性別・年齢などを問わず多様な人材が活躍されている企業に、そのカルチャーや人材育成の取り組みなどをお聞かせいただくこの企画。今回は、「水戸納豆」や「水戸黄門」などでも知られている、茨城県の水戸市にお話を伺いました。
中核市として賑わいを増す茨城県水戸市
水戸市は、人口約27万人が生活を営む茨城県の県庁所在地であり、中核市(※)にも指定されています。
(※)「政令指定都市」に次ぐ、規模や事務処理権限を持つ都市。住民の身近なところで行政を行うことを目指して、指定される。
都会の暮らしが楽しめる一方で、日本三名園のひとつである偕楽園や千波湖など、四季を感じられる豊かな自然も魅力です。
市内には博物館や美術館などの芸術施設も点在しており、2023年には芸術文化と出会い創造する拠点として市民会館がオープンするなど、賑わいを見せています。
その水戸市において、市民のニーズに対応し、暮らしをサポートしているのが水戸市役所です。
自治体名 | 茨城県水戸市 |
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住所 | 茨城県水戸市中央1-4-1 |
公式ページ | https://www.city.mito.lg.jp/ index2.html |
中核市として大きな役割を担う水戸市役所では、DX推進やSNS活用などの新しい分野の業務にも積極的に取り組むとともに、これからの時代に活躍できる人材の育成にも力を入れています。
そこで今回は、人材育成の取り組みや職員が活躍できる環境、新しい業務への挑戦などにスポットをあてて、総務部人事課人材育成係の小山さん、白土さん、野上さんのお三方に、お話を伺いました。
これからの時代を見据えた水戸市の人材育成とは
編集部
まずは、皆さんがご担当されている、採用や人材育成に関連してお話を伺います。
市役所のお仕事は多岐に渡るというイメージがありますが、水戸市役所の職員の皆さんにはどのような能力や資質が求められるのでしょうか。
小山さん
水戸市では、人材育成に関する指針を「人材育成基本方針」として定めていて、どのような職員を育成していくかについても提示しています。
具体的には、「成長・進化志向」「倫理・奉仕志向」「創造・挑戦志向」「共感・協働志向」「経営・発信志向」という5つの項目を目指す職員像として示していて、これに沿いながら、職員ひとり一人が持っている個性と能力を尊重した人材開発を行っています。
編集部
市役所のお仕事というと、決められた仕事をこつこつこなしていくというイメージを持たれている方も多いのではないかと思うのですが、「進化志向」「挑戦志向」などというチャレンジ精神も求められているのですね。
小山さん
そうですね。水戸市は中核市にも指定されており、職員ひとりひとりが果たすべき役割も大きいです。高度化・多様化する市民のニーズに対応できるよう、DX化などを含めた新しい取り組みにも積極的に取り組んでいるところです。
こうした環境下において、職員ひとり一人が新しいことにチャレンジするということも強く求められているんです。
職員のリクエストも歓迎!充実した研修プログラムで学びを支援
▲水戸市役所では、基礎研修から新しい分野の研修まで、さまざまな学びの機会が用意されている。
編集部
職員の皆さんが必要とされる能力を身につけるための、研修制度やサポート制度などについても教えていただけますか?
小山さん
職員の経験年数や役職に応じた基本研修、公務員として必要な知識や技能を習得するための一般研修など内容はさまざまです。
職員の自己啓発を支援するための自主研修というものもあって、資格取得の経費の助成や、通信教育講座等の受講費の助成、自主的に勉強する研修グループへの支援などを行っています。
編集部
自己啓発に取り組みやすい環境が整っているということですね。
技術の進化など、時代が変化する中で、新しい分野の研修なども取り入れていらっしゃるのでしょうか?
