子育て社員4割!「やさしいフィンテック」を目指すエンペイの働き方と独自の評価制度

新しい働き方を取り入れている企業の皆様にお話を伺うこの企画。今回は、保育園や教育業界の集金DXサービスを開発・提供している「株式会社エンペイ」を取材させていただきました。

株式会社エンペイとは?

エンペイのサービス画面イメージ
▲保育園・幼稚園・学校・習い事教室を中心に利用が広がる「エンペイ」

エンペイは教育現場における集金業務のDX化を支援する企業です。現金や紙を一切使わず、パソコンやスマホだけで請求から決済までが完結する「エンペイ」というサービスを展開しています。主な導入先は保育園や幼稚園、習い事教室などです。

10円や1円単位の細かい現金を集金袋で集めるという教育現場でのこれまでの集金方法は、集める側にとっても、支払う側にとっても手間のかかるものでしたが、「エンペイ」を使えば、請求、集金、催促、集計、領収書発行、銀行入金などの業務がすべてワンストップで行えます。

支払う保護者の側にはLINEで請求通知が届き、クレジットカード、コンビニ、スマホ決済サービスなどの中から好きな方法で支払うことができます。

「エンペイ」を使った集金の流れ
▲請求・支払い・会計がワンストップで行えるのがエンペイの特長(同社HPより)

「エンペイ」導入の効果は大きく、「毎月30時間かかっていた作業時間が約30分に短縮され、98%の業務削減効果があった」という事例があるほどです。保護者からも、「支払いのために現金を用意しなくてよくなった」「スマホですぐに支払え、手間がない」と喜びの声が挙がっています。

今回はそんなサービスを支える株式会社エンペイのメンバーの働き方やカルチャー、評価制度、そして採用でのこだわりなどについて、人事の岩﨑さんにお話を聞かせていただきました。

会社名 株式会社エンペイ
住所 東京都港区港南二丁目15番1号 品川インターシティ A棟22階 SPROUND
事業内容 集金業務支援サービス「エンペイ」の企画・開発・運営・販売
設立 2018年11月
公式ページ https://www.enpay.co.jp/
本日お話を伺った方
エンペイの岩﨑さん

株式会社エンペイ
人事

岩﨑さん

エンペイは「やさしいフィンテック」で社会を変える

エンペイの企業ミッション
▲エンペイの企業ミッション。「やさしい」には2つの意味が込められている(会社説明資料より)

編集部

エンペイさんの企業ミッションについて、教えていただけますか。

岩﨑さん

エンペイは企業ミッションに「やさしいフィンテックを。」を掲げています。私たちはこの「やさしい」に、便利・簡単の「易しい」と、不満や不安から解放される「優しい」の2つの意味を込めています。お金に関する「不」を解消することは、社会を大きく変える可能性を秘めています。私たちはテクノロジーの力でお金の流れを変え、やさしい社会をつくりたいと思っています。

編集部

現在展開されている「エンペイ」サービスで、その手ごたえを感じていらっしゃいますか。

岩﨑さん

はい。例えば保育園業界では、残業時間の長さや精神面の負担の大きさなどが課題となっている中で、アナログな集金業務に時間を割いている状況がありました。「エンペイ」を通して事務作業を大幅に減らすことで、働く時間や心理的負担を軽減できています。これが、職員の方がゆとりを持って子どもたちと向き合えることにもつながっています。

編集部

就労環境の改善、保育の質向上、その先の親子の幸せなどにも貢献できるサービスなのですね。「エンペイ」は全国の教育現場での導入が広がっていますが、今後のサービス展開について教えてください。

岩﨑さん

教育市場における対象施設は全国に約16万施設あり、市場全体の集金額は約7兆円と試算しています。その中で「エンペイ」の決済流通額はまだ約36億円ですので、大きなポテンシャルがあると考えています。施設ごとの導入のほか、昨今、子育てしやすい環境への関心の高まりを受け、愛知県豊田市を筆頭に、自治体での導入も進んでいます。

また、今は集金の手間を改善するDXサービス「エンペイ」をメインとしていますが、今後、BtoC(個人向け)のお金に関わる問題を解決する事業を開発中です。

子育て中の社員が約4割。フルリモート×フルフレックスの働き方

エンペイ社員の働く様子
▲エンペイではフルリモート×コアタイムなしのフルフレックスの働き方がベースとなっている

編集部

続いて、エンペイ社員さんの働き方について教えていただけますか?

