新しい働き方を実践する企業へインタビューするこの企画。今回はOCR(※)やNLP(自然言語処理)といったAI(人工知能)プロダクトなどの開発・提供、さらにそれらを活用した企業のDX推進などAIソリューションも提案するシナモンAIを取材しました。
(※)OCR…画像データのテキスト部分を認識し、テキストデータに変換する光学文字認識機能
株式会社シナモン:AIで世界の進化を加速させる企業の概要
シナモンAIは「AIで世界の進化を加速させる」というミッションを掲げ、AI-OCRなどの開発・提供を行っている企業です。こうしたAIを活用したプロダクトを企業に提供することで、生産性向上や課題解決に寄与しています。
会社名 | 株式会社シナモン (通称:シナモンAI) |
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住所 | 東京都港区虎ノ門3-19-13 スピリットビル6階 |
事業内容 | AI(人工知能)プロダクト事業、AIコンサルティング事業 |
設立 | 2016年10月5日 |
公式ページ | https://cinnamon.ai/ |
また、シナモンAIは海外に研究開発機能を持つ国際色豊かな企業でもあります。今回は採用担当の野崎さんと浦澤さんに、国をまたいだ横断的な連携を可能にする独自の組織体制や、チームワークを重視するカルチャーなどをお伺いしました。
株式会社シナモンの主力製品:人の創造性を引き出す3つのAIソリューション
▲シナモンAIの事業の柱となる3つのプロダクト。人が行うと時間がかかる作業をAIが行うことで業務効率化が図れる(公式サイトより)
編集部
まずはシナモンAIさんの事業内容について教えてください。
野崎さん
弊社の事業を端的に言うと「AIを使って企業やそこで働く方々の生産性向上を支援する」ことです。
「AIで世界の進化を加速させる」というミッションを実現するため、社会の中で様々な役割を担う企業様とタッグを組み、弊社のプロダクトを活用いただくことで、社会課題を解決するといった、世の中にプラスのインパクトを与えたいと考えています。
編集部
具体的にはどのようなプロダクトがあるのでしょうか。
野崎さん
弊社のメインとなるプロダクトは3つあります。1つ目が「Flax Scanner(フラックス スキャナー)」です。これはAI-OCRというAI技術を活用したプロダクトで、入力などの単純業務をAIで効率化させるものです。Flax Scannerは、手書きや画像など幅広い文書フォーマットに対応していることが強みで、それらをAIに読み込ませ、データとして抽出することが可能です。
2つ目が「Rossa Voice(ロッサ ボイス)」という音声認識エンジンを活用したAIプロダクトで、音声データをテキストに変換することができます。3つ目が「Aurora Clipper(オーロラ クリッパー)」という自然言語処理技術を活用したプロダクトです。これは自然な話し言葉から必要なデータや情報を抽出することができます。
3つのプロダクトの中で、現状Flax Scannerが最もお客様から問い合わせ・発注をいただいております。弊社のプロダクトを導入していただくことで、「必要だけれど単純作業」といえる部分をAIに任せることができ、社員の方々はより創造的な業務にコミットできるようになります。
業務効率化の救世主:AI-OCR「Flax Scanner」の導入効果
▲Flax Scannerを使うことで入力業務を正確に速く行える(公式サイトより)
編集部
今まで人が行っていた作業をAIで行うことで、飛躍的に業務効率が上がりそうですね。シナモンAIさんの中で特に需要が高いというFlax Scannerの導入事例について教えてください。
野崎さん
直近では生命保険会社様にFlax Scannerを導入していただきました。新種のウイルスなど社会情勢が変化したタイミングで保険の請求が非常に増え、その処理に対応するためです。
保険の請求書は手書きが多く、生命保険会社側でパソコン入力し、データの整合性を取る必要があります。しかし、請求の量が莫大に増えたことで、入力作業などに大幅に時間がかかり、人を増やしても思うように業務が進まないという問題を抱えていました。
そうした状況の時に、Flax Scannerを導入いただいたことで、書類の確認が必要なところと、そうでないところが自動で切り分けられ、目視での確認量を格段に減らせたそうです。これにより作業量を平準化でき、時間的な余裕も生み出せます。弊社のFlax Scannerについては、使い方も簡単で、導入していただいた企業様から「Flax Scannerを導入する前には戻れない」といったありがたいお言葉もいただいております。
