エンジニアがスキルアップをしながらいきいきと働き、ワークライフバランスも大切にしている企業にインタビューする本企画。今回は、株式会社Live2Dにお話を伺いました。
2Dイラストのアニメーション化技術を展開する株式会社Live2D
2Dイラストに立体的なアニメーションを加える表現技術「Live2D」を中心に事業を展開している株式会社Live2D。VTuberなど多くのクリエイターに「Live2D」を提供している他、Live2Dを活用したアニメーション作品制作などの分野でも躍進を続けています。
会社名 | 株式会社Live2D(Live2D Inc.) |
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住所 | 東京都新宿区新宿1-20-2小池ビル7F |
事業内容 | ・Live2D関連ソフトウェアおよびサービスの開発 ・Live2D関連のグラフィックス制作 ・Live2Dを用いた映像制作 |
設立 | 2006年7月31日 |
公式ページ | https://www.live2d.jp |
働き方 | リモートワーク選択可能 始業時間の選択可能(8:30-10:30) |
今回は、株式会社Live2Dの経営管理グループ 経営管理チーム サブリーダーの綱川幸穂さん、マーケティンググループ マーケティングコミュニケーションズチーム サブリーダーの須田修伍さんに、エンジニアが自社プロダクトにこだわることのできる開発環境や、リモートワーク選択可など株式会社Live2Dの働きやすさを叶える制度について、お話を伺いました。
2Dイラストを思いのままに立体表現できる独自技術「Live2D」
▲独自技術を活かして、原画から2Dモデリングを行う「Live2D Cubism Editor」の画面。直感的なUIと汎用性の高さが特徴
編集部
まず初めに、Live2Dさんの事業内容について教えてください。
綱川さん
私たちは、2Dのイラストに立体的なアニメーションを加える「Live2D」という独自技術を開発し、世界中のユーザーの方々に提供しています。クリエイターが描いた魅力的な2次元の絵を、絵のままでダイナミックに思い通りに動かすことが出来るよう、研究開発を進めております。
Live2Dはゲームやアプリで活用されているほか、VTuberや教育関係の方など、国内外の様々な領域で利用され、高い評価をいただいています。
編集部
2次元の絵が3次元で動くとは、すごい技術ですよね。Live2Dの研究・開発以外の事業もあるのでしょうか。
綱川さん
自社のデザイナーチーム「Live2D Creative Studio」では、Live2Dモデル制作からアニメーション制作等、Live2Dを使ったコンテンツ制作のご依頼もお受けしています。
また、イラストやLive2Dデータの販売・購入、オーダーメイドの依頼ができるLive2D公式マーケットの「nizima」、手軽にVTuberになれるフェイストラッキングソフト「nizima LIVE」、Live2Dのプロになるためのオンライン講座「Live2D JUKU」など、Live2Dを主軸とした様々なサービスを展開しています。
編集部
2次元のイラストを動かす技術は他社にもあるかと思うのですが、その中でもLive2Dさんがクリエイターに選ばれている強みはどこにあるのでしょうか。
須田さん
イラストレーターが描いたイラストの原画をそのまま素材として扱えるところが、まずひとつの特徴です。イラストレーターが描いた線の表現や塗り方の質感を損なうことなく、ダイナミックに動かすことができるんです。
もうひとつの特徴は表情の豊かさ、リアルさですね。例えば人が瞬きをするときは、目の周辺の筋肉も一緒に動くと思いますが、そういった人間の表情を自然に再現することも可能となっています。
編集部
そういったリアルさは、キャラクターのクオリティに繋がりますよね。実際に、利用者の方々からはどのような評価を受けているのでしょうか?
