株式会社Liberaware:小型ドローンで社会インフラの安全を守るエンジニアたち

躍進する企業の成長を、エンジニアの観点から探るこの企画。今回は世界最小級の超狭小空間の点検に特化したドローンの開発と、収集した画像データの解析を担う株式会社Liberawareを取材しました。同社は、人が立ち入ることが困難な狭い空間での点検作業を可能にし、安全性と効率性を大幅に向上させています。

株式会社Liberaware:屋内ドローン市場を牽引する技術革新企業

株式会社Liberaware(リベラウェア)は、狭く、暗く、危険な屋内空間の点検・計測に特化した世界最小級のドローン開発を手掛ける企業です。ドローンで収集した画像データを解析し、顧客に提供することで、インフラ点検や維持管理の効率化に貢献しています。

同社の屋内空間専用産業用小型ドローン「IBIS(アイビス)2」は、幅20cm、重量243gという世界最小級のサイズを特徴とし、一般的なドローンでは困難な屋内・狭小空間での飛行を可能にしています。

このような革新的な技術により、従来の点検手法では発見が難しかった潜在的なリスクを可視化し、屋内設備点検の方法を根本から変革することを目指しています。

会社名 株式会社Liberaware
住所 千葉県千葉市中央区中央3-3-1 フジモト第⼀⽣命ビル6階
事業内容 ・産業分野に特化した非GPS型小型ドローンの開発
・IoT技術・人工知能を活用したシステム開発
・小型ドローン「IBIS」を活用した点検・測量ソリューションサービス
・小型ドローン「IBIS」の販売・レンタルサービス
・映像加工・編集サービス(距離計測、異常検知等)
設立 2016年8⽉22⽇
公式ページ https://liberaware.co.jp/

"見えないリスクを可視化する"をビジョンに掲げる同社は、小型ドローン「IBIS」を活用し「2024年能登半島地震」の支援活動を行いました。倒壊のリスクがあり人が立ち入れない危険な建物内部に「IBIS」を飛行させ、現地の状況確認に成功しています。

商業施設、交通設備、プラントなどの社会インフラに潜む様々なリスクを、革新的な技術と自由な発想で明らかにし、誰もが安全に暮らせる社会の実現を目指す株式会社Liberaware。その中核を担うのが同社のエンジニアです。

今回は、株式会社Liberawareの成長を支えるエンジニアの活躍について、技術開発部テックリードの野平幸佑さんと、技術開発部マネージャーの伊藤総一郎さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社Liberaware技術開発部 テックリード野平幸佑さん

株式会社Liberaware
技術開発部テックリード

野平 幸佑さん

株式会社Liberaware技術開発部 マネージャー伊藤総一郎さん

株式会社Liberaware
技術開発部 マネージャー

伊藤 総一郎さん

Liberawareの戦略:屋内特化型小型ドローンで新市場を開拓

株式会社Liberawareが開発した「IBIS2」
▲株式会社Liberawareが開発した小型ドローン「IBIS2」。イメージセンサやライトにより、ダクト内部でも鮮明な映像を撮影できる

編集部

はじめに、Liberawareさんが小型ドローン「IBIS」の開発に至った背景についてお聞かせください。

野平さん

一般的なドローンは上空から地上を撮影するなど、屋外での使用を前提に設計されているものがほとんどです。それに対し、当社の創業メンバーは、代表取締役の閔をはじめとして、GPSの使用ができない屋内の限られたスペースでドローンを活用する研究を行っていました。

研究を進めるうちに、人が入ることができない狭い場所や、汚れが酷かったり危険だったりする場所へのドローン需要が各所にあることがわかりました。このニッチな市場にビジネスチャンスがあると考え、小型ドローンに特化した「IBIS」の開発に着手しました。これが「IBIS」誕生のきっかけです。

Liberawareの競争力:ソフト・ハード一貫開発による技術的優位性

編集部

小型ドローン「IBIS」の強みはどこにあると思われますか?

