ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、洗足(せんぞく)学園小学校にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同校で働く魅力をご紹介します。
1949年に創立した洗足学園は、伝統に甘んじることなく、改善を続けているのが特徴です。小学校でも公立学校で導入され始めている専科制を実現しており、経験の少ない1〜2年目は担任を持たずにじっくりと授業力を磨けます。40代以上のベテラン教員も多く、先輩の授業や児童・保護者対応を見ながら指導力を身につけられる環境です。
本記事では、同校の教頭を務める赤尾先生に、若手教員の活躍を後押しするカルチャーや働きやすい環境づくり、求める人材などに関する話を伺いました。
洗足学園小学校の若手活躍:授業に集中し、着実に指導力を磨ける
編集部
まずは、洗足学園小学校に勤める教員の人数や年齢構成を教えていただけますか?
赤尾先生
男性教員11名・女性教員13名、合計24名の教員(育休中の教員を除く)が在籍しています。年代にそれほど大きな偏りはなく、入職から10年に満たない30歳前後の若手教員は約10名です(取材を実施した2024年11月時点)。
40代以上のベテランの教員も10名以上いるので、いきなり責任のある立場を任される心配もありません。先輩の姿を見ながら、少しずつ指導力を磨いていける環境です。
編集部
若手の先生方には、具体的にどのようなサポートをしていますか?
赤尾先生
専門教科の授業から担任、校内の中心者へと、段階的に成長できるようにしています。公立の小学校だと、大学を卒業したばかりの教員がクラス担任を持つのが一般的です。3月に大学を卒業したばかりの人が、4月からは「一人前の先生」として子どもたちや保護者の方々に対応しなければならないという話を聞いています。
十分な研修もないまま「プロ」として現場に立つのは負担が大きいため、本校では1〜2年目の教員は基本的に担任を持たない形にしています。中学校・高等学校のような専科制(教科担任制)を実施しているので、算数が専門の方であれば「3〜4年生の算数を教えることに集中する」といったように授業力の向上に力を注げる環境です。
編集部
専科制は、公立の小学校でも導入が始まっていますよね。専科制にすることで、若手の先生方にどのようなメリットがあるのでしょうか?
赤尾先生
負担を少なくすること、また教員のかなめと言える「授業力」を高めていける点がメリットだと思います。専科制は指導する内容が1教科に絞られる分、1時間の授業準備にかけられる時間も増えます。準備する教材から質問まで、目の前の子どもたちに合う授業をじっくりと考えられるんです。
本校は1学年が2クラスなので、同じ授業を2回できます。子どもたちの反応を見ながら、「ここは分かりにくかったな」「質問の仕方を変えてみよう」と同じ教科の授業の改善を短時間で行えます。
編集部
自分の専門分野に絞って授業ができると、やりがいも感じられそうですね。若手の先生方の反応はいかがですか?
赤尾先生
おっしゃる通り、向上心を持って授業にあたる若手教員が多いですね。教員の働き方改革が重視される中、本校でも業務のスリム化に取り組んでいます。
ただ、スリム化したところに「次はこんなことをしてみたいです」と、若手教員のほうから声が挙がることもあります。結果的に業務量が変わらないなんてこともありますが、自分のやりたいことを実践できる環境を楽しんでいると思っています。
生成AIを活用した授業も!「やってみたい教育」を実践しやすい
▲2023年に誕生した施設「Base_C」には、癒やしのロボット「らぼっと」を設置。先進的な提案を受け入れる校風がある
編集部
担任を持ってしばらくすると、若手でも責任のある仕事を任せてもらえるのでしょうか?
赤尾先生
もちろんです。20代後半から30代前半の若手教員は保護者と同世代なので、積極的に新しいプロジェクトを任せるようにしています。むしろ、若手教員のほうから「これをやってみてはどうですか?」と声が挙がるケースが多いです。
私立学校は転勤がないため、どうしても似たような指導内容を繰り返してしまいがちなんですね。1〜2年目は担任を持たない分、客観的な立場で校内行事を含めたカリキュラムを見つめられます。教科指導から学級担任と少しずつ経験を積む中で、校内の課題が見えてくるようです。
編集部
具体的に、どのような提案があったのでしょうか?
赤尾先生
最近だと、「生成AIを活用した授業をしたい」という声がありましたね。提案を受けたときには、「あなたたちが納得いくようにやってみて」と背中を押すようにしています。
今回の例だと、学校全体で生成AIを活用した授業を実践するには、他の教員たちの理解が必要です。複数の若手教員でチームを立ち上げ、他の教員たちが実践しやすいような「生成AIを活用した授業案」を考えていますね。
編集部
赤尾先生ご自身は、どんなことに挑戦した経験があるのでしょうか?
