設立して間もなく、私は2頭の愛犬を立て続けに病気で失いました。その際、深いペットロスに襲われたことが、フレッシュペットフード事業を始めたきっかけとなっています。
2頭は病死でした。寿命で亡くなったのであれば仕方がないと思えたかもしれませんが、「育て方に原因があったのではないか」「きちんとしたご飯をあげていなかったからではないか」と自分を責めました。その時に、ペットロスとは失ったことそのもの以上に、「もっとしてあげられたのでは」という後悔に苛まれるものだと感じました。
そして、こんなつらい経験を他の人にはさせてはいけないと心に決めました。飼い主として「ワンちゃんの健康を気遣って、最高のご飯をあげてきた」と言い切れるなら、たとえ愛犬が亡くなったとしても自分を責めず、ペットロスも緩和できるのではないかと思ったのです。
編集部
バイオフィリアさんの事業は、ペットの健康を守るだけでなく、いつか訪れるであろう飼い主のペットロスに対する心のケアも考慮しているのですね。働き手としても、とてもやりがいが感じられそうです。
全国で20万頭の飼い犬が「ココグルメ」に登録
▲バイオフィリアの主力事業となっている「ココグルメ」(ココグルメ公式サイトより引用)
編集部
バイオフィリアさんの事業の成長を示すような数字がありましたら、お聞かせ願えますでしょうか。
岩橋さん
年間の売上高は20億円を突破しました。ココグルメのリピート率は95%と、一度購入してくださったお客様の多くがリピートし続けてくださっていることが大きく影響しています。
編集部
ココグルメのユーザー数はどのくらいに上るのですか。
岩橋さん
ココグルメを販売開始したのは2019年6月です。以来、右肩上がりにユーザー数は増えていて、2023年8月には「累計会員愛犬数」が20万頭を突破しました。
全国のワンちゃんが約800万頭ですから、20万頭という数字はそのうちの約2.5%にあたります。かなり多くのワンちゃんに、気に入っていただけていると実感しています。
フレッシュペットフード市場では国内トップの売上高を記録
編集部
バイオフィリアさんの20億円という売上高は国内シェアで言うと、どのくらいの規模になるのでしょうか。
岩橋さん
フレッシュペットフード市場の統計は、なかなか正確なものがありませんが、イメージでは40億程度だと考えています。ですから弊社の20億円という売上高は、シェアでいえば50%ぐらいを確保しているはずです。2022年には売上No.1(※)にも輝いています。
(※)「ココグルメ」がフレッシュペットフード主要8社の中で売上高No.1を獲得。会員数、ウェブアクセス数など6冠を達成しました。(株式会社バイオフィリアプレスリリースより)
編集部
ちなみに、ペットフード市場の将来性にはどのような見通しがあるのでしょうか?
岩橋さん
国内のペットフード市場は2024年予測で7,000億円と言われています。これは17年比の伸び率で140%です。また弊社がターゲットにしているプレミアムペットフード市場の規模は1,500億円とされています。こちらは2017年比で180%以上に達しています。
編集部
市場の拡大は急速に進んでいて、今後のさらなる売り上げ増加も見込めそうですね。
20兆円のグローバル市場をターゲットに見据える
編集部
バイオフィリアさんは今後、どのような事業展開を見据えているのでしょうか?
岩橋さん
バイオフィリアは、国内だけで事業を終わらせるつもりはありません。世界で愛されるブランドになるために、グローバル市場にチャレンジしたいと思っています。
世界のペットフード市場は20兆円以上と、膨大な規模があると言われています。加えて、ペットフードのグローバル展開は、人間の食に関する市場と比べてアプローチがしやすいと考えています。なぜならワンちゃんのご飯の好みは、おおよそ世界共通だからです。
人間用の食材であれば、その国の食文化にあわせた現地化が必要になります。一方で、日本のワンちゃんが好むご飯は、基本的にどこの国でも好まれます。
編集部
国内で培ったバイオフィリアさんのノウハウを、そのまま海外展開へ生かすことができるのですね。
岩橋さん
おっしゃる通りです。そして、弊社が日本のスタートアップとしてグローバルな活躍をすれば、他の国内スタートアップに希望を与えられます。そういう存在になりたいと思っています。
現代の飼い主のニーズに合わせた商品作りが成長の要因
編集部
会社設立から6年で、バイオフィリアさんがここまで成長した要因には何があるのでしょうか。
岩橋さん
要因は大きく2つあると思っています。一つは、市場の変化に対応したことですね。日本におけるペットの役割は、ここ数十年で大きく変化してきました。ところがフードだけは、あまり変わらなかったんです。
編集部
具体的にはどういうことなのでしょうか。
岩橋さん