野平さん

当社の強みはソフトからハードまで全て、内製化できることです。大型のドローンは既製品が多く流通しているため、部品を購入して組み合わせれば比較的簡単に作ることができます。しかし、小型ドローンの場合は、要件とのトレードオフを考慮しながら必要な部品を調整し、部品レベルでものづくりをする必要があります。そのため、技術的に非常に高度な知識と技術が求められます。

また、世界最大手のドローンメーカーDJI社をはじめ、多くの海外大手企業が参入しているドローン業界において、日本の小さなスタートアップである我々が生き残るためには、単にニーズに応えるだけでは不十分でした。模倣されるリスクも高いからです。

そこで当社は、システムインテグレーション企業としての強みを活かし、参入障壁が高い小型ドローンに特化したビジネスモデルを立案しました。

編集部

ものづくりは日本のお家芸とも言われていますが、海外メーカーが多いドローン業界において、Liberawareさんが日本の企業であり、かつ、メイド・イン・ジャパンであることも差別化につながると思われますがいかがでしょうか。

野平さん

おっしゃる通りです。日本の小型かつ軽量なものづくりの技術は、現在の電子機器をはじめとして高い信用を得ています。日本の企業が全工程を内製化で開発していることも、ドローン市場で生き残るうえで欠かせない要素だと分析しています。

編集部

ドローン業界で参入障壁が高い「小型化」に対し、Liberawareさんはシステムインテグレーションの技術を活かすことで、特定のニーズに対応し、ビジネスチャンスにつなげているのですね。

小型ドローン「IBIS」:老朽化インフラの点検革命を実現

編集部

日本製鉄株式会社様への導入や、鉄道・インフラ業界のデジタルトランスフォーメーションの実現を目的とした東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)様との合弁会社「CalTa株式会社」の設立など、大手企業との実績が続くLiberawareさんですが、小型ドローン「IBIS」の具体的な活用方法について詳しく教えていただけますでしょうか。

野平さん

産業用途での屋内狭小部点検に特化して開発した小型ドローン「IBIS」は、インフラ設備や工場、プラントなどで多くの実績を有しています。

鉄道や道路、下水道などの生活インフラの多くは、1955年頃から1973年頃までの高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が進んでいます。新規建設には膨大な費用がかかるため、保守・点検を行い、修繕しながら使い続けることが急務となっています。しかし、担い手不足から十分に進んでいないのが現状です。

そこで、小型ドローン「IBIS」は作業の労力を補うことができ、さらに人が立ち入りにくい狭く危険な場所の調査を可能にします。これらの特徴が評価され、多くの導入実績につながっていると考えています。

Liberawareのビジョン:小型ドローンが切り拓く安全な社会と新たな雇用

株式会社Liberawareエンジニアの伊藤総一郎さんと野平幸佑さんの談笑風景

編集部

野平さんはLiberawareの創業時メンバーであると伺っております。御社にジョインしたきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか。

野平さん

作業者の安全を確保するため、新しい仕事を創出できるものづくりがしたいと思ったことが、Liberawareにジョインしたきっかけです。

前職で物流関係の自動化業務に携わっていた私は、物流の現場で発生する事故の多さから、安全性に関して疑問を持っていました。それを解決するのが自動化なのですが、同時に自動化が進むとエンジニアの仕事も減少するのではという矛盾した不安も抱えていました。そんな時に閔社長と出会い、小型ドローンの可能性に惹かれ、Liberawareへの入社を決意しました。小型ドローンを活用することで、作業者の安全を確保しつつ、新たな技術開発の場を創出できると考えたのです。

ベンチャー精神が生む革新:一から作り上げる喜びとチャレンジ

編集部

エンジニアである伊藤さんが、Liberawareさんに入社した経緯について教えていただけますか?

