働きやすい環境を整えながら、女性が活躍できる社会づくりに貢献している企業にインタビューする本企画。今回は、アウトソーシング事業や女性のキャリア支援事業などを手掛けている株式会社キャリア・マムにお話を伺いました。
女性が自信を持って活躍できる社会を目指すキャリア・マム
「女性のキャリアと社会をつなぐ~自分らしく生きる楽しさを多様な働き方でかなえる~」をビジョンに掲げる株式会社キャリア・マムが展開しているのは、アウトソーシング事業やキャリア支援事業、コンテンツ事業です。
同社には10万人の女性会員が登録しており、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)事業を通して全国の会員にデータ作成やコールセンター代行などの仕事を発注しています。
女性が活躍できる場を提供するだけでなく、女性のキャリア支援や託児付きコワーキングスペースの運営も手掛けているなど、ライフステージに関わらず女性が活躍できる社会づくりに貢献しているのです。
会員の存在は企業や自治体のサービス向上にも生かされています。商品開発の段階で会員にテスト商品を使用してもらうなどしながら、主婦目線の生の声を企業や自治体に届けています。
会社名 | 株式会社キャリア・マム |
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住所 | 東京都多摩市落合1-46-1 ココリア多摩センター 5階 |
事業内容 | アウトソーシング事業、コンテンツ事業、キャリア支援事業、託児付きコワーキング施設の運営など |
設立 | 2000年8月8日 |
公式ページ | https://corp.c-mam.co.jp/ |
同社のサービスには、代表取締役の堤香苗さんの「誰もがその人らしく幸せに豊かに暮らせる未来を作りたい」という思いが込められています。自信を付け、社会で活躍していく女性を同社は応援し続けてきたのです。
会社を立ち上げたときの思いや同社の歩みについて、堤さんにお話を伺いました。
テレワークを先取りし女性が活躍できるフィールドを作る
編集部
女性が活躍するフィールドを広げるサービスを展開されているキャリア・マムさんですが、今のサービスを手掛けるに至った堤さんの思いについて伺わせてください。
堤さん
キャリア・マムを立ち上げ、今のような事業を展開するようになった背景には、私自身の原体験があります。
私は1964年生まれなのですが、私が学生の時は今よりも男女による役割差がありました。例えば生徒会長は男性で書記は女性、教科も「男性は技術で女性は家庭科」といったようにです。
私が社会に出るころ、ちょうど男女雇用機会均等法が制定されて、女性の総合職が華々しくデビューするという世の中でした。しかし法律はあるものの、女性の総合職は入社して5年ぐらいで退職してしまうのです。
やはり大企業であればあるほど、同じ職場で結婚した場合は女性が退職するというケースが多かったですね。
そんな社会だと、女性はどうしても自分のキャリアよりも家族の幸せを優先してしまうようになります。女性は「自分の夫がほかの夫よりも優れたキャリアを歩めば自分は幸せ」というマインドになり、自分で自分の幸せを実感できるチャンスが少なくなってしまうのです。
女性が思うように社会で活躍できていない状況に悔しさを感じていたというのが、弊社を立ち上げた根底にありますね。
編集部
オフィスを多摩ニュータウンに構えているというのも、何か時代的な背景があったのでしょうか?
堤さん
女性にもキャリアを大切にしてほしいといっても、家庭を全部放り投げてキャリアに邁進するというのはもちろん現実的ではありませんでした。
ですので、キャリア・マムでは家族も大切にしながら自分の積み上げてきたキャリアを生かしてほしいというスタンスで事業を展開し始めたのです。
取り組みを始めた当時、多摩ニュータウンの近くには富士通やNECといったパソコンメーカの工場や研究所がありました。そんな地域なので、自宅にパソコンを持っている家庭が多くありましたね。
旦那さんが仕事に出かけている間は、自宅のパソコンは誰も使っていない状況になります。ですので、弊社の会員にはまずはアンケートの入力業務などを任せることが多かったです。
すると、企業勤めをしていたころはシンクタンクで研究をやっていたという会員が現れました。その方に、アンケート結果からサマリーを書いてもらったのです。
その後、ドキュメントを作れる方、翻訳ができる方とさまざまな才能を持っていらっしゃる会員が増えまして、それぞれの強みを合わせて質の高いサービスを提供できるようになりました。
時間の問題で1人で1人前の仕事ができなければ、10人で力を合わせて1人前の素晴らしい成果を出せば良い。それが今も続くキャリア・マムのスタイルです。
編集部
今では当たり前のものとなっていますが、当時の状況から考えるとテレワークを先取りするような動きですね。
堤さん
はい。ありがたいことに、キャリア・マムのスタイルは対外的にも評価されており、2006年に日本テレワーク協会テレワーク推進賞支援・活用の部優秀賞、2015年にテレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰~輝くテレワーク賞~「特別奨励賞」を受賞しています。
編集部
テレワークが一般的でなかったことから取り組みを進めることで、女性が活躍できる環境を整えたのですね。
「ちゃんとここに生きている」という実感を女性に持ってほしいという思い
編集部
女性の活躍が社会的にクローズアップされる以前から女性のキャリア支援に取り組まれているキャリア・マムさんですが、堤さんは女性会員の変化についてどう見られているでしょうか?
