合成生物学スタートアップ「ファーメランタ株式会社」のアカデミックな組織の魅力とは

ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、ファーメランタ株式会社にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同社で働く魅力をご紹介します。

ファーメランタ株式会社は、石川県立大学発の研究開発型スタートアップです。合成生物学を用いた独自の遺伝子導入技術により、植物など天然由来の化学物質の持続的・スケーラブルかつ安価な製造を可能にする、革新的な微生物生産プロセスの開発に挑戦しています。

研究開発職のほとんどが博士号を取得しており、最新技術の確立に向けて高度な専門性を持つメンバーが集う同社。チャレンジングな研究に取り組む働きがいや、多国籍なメンバーが醸成する風土も魅力的です。

今回はファーメランタ株式会社の組織の特徴やグローバルなメンバー構成、事業の革新性について、代表取締役CEOの柊崎さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
ファーメランタ株式会社の代表取締役CEO・柊崎さん

柊崎庄吾さん

ファーメランタ株式会社、代表取締役CEO。外資系の証券会社出身で、2022年に共同創業者として同社を設立。

ファーメランタの組織:博士号取得者多数、年齢層も多様

ファーメランタ株式会社の実験風景

編集部

最初に、ファーメランタの組織の概要についてお教えいただけるでしょうか?

柊崎さん

当社はフルタイム社員が17名(2025年2月取材時点)で、職種としては大きく研究開発と事業開発に分かれています。約8割を占める研究開発職(正社員メンバー)のほとんどが博士号取得者で、世界的な学術研究機関の出身者や大学で要職を担っていた者もいます。

事業開発職は研究自体は行わないものの、研究に対する深い理解が求められることから専門性の高いメンバーが多く、博士号取得者も複数在籍しています。

経験豊富なメンバーが多い分、比較的年齢層は高めで、40代後半から50代前半のシニアメンバーが多くなっています。一方で20代の若手も数名おり、30代も増えてきています。新卒から50代後半まで、幅広い年齢層のメンバーが本当にフラットな関係で働いています。

チャレンジングな研究内容とアカデミックな風土に惹かれてジョイン

編集部

メンバーの方々は、御社のどのような部分に惹かれてジョインされているのでしょうか。

柊崎さん

大きく2つあると考えます。1つ目が、「合成生物学」というグローバルで注目度の高い最先端の研究ができる点です。具体的にいうと、大手企業が伝統的に取り組んできた応用微生物学は、生物のスクリーニングからスタートします。それに対して当社の合成生物学は、遺伝子改変で微生物に特定の機能を付与するという全く異なるアプローチが特徴です。

このような新しいバイオプロセスに特化した取り組みを行う企業は、日本では当社のみといっても過言ではないでしょう。このチャレンジングな研究に魅力を感じ、多くの専門性の高いメンバーがジョインしてくれているのだと考えています。

2つ目が、職種問わず経験豊富なメンバーの集う、アカデミックな環境です。メンバーには豊富な知的好奇心を持つ人が多く、さまざまな分野に対して教養があるため、日常のちょっとした話題でも議論のレベルがとても高いんです。

例えば「効果的なダイエット食は何か」というカジュアルな話題から相対性理論のようなアカデミックな話題まで、仕事に関すること以外でも質問すれば何でも答えが返ってくるため、働いていて非常に楽しい環境です。そういった風土に惹かれてジョインする方も多いと思います。

「質より量」を大切に、トライアンドエラーを繰り返すカルチャー

編集部

ファーメランタならではの特徴的なカルチャーがあれば教えていただけますか?