伊藤さん

当社の創業メンバーの1人が、大学の研究室の同期だったこともあり、仕事を手伝ううちにプロダクトの面白さを感じ、転職を決意しました。

前職では発電所の品質保証といった、大規模で確立された仕組みを運用する業務に従事していました。一方、Liberawareでは自分たちで仕組みを作り、運用まで一貫して行うベンチャーならではの挑戦に魅力を感じ、参加したいと強く思いました

さらに、"見えないリスクを可視化する"というビジョンに込められた、社会の安全に貢献するという理念に共感したことも、入社を決めた大きな理由の一つです。

「IBIS」の未来戦略:認知度向上と技術改良による市場拡大

株式会社Liberawareが開発した「IBIS2」
▲株式会社Liberawareが開発した「IBIS2」はインフラ設備やプラントなどの屋内狭小空間を安全に点検できる

編集部

Liberawareさんの今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。

野平さん

現在、小型ドローンを活用した設備の保守・点検の認知度はまだ十分ではありません。そのため、まずは小型ドローン「IBIS」の認知拡大に注力します。その上で、新しいプラント建設などの際に「IBIS」を提案し、採用していただけるよう努めていく方針です。

また、課題として挙げられるのがドローンの操作性や安全性、導入コストです。これらの課題を技術チームが解決することで、認知拡大と普及につながると考えています。そのため、対策と改良に尽力していく予定です。

Liberawareの成長戦略:企業間連携強化による事業拡大

編集部

創業時からLiberawareと共に歩んできた野平さんから見て、御社の成長を実感することはありますか?

野平さん

ソフトウェアやウェブ系のベンチャーの場合、ある日突然急成長することもありますが、当社が取り組んでいる小型ドローンによるインフラ点検・維持管理ソリューションは、事業の立ち上げに時間がかかる分、急激な成長は見込みにくいものの、一度軌道に乗ると安定的に発展していく特性があります。

一方で、地道な営業活動によって実績を積み重ねていくなかで、エンドユーザー様だけでなく、関連企業様とのつながりも生まれています。このネットワークの拡大により、さらなる成長が期待できると感じています。

編集部

生活インフラの老朽化対策は急務であることからも、今後、Liberawareさんの技術がさまざまな分野で活用されることが期待されますね。

Liberawareの技術基盤:3ユニット制によるエンジニア組織の強み

株式会社Liberaware技術開発部 マネージャー伊藤総一郎さん

編集部

続いて、Liberawareさんで活躍するエンジニアの働き方について伺います。エンジニアチーム全体をまとめている伊藤さんの仕事内容についてお聞かせください。

伊藤さん

技術開発部の研究開発ユニットでエンジニアリングマネージャーを務めております。主力プロダクトである小型ドローン「IBIS」をはじめとした自動ドローンの基盤となる要素技術の研究開発をミッションとし、要件定義やシステム設計にも携わっています。

開発部全体では約20名のエンジニアが在籍しており、製品開発ユニット、応用開発ユニット、研究開発ユニットに分かれて業務を行っています。

編集部

製品開発ユニット、応用開発ユニットでは、どのような業務を担っているのでしょうか。

野平さん

製品開発ユニットでは、既にリリースしているIBISをはじめ、その後継機の開発を主に担当しています。応用開発ユニットは、それらのドローンを自動で動かす先進的な技術を組み込んだ開発を行っています。

編集部

ソフトウェアからハードウェアまで、全て自社で開発されているLiberawareさんですが、ユニットで完全に分業しているのでしょうか。

野平さん

完全な縦割りではなく、プロジェクトによってユニットをまたがることが多いです。組織的には主な役割で分かれていますが、実際の業務では柔軟に横断的な協力体制を取っています。

Liberawareの人材戦略:ゼネラリストとスペシャリストの相乗効果

編集部

Liberawareさんのエンジニアの特徴や、チーム構成、採用ポリシーについてお聞かせいただけますでしょうか。

野平さん

幅広くシステム的な視点から開発できるよう、さまざまな分野の技術者を揃えています。ハードウェアからソフトウェアまで幅広く把握している者もいれば、特定の分野のスペシャリストもいます。

