ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、特定非営利活動法人メンタルケア協議会にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同協議会で働く魅力をご紹介します。
メンタルケア協議会は、2002年に精神科医によって設立されたNPO法人です。東京都をはじめとする関東甲信越の都県や首都圏の市区町村などからの委託で、「こころの相談」「自殺防止の相談」などの電話やSNSの相談窓口、自殺未遂者支援事業やひきこもり支援事業などを運営しています。
そんな同協議会の特徴は、臨床心理士や精神保健福祉士などの資格を持つ専門家が数多く在籍していること。精神科医をはじめとするスーパーバイザーが多数協力していて、相談内容に合わせてさまざまな視点で意見をもらえるため、自身の視野が広がるのだそうです。また、常にスキルアップし続けられる研修制度や気持ちを分かち合える職場環境、ライフステージが変わっても安心して働ける制度が整っているのも魅力です。
今回は、特定非営利活動法人メンタルケア協議会の職場環境や働き方について、副理事長の西村さんと特任相談員の西森さんにお話を聞かせていただきました。
心の悩みに寄り添う「メンタルケア協議会」の仕事のやりがい
編集部
西森さんは臨床心理士の資格を持っておられるそうですね。この資格を持つ人は施設などでのカウンセラーになることが多そうですが、メンタルケア協議会で特任相談員を続けておられるのはなぜなのでしょう。
西森さん
枠にとらわれず、相手に応じて柔軟な支援ができるからです。困難なケースでは苦労もありますが、相手の個々の事情に合わせて支援方法を自由な発想でカスタマイズできるところに非常にやりがいを感じています。
通常、臨床心理士のカウンセリングでは、「この範囲で関わる」という枠がきっちり決まっているのですが、特任相談員の自殺対策の部門は、相手との関係性が壊れるような内容ではなく、担当した相談員自身も無理せず続けられる支援方法であれば本当に何でもやるんです。
相談内容はさまざまですが、どんなことでも相談者にとっては深刻な悩みです。そのひとつひとつに親身に寄り添い、今必要な支援を考えるのが私たちの仕事です。
また、当法人には、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士など、医療や福祉分野の専門資格を持つ約200名の職員が在籍しています。1件の相談を解決に導いていく中で、多方面の立場から意見がもらえるので心強いですし、知見が広がり、スキルが高まっていくのを感じることができるんです。
編集部
その他に、御法人だからこその働きがいを感じる部分はありますか?
西村さん
「見立て力」を身につける機会が豊富にあることは貴重だと思っています。見立て力というのは、相談者がどんな人で、何に困っていて、その背景に何がありそうかを推測し、心理的・社会的・医学的な観点から理解するためのスキルのことで、支援を考えるための基本になります。
相談の場面では本人が直接すべてを話してくれるとは限らないので、本人が語ってくれた情報や雰囲気などからある程度こちらで仮説を立てて推測していくことも必要ですが、見立て力はその助けとなるものなんです。
編集部
西森さんが担当されている特任相談員の業務は、どんな流れで進むのでしょうか。
西森さん
「特任相談員」は、自殺対策やひきこもりの相談など、じっくり時間をかけて取り組む必要がある案件を電話やSNSを通じて担当します。まず関係機関の方からご相談をいただき、対象の方に担当者2名体制でコンタクトを取ります。次に、今後どんなことが必要かを都度協議しながら、面談や訪問、医療機関などに付き添ったりもします。
先ほどもお話ししたように「その人に必要なことは基本的に何でもやる」というのが私たちの支援内容なので、状況に応じて電話やLINE、ショートメールでの相談にも随時乗ります。担当する案件数は多い職員で1人10件くらい。担当期間は長ければ10年に及ぶケースもあります。
編集部
ほかにも「非常勤相談員」「事務職」の職種があると聞きました。それぞれの仕事の特徴を教えてください。
西村さん
「非常勤相談員」は、不定期で勤務する相談員です。昼間は別の施設などで働いて週1回からのペースで夜勤に来たり、子育ての合間に昼間の何時間か勤務したりするなど、人によって勤務形態はさまざまです。
「事務職」は、専門職を支える縁の下の力持ちです。相談員のシフトを出したり、機材の整備、給与計算など、相談以外の業務を一手に担っています。
どの職種もメンタルケア協議会にとって大切です。3つの職種が密接に機能してはじめて、業務が成り立っているんです。
安心して働ける。年間100日の研修でスキルアップ
編集部
研修制度も整っているのでしょうか?