須田さん
ゲームなどでLive2Dを採用いただく際に、「他のツールでも同じようなことはできるけど、Live2Dが一番キャラクターが生き生きしているように見える」という評価をいただくことが多いので、我々が強みと認識している箇所がしっかりと武器として通用しているということを実感しています。
Live2Dを使って映画を作ることを目標に、映像制作の事業にも力を入れている
編集部
Live2Dさんでは、映像制作の分野にも積極的に進出されているのでしょうか。
須田さん
私たちは「Live2Dを使って映画を作る」という大きな目標を掲げています。「Live2D Creative Studio」というLive2Dの作品を作る社内デザイナーチームが中心となり、開発チームと協力しながら研究を行っています。今は、Live2Dの映像表現の確立を追求している段階です。
編集部
Live2Dさんのホームページを拝見すると、すでに映像制作の実績もありますよね。
須田さん
オリジナルのアニメーションも発表していますし、海外でも公開された映画作品でも一部アニメーション担当をさせていただきました。
編集部
すごいですね。今後も、映像制作の仕事は増えていく見込みですか?
須田さん
Live2Dはもともと、ゲーム(主にアドベンチャーゲーム)などの領域で「静止画の立ち絵よりリッチな表現ができる」という点を評価されて広まっていきました。「もっと、こういう活用もできるんだよ」という事例として、私たちオリジナルの映像作品を公開しました。
その作品を見ていただいて、地上波で放送されているようなアニメに参加させていただく機会が最近は増えています。Live2D Creative Studioのサイトに制作実績という形で載せているもの以外にも、多数の映像作品に協力を行っています。
編集部
Live2Dさんの技術力が、ゲームの世界だけでなくアニメの領域にも認知されてきたフェーズなんですね。
須田さん
最近は、Live2Dを使った幅広い相談を受けています。キャラクターを動かす案件であれば、「Live2Dさんにちょっと相談してみよう」とお話をいただくことが増えてきている状態ですね。
編集部
映像制作の分野でどんどん実績を積まれているし、今後も展開されていくということですね。
教育機関にLive2Dのライセンスを無償提供し、クリエイターの育成に貢献
編集部
自社のプロダクトであるLive2Dの活用を広めるために、ほかにはどんな取り組みをされていますか?
須田さん
Live2Dの活用を広めると同時に、社会的な意義もあると考えて取り組んでいることに「Live2D 教育支援プログラム(LEAP)」があります。これは学校の授業や部活動などにLive2D Cubism PROのライセンスを無償提供することで、教育現場でLive2Dを積極的に使ってもらうプログラムです。
編集部
学生などの若い世代は、VTuberの影響もあってLive2Dに興味を持つ方が多そうですね。どういった経緯で教育支援プログラムを構築されたのでしょうか。
須田さん
専門学校などの教育機関の方から、「イラストレーター志望の学生みんなが、イラストレーターとして就職することが難しい」という相談をよく伺います。人気のある職種ではあるものの、望んだようにイラストレーターとして企業に就職することはハードルが高いというのが現状です。
そういった状況の中で、例えばイラストレーター志望の学生なら、「絵が描ける」だけでなくプラスアルファとなる技術を身につけることが打開策になります。クリエイティブ業界への就職を目指す学生にとって、武器の1つとしてLive2Dを習得できる環境を広く整備していきたいという想いから本プログラムの提供を行っております。
編集部
学校関係者や学生さんからの反応はいかがですか。
須田さん
教員の方から「非常にありがたい」という声をいただいています。「Live2Dがきっかけでゲーム系の企業に就職できた」といった声や「フリーランスとしてLive2Dモデルの制作でお金を稼ぐことができている」という声も伺っております。
編集部
就職するにも、独立するにも、Live2Dさんの技術がクリエイターの有効な武器になっているんですね。
自社案件メインなので、エンジニアがこだわりを持って働ける
▲社内のミーティングルーム。エンジニアだけでなくデザイナーとも連携しており、ここで熱く話し合うことも
編集部
Live2D社で働くエンジニアの皆さんについて教えてください。2024年5月現在、エンジニアの人数やチームの組織体制はどのような状況ですか。
