先進性のある働き方や価値観を取り入れる企業へインタビューするこの企画。今回は「新しい価値交換を、もっと身近に」というミッションを掲げ、暗号資産取引などのサービスを展開するコインチェック株式会社を取材しました。
コインチェック株式会社:デジタル経済圏のゲートウェイ企業
コインチェック株式会社は暗号資産(※1)取引サービス「Coincheck」やNFT(Non-Fungible Token)(※2)マーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」などを運営する企業です。「新しい価値交換を、もっと身近に」というミッションを実現するため、わかりやすさや使いやすさにこだわったサービスを提供しています。
(※1)暗号資産…インターネット上で使える通貨で、暗号通貨・仮想通貨とも呼ばれる。円やドルなどの法定通貨とは異なり、紙幣や硬貨は発行されていない電子的な通貨。
(※2)NFT…ブロックチェーン技術を用いて発行される、唯一無二のデジタルデータを示すトークン。主にイーサリアム(ETH)のブロックチェーン上で構築される。
会社名 | コインチェック株式会社 |
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住所 | 東京都渋谷区円山町3-6 E・スペースタワー12F |
事業内容 | ・暗号資産取引サービス ・NFTマーケットプレイスサービス ・法人向けの暗号資産やNFTの購入および売却 ・企業などが発行したユーティリティトークンの審査、販売 ・メタバース事業など |
設立 | 2012年8月28日 |
公式ページ | https://corporate.coincheck.com/ |
コインチェック株式会社では社員の多様性を尊重し、心身の健康を守るための仕組みを整備しています。社員のウェルビーイング(※)向上に力を入れているほか、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の推進にも積極的に取り組んでいます。
(※)ウェルビーイング…身体的、精神的、社会的に良好な状態であること。個人が持つ能力を最大限に発揮し、人生の様々な課題に適応できる状態を指す。
今回は、そうした社員の多様性を大切にする仕組みや、DEIへの取り組みについてウェルビーイング室の奥野さんと浜田さん、広報の横島さんにお話を伺いました。
コインチェック:暗号資産交換業界をリードする革新的サービス
▲コインチェックが運営するCoincheckのサービス。暗号資産の購入や顧客同士の売買のマッチング、大口取引などが可能
編集部
まずはじめに、コインチェックさんの事業内容について教えてください。
横島さん
当社は「新しい価値交換を、もっと身近に」というミッションを掲げ、暗号資産の取引サービスCoincheckや、NFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」などの事業を展開しています。
Coincheckは500円相当額から暗号資産を購入できるサービスで、国内のアプリダウンロード数が2019年から2022年まで4年連続で1位となっています。また、2023年1月に開設した法人向け窓口「Coincheck for Business」も好評をいただいています。
Coincheck NFT(β版)は、NFTの出品・購入・保管がワンストップで行えるマーケットプレイスです。当社は暗号資産サービスで培った顧客基盤を活用し、NFTおよびメタバースの分野へ事業展開を進めています。このユニークな事業ポートフォリオにより成長を図り、国内の暗号資産交換業をリードしています。
さらに、IEO(Initial Exchange Offering)(※)も実施しており、国内で行われた3案件のうち2件を当社が手がけています。
(※)IEO…暗号資産を用いて企業がプロジェクト推進のための資金調達を行う方法
使いやすさへのこだわり:デジタル経済圏への入り口としてのUI/UX設計
編集部
「新しい価値交換を、もっと身近に」というビジョンの達成や、暗号資産取引などを身近に感じてもらうために工夫されていることがあれば教えてください。
横島さん
暗号資産取引などをより身近に感じてもらうために、当社はシステムを内製化し、初心者でも直感的に使えるUI/UXの提供を心がけています。
▲Coincheckの使いやすいUI/UXへの高い評価はアプリダウンロード数や預かり資産などの数字にも表れている(会社概要資料より)
横島さん
暗号資産やNFTに敷居の高さを感じる方もまだたくさんいらっしゃると思います。そのような中で、当社は新たにデジタル経済圏に参加したい方が最初に出会う企業であり、サービスでありたいと考えております。デジタル経済圏に入ってくる方を迎えるゲートウェイとして、その門を広く開けておきたいのです。
▲デジタル経済圏のゲートウェイとして暗号資産取引をはじめとする多様なサービスを展開している(会社概要資料より)
編集部
暗号資産の取り扱いは高いコンプライアンス意識が求められますが、コインチェックさんではどのような対策をされているのでしょうか。
横島さん
当社は上場企業グループとして求められる水準のリスクマネジメントを実施していますし、高い頻度で社員への研修も実施しています。金融機関なので当然のことではありますが、安心してサービスをご利用いただけるような体制を整えています。
編集部