どちらのタイプでも活躍できる場がありますが、広い範囲を見渡せる者が上流工程を担当することが多いです。ドローンは技術的な管理や専門性が問われる部分も多いため、幅広い知識を持つ者とスペシャリストが連携していることが、当社のエンジニアの特徴だと言えます。

また、技術者同士の交流が盛んで、お互いに自分とは異なる分野の話を聞ける機会が多いことが、仕事の面白さにもつながっていると感じています。

編集部

それぞれの得意分野を活かすことで、革新的なプロダクトが生まれるのですね。

Liberawareのエンジニア文化:多様性が生み出す革新的な職場環境

編集部

技術者同士の交流が盛んとのことですが、エンジニアチームのカルチャーや風土、雰囲気について、どのように感じますか?

伊藤さん

良い意味でスタートアップカルチャーが残っているように感じます。バックグラウンドがそれぞれ異なるメンバーが、いろいろな文化や考え方を持ち寄ることで、Liberawareの新しい社風や風土を作っていきたいと考えています。

私自身、前職が歴史ある企業だったこともあり、みんなが同じ信念を持ちつつ、刺激し合って新しい考え方を生み出していくことは新鮮であり、この考え方は技術者としてもとても重要だと感じています。

エンジニアはそれぞれが専門家なので、お互いをサポートし合うことはもちろん、自分のポリシーを積極的に発信することも多く、それが会議の場でも良い影響を与えています。

エンジニアの醍醐味:顧客ニーズを直接反映できる開発プロセス

株式会社Liberaware技術開発部 テックリード野平幸佑さん

編集部

Liberawareさんのエンジニアの方々は、どのような時にやりがいを感じると思われますか?

野平さん

自分たちが作ったものがお客様の手にわたり、どのように使っていただいているのかをダイレクトに知ることができるのが一番のやりがいです。その情報を次の製品開発に活かすことはもちろん、お客様の要望にその場で対応することができます。

日本でドローンを自社製品として開発している企業が数えるほどしかないため、お客様の近くでものづくりができることは貴重な機会です。これにより、さまざまなニーズをスピーディーかつ的確に把握し、製品に反映できる相互メリットがあります。

時には反省することもありますが、お客様からのフィードバックの全てが自己成長と製品のさらなる品質向上につながっていると感じます。

Liberawareが求めるエンジニア像:創造力と専門性を兼ね備えた人材

編集部

小型ドローン「IBIS」の可能性や、御社の技術力、ビジョンに共感した読者は多いと思われます。最後に、転職を検討しているエンジニア、またはエンジニア志望の方に向け、採用に関するメッセージをお願いします。

野平さん

具体的な求めるスキルはありますが、全体的な観点から申し上げると、お客様に近い現場でのものづくりを行うため、新しいアイデアや提案ができるエンジニアを歓迎します。

「そのアイデア、いいね!」という会話が頻繁に生まれることでチームがより活性化すると考えています。向上心を持って積極的に意見を発言できる方に、ぜひ加わっていただければ幸いです。

伊藤さん

好奇心旺盛で、幅広い知見がある方、あるいは良い意味で特徴的な専門性を持つ技術者を求めています。Liberawareにはそのようなメンバーが多く、豊かな発想力から新しいアイデアが生まれることが多々あります。自分が持つスキルを当社で存分に活かし、共に成長していける方を歓迎します。

編集部

ドローンを自社開発することに誇りを持ち、さらなる可能性を追求し続けるLiberawareさんには、エンジニアが自分らしく、意義を持って働ける環境があると感じました。

また、小型ドローンが社会インフラを支える上で欠かせないツールであり、今後ますます需要拡大が期待できることも取材を通して理解できました。

本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社Liberaware:https://liberaware.co.jp/
採用ページ:https://liberaware.co.jp/recruit/