綱川さん
現在、従業員はアルバイトを含めて132名おりまして、そのうち開発部門に所属しているメンバーは67名です。Cubism EditorやSDK、nizima等、それぞれの担当領域の研究・開発を行っている状況です。
編集部
開発は、受託ではなくいわゆる自社案件が多いのでしょうか。
綱川さん
開発部門については、自社サービスと関係のない受託案件や客先常駐はありません。自社が開発したソフトであるLive2D Cubismや、それに関連するツールの開発・研究をしております。
編集部
自社プロダクトがメインだと、エンジニアはこだわりを大事にして開発をすることができますよね。
綱川さん
そうですね。自社の製品がより良いものになるよう研究と開発を繰り返しています。
「どういった機能を入れればユーザーの方に喜ばれるか?」「どうすれば今後も売れるようになるか?」とアイディアを出しながら責任を持って開発をしているので、そういったことにやりがいを求めるエンジニアが活躍できる環境だと思います。実際に「自社の扱うツールを開発したい」という動機で中途入社したスタッフもいますよ。
編集部
自社開発をするにあたって、アイディアを出しやすくする制度や環境はありますか。
綱川さん
開発のチーム内で企画提案を自由に投稿できる場所を設けており、良いアイディアは採用され、実際に研究開発に進むこともあるようです。
また、Live2Dのファーストユーザーである自社のデザイナーチームの意見も聞くことで、ユーザー目線と開発目線をバランス良く取り入れ、より良いものを作れるよう一丸となって開発をしています。社内にデザイナーチームがある会社は珍しいと言われることが多く、デザイナーチームと連携できる点もLive2D社の開発の面白いところです。
風通しが良い職場ですので、経験が浅いメンバーや中途入社したばかりのメンバーも発言がしやすい環境だと思います。
レベルアップ制度など、社員全員が幅広く「ものづくり」を学べる制度が充実
編集部
Live2Dさんでは、エンジニアのメンバーが技術をアップデートしてスキルアップするための教育制度などは整っていますか。
綱川さん
「レベルアップ制度」という制度があります。開発部門に所属するエンジニアに限らず、社員全員がレベルアップをして、ものづくりを楽しむこと、仕事が楽しくなることについてサポートするという内容です。具体的に言うと、利用ルールや金額の限度はありますが、書籍やソフトなど、業務のプラスになる可能性のあるものに対しては会社が費用を支援しています。
例えば「プログラマーだがイラストの描き方を勉強することで、ツールの開発に活かしたいので、イラストセミナーに参加したい」という申請をすることもできます。上長の承認が必要ですが、自身の業務に関係のあることであれば、承認されることが多いです。
レベルアップしたい、もっと知識を取り入れたいという意欲のある方が、どんどんスキルアップができる環境を整えています。
編集部
職種を問わず、学びたいことを学べる環境にあるのは素晴らしいですね。
綱川さん
デザイナーだからデザイン関連だけ、プログラマーだからプログラミング関連だけというのではなく、幅広く学びを支援しているのはLive2D社の特徴だと思います。
業務と関係のあるもの、という前提ではありますが興味がある分野で利用ができるので、自分自身の研鑽に繋がっていると思います。
編集部
レベルアップ制度以外にも、スキルアップを支援する制度はありますか。
綱川さん
「クリエイティブタイム」という、社員が自主的に行う勉強や研究開発などの自己研鑽について、業務の一部の時間を活用できる制度があります。
例えばフルタイム勤務の場合、1日あたり実働8時間を超えた後であれば、1日最大3時間、週の合計5時間以内であれば業務として勉強や研究開発の時間にあてることができます。週の合計時間などの制限はありますが、自分がやりたい研究を進められる体制になっています。なお、1日最大3時間にはなりますが、健康面を考慮して1日2時間以内を推奨しています。
編集部
研究開発に時間を掛けたいエンジニアには、とても嬉しい制度ですね。
地方在住やリモートワークを可能にした「新しい働き方」を導入
▲リモートワークが選択可能なLive2D。オンライン・リアルともに交流する機会は多い
編集部
Live2D社で働く皆さんのワークライフバランスについて伺います。エンジニアのリモートワークは可能ですか?