赤尾先生
私の場合、総合学習の中で行う「たてわり活動」の検討を任されました。そこで実行に移し、たてわり活動は現在の本校にも欠かせないものになっています。そのような大きな挑戦機会を経験して成長できたので、現在の若手教員にも同じようなチャレンジをしてもらいたいと思います。
個別面談で悩みをキャッチ。管理職・ベテラン教員が挑戦をフォロー
編集部
若手教員がチャレンジしていける学校だと強く感じたのですが、そんな先生方をどのようにサポートしていますか?
赤尾先生
新しいプロジェクトを進めていく中では課題にぶつかることもあるので、管理職の私たちやベテランの教員がサポートしています。目に見える部分はこちらが気付けるので良いのですが、なかなか「分からない」と言えない若手教員も多いんですね。
そのため、人間関係づくりを大切にしています。いきなり「分からないことがあったら相談してね」と言われても、自分から声を挙げるのは難しいでしょう。日頃から雑談を通じて、悩みを相談しやすい関係づくりを心がけています。サポートに入るか否かの見極めは本当に難しくて、私自身も悩んでいるところではありますが。
編集部
真面目で熱心な先生ほど、SOSを出せずに自分を追い込んでしまうケースは指摘されていますよね。あいさつや雑談以外に、管理職の先生方に仕事面の話を聞いてもらえる機会はありますか?
赤尾先生
年度に1回面談するような仕組みになっています。キャリアの相談はもちろん、ざっくばらんに話をする中で次から次へとエピソードが出てくるケースも多いんです(笑)。無意識に溜め込んでいるものを、面談の場で吐き出してもらっています。
編集部
キャリアに関する相談を受けた際には、どのような話をしていますか?
赤尾先生
「30歳までに1回は、高学年の担任を持つ」というように、具体的な目標を立ててほしいと話します。教員の仕事は企業のように数値で結果が現れるものではないので、なんとなく定年まで勤め上げることも可能です。
ただ、それでは教員としての成長はないので、学校生活に慣れてきた場合には特に「次の目標は何ですか?」と問うようにしています。よくあるのが「思いやりのあるクラスにします!」といった学級に関する目標なのですが、「それはあなた自身の目標ではありませんよね」と伝えているんです。
学級担任になるとつい「子どもの成長が自分の目標」と思ってしまいがちなので、長期的な視点で「教員としてのキャリア」を考えてもらうようにしています。
洗足学園小学校の女性活躍:育休中の情報共有などフォローを実施
編集部
ライフステージの変化を経て勤務を続けられるかどうかは、多くの方が気になる点だと思います。洗足学園小学校では、育休を取得される女性教職員の方に対するサポートはあるでしょうか。
赤尾先生
もちろんです。特に意識しているのは、育児休暇中の先生へのサポートですね。私も育休経験者なので分かるんですが、育休中に「指導力が下がらないか」「復帰してからついていけるか」と不安に思う方は多いです。特にICTを導入してからは変化のスピードも速いので、希望があれば職場の情報や、研修関連のイベント案内を伝えるようにしています。
編集部
育休中にも連絡を取り合えると、復帰の不安も少なく済みそうですね。復帰後には、どのようなサポートをしていますか?
赤尾先生
可能な限り、本人の希望に沿うようにしているところです。家庭の状況には個人差があるので、復帰後の働き方も本人の思いを尊重したいと思っています。
学校という職場柄、新年度がスタートする4月に復帰し、1年から数年は時短勤務で働いている方が多いです。人事なので希望が通るとは限りませんが、「子どもが小学生になるまでは担任を外れたい」と相談された場合には、担任以外の業務を任せることもあります。
男性教員・女性教員ともに、自分の人生を尊重できる組織
編集部
女性教員の先輩である赤尾先生は、女性の後輩から相談を受けることもあるでしょうか?