小山さん
そうですね。研修内容については、職員からのリクエストも取り入れながら、随時見直しを行っています。
例えば最近では、DXに関する研修や、ナッジ理論という行動経済学分野の研修なども実施しました。
ナッジ理論では、「どうしたらガン検診の受診率をあげられるか」など、身近なテーマをとりあげてワークショップも行いました。すぐに実務に取り入れていただける内容で、たいへん好評をいただきましたよ。
編集部
基礎を築くための研修以外にも、さまざまな研修が実施されているのですね。職員の皆さんの声も取り入れることで、主体的に学ぶ意欲も沸きそうです。
若手の育成にも注力。入庁3年目から政策を考える研修も
▲若手職員を対象とした政策形成研修では、グループワークで活発なディスカッションが行われている。
編集部
研修を企画・運営されている中で、実際に職員の皆さんからいただいた印象的な声や嬉しい反響があれば教えてください。
白土さん
私は新規採用職員の研修を担当しているのですが、「業務が少し苦しいなと思っていた時に研修を受けたことで、気持ちがリセットされた」といったような、前向きな言葉をかけてもらったときは、やはり嬉しいと感じますね。
入庁したばかりの方だと目の前の業務等で手一杯になってしまいがちですが、研修で何か新しい気付きを得たり、ほかの職員と交流したりする機会を持つことは、気持ちの面でもプラスに働いていると感じています。
編集部
スキルアップの面ではもちろん、モチベーションの面でも、いい効果が出ているということですね。
野上さんはいかがでしょうか?印象的な声があれば教えてください。
野上さん
私が担当している研修の中に、3年目から5年目くらいの若手職員を対象とした「政策形成研修」というものがあります。
これは、今の水戸市の状況を踏まえて新たな政策を考えて提案するというグループワーク研修で、最終的には副市長や部長の前でプレゼンまで行うんです。
正直なところ、受講者は異動の経験もがまだないか、あっても1回くらいの若手職員なので、市役所全体の業務を把握することはまだ難しく、提案の内容はやはりまだまだ甘いところも多いです。
ですが、若いうちに広い視点で政策を考えるという機会を持つことは、自分の課題や目標を考えるよい機会にもなるようで、研修後のアンケートでは、「自分の考えが足りないところがわかった」「今後、こういうところを伸ばしたいと思った」などの声を多くいただいています。
編集部
確かに、そのような気付きは今後のキャリアにもつながっていきそうですね。
野上さん
そうですね。他の自治体さんの話を聞くと、政策形成研修自体はやっているところもあるようですが、やはり異動を複数回経験した9、10年目以降の方を対象として実施するのが一般的なようです。
しかし、若い受講者たちから実際に前向きなコメントをいただくと、早いうちからこのような機会を提供するメリットを感じますし、やってよかったと思いますね。
ジョブローテーションで視野を広げ、キャリアを描く
編集部
入庁後のキャリアは人によってさまざまなのだとは思いますが、ずっと同じ部署に所属するというよりは、異動を経験しながらキャリアを積むことになるのでしょうか。
小山さん
そうですね。通常ですと3年から5年ぐらいを目安に、ジョブローテーションを行っています。窓口、事業分野、管理分野など、できるだけ幅広い業務を経験していただくことで、自分の適性ややりたい仕事を見つけていただいています。
編集部
異動先については、職員の皆さんの希望も反映されるのでしょうか?
小山さん
そうですね。任意の提出ではありますが、毎年自己申告という形で、やりたい仕事などを申し出ていただいています。当然100%というのは難しいですが、適性や経験も踏まえて、できる限りで本人の希望もお聞きしながら判断しています。
編集部
複数の部署で幅広い経験を積み、スキルアップしながら自分のキャリアビジョンを描けるということですね。
DXで実現する「誰一人取り残されない、人にやさしいまち」
編集部
新しい領域の業務に関して、これまでDXというキーワードが何度か出てきましたが、水戸市のDX化の取り組みの概要や状況について教えていただけますか?
小山さん
DXの必要性や重要性が高まってきている状況の中で、水戸市では、「誰一人取り残されない、人にやさしいまちづくり」を目標に掲げ、DX化の取り組みを進めています。
現在(2023年12月)、取り組みの方向性を明確化するために「水戸市デジタルまちづくりビジョン」という指針を策定中なのですが、ここでは「行政のデジタル化」「まちのデジタル化」「デジタル格差対策」を3本柱としたさまざまな施策を提示しています。
編集部
デジタル格差もある中で、「誰一人取り残されない」を目指さなければならないという点に、民間企業の一般的なサービスとは違う難しさを感じます。
小山さん
そうですね。すべての方に納得いただくというのは難しい部分もありますが、できる限り多くの方にご納得・ご利用いただけるように取り組みを進めていくのが使命だと思っています。
デジタル市役所の実現や子育てアプリも。市民サービスの向上に尽力
編集部
水戸市ですでに重点的に取り組んでいる、DX化の代表的な事例を教えていただけますか?