システムを内製化している点はコインチェックさんの大きな強みだと感じました。使いやすいプラットフォームの開発を通し、NFTなど社会を変革する可能性を秘めたサービスへの門戸を多くの人へ開いていくことは、エンジニア志望の転職希望者にとって、やりがいを感じられることではないでしょうか。
社員に寄り添う「ケア休暇」:生理休暇の有給化と不妊治療への対応
編集部
コインチェックさんでは社員のウェルビーイングを重視していると伺いました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
奥野さん
取り組みの一例として、生理休暇を有給化した「ケア休暇」を設けています。法律で定められていることもあり、他社でも生理休暇は設けていますが、その多くは無給扱いで制度としての柔軟性に欠けています。当社のケア休暇は単に生理休暇というだけでなく、男女問わず不妊治療のための通院にも使えるなど幅広い用途に対応しています。
また、2022年12月に新設された「ウェルビーイング室ウェルビーイングセンター」という部署も、当社のウェルビーイングへの取り組みの一環です。私、奥野と同席の浜田優和さんはこの部署に所属しています。
私自身はもともと労務管理に携わっていましたが、社員のさらなる健やかな働き方を目指すために、組織が抱える課題を解決したいと考え、2021年4月からウェルビーイングに関する様々な取り組みを始めました。
編集部
コインチェックさんのケア休暇は女性社員だけでなく、パートナーと共に不妊治療に取り組む男性社員にとってもありがたい制度ですね。実際、どのように社員の方はケア休暇を利用しているのでしょうか。
奥野さん
実際に女性特有の体調不良で利用する社員もいますし、婦人科の待ち時間が長いため、婦人科系の持病で通院しなければならない場合などに利用する社員もいます。
また、ケア休暇以外にも、社員のウェルビーイングを向上させるため、定年の延長および選択型定年制度の導入、産前産後の通院時間の有給化、看護介護休暇を1年に5日まで有給化するといった取り組みを行っています。
ウェルビーイングへの取り組み:「ホワイト企業アワード」受賞の背景
編集部
「ケア休暇」など、2021年の春から始まったウェルビーイングへの一連の取り組みが、どのような経緯をたどり、ウェルビーング室の設立へと繋がっていったのでしょうか。
奥野さん
ウェルビーング室の設立を後押ししたことの1つに、当社のウェルビーイングへの取り組みが評価され、2021年にホワイト財団様が主催する「ホワイト企業アワード」を上期・下期ともに受賞できたことが挙げられます。
この受賞を機に、私の中でウェルビーイングに対する取り組みをより強化したいという想いが強まりました。そこで役員に提案し、2022年の秋にウェルビーング室が設立されたのです。
編集部
産前産後の通院時間の有給化など、コインチェックさんではお子様がいる女性社員へ向けた制度も充実していると感じます。こうした制度の利用状況や、利用する社員に対する周りの社員の反応はいかがでしょうか。
奥野さん
当社は家庭を持つ社員も多いので、家族のことで休む社員に対して周りの社員も非常に寛容ですし、仕事の面でも助け合う文化があります。
例えば、子どもの体調不良で通院に付き添う社員がいると、他の社員がSlackで「かぞくだいじに」「こどもだいじに」といったスタンプを送ったりします。家族のことで休む場合でも、非常に心理的安全性が保たれていると感じています。
編集部
ケア休暇などの制度があるだけでなく、それを気持ちよく利用できる社内文化が形成されている点も素晴らしいですね。他の社員の事情を思いやれる文化があるコインチェックさんであれば、新しく入社する方も安心して働けると思います。
健康経営の実践:社員の心身をケアする多様な制度
編集部
ウェルビーイングの向上には、心と身体のケアが大切だと思います。社員の心身の健康をサポートする制度はありますか?
奥野さん
健康面でのサポートについては、健康診断を全額会社負担にしています。女性特有の疾患に対する配慮として、子宮頸がんや乳がんの検査も会社負担で受けられます。また、日々の健康意識を高めるため、簡単な健康に関するミッションをクリアするとポイントが貯まり、そのポイントを使って専用の自販機で健康飲料と交換できるサービスも導入しています。
メンタルケアについては、私がカウンセラーの資格を持っているため、社内カウンセリングを実施しています。心身のケアは日頃からの意識付けが大切ですので、ウェルビーイングセンターでは毎週、健康に関する記事を社内に向けて発信しています。
編集部
コインチェックさんではウェルビーイング室を設け、様々な制度と取り組みで健康経営を実践しているのですね。心身のケアがしっかりしていることで、社員の方も安心して毎日元気に働けそうです。
ウェルビーイングとDEIの融合:多様性を尊重する職場づくり
編集部
ウェルビーイング室として、社員のウェルビーイング向上の他に、取り組まれていることがあれば教えてください。
奥野さん
ウェルビーイングの向上と関連して、当社では働き方や社員のマインドセットの面からSDGsの課題解決に取り組んでいます。
SDGsの17のターゲットの中で、当社が特に注力しているのは、3番目の「すべての人に健康と福祉を」、5番目の「ジェンダー平等を実現しよう」、8番目の「働きがいも経済成長も」、10番目の「人や国の不平等をなくそう」、16番目「平和と公正をすべての人に」といった課題です。
先ほど述べたウェルビーイングへの取り組みは、健康や福祉、ジェンダー平等、働きがいといった課題解決に直接つながっています。