編集部
それだけ導入した企業様にとって、作業効率が劇的に上がるインパクトがあったわけですね。
野崎さん
そうですね。生命保険会社様の例でいえば、申請の処理については当時、社会課題の1つにもなっていたため、それを解決する手助けができたと思っております。
グローバルな職場環境:英語を共通言語とする多国籍チーム
▲ベトナム(ホーチミン)のメンバー。エンジニアなど優秀な人材が集まっている
編集部
シナモンAIさんは海外にも研究開発機能があるようですが、東京のオフィスにも日本人以外のメンバーが多いのでしょうか。
野崎さん
おっしゃる通り、弊社は東京のオフィスの他に、ベトナムと台湾に研究開発機能があります。東京オフィスには約60名のメンバーがおり、その中にはベトナム籍の方も含まれています。そのため、社内のコミュニケーションは英語が多くなっています。
ただし、英語が苦手な方でも弊社で働くことは可能です。英語が苦手でも嫌いではなく、学習する意欲があれば、徐々に対応できるようになると考えています。また、英語の必要性は職種によって異なるため、各職種に応じた対応ができれば問題ありません。
編集部
日本の方、外国の方含め、シナモンAIさんに入社される方は、どのようなキャリアを積んできた方が多いのでしょうか。
野崎さん
社員の前職については、特に営業系の職種は多様性に富んでいます。AIプロジェクトを扱っていた会社からジョインされた方もいますが、コンサルティング、金融、製造業など、様々な分野で経験を積んだ方々が活躍しています。
編集部
シナモンAIさんには様々なバックグラウンドを持つ方がジョインされているのですね。
国境を越えた組織構造:部門横断的な連携がもたらす相乗効果
編集部
ベトナムや台湾のメンバーと連携を取るうえで工夫していることなどはありますか。
野崎さん
彼らとの連携については、組織体制を工夫することで対応しています。通常、海外に拠点がある場合、組織は国ごとで分かれますが、弊社では組織を国で分けず、部署ごとに統合しています。
具体的には、私が所属する人事部門を例にすると、日本の人事、ベトナムの人事と分けるのではなく、日本の人事のディレクターが日本とベトナム、両方の人事のメンバーを一括管理しています。これにより、それぞれの国のメンバーが密接に連携し合えるようになっています。国をまたいで連携・協力することで、より質の高いサービスが提供できると考えています。
野崎さん
私も最近1週間ほどベトナムの研究所を訪問する機会がありました。ベトナムのメンバーは会社に対する愛着が強く、成長意欲が高い方が多いと感じました。このようなメンバーがベトナムに揃っていることは、日本の営業やエンジニアにとって大きな安心材料となっています。
また、ベトナムのメンバーにとっても、日本のメンバーが確実に仕事を獲得してくれるおかげで、チャレンジングなプロジェクトに携わる機会が増えています。このように、互いに良い影響を与え合う関係が築けています。
私自身、人事を統括する立場として、日本だけでなくベトナムや台湾のメンバーのケアにも力を入れ、国内外を問わず、全てのメンバーが弊社で働くことに幸せを感じられるよう尽力していきます。
変わらぬパーパス:AIの力で未来を切り開く社員の共通理念
編集部
国際色豊かなメンバーが働くシナモンAIさんのミッションやバリューについてお聞かせください。
野崎さん
弊社は「誰もが新しい未来を描こうと思える、創造あふれる世界を、AIと共に」をパーパス(※)に掲げています。そこから派生するミッションとビジョンについては現在、再構築中です。
(※)パーパス…企業としての存在意義
パーパスを追求していく過程で、会社として果たすべき使命や目標は変化します。そのため、ミッションやバリューもそれに合わせて更新すべきだと考えています。現在構築中の新しいミッションやバリューは、難解な表現を避け、お客様にも理解しやすい言葉で表現する予定です。
編集部
ミッションやバリューは会社の成長に合わせて変化させていくけれど、パーパスは変わらないということでしょうか。
野崎さん
はい、その通りです。「誰もが新しい未来を描こうと思える、創造あふれる世界を、AIと共に」という弊社のパーパスは変更する予定はありません。このパーパスが生まれたきっかけは、代表の平野(代表取締Co-CEO(※) 平野未来さん)が子どもの誕生時期に目にした、若者の過労死に関する痛ましいニュースでした。
(※)Co-CEO…共同最高経営責任者
平野は自分の子どもが同じような状況に追い込まれる可能性を考え、深い悲しみと恐れ、怒りを感じたそうです。若者が絶望するような社会状況をなくしたいという平野の強い想いが、このパーパスに込められています。