小山さん
例えば行政のデジタル化というところでは、「行かない窓口」「書かない窓口」「待たない窓口」という、デジタル市役所の実現というものがあります。住民手続き、税、子育てなどのさまざまな分野で、市役所で行う申請等の手続きのオンライン化・デジタル化を重点的に進めているところです。
2023年3月時点で、国が示している「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき59の手続」のうち14の手続きのオンライン化が完了していますが、今後、更なるオンライン手続きの拡充と利用促進に取り組んでいく予定です。
その他、直近のトピックとしては、「子育て応援アプリ」を独自にリリースしました。
茨城県における「茨城県DX推進プロジェクト」の実証実験に手を挙げて参画し、民間企業様と関係各課が連携して開発したアプリで、お子さんの成長の記録、子育てに関する情報の入手、施設検索などを行っていただけます。
編集部
いずれも、市民の皆さんの利便性向上に直結しそうですね。水戸市では、SNS活用による情報発信も積極的に行っていますよね。
小山さん
はい。LINEやX、Instagram、Facebookなどのデジタルツールを活用して、子育て・防災・ごみ収集など生活に関する情報・イベント情報など、さまざまなお役立ち情報を積極的に発信しています。
編集部
実際にいくつか拝見させていただきましたが、とても充実した情報を発信されていますよね。
自治体によってDX化の取り組み状況はさまざまかと思いますが、今お聞きしただけでも、水戸市では積極的に市民サービスの向上につながる取り組みを進めていらっしゃるということを感じました。
庁内の業務の自動化・電子化も。業務効率化を実感
編集部
デジタルの活用は、市民の皆さんの利便性向上にだけでなく、水戸市役所の職員の皆さんの業務効率化も実現できそうですね。
小山さん
そうですね。庁内の業務の効率化についても、「水戸市デジタルまちづくりビジョン」の中で明確に掲げている重点取組項目のひとつです。
例えば、2020年からRPA(※)の本格導入を開始して、すでに現時点(2023年12月)で46業務の作業自動化が完了しました。実際に、業務時間の削減の効果も出てきています。
(※)Robotic Process Automationの略。人がパソコンを使って行っている事務業務を自動化する技術のこと。
編集部
人事課の皆さんも、肌感覚として楽になったと感じることはありますか?
小山さん
RPAに関しては、人事課では導入している事例があまりないのですが、さまざまな業務のペーパレス化・電子化なども進められていますので、そのような部分では効果が出てきていると感じています。
例えば採用試験なども以前は紙ベースで申し込みを受け付けていたのですが、電子化されたことでデータ入力作業も不要になり、かなり楽になりましたね。
若手の意見を歓迎!年次問わず活躍のチャンスあり
編集部
例えば、DXなどの分野に関しては、若い方の方が感度が高いイメージがあるのですが、水戸市役所では何か新しいプロジェクトを遂行する際に、若手の意見が採用されたりする機会もあるのでしょうか?
白土さん
そうですね。デジタル分野に関わらず、どこの課においても、何か新しいことを検討するときには若い方や現場の方など、さまざまな意見を吸い上げて反映しているのではないかと思います。年次などの属性に関わらず、意見が言いやすい組織風土は、水戸市役所の魅力のひとつだと感じています。
野上さん
先ほど、若手職員を対象とした政策形成研修の話をさせていただきましたが、そういう場でも活発に意見交換が行われますし、出た良いアイデアが、実際に政策に繋がったというケースもあるんですよ。
編集部
組織として、若手の意見をどんどん吸い上げて反映していくことを大事にするカルチャーが根付いているのですね。
小山さん
そうですね。今年の採用者に向けた市長の挨拶の中でも、最初に「若いからこそものを言っていただきたい」という強いメッセージがありました。
若い職員の意見は組織の活性化にも繋がりますので、積極的に意見を出してもらいたいというのが、トップである市長の想いでもあるんです。
編集部
皆さんが採用や育成に関わった方の中で、若いうちから活躍されている印象的な事例があれば教えてください。
小山さん
さまざまな方がいますが、私が採用試験を担当した方の中で、得意分野を活かして水戸市の「みとちゃん」というキャラクターの応援ソングを作り、それが小学校の授業やイベントなどで活用され、市全体の盛り上げに貢献した方などもいましたよ。
編集部