堤さん
キャリア・マムの会員は、仕事に取り組まれていくなかで自信を付けていく方が多いです。
例えば会員が領収書を書く場合、自分の名前を書かないこともありました。旦那さんや子どもの名前を書いてしまうのです。そんな状態にあった方が仕事をしていくうちに、自信を付けていくのです。
自信をつけると、女性は驚くほどいきいきとした表情になりますね。公園で「きれいになったけど化粧品を変えたの?」とママ友に聞かれることもあったそうです。
仕事を始めた当初は、事務所に来た会員の中には、幼稚園の父母会のような落ち着いた服装で来る方も多いのですが、数カ月経つと颯爽とした雰囲気になっているんです。
編集部
仕事をして報酬をもらう、社会に参画するという一連の経験によって、女性の皆様が自信をつけていくのですね。
堤さん
私たちは「主婦の方に仕事を任せることで安く雇えますよね」という声をいただくこともあるのですが、安く労働力を確保したくて事業を展開しているのではありません。
自分が納得して働けることと自分らしく生きることはイコールですので、女性には自分がちゃんとここに生きているという実感を得てほしいと考えています。
自分が働いたことで報酬をもらえる。すると、自分のやったことが認められるという実感が得られますよね。それが働く女性の自信につながると考えています。
編集部
女性の社会進出という部分でキャリア・マムさんは大きな影響を与えられてきたと思うのですが、堤さんの実感はいかがでしょうか?
堤さん
私自身は、働くチャンスを待っている女性にまだまだチャンスを届けられていないと感じていますね。それがとても悔しくて、取り組みを始めて25年以上経った今でも奮闘し続けています。
あるとき、関西の方で会員の方たちと話す機会があったのですが、お子さんが寝たきりの状態である会員がいらっしゃいました。人工呼吸が必須のため、1時間に1回去痰が必要だったのです。そんなこともあって、ご自身は健康なものの働けないという状況にありました。
そのとき会社はまだ黎明期だったため、その方にお仕事をお任せできませんでした。お会いして半年後のこと、お子さまがお亡くなりになったことを知ったのです。「間に合わなかった」という思いを、未だに持っています。
編集部
そのような想いを背負いながら、現状に満足することなく、これからも女性活躍の輪を広げていきたいと考えていらっしゃるのですね。
託児付きコワーキング施設を運営、小学生も利用可能
編集部
キャリア・マムさんには現在何名の社員さんが在籍されていて、男女比はどれぐらいでしょうか?
堤さん
キャリア・マムは現在50名ほどの社員が在籍しており、女性が9割です。管理職も女性のほうが多いですね。とはいえ女性を優先して採用しているわけではなく、もう少し男性社員を増やしたいとも考えています。
男女関係なく優秀な人材を採用したいと思っているのですが、優秀な方は多摩地区を出て都心に行ってしまうケースが多いと感じています。大学もたくさんあるのに、卒業後多摩地区には残ってくれないのです。
ですので、地元の金融機関さんと一緒に奨学金を出すプロジェクトに参画するなど、地元の優秀な人材に入社してもらえるような取り組みを進めています。
編集部
優秀な人材を採用する上では働く環境というのが重要になってくると思うのですが、キャリア・マムさんはどのような取り組みをされているでしょうか?
堤さん
キャリア・マムはテレワークとフレックス勤務を採用していて、子連れでの出勤も可能です。テレワーク手当やテレワークに必要な物品の貸し出しもありますし、一定の勤続年数でリフレッシュ休暇も付与しています。
先日も、40代の社員が3週間ほどリフレッシュ休暇を取得してお子さんとアジア地域を旅行されていましたね。
フレックスについてはコアタイムは1時間しかありませんので、比較的自由に働けると思います。また、フルフレックスの社員が九州や関西で働いています。
編集部
働き方の自由度が高いのですね。お子さまを連れた社員さんはどのように働いているのでしょうか?
堤さん
キャリア・マムは託児付きコワーキング施設「コワーキングCoCoプレイス」を運営しています。保育施設が併設されているコワーキングスペースで、弊社の社員は半額で保育施設にお子さんを預けられます。
コワーキングCoCoプレイスの特徴は、コワーキングスペースがあるため保育園だけでなく小学校のお子さんも利用できることです。施設内の小上がりエリアで小学生のお子さんが宿題をしていることもあります。
編集部
卒園して小学生になっても施設を利用できるというのはとてもありがたいですね。働く環境を整えるうえで堤さんが大切にしている想いは何でしょうか?