編集部
シナモンAIさんのパーパスには代表の平野さんの想いが込められているのですね。メンバーもそうした想いに共感する方々が集まっているのでしょうか。
野崎さん
その通りです。メンバーの多くは、AIを活用して企業の生産性向上や無駄の削減を目指すという観点に共感しています。加えて、GRIT(やり抜く力)を持ち、高い成長意欲を持った人材が多く集まっています。
若手の登用を促進:6つの評価基準に基づく実力主義の人事制度
編集部
シナモンAIさんの評価制度について教えてください。
野崎さん
評価については、個人のスキルややり抜く力も重要ですが、それ以上にチームワーク、コラボレーションという点を重視しています。弊社では、コラボレーションに関する6つの要素を定義しており、これらを高いレベルで満たす社員が高評価を受け、昇格していく仕組みになっています。
▲他のメンバーなどとの関わり方を示す6つの要素が評価基準になっている
野崎さん
6つの要素について説明しますと、まず「Understand」はこれらの要素を正しく理解すること、「Execute」はそれを実行することです。「Manage people」は人をまとめ、導くリーダーシップを指します。「Present」は社内外のステークホルダーに状況を説明する能力、「Assist」は同僚を支援する姿勢を表します。そして、これらの行動を通じて得られる「Gain Trust」、つまり信頼が最後の要素となります。
編集部
個人の成果だけでなく、組織全体への貢献や他のメンバーからの信頼獲得を重視されているのですね。実際に、これらの要素を満たすことで若くても高い評価を得ているメンバーはいるのでしょうか。
野崎さん
30歳でディレクター(他社で言う部長クラス)に昇格したメンバーや、27歳で執行役員になった社員もいます。弊社の評価制度には年功序列の要素は全くありません。マネジメント能力とリーダーシップがある人材であれば、年齢に関係なく積極的に昇格させるのが弊社の評価制度であり、文化です。
編集部
シナモンAIさんでは社歴に関係なく評価され、役職に就くこともできるのですね。新しく入社する方にとってはモチベーションが上がる評価制度だと思います。また、評価の要素が明確で、目標とすべき点がはっきりしているので働きやすそうです。
ワークライフバランスの実現:柔軟な勤務体制とユニークな社内交流
編集部
次にシナモンAIさんのメンバーの働き方について聞かせてください。
野崎さん
弊社では出社とリモートのハイブリッド勤務を採用しています。出社とリモートの割合は部署によって異なりますが、全メンバーが出社して参加する全体集会も開催しています。また、現在はリモートワーク手当として月5,000円を会社から支給しております。
勤務時間に関してはフレックス制度を導入しており、コアタイムは11時から16時です。弊社のようなベンチャー企業は残業時間が多いという印象をもたれることがありますが、弊社の直近の残業時間は月20時間程度で、ベンチャーとしてはそれほど多くありません。仕事に集中しつつも、休む時はしっかり休むというように、メリハリをつけて働いているメンバーが非常に多いです。
編集部
フレックス制度のお話が出ましたが、メンバーはどのようにフレックス制度を利用して働かれているのでしょうか。
浦澤さん
私は子どもがまだ小さいので、フレックス制度を利用して子育てをしながら働いております。朝、子供が起きる前に少し仕事をして、そのあと家事や育児をしてから出社するというように、自分のライフスタイルに合わせて仕事ができる点は、大変ありがたい環境だと思っております。
今は共働き世帯も多いので、弊社のメンバーでも女性だけでなく男性もフレックス制度を利用して育児や家事をしっかりやっている方が多いです。それぞれの家庭の状況に応じて、皆さん生活と仕事のメリハリをつけて働いている印象があります。
編集部
なるほど。御社のフレックス制度では、お子さんのお迎えなど、用事のために中抜けすることも可能なのでしょうか。
浦澤さん
もちろんです。コアタイム以外の時間については、私の場合であれば育児や家事といったプライベートの用事を入れることができます。ジムに通ったり資格の勉強をされている方もいます。
また、最近、若い男性メンバーの中でサウナが流行っておりまして、時間を見つけてサウナへ行くメンバーもいます。男性の社員が入社すると、サウナにハマっているメンバーがサウナに誘い、そこで人間関係が構築されるといったこともあるようです。
社会情勢の変化で弊社も部活動が休止になるなど、メンバー間の交流が減っている中、サウナなど今までとは違う形のコミュニケーションも生まれており、人間関係の風通しの良さは弊社の魅力の1つだと思います。