岩﨑さん

働き方は創業よりフルリモートです。時間もコアタイムなしのフルフレックス制度を採用しています。ミッションによっては外部パートナーとやり取りする時間の都合もあるため、完全に自由というわけではありませんが、良識ある判断ができる従業員の集団という前提で、働き方の自由度は高い環境となっています。

編集部

子育て中の方も働きやすい環境だと思いますが、独自の福利厚生制度などはありますか?

岩﨑さん

制度では、転職直後でも有給休暇とは別に、子どもの看護やリフレッシュに使える「Welcome休暇」を5日分を付与しています。また、子の「看護休暇」は法定では小学生になる前の子どもが対象ですが、当社では高校生まで拡大し、社員の家族と仕事の両立を支援しています。

社員の平均年齢は32.6歳で、パパ・ママ比率は40.9%に上っています。CEO、CTOも子育て中ですので、子育てと仕事の両立について理解がある環境だと思います。

編集部

転職直後のパパ・ママ社員は子どもの体調不良時に休むと欠勤扱いとなってしまい、困るという話を聞きますので、「Welcome休暇」はやさしい制度ですね。

エンペイさんの公式ブログでは、育休取得者第1号となった男性社員のブログ記事が公開されています。記事の中にはCEO(代表取締役CEO・森脇潤一さん)が育休取得を後押ししてくれたエピソードもあり、会社の制度も職場の雰囲気も、子育てしやすい環境であることがよく伝わりました。

■育休取得者第1号社員のブログ記事はこちら
シリーズAのPMは育休を取れるのか?~育休取得者第一号へ~

「縁の下の力持ち」社員にスポットライトを当てる文化

エンペイ社員が集まるキックオフミーティングの様子
▲半年に一度、オフラインでキックオフミーティングを開催

編集部

フルリモート勤務ということですが、社内のコミュニケーションにおいて工夫されている点はありますか?

岩﨑さん

半年に1度、オフラインでキックオフイベントを開催しています。経営メンバーから直接ビジョンや目標の共有をすることで目線のすり合わせを行い、社員同士の一体感も醸成しています。

普段の仕事はSlack(ビジネスチャット)上で行うため、そもそも採用の段階から「リモートワークができるか」「適切な言葉選びができるか」という点を重視しています。その上でいくつかの社内イベントや制度を使ってオンラインでのコミュニケーションを図っています。

例えば、Gatherというバーチャルオフィスを使って交流をしています。Gatherには屋上があり、外の雑音が聞こえるような雰囲気の空間があるんですが、そこで月1回「ルーフトップ・デー」という社員1~2人に出てもらう表彰のようなイベントを行っています。

編集部

どのような社員の方に出てもらうのでしょうか?

岩﨑さん

表彰という言葉を使いましたが、ナンバーワンとかナンバーツーを表彰するというものではありません。普段は目立たないけれど、素晴らしい働き方をしている人を呼んできて、話を聞いてみんなで称えるというものです。

例えば、カスタマーサポートのメンバーは業務上ミスをしないことが求められるので、100点の状態でも周囲からは見えにくいです。また、顧客接点にいるので、実はすごく顧客満足度を上げる取り組みをしていたり、事業開発の発見となるような情報を持っていたりします。

ただ、日頃はその人がみんなの前に出て「こんな仕事のやり方をしている」「こんなことを感じている」と話す機会はあまりありません。そこで、気軽な場である「ルーフトップ・デー」に呼んで、ざっくばらんに話してもらいます。

編集部

縁の下の力持ちにスポットライトを当てる取り組みなんですね。

岩﨑さん

はい。実はこの取り組みは人事主導ではなく、もともと社員が自発的にやり始めたものですので、社内で褒め称え合う文化はあると思います。ちなみに、「ルーフトップ」には屋上という意味合いもあるのですが、もう1つ、アフリカーンス語の言葉で「loof(ルーフ)=褒め称える」という意味があると聞いて付けられた名前です。

社内ラジオでは働く仲間にカジュアルインタビュー

談笑するエンペイ社員たち
▲月1回の社内ラジオでは一緒に働く社員1人をゲストに迎えて話を聞く

編集部

一緒に働く仲間をより深く知るための取り組みなどはありますか?