柊崎さん

私たちが特に重視しているのは「質より量」という考え方です。当社のメンバーは研究者が多いため論理的思考力や問題解決能力は既に持ち合わせていますが、高い専門性を持つ人ほど理論を重視し、完璧主義に陥りがちです。

大きな成果を上げようとするとき、理論的な説明がつかなくても「とりあえずやってみよう」という姿勢で実験に取り組むことは非常に重要です。その過程で新しい発見につながることがあります。だからこそ当社ではあえて「質より量」を掲げ、とにかく実験量を増やして、失敗を恐れずにチャレンジするカルチャーの浸透を図っています。

多国籍な環境がビジネス展開にもグローバル志向の風土醸成にもつながる

ファーメランタ株式会社の社内でのディスカッション風景
▲外国籍メンバーとのディスカッションの様子

編集部

御社には外国籍メンバーが多いそうですが、実際にどのくらいの割合の外国籍メンバーがいるのでしょうか。

柊崎さん

フルタイム社員のうち、約25%が外国籍メンバーとなっています。研究開発部門に3名、事業開発部門に1名在籍しており、出身国はカナダ、オーストリア、台湾、タイと多様です。

編集部

多国籍なチーム構成であることは業務においてどのようなメリットがあると感じますか?

柊崎さん

当社は創業当時から、グローバル市場でのビジネスを志しています。外国籍メンバーの存在によって組織に自然とグローバルな空気感が醸成される点は、グローバルビジネスを展開する上で大きなメリットです。フルタイムスタッフはほぼ全員が英語が堪能で、外国籍メンバーとは英語で会話をしています。

また、外国籍メンバー特有のグローバル志向、コミュニケーション能力が日本人メンバーに与える好影響も実感しています。特に海外市場の開拓においては、日本人はどうしてもハードルを高く感じてしまいがちなのですが、外国籍メンバーはそこに全く抵抗感がないんです。日本にいるのと変わらない姿勢で、海外での営業活動を行っています。その姿勢は、日本人メンバーの意識改革にもつながっていると感じています。

ファーメランタの事業:合成生物学を用いた革新的な技術で、産業革命に挑戦

ファーメランタ株式会社の実験機器
▲ジャー・ファーメンター(微生物の大量培養に用いる装置)による発酵生産の様子

編集部

ファーメランタの事業内容やその革新性について、改めてご説明いただけますでしょうか。

柊崎さん

当社の事業は簡単にいうと、微生物を使って植物由来の化学物質をつくるというものです。

現在の産業用化学物質は主に化学工場での合成や天然物の抽出が一般的な手法ですが、植物が持つ遺伝子情報を微生物に導入する「合成生物学」を用いた新しい技術の確立に挑戦しています。未来の産業をつくることにつながる、まさにイノベーティブな技術といえるでしょう。

編集部

その新技術は、具体的にどのような点でメリットがあるのでしょうか。

柊崎さん

例えばプロセスの面では、年単位のものが日単位まで短縮できます。また、高温・高圧といった特殊な環境条件が必要な化学合成と違って、発酵タンクの中であれば常温で生成可能です。これにより環境負荷の低減とコスト削減が実現できます。

編集部

設備など、研究開発環境についてはいかがでしょうか。

柊崎さん

大手企業には及びませんが、中小企業と比べるとかなり充実していると思います。1つの研究テーマに約30人体制で取り組めるほどの規模があり、最新の研究機器も揃っています。中には日本で当社だけが保有している自動化設備もあり、研究者が存分に能力を発揮できる環境を整えています。

求められる知識・専門性:研究開発職は、基礎微生物学の素養が重要

編集部

新しい技術の確立に臨む上では、やはり微生物に関する専門知識が必要となるのでしょうか?

柊崎さん

研究開発職の既存メンバーに関しては、実は産業利用を目的とした応用微生物学出身者はほとんどいません。当社の合成生物学は「ものづくりに特化した生物の合成を目指して改造を行う研究」であり、そのためには微生物の生理や構造といった、基礎微生物学の研究能力が重要となるためです。

例えば改造過程での拒否反応、細胞の死滅など予期しないトラブルが想定されるため、生命そのもののシステム解明が必要となるのです。

一方で、もちろんそれは単純な研究に終始するのではなく、化学物質の生産という成果につなげていく必要があります。そのため微生物に対する探究心だけでなく、ビジネス的視点は不可欠です。