編集部
不平等や公正に関する課題についてはどう取り組んでいるのでしょうか。
奥野さん
不平等をなくし、多様性を認め公正さを保つという課題については、ウェルビーイング室で2022年12月に「DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)(※)ポリシー」を定めました。
(※)DEI…多様性を尊重し、公平に扱い、それぞれが持つ能力を活かすという考え方
多様性を認めるには、個々の思い込みを取り払う必要があります。そのためには会社としての方針が明文化されたポリシーが重要です。DEIポリシーにのっとり、多様性を認め、受容する文化を広めていくことを会社として明確に示しました。
編集部
社員それぞれの思い込みや思考の癖といったマインドセットの変化を促すのはなかなか大変そうですね。
奥野さん
マインドセットの変化を促すために、DEIポリシーの制定に加えて「アンコンシャス・バイアス(※1)研修」も実施しています。2022年度には、NLP(Neuro Linguistic Programming)(※2)という心理学の手法を活用し、仕事で大切にしている価値観について、5名程度のグループで話し合うワークショップも開催しました。
(※1)アンコンシャス・バイアス…自分自身では気づいていない物事の見方のゆがみ
(※2)NLP…「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる言語学を取り入れた心理学
当社では社員同士が語り合うことで、気持ちを共感したり、お互いについてわかり合うことを非常に大切にしているため、定期的に研修やワークショップを開催しています。
編集部
ウェルビーイングに関する制度、DEIポリシーの制定、研修やワークショップ。これらの取り組みにより、SDGsの課題解決を目指しているわけですね。SDGsは社会的にも関心が高いため、興味を持つ転職希望者も多いと思います。
「MOST」バリュー:共感とチームワークで組織を強化
編集部
ここまで、ウェルビーイングやSDGsへの取り組みについて伺ってきましたが、コインチェックさんはどのようなバリューを掲げているのでしょうか。
奥野さん
当社は「新しい価値交換を、もっと身近に」というミッションを社員が体現していくためにチームワーク・オーナーシップ・サプライズ・フェアネスという4つのバリューを定めており、これを「MOST(モスト)」と呼んでおります。
4つのバリューについて、1つずつ簡単に説明しますと、チームワークはチームの成果のために行動すること、オーナーシップは自分の仕事に責任と誇りを持つこと、サプライズは相手の想像を超える価値を提供すること、フェアネスは倫理観を持ち、誠実に行動することを指しています。
▲「MOST」の「M」の「Maximize」など4つの頭文字が会議室の名称にもなっており、日頃からバリューを意識できる工夫がされている
奥野さん
4つのバリューの中でも特に当社が大切にしたいと思っているのが、チームワークとフェアネスです。チームワークには、チームの成果を最大化することにコミットするだけでなく、他者の意見を尊重し、共感の気持ちを持ちながら仕事をするといった、多様性・公平性・包括性の観点も含まれています。
高い目標を掲げて自分の仕事に集中するオーナーシップを果たしながらも、周りの社員に良い影響を与えるということも非常に大切にしています。また、役職にとらわれず建設的な意見を述べることもチームワークの1つとして捉えています。
フェアネスについては、オープンなコミュニケーションや、自分よりスキルを持つメンバーを尊重するといった誠実さを重視しています。相手の立場に立った発言や行動が、社員同士の信頼感を高め、組織を強くするからです。
浜田さん
評価についてもこの4つのバリューに基づいた行動がどれだけ取れたかで判断しています。半期に一度「MOST Awards」といって、バリューを一番体現できた人を社員の投票で選び、表彰するイベントも開催しています。こうしたイベントを通じて、バリューの浸透を図っています。
求職者へのメッセージ:「仕事をもっとおもしろく」コインチェックの挑戦
編集部
最後にコインチェックさんに興味を持たれた方に、奥野さんと浜田さんからメッセージをお願いします。
奥野さん
当社にご関心を持っていただいた方へのメッセージを一言でいえば「仕事をもっとおもしろく。最高の仲間と最高のテクノロジーで時代を加速させよう」ということになります。
当社は様々な意見、様々なバックグラウンドを認める組織でありたいと思っております。現在、在籍している社員も元から暗号資産に関わりがあった者ばかりではありません。ですから、これまで暗号資産に関わりがなかった方も、当社のミッションやビジョンに共感していただけるのであれば、ぜひ飛び込んでいただきたいです。
業界未経験であっても、高い目標を持ち、妥協せずやり抜くことができ、他者を受容し、チームワークを大切にできる方であれば歓迎いたします。ぜひ私たちと一緒に「仕事をもっとおもしろく。最高の仲間と最高のテクノロジーで時代を加速」させましょう。
浜田さん
SDGsの話で奥野がお伝えしたように、ウェルビーイング室として社員のDEIを推進しておりますし、当社には多様性を認め、尊重する文化があります。採用においても国籍や性別などがハンディキャップになることはありません。まさにそうした無意識の偏見こそ当社がなくそうと取り組んでいることなのです。
まずはあらゆる方に当社のことを知っていただき、もしご