若手ならではの活躍事例ですね。若手にも活躍の場が与えられる水戸市役所のカルチャーがよくわかりました。
市民会館オープンで賑わいを増す水戸市は魅力がたくさん
▲偕楽園で行われる梅まつりでは、約3,000本の梅の木々の中を散策できる。
編集部
続いて、水戸市の魅力についてお聞きしたいと思います。
市民の皆さんから好評をいただいている、水戸市の良いところや旬なトピックがあれば、教えてください。
白土さん
旬なトピックで言うと、2023年の7月にオープンとなった市民会館ですね。著名アーティストの公演や、G7広島サミットの関係閣僚会合など、大きなイベントも行われています。
オープン後、市民の皆さんからの評判もとてもいいですよ。百貨店と市民会館が繋がっているので、若い方も百貨店に遊びに行ったついでに寄ったりしてくれているようで、採用活動で学生さんと関わるときにも、市民会館の話がよく出るんです。
編集部
市民会館は、今後、水戸市の賑わいの拠点となることが期待できそうですね。
野上さん、小山さんも、自慢できる水戸市のトピックがありましたら、教えてください。
野上さん
プロスポーツチームが2つあるというところも、他の都市にはなかなかない水戸市の魅力だと思っています。
「水戸ホーリーホック」というプロサッカーチームと、「茨城ロボッツ」というプロバスケットチームがあるのですが、市民の皆さんも応援したり観戦しに行ったりして、楽しんでいますので、今後も大事にしたいと感じています。
小山さん
年間を通して、さまざまなイベントも行われていますよ。例えば、夏には「黄門まつり」が開催され、山車や踊り、花火などで盛り上がります。
2月から3月にかけては、日本三名園の一つである偕楽園で梅まつりが開催されています。約3,000本ある梅の景色は、本当に綺麗ですよ。
▲毎年夏に行われる「黄門まつり」では、山車や踊りで多くの来場者が賑わう。
編集部
私も偕楽園は何度か訪れたことがあります。四季折々の風景が見られて、素晴らしい場所ですよね。
今お聞きしただけでも、水戸市の賑わいが伝わってきました。こうしたイベントや事業には、水戸市役所の職員の皆さんも多く関わっていらっしゃるのだと思いますが、職員の皆さんのやりがいにもつながりそうですね。
公務員のイメージにとらわれず挑戦できる人を募集
編集部
最後に、水戸市役所に興味を持たれた方に向けて、お三方からメッセージをいただけますか?
野上さん
市役所は、大学新卒の方が多いというイメージがあるかもしれませんが、実は私も含めて、転職組も多いです。もともと別の自治体や行政機関の公務員だった人が水戸市に入庁してくるというケースも結構あるんですよ。
同じ公務員の方からも水戸市が選ばれる理由のひとつに、子育てなどプライベートとの両立もしやすい職員環境というのがあると思っています。私も子育て中なのですが、例えば子どもの急な体調不良のときも周囲のメンバーが優しくフォローしてくれます。支え合いの精神を持った職員が多いんですよね。
もし水戸市役所で働く機会がありましたら、そのようなカルチャーも感じていただければと思います。
白土さん
水戸市は中核市となり、新しい市民会館がオープンするなど、近年もどんどん賑わいが増しています。それに伴い、対応すべき市民の皆さんからのニーズも増えてきていますし、職員の果たすべき役割も大きくなっています。
そのため、入庁して1年目でも、皆さん責任を持って仕事に当たっています。使命感や、やりがいを持ってチャレンジし続けたいという方には、魅力的な環境なのではないかと思います。
中核市として県内の市町村を引っ張っていきたい、という気持ちをお持ちの方は、ぜひご応募いただければと思います。
小山さん
公務員というと、決められたことだけやっていればいいというイメージがどうしてもつきまとうこともあるんですが、水戸市は年代問わず職員それぞれの意見を非常に大事にしておりますし、新しいことにも積極的にチャレンジしています。
公務員のイメージにとらわれず、「市民のために役立ちたい」「こんなまちを作っていきたい」というような意志、やる気のある方からの募集をお待ちしております。
編集部
インタビューを通して、新しいことに挑戦する姿勢を感じましたし、それを後押しする風土や研修制度なども充実しているということがよくわかりました。
本日は、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
■取材協力
茨城県水戸市:https://www.city.mito.lg.jp/index2.html
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