日本の歴史を紐解いていくと、昔のペットは番犬のように「飼育動物」と見なされていました。それが、ペットと共に過ごす時間が長くなるに連れて「愛護動物」に変わっていったのです。今では家族としての愛情がさらに深まり、「伴侶動物」と呼ばれています。
しかしながら、ペットフードの「餌」という位置付けは大きくは変わってきませんでした。弊社はここに着目しました。「より愛情を持ってペットと接したい」という現代の飼い主のニーズに、高品質な「食」としてペットフードを提供することで応えたのです。
商品製造から流通までを担い、事業に機動性を実現
編集部
二つ目の成長要因は何でしょうか。
岩橋さん
バイオフィリアが会社としての機能それぞれを、すべてお客様に寄り添った形で構築していることだと思います。弊社はメーカーでありながら、商品とお客様とを繋ぐマーケティング機能やお客様をフォローするカスタマーサポート機能も備え、物流管理にまで関わっています。
これらを自社で、一気通貫で手掛けている企業は、なかなか他ではないと自負しています。
編集部
それが、よりお客様のニーズに応えやすい機動性や柔軟性を生んでいるのですね。
岩橋さん
その通りです。そして、このことが実現できている要因の一つに、社員全員の強い動物愛があると感じます。メンバーは全員、動物が大好きです。家族である動物たちに、より良い生き方をさせてあげたいと常に思っています。
また、バイオフィリアを世界で最も愛されるブランドに育てていくという意識も、社員全員で共通しています。世界で認めていただくためには、製品の良さだけでなく、マーケティングやサポート、ロジスティクスなどで総合的に満足いただくことが必須です。
この愛や情熱がバイオフィリアを突き動かす原動力であり、事業へのこだわりにつながっていると感じます。
ペットと過ごす職場は「動物と人間の壁を無くす」理念の象徴
▲「わんダフル・ワーキング」の採用でミーティングにはペットも参加。
編集部
動物愛のあるメンバーが揃っているというバイオフィリアさんですが、ペットに関する特徴的な社内制度などありましたら教えてください。
岩橋さん
愛犬や愛猫と一緒に働ける「わんダフル・ワーキング」という制度があります。一緒に暮らしている愛犬、愛猫と同伴して出勤ができ、職場でも一緒に過ごせるんです。会議では、動物たちも社員の膝の上に乗るなどして出席しています。
編集部
ペットの愛好家にとっては、うれしい職場環境でしょうね。
岩橋さん
この制度は、仕事中は愛犬・愛猫と一緒にいられないというスタッフの悩みを減らすだけでなく、動物へのメリットも大きいんです。
動物たちは本来、人間や他の動物と接することで社会に適応し、成長していきます。ところが日中、家族の居ない家で1匹で過ごしていると、いつまで経っても社会での過ごし方が学べません。
社員の多くが同伴出勤をすれば、動物たちにとってはオフィスが社会を学ぶ場になります。人を噛んだり、むやみに吠えたりしてはいけないといったことを学べ、どんどんマナーを身につけていけるのです。
編集部
社員の皆さんは働きながら、ペットを社会に慣れさせることもできるのですね。
岩橋さん
そうです。私達のミッションは「動物と人間の壁を無くす」ことです。すなわち、人と暮らす動物が人間社会にきちんと順応できることを目指しています。
そして、バイオフィリアは愛犬・愛猫と共に過ごせるオフィスをミッションの象徴として位置付けています。「これが私達の理想とする世界です」と示しているつもりです。
愛犬・愛猫と働きモチベーション向上。トラブル時は社員同士で助け合う
編集部
「わんダフル・ワーキング」は、職場にどのような影響をもたらしているのでしょうか。
岩橋さん
バイオフィリアの職場は、とにかく和気あいあいとしています。動物がいるだけで雰囲気は和みますし、社員同士の会話もはずみます。気持ちの切り替えがすぐにできるので、やる気も出てきます。本当に活気のある、いい雰囲気のオフィスになっています。
編集部
ペットが職場にいることで、社員の方に負担が生じることはありませんか。
岩橋さん
多少のトラブルが起きることはありますが、社員同士が助け合って解消しています。例えば、ワンちゃんがおしっこをしたり、吠えてしまったりした際、家族であるスタッフが仕事で手が離せない場合は、手の空いている人が対処しています。
編集部
ペット好き同士だからこそ、対処も難しくはないのでしょうね。
岩橋さん
そう思います。みんなで助け合うことで、愛犬・愛猫同伴のメリットを最大限に享受できます。そしてゆくゆくは、オフィス移転の機会などに、ワンちゃんと親しめる「ワンちゃんゾーン」と、仕事に打ち込める「集中ゾーン」とを分けたオフィスを実現したいと思っています。
動物たちを対象にした扶養手当や忌引制度を整備
編集部
「わんダフル・ワーキング」の他にも、ペットに関連する制度は何かあるのでしょうか。
岩橋さん