綱川さん
エンジニアなど開発部門に限らず、リモートワーク勤務とオフィス勤務から社員それぞれが選択することが可能です。ただし、担当する業務や役職によっては出社が必要な場合もあります。リモートワークを選択したスタッフの中には地方に住んでいる方もいますし、現状はリモートワークで就業しているスタッフが多い状況です。
編集部
出社が難しいぐらい遠方に住んでいらっしゃる方も、リモートワークを活用してジョインされているんですね。
綱川さん
そうですね。業務時間についても、午前8時30分〜午前10時30分の間であれば社員それぞれが好きな時間帯に勤務を開始できるので、ライフスタイルに合った働き方が実現できていると思います。
編集部
場所や時間にとらわれず、働き方を選択できるのは魅力ですね。
綱川さん
また、当社ではバーチャルオフィスを導入しております。バーチャルオフィスでは、バーチャル空間内で話したい相手のアイコンを近づけるだけで話しかけることができるため、リモートワークでも気軽に相談をすることが出来ます。
他にもコミュニケーション不足解消に向けて、毎月「グループトーク」というイベントを開催しております。ランダムに決められたメンバーで自由に会話をするので、普段の業務ではあまり関わる機会が少ないスタッフとの交流もすることができます。お互いの趣味の話で盛り上がることも多いです。
さらに、コミュニケーションをとるためのトーク時間とは別に、研修の一環としてテーマに沿ったオンライン講座を受講・レポートを作成し、その内容をもとにディスカッションを行うグループトークも定期的に実施しております。自身の業務では得られない、異なる視点や知識を学ぶ良い機会となっております。
編集部
リモートワークを選択するとどうしてもコミュニケーション面で不安を感じる人も多いと思いますが、Live2Dさんはオンライン・リアルともにメンバー間の交流の機会が豊富なので、安心できると感じました。
個々の目標設定と1on1面談を元に、スキルアップを図りつつ人事評価も行う
編集部
Live2Dさんでは、仕事に対する評価はどのような体制で行っていますか。
綱川さん
半期ごとに目標設定をし、その2ヶ月後にリーダーと1on1面談を実施して進捗を確認するサイクルで評価をしています。
1on1面談で目標を振り返る際には、自分の仕事がどれだけ達成できたのかを、数値化や言語化する必要があります。半期ごとに目標を立てることで自身のミッションが明確になりますし、1on1面談で自身の業務の整理をしながら、上長と相談ができる体制となっております。
半期末には自身の行動評価、成果評価(目標に対する評価)の最終的な総括を行い、また次の期に向けて課題や目標を検討し取り組んでいく流れです。
編集部
リーダーとの面談によって今の自分がやるべきことが何かを理解し、改めて業務を進めていけるんですね。メンバーがモチベーションを保ちやすくなっていると思いました。
ものづくりが好きな仲間と、世界標準の表現技術を開発しよう
編集部
それでは最後に、この記事を読んでLive2Dさんに興味を持たれた読者の方に対して、採用に関するメッセージをいただければと思います。
綱川さん
Live2D社は部署を問わず、ものづくりが大好きな人、新しいことに挑戦し続けたいという人が多く在籍している会社です。そういった想いを持つ方が活躍できる環境だと思います。
Live2Dのこれからの進化を牽引してくださる方、日本発の世界標準技術の開発を目指したい方、さらにそういった先端技術を支えたいと考えている方に、ご応募いただけたらと思っております。
編集部
ゲームや映像のクリエイターから求められている技術として、Live2Dさんの可能性はこれからもっと広がっていきそうですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社Live2D:https://www.live2d.jp/
採用ページ:https://www.recruit.live2d.com/