岩﨑さん

「氷山ラジオ」と名付けた社内ラジオを2週間に1回、OAしています。「氷山の一角」という言葉の通り、「仕事を通して見える同僚の一面はごく一部にすぎない」という考えから、持ち回りで1人ずつ社員に出てもらい、その人柄を掘り下げるラジオです。

フルリモートで働いていると、他の社員のアウトプットは見えますが、その裏にある社員のこだわりやモチベーションについてはなかなか知る機会がありませんよね。そこで、インタビュアーを立てて「どんな思いでやっているんですか」とか「なぜこの会社に入ったんですか」とか、カジュアルに聞いてみる場です。

ラジオを流すのはお昼どきの30分ですので、社員には昼ご飯を食べたり、手を動かしたりしながら、「ながら聞き」してもらう感じです。社内コミュニケーションの施策は、ストレスなく、ノリよく、カジュアルであることをとても大事にしているので、気軽なラジオという形にしました。

会社へのフィードバックを社員に聞くワークショップも開催

エンペイ社員のグループワークの様子
▲エンペイでは会社への意見も言いやすい雰囲気がある

編集部

オンラインでも気軽に交流できる場を設けることで、お互いを知り、先ほどの褒め合う行動が生まれるんですね。社内は、風通しがいい雰囲気でしょうか?

岩﨑さん

そうですね、その雰囲気はあると思います。半年に1回キックオフミーティングを開催しているとお話しましたが、前回、去年の10月に行ったときには「もっと会社をよくするために、皆が働きやすくなるために、できることはないか?」というお題で、ワークショップをしました。

オンラインで仕事をしていると、どうしても「言うほどではないか」と控えてしまうこともあると思います。そこで、「今日ここで挙がった声は会社の施策や方針に反映できるかどうかはわからないけれど、会社のイケてるところ、イケてないところを、一旦何でも教えてください」と呼びかけたんです。

その結果、良いところももちろん出ましたが、良くないところでは、ちょっとドキッとするようなフィードバックや、なかなか口には出しにくいけれど自分も同じ状況ならそう感じるなという声が、色々と挙がりました。個人ワークとグループワークを交えましたので、会社についても、自分についても見直す機会となりました。

編集部

ワークショップでそういった意見が出るということは、正直に意見を言ってもいい雰囲気があるということですよね。心理的安全性が高いのですね。

岩﨑さん

そうですね。100%本音が出ているわけではないとは思いますが、ある程度、正直に教えてもらえているのではないかと思っています。

評価は「ペイ・フォー・ミッション」の考え方を採用

エンペイ社員たちの働く様子

編集部

社員の方の評価については、どのようにされていますでしょうか。

岩﨑さん

我々は評価制度には結構こだわっており、昨年10月に新たに整備した評価制度では「ペイ・フォー・ミッション」という考え方を採用しています。簡単に言うと、結果で評価をしない、ミッションで報酬を決める、という考えです。近い言葉ですが、成果に対して報酬を払う「ペイ・フォー・アウトプット」や「ペイ・フォー・アウトカム」とは異なります。

つまり、「できるかどうかは分からないけれど、あなたにはこの仕事をお願いするから、会社は先にお給料をこのくらい払っちゃいますね」という考え方です。そのため、できたかどうかという結果での評価は行いません。面談では仕事のプロセスにおいて必要な能力や事業上必要なミッションのアセスメントを行ったうえで、次に任せる業務について話し合います。

そこで、今のミッションが難しいと判断すれば、「次は少し難易度を下げるから、お給料はこのくらいになります」となります。逆に、もっと難易度の高いミッションに挑戦できるというのであれば、給料を上げて新しいミッションを任せていきます。

編集部

どういったタイミングで面談は行われるのでしょうか?