例えば愛犬・愛猫に対する扶養手当があります。これは動物を家族としてお迎えすることに対する支援として、1頭につき2,000円を扶養手当として支給するというものです。
さらに私は、殺処分をなくしたいとも思っています。そこで保護犬・保護猫を飼育する場合にはさらに1,000円を上乗せして、1頭につき3,000円の扶養手当を支給しています。
また、3日間のペット忌引制度があります。これは私が愛犬をなくし、精神的に大きなショックを受けた経験をきっかけに制度化したものです。
弊社には動物たちを家族同然、家族以上の存在と考えているメンバーしかいません。それであれば、人間と同じように、忌引きを適用させる方が自然だと考えたんです。
編集部
福利厚生にもペットや飼い主への思いやりが溢れていますね。
若いエネルギーを取り込むためインターン受け入れを積極化
編集部
バイオフィリアさんはインターンも受け入れていると伺いましたが、どのような状況なのでしょうか。
岩橋さん
これまで6名のインターン生を受け入れてきました。期間は半年から数年です。現在はマーケティング部門で2名を受け入れており、SNSチームに配属しています。
編集部
SNSチームに配属しているのは何故でしょうか。
岩橋さん
インターン生は社員以上に、SNSのメインユーザーである若い方々の感覚が理解できるのではないかと感じたからです。同世代の人への訴求力に期待をしています。
またインターンを受け入れているもう1つの理由として、若いエネルギーを組織として取り込みたいという狙いもあります。
バイオフィリアは会社として、これからさらに大きくなっていきます。社員がインターン生から「若手がこんなに頑張っている。自分達も負けてはいられない」という刺激を受け、切磋琢磨できるような環境が理想的ですね。そのためにインターン生の受け入れ人数も今後、もう少し増やしていければと考えています。
インターンの魅力は、スタートアップの最前線で味わえる「成長のダイナミズム」
編集部
インターン生を今後増やしたいとのことですが、具体的な人数は決めているのでしょうか。
岩橋さん
私はインターン生に、お互いの成長を支え合うような仲間を見つけてほしいと思っています。その雰囲気を作り出すためにも、10名程度に増やせればと思っています。
部門もマーケティングだけでなく、セールスなども含めて枠組みを考えています。動物が大好きな方や、会社の業績を伸ばしたいという情熱を持った方を積極的に迎え入れたいと思っています。
編集部
インターン生は、バイオフィリアさんでどのような経験を積むことができるのでしょうか。
岩橋さん
成長のダイナミズムを味わえることが一番の魅力だと思っています。スタートアップが新しい事業を切り拓いていくというプロセスには、なかなか立ち合えるものではありません。
バイオフィリアは今、確実に成長軌道に乗っています。この環境の最前線にいた経験は、今後の人生において、どんな会社に行こうとも必ず役立つはずです。しかも弊社には、優秀な社員がたくさんいますので、その背中を見て学べることも多いと思います。
動物愛と献身性、成長意欲を併せ持った人材を募集
▲求めるのは「献身性と成長意欲を持った方」と語るバイオフィリアの代表取締役社長 兼 CEO岩橋さん。
編集部
最後に採用について伺います。バイオフィリアさんが求める人材は、どのような方でしょうか。
岩橋さん
現在は即戦力になってくれる方を求めています。弊社のプロダクトやマーケティング、ロジスティクスなどの各部門の専門性は、より深まってきていています。
私達だけではできないことは、まだたくさんあります。これまで例えば、異業種のメーカー出身者が即戦力として活躍してくれているように、前職で培ったノウハウをバイオフィリアにも生かしていただければと思います。
編集部
異業種からでもバイオフィリアさんで活躍できる可能性があるのですね。性格や意欲の面で言うと、どのような方が御社にフィットするのでしょうか。
岩橋さん
繰り返しにはなりますが、弊社のメンバーには共通する思いがあると思います。一つは「動物が大好き」ということ、もう一つは「バイオフィリアを世界的なブランドにしたい」と考えていることです。それらに共感してくださると嬉しいです。
その上で「他者に貢献をしたい」、かつその貢献を「自らの糧としたい」という方が、弊社には向いていると思います。つまりは、献身性と成長意欲を併せ持った方ですね。そういった方は私達と非常に相性が良いと思うのでぜひ、お声がけいただければと思っています。
編集部
動物にも人にも思いやりを持ち、成長にどん欲な方を求められているのですね。インタビューを通じ、バイオフィリアさんの社風もよく伝わってきました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社バイオフィリア:https://biophilia.co.jp/
採用ページ:https://biophilia.co.jp/career/