堤さん
私は「未来を作りたい」という想いで、キャリア・マムを経営しています。未来とは、幸せで豊かなその人らしい未来です。素敵な未来、楽しい未来、わくわくする未来は自分を押し殺した状態では作れないですよね。
ですので、自分を制限することのない、多様な働き方を実現したいと考えています。
編集部
そのような考え方は、キャリア・マムさんのすべての事業にも通じている理念だと感じました。
男性社員も活躍中、性別やキャリアに関わらず今の成果を評価する
編集部
さきほど男性の社員さんを採用していきたいとお話しされていましたが、今在籍されている男性の社員さんはどんな方で、どんな活躍をされていらっしゃるのでしょうか?
堤さん
キャリア・マムの男性社員は年齢が幅広いです。60代の方は以前勤められていた会社を退職後に入社し、週4日で働いています。また、40歳で入社して4~5年目で役員になった男性社員もいます。若手でいうと、20代の男性社員もいますね。
編集部
さまざまなバックグラウンドを持っている方が入社されてるのですね。
堤さん
キャリア・マムはさまざまなバックグラウンドを持つ社員が活躍しています。ある女性社員の例ですが、その方は就職氷河期に当たる方で、弊社に入社する前は派遣の仕事をしていました。しかし、腰を据えて働きたいということで弊社に入社し、もうすぐ副部長待遇に昇格します。
また、子ども3人を育てていて職業訓練校から入社したシングルファザーの社員もいます。私たちはあらゆる人材を受け入れていますし、これまで積み上げてきたキャリアではなく、今の仕事ぶりを評価して引き上げていくのです。
編集部
ここまで中途で採用した社員さんの事例でしたが、新卒採用の社員さんについてはいかがでしょうか?
堤さん
キャリア・マムでは3年前から新卒採用を再開しています。新卒で採用した2名の女性社員がいるのですが、2人とも韓国が好きだそうです。ですので韓国語勉強会を企画したり、ダンス部を作ってくれたりなど活発に活動してくれてますね。
編集部
自分の「好き」を素直に表現できる環境にあるのですね。
失敗を楽しめる環境、一緒にわくわくする未来を作りたい
▲「自分らしさを楽しめるような、わくわくする会社を目指している」と話す堤さん
編集部
キャリア・マムさんで働く上で心掛けてほしいことは何でしょうか?
堤さん
ここまでのお話で、弊社についてテレワーク中心のイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちはリアルの現場で働くという働き方も尊重しています。さきほども申し上げた通り、多様な働き方を認めて、一人ひとりの力を最大限発揮してほしいと考えているのです。
基本的に、弊社に正社員で入社した場合は企業や行政とのやり取りを担当してもらいます。現場の作業や応対についてはパートの社員やB型作業所の方にもサポートいただいております。
小さな会社ではありますが、常時3,000名以上の方々が私たちの事業に関わっているのです。多様な働き方の人々が集うキャリア・マムが一つの触媒となって、弊社で働く社員も、弊社のサービスや施設を利用するお客さまも含めて、自分らしさを楽しめるような、わくわくする会社を目指しています。
編集部
オンライン、オフラインそれぞれの良さが共存するからこそ、キャリア・マムさんの事業が成り立っているのですね。最後に、キャリア・マムさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします。
堤さん
これからキャリア・マムに入社いただく方と、一緒にわくわくする未来を作りたいですね。弊社は決して大きな組織ではありませんが、私が国の中小企業庁の審議会のメンバーに入っていたり、日本テレワーク協会の理事を務めていたりと一定の影響力を持っています。
また、以前は静岡県知事と一緒に都市作りの勉強会をしたこともありますし、一般的にはなかなか参加できない場に私と一緒に行ける機会もあるでしょう。外見からはわからないおもしろ要素が詰まった会社だといえるのです。
私たちは、失敗を楽しめる会社です。ベンチャー企業のようなスピード感を大切にするというよりは、失敗を受け入れて、そこから学び、より良いものを作っていこうというカルチャーがあるのです。
ご興味のある方はぜひご応募ください。社会や周りの人たちの未来が豊かになるようなことに一緒に取り組んでいきましょう。
編集部
自分自身がわくわくしながら成長するのと同時に、わくわくできるような社会を実現できる環境がキャリア・マムさんにはあるのだと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社キャリア・マム:https://corp.c-mam.co.jp/
採用ページ:https://corp.c-mam.co.jp/recruit/