編集部

事業開発職の方も、バイオテクノロジーなどの専門知識は必要なのでしょうか。

柊崎さん

事業そのものの理解を深めるために、ある程度の知識を持った方の方がより親和性は高いと思います。現在のメンバーにも、製薬会社の創薬研究を経験した後にゲノム編集のスタートアップを立ち上げた方など、研究者と事業開発両方のバックグラウンドを持つメンバーも少なくありません。

ただしこの分野に対する強い興味と、新しい知識を吸収する素養があれば、必ずしも専門知識は必須ではありません。私自身も文系出身ですが、研究者とも円滑にコミュニケーションが取れています。同じ能力なら専門知識がある方が有利になりますが、それ以上の能力やモチベーションがあれば、バックグラウンドは問いません。

ファーメランタの採用メッセージ:目指す未来に共感する人を歓迎!

ファーメランタ株式会社の代表取締役CEO・柊崎さん
▲取材にご対応いただいた代表取締役CEOの柊崎さん

編集部

最後に、ファーメランタへの転職を検討されている読者の方々に向けて、どんな方を歓迎しているかという想いも込めたメッセージをお願いします。

柊崎さん

すべての職種に共通する最も大切な要素は、「合成生物学による新たな技術の確立」という私たちが目指す未来への共感です。

また、高い専門性を持つメンバーと足並みを揃えて進んでいくためにも、一定レベルの能力値を有していることも重要です。よって、「目標に向かって一緒に邁進していけること」「高い論理的思考力と問題解決力を持ち合わせていること」が、採用の前提条件となります。

それを踏まえた上で、当社が求める人物像の特徴を2つお伝えします。1つ目は「結果にコミットできること」。うまくいかないときに、さらに多くのトライアルを重ねて成果を出す粘り強さ、熱意を持った方を求めています。

2つ目は「自分ごと化できること」。自分の担当領域に限らず、周囲で起きていることに目を向け、自分ごととして捉えられる方は、当社の働き方の価値観とフィットすると思います。

この2つの姿勢を持つ方は、当社できっと活躍いただけるはずです。当社の大きな目標に向かって、一緒に進んでいけると嬉しいです。

編集部

柊崎さん、本日はありがとうございました!

編集後記

同社が大切にする「質より量」という価値観からは、事業に対する情熱や、失敗を恐れず挑戦する社風が伝わってきました。実績豊富なアカデミックなメンバーに囲まれながら、パラダイムシフトや化学業界への革新を目指して働く環境は、とても刺激的だと思います。

ファーメランタ株式会社の働き方のまとめ

組織の特徴
  • 研究開発職が約8割を占める
  • 正社員の研究開発職はほぼ博士号取得者
  • 従業員の約25%が外国籍
  • 20代から50代後半まで幅広い年齢層
研究環境
  • 1テーマあたり約30人体制
  • 最新の研究機器を完備
  • 日本唯一の自動化設備あり
社風
  • 質より量を重視した挑戦的な文化
  • トライアンドエラーを推奨
  • グローバルな環境
  • アカデミックな雰囲気
事業の特徴
  • 合成生物学による最先端研究
  • グローバル市場展開を志向
求める人物像
  • 合成生物学による技術革新に共感
  • 結果へのコミット
  • 担当領域外も自分ごと化する姿勢

ファーメランタ株式会社の基本情報

企業名 ファーメランタ株式会社
住所 石川県野々市市末松3-570
いしかわ大学連携インキュベータ
事業内容
  • 合成生物学による植物希少成分の製造・販売
  • 物質生産のための菌株構築サービス
設立 2022年10月
公式ページ https://fermelanta.com/jp
採用ページ https://fermelanta.com/jp/careers
募集職種
  • 経営企画
  • 生成分析研究職
取材・編集
紫竹淳志のプロフィール写真

ミライのお仕事編集部

紫竹 淳志

元新聞記者として約10年間、地方行政や選挙、プロ・アマチュアスポーツなど幅広い分野の取材経験あり。ミライのお仕事では、ソフトバンク株式会社や東京商工会議所、株式会社オープンハウスグループなど、数多くの著名企業や教育機関への取材を担当。