対面コミュニケーションの促進:社内交流を支援する多様な制度
編集部
人間関係の風通しの良さについてお話がありましたが、リモートや海外勤務のメンバーもいる中で、メンバー同士のコミュニケーションを活性化するために工夫されていることがあれば教えてください。
野崎さん
弊社ではリモートワークを導入していますが、なるべく実際に顔を合わせて話すコミュニケーションを大切にしています。月に一度、オフィスで懇親会を開き、部署を越えた横のつながりを築けるようにしています。
また、2人以上のメンバーでランチに行った際、ランチ代を週に1回1,000円まで会社が負担する制度もあります。さらに、新しく入った方とメンバーがランチをしながら交流するウェルカムランチという制度があり、その際のお弁当は会社が用意しています。
海外のメンバーとの交流については、先ほどベトナムの研究所に行った話をさせていただきましたが、実際に足を運ぶことが大切だと考えています。現地に行くには渡航費などのコストはかかりますが、弊社はそうしたコミュニケーションを図るための投資は惜しみません。
編集部
様々な制度を設け、会社としてコストをかけ、直接対面でのコミュニケーションを大切にしているからこそ、風通しの良い人間関係を築くことができるのですね。特にウェルカムランチは、会社に馴染めるか不安な新入社員にとって、心強い制度だと思います。
オンラインでの絆づくり:雑談チャンネルを活用した社内コミュニケーション
編集部
普段、リモートの方とやり取りをする際は、どのようなツールを使用していますか?
野崎さん
日常的な仕事のやり取りはチャットツールのSlackを使用しています。仕事の話題だけでなく、雑談チャンネルを設けて、仕事以外の話題もできるようになっています。
例えば、2022年のサッカーワールドカップの時は、日本が勝つと深夜でも雑談チャンネルで皆が盛り上がっていました。また、ベトナムの旧正月(テト)の際には、ベトナムのメンバーが現地の祝祭の様子を写真で共有してくれ、文化交流の場にもなっています。
編集部
仕事以外のことを自由に発信できるチャンネルがあることで、リモートのメンバーを含め、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、仕事にもプラスの影響を与えそうですね。
野崎さん
その通りです。雑談をきっかけに周囲と良い人間関係を築くことが、仕事のパフォーマンスアップにも繋がると考えています。さらに、社内の結束やチームワークを高める制度として、Slackなどでメンバー同士で感謝を送り合う「Cinnabon(シナボン)」という制度もあります。仕事で助けてもらった人などに感謝のメッセージを送り合い、最も多く感謝を受けた人を表彰しています。これにより、お互いの貢献を認め合う文化が醸成されています。
株式会社シナモンが求める人材像:Win-Winの関係を築ける前向きな人材
編集部
最後に採用についてお伺いします。面談などで重視しているポイントや、フィットする人物像などがあれば教えてください。
野崎さん
求めるスキルレベルを満たしていることが前提ですが、それ以外では素直さや前向きさを重視しています。また、一緒に働きたいと思える人かどうかも大切な要素です。
素直さは成長に欠かせず、フィードバックを適切に受け止められることが重要です。ベンチャー企業である弊社では、変化に柔軟に対応し、自ら不足を補う行動力のある方が適しています。
例えば、福利厚生面はまだ構築段階ですが、単に不満を言うのではなく、より良い会社にするために必要な制度を提案できる人材を求めています。このように会社づくりに参加できることも、弊社で働く魅力の一つです。
浦澤さん
私が採用面談で重視しているのは、応募者が弊社で働くことで幸せになれるかどうかです。弊社での仕事にやりがいを感じ、それが生活の幸福感に繋がるかどうかを見極めています。
また、野崎の意見と同様に、一緒に働きたいと思えるかどうかも重要です。これは書類だけでは判断できないため、直接お会いして話をする中で、共に働きたいという気持ちが生まれるかを判断材料にしています。
採用面接の段階で、双方に働きたいという気持ちがあることが、その後の信頼関係構築にも繋がると考えています。
編集部
一緒に働きたいと思えるかどうかと、応募者にとってシナモンAIさんに入ることが幸せに繋がるかどうかの2点を大事にされているということですね。本日はお忙しいところお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
■取材協力
シナモンAI:https://cinnamon.ai/
採用ページ:https://cinnamon.ai/recruit/