西村さん
個別のOJTで、ベテラン相談員が実際の相談現場に立ち会い、細やかな指導を行っています。新人職員の場合は10回の相談のうち3回程度は特別なOJTを実施して、話し方の癖や課題を洗い出しながら、一つ一つのケースを丁寧に振り返るんです。
編集部
おそらく一人立ちしてからもスキルを磨く必要がある職種なのかなと思うのですが、そういった機会はありますか?
西村さん
はい。日曜日や祝日、木曜日の夜などに研修会を定期的に実施しており、全体研修、各相談室に特化した講義やロールプレイ研修のほか、相談室ごとに「事例検討会」があります。実施している研修の回数は合計100回に上り、すべての職員がその中から必要な種類の研修を必要な回数以上受けています。
事例検討会は、相談室ごとにやり方は異なるのですが、基本的には実際の相談事例をみんなで共有して、反省点や今後の方針を考えるというものです。
相談室ごとの事例検討会は、相談室ごとにやり方は異なるのですが、基本的には月に1回実際の相談事例をみんなで共有して、見立てや支援内容について精神科医をはじめとするスーパーバイザーの意見をもらい、振り返りや今後の方針を考えます。
継続相談の事例の場合は、その時々に困っているケースを担当者が報告し、みんなに意見をもらいます。電話相談やSNS相談では、過去の事例も参照しながら対応の改善点を検討します。プライバシーの問題があるので、基本的には協議会内でクローズドに行いますが、他の関係機関が関わっている場合は連携して開催することもあります。現場できちんと相談者さんに寄り添えるように、いずれもかなりリアルな研修内容になっているのが特徴です。
編集部
スキルアップの機会が多く、若手でも安心して働ける環境であることが伝わってきます。
西村さん
そうですね。実際に、西森も20代で入職し10年以上勤務しています。相談業務の経験が浅くても、先輩たちがじっくりと丁寧に指導してくれるので、実践を通じて成長できる環境です。
女性が7割以上!ライフステージが変わっても活躍できる働きやすさ
編集部
業務内容も勤務体制も一般企業とは少し異なると思うのですが、ライフステージが変わっても仕事を続けられるような工夫はありますか?
西森さん
はい。SNS相談など在宅で可能な業務への配置転換や勤務時間の調整など、結婚や出産後も継続して働けるようなバックアップ体制を整えています。
西村さん
実際に、全体の7割以上が女性職員で20〜30代の人もいますが、ほとんどが産休直前まで通常勤務を希望しますし、中には夜勤を続ける人もいます。出産後も3ヶ月程度で復職を希望する人が多いですね。
もちろん、体調や育児環境に配慮し、数年育休を取られてから戻って来られる方もいます。産前産後の体を労わるべき時期に重い相談を受ける仕事はどうなのと思われるかもしれないのですが、相談員自身からは妊娠中だから、産後だからという抵抗を感じられる方は意外と少ないようです。周りのほうが気を遣ってしまうくらいです。
編集部
先ほど、研修が土日祝日にあるとのことでしたが、子育て中の方はどうされているのでしょう。
西村さん
研修会が日曜日にある場合は、子ども同伴で出勤することもできます。協議会内には看護師や保健師、保育士の資格を持つ人がたくさんいますので、研修会中はその職員が出勤して、職場の託児所のような形で面倒を見てくれるんです。
編集部
かなり融通がきくんですね。シフトの組み方について工夫されていることはありますか?
西村さん
非常勤職員は個々の事情に合わせて希望のシフトを出してもらい、柔軟に調整しています。常勤職員は個人の希望や状況に応じてなるべく負担が偏らないようにシフトを組んでいます。特に電話相談は緊張感が高い業務なので、ほかの業務とうまく組み合わせるように工夫します。たとえば、電話相談を数時間した後は取りまとめの事務作業やSNS相談を担当するとかですね。
夜勤明けの状態も人により違います。「翌日も働いて、休みは別にまとめて取りたい」という人もいれば「次の日は休みにしてほしい」という人もいるので、個別に要望を聞いて、なるべく理想に近い形で働いてもらえるように対応しています。
編集部
ライフステージによって勤務形態を変えるといったこともできますか?