赤尾先生
はい。これは本校だからというより教職全体でよくあることかもしれませんが、人生の計画の中で妊娠・出産を考えている教員から「年度中に休暇に入って児童や保護者に迷惑をかけたくないから、来年度は担任を外してもらえませんか」と相談されるケースがありますね。
そんな声を聞いた際には、「迷惑をかけるなんて思う必要はないよ」と伝えています。一般企業であれば、いつ妊娠したとしても「おめでとう!」と祝福してもらえますよね。児童を愛する気持ちは大切ですが、教員であるからといって自分の人生を後回しにする必要はないと思うんです。
また、「子どもは授かりもの」と言われるように、希望したからといってすぐに妊娠できるとは限りませんよね。先のことを考えてキャリアの幅を狭めず、自分がやりたい学年の担任や新しいプロジェクトに挑戦してもらいたいと思っています。
編集部
その他に、女性教職員の働きやすい職場をつくるという点で意識していることはあるでしょうか。
赤尾先生
女性に限らず、全ての教員が活躍できる環境づくりに努めています。これは私個人の意見ですが、本校には、良い意味で女性を特別視する風潮が少ないように感じます。
最近は特に、男性教員が育児に参加するケースも増えてきています。また、親御さんの介護などに直面するベテラン教員も多いです。「女性だから」という枠にとらわれず、育児・介護をはじめとしたライフステージを尊重する雰囲気はあると思っています。
洗足学園の職場環境:居心地が良く「通いたくなる場所」を実現
▲改修されて間もない職員室には、カフェコーナーを設置。雑談中に新しいアイデアが生まれることも
編集部
ここまで働き方について伺ってきましたが、職場環境はいかがでしょうか?
赤尾先生
校舎は時代に合わせて改修を続けており、おしゃれで清潔感のあるホテルのような雰囲気が特徴です。職員室も開放的な設計で、一角にはテーブル・ソファが設置されたカフェコーナーもありますよ。朝の時間や放課後など、ちょっとした時間に教員同士で語り合う姿が見られます。
▲開放的な雰囲気の「アトリウム」
編集部
学校全体の設備についても、教えていただけますか?
赤尾先生
本校は、同じ敷地内に系列の中学校・高等学校・大学があります。また、学内に音楽ホールがあるので、仕事の前後にオーケストラだけではなく、オペラやジャズ等多様な演奏会を楽しめますよ。音楽好きの方には、恵まれた環境だと思います。
洗足学園小学校が求める人材:ICT活用への前向きな姿勢を重視
▲iPadを使いこなす児童たち。教員もデジタルツールへの対応は必要
編集部
どのような方々を、御校の教員として迎えたいですか?
赤尾先生
向上心が高く、ICTに抵抗感が少ない方に来ていただきたいですね。本校は2018年から、一人1台iPadを使った学習ができる環境を整えはじめ、2019年にはApple Distinguished Schoolに認定されています。
ペンシルで操作するのでキーボードの打ち方を指導する必要はありませんが、授業では教員・子どもともにタブレットを使用します。黒板への板書もなく、先生用の端末の画面をホワイトボードに投影させて学習内容を共有します。子どもが意見を発表する際には、該当の子どもの端末画面を表示させて学習を深めていくんです。
宿題の提出・チェック・返却を端末上で行うほか、教員向けの会議資料なども全てペーパーレスになっています。特別なアプリケーションを使っているわけではないものの、「分からないから無理」ではなくて調べて理解していく姿勢が求められます。
メッセージ:身近な選択肢として、私立小学校を知ってほしい
▲取材に対応してくださった教頭の赤尾先生
編集部
最後に、洗足学園小学校へ興味を持っている読者に向けたメッセージをお願いします。
赤尾先生
小学校教員を目指している方には、「公立学校だけではなく、私立学校もあるよ」と申し上げたいです。「学校」と聞くと公立をイメージする方が多いのですが、私立学校の教員として働く選択肢もあります。
実は私立小学校同士のつながりは非常に強く、先日も他校の教頭先生方と食事をする機会がありました。お話を聞いていると、いずれの学校も採用に苦労している現状なんです。4月スタートに限らず12〜3月といった期間限定の採用もあるので、ご自身の目で私立学校の現場を見ていただきたいです。
公立学校に比べると人数は少ないですが、本校でも教員を募集しています。ご自身の専門分野を伸ばしていきたい方や、「子どもたちと楽しい時間を過ごす」「勤務中に思いっきり笑うこともある」ということにやりがいを感じる方は、ぜひ応募してください!
編集部
ここまでのお話からも、教員の皆さんが居心地の良い環境で一歩ずつ成長していける雰囲気が伝わってきました。本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
この記事のまとめ
洗足学園小学校の概要 |
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組織文化 |
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女性活躍・ワークライフバランス |
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採用方針 |
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洗足学園小学校の基本情報
住所 | 神奈川県川崎市高津区久本2-3-1 |
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法人名 | 洗足学園 |
開校 | 1949年 |
公式ページ | https://www.senzoku.ed.jp/ |
採用ページ | 洗足学園の採用情報参照 https://www.senzoku.jp/new/saiyok.html |
募集職種 | 教諭(任期制) ※時期により募集の有無が異なります。 |