岩﨑さん

報酬については半年に1回ですが、これを突然やると会社と社員の間で認識のずれが起きてしまいますので、日々の1on1(上司と1対1の面談)で、ミッションに対してのアセスメントをしてもらいます。また、人事部では3ヵ月に1回、全従業員のミッションの進捗やミッション達成に必要な能力についてディスカッションしています。

編集部

一般的に評価面談では「結果」を見る会社が多いと思いますが、エンペイさんでは次のミッションを任せられるかどうか、本人がやりたいかどうかという観点で見ていらっしゃるんですね。どのような背景で、この「ペイ・フォー・ミッション」の考え方を導入されたのでしょうか?

岩﨑さん

我々のようなスタートアップ企業では、例えば前年比や前月比で200%という目標を立てて、結果が180%の達成率だった場合、数字上は未達ではありますが、180%でも十分すごいということもあります。そもそも、200%という目標も概算で立てていたりしますので。そのため、目標をベースに結果を見るのはやめることにしました。

編集部

事業の成長スピードを鑑み、結果ではなく、ミッションで評価する独自の評価制度を持っているんですね。難易度の高いミッションにチャレンジしたい人は、どんどん手を挙げられる環境が整っていることが分かりました。

採用選考では個別のフィードバックを大切にしている

採用について語るエンペイの岩﨑さん
▲「なぜエンペイで働くのか?は、応募者に一番聞きたいところ」と語る岩﨑さん

編集部

最後に、採用において大切にしていることを教えてください。

岩﨑さん

「10人の候補者から1名採用することよりも、1人の候補者から1名採用すること」を大切にしています。そのため、当たり前のことを徹底しています。例えば、できる限り候補者には選考のフィードバックを丁寧にお返しすること、24時間以内に返信すること、オファーシートには想定ミッションや会社が提供できるキャリアを記載することなどです。

編集部

個別のフィードバックを大切にしていらっしゃるんですね。

岩﨑さん

はい。特にオファーシートはかなり力を入れています。個別の候補者ごとに、評価点、報酬とその制度の背景想定しているミッション、入社後の活躍イメージ、その方のキャリアに対して提供できるギフトの5点をHR・事業部役員で事前にすり合わせ、言葉に落とし込んでいます。候補者の方には口頭で説明した後、資料でも共有し、フォローアップを行っています。

これにより、選考中の離脱は過去数名ほどで、内定受諾率も80〜90%の間を推移しています。

編集部

エンペイさんの「一緒に働きたい」という想いが言語化されたオファーシートを通して、しっかり伝わっているんですね。応募する人に求めることはありますか?

岩﨑さん

「Why Enpay(なぜエンペイで働くのか?)」という部分を一緒に言葉にできるかどうかは、非常に大切にしています。

また、そもそもですが、一番大事なことは「社員が不幸な形で離職しない会社を作ること」だと思っています。採用の面接や面談で、社員が仕事を楽しんでいるか、仲間を信頼しているかといった空気感は候補者に確実に伝わります。そのため、採用部ができたときにまず行ったのは、従業員の満足度サーベイと全員への面談でした。

編集部

社員1人ひとりを大切にしていらっしゃることが伺えました。岩﨑さん、本日はありがとうございました!

エンペイの皆さんが大切にしているバリューは、「Goal Oriented(目的から逆算して考える)」「Self Growth(プロとして進化し続ける)」「Customer Centered(顧客のために、社会のために)」「Relationship Design(丁寧に信頼を築く)」の4つです。

本日のお話の中で、これらのバリューを反映した取り組みや社員の行動がたくさん伺えました。

エンペイが定める4つのバリュー
▲エンペイが定める4つのバリュー(会社説明資料より)

エンペイさんのより具体的な事業概要や働く環境、これから実現したいことについては、採用ページの会社説明資料に詳しく書かれています。募集中の職種情報もありますので、気になる方はぜひご覧ください。

■取材協力
株式会社エンペイ:https://www.enpay.co.jp/
採用ページ:https://www.enpay.co.jp/recruit/top