西村さん
はい。子どもが小さいうちは少し勤務時間を短くして、中学校に入ったらまた長くして…といった対応も可能で、さまざまなライフステージを経て20年近く働いている職員もいますね。定年後も健康状態に合わせて継続して働ける環境も整えています。長く安定して働ける職場であることは間違いないと思います。
ひとりで抱え込まない。気持ちを分かち合える職場環境
▲メンタルケア協議会の羽藤理事長。精神科の医師でもある
編集部
人命に関わるお仕事へのプレッシャーは相当なものではないかと思います。シフトの調整以外に対処法などはあるのでしょうか?
西村さん
そうですね。相談室内の同じ立場の相談員どうしで気持ちを分かち合い、ケアできる雰囲気づくりを心がけています。「家ではあまり考えないようにして自分の生活を大切に」なんてアドバイスは、深刻なケースに関わった後には気休めでしかないですよね。気持ちの切り替えは大切ですが、それが難しいのも当然のことです。
特に重篤なケースの場合は、医師を含めた振り返りや情報共有の機会もあります。さまざまな段階で相談員の適切なケアができるようにしているんです。
編集部
常に相談や協議をする場が整っているということでしょうか?
西森さん
はい。自殺対策は重要な判断を求められる場面も多いのですが、常にベテラン相談員に相談できる体制が整っているのも良いところです。ときには夜勤中に電話することもあるのですが、いつ連絡しても「どうしたの」と親身に話を聞いてもらえるので安心できます。
自分の対応が間違っていなかったか自問自答を繰り返すこともありますが、ひとりで抱え込まずに常に協議して気持ちの整理をつけ、次の案件に向き合うことができています。
西村さん
この仕事に絶対の正解はありません。「万が一」を防ぐのが私たちの使命ではありますが、ときには思い通りの結果にならないこともあります。だからこそ、一人で責任を背負うのではなく、常に複数の目で考え、共有することを大切にしているんです。
周囲と一緒に成長する意欲のある方はメンタルケア協議会へ
編集部
それでは最後に、メンタルケア協議会を代表して西村さんから読者の方々へメッセージをお願いします。
西村さん
臨床心理士や看護師などの専門職の人たちは、病院や施設など限られた場所で働くパターンが一般的です。ですが、人の心を支える仕事のニーズが高まっている今だからこそ、私たちはそういった専門職の人たちがもっと地域に出て、できることを探してほしいという想いがあります。その選択肢の一つが当協議会であれば、これほどうれしいことはありません。
チームワークが大事なので、周囲と一緒に考えながら成長しようという意欲のある方と働きたいと考えています。常勤の方はもちろん、他の職場で働きながら非常勤で力を貸していただける方も歓迎です。実際に、他の職場と掛け持ちで働く中で視野が広がり、スキルアップにつながったという声もあります。ご自身の経験も活かして、それぞれの立場で柔軟な関わり方ができる環境です。メンタルケア協議会へのご応募、お待ちしています。
編集部
人の心を支える仕事にやりがいを持って取り組んでおられるようすが印象的でした。一方で、相談員の方のバックアップ体制や、融通がきく勤務体系などが整っており、働きやすい職場であることも伝わってきました。本日はありがとうございました!
編集後記
この記事のまとめ
事業の特徴 |
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専門性と職場環境 |
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研修・育成制度 |
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働き方の特徴 |
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女性活躍の状況 |
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メンタルケア体制 |
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求める人物像 |
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特定非営利活動法人メンタルケア協議会の基本情報
名称 | 特定非営利活動法人メンタルケア協議会 |
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住所 | 東京都渋谷区代々木1-57-4 ドルミ第2代々木 2F |
事業内容 | ・自殺対策相談の運営 ・ひきこもり支援相談の運営 ・精神科救急相談の運営 ・こころの相談及び自殺防止SNS相談の運営 ・女性専用相談窓口の運営 |
設立 | 2002年1月 |
働き方 | 希望に応じて時短勤務や在宅勤務あり |
公式ページ | http://www.npo-jam.org/ |
採用ページ | https://www.npo-jam.jp/saiyou/ |
募集職種 | ・特任相談員 ・非常勤相談員 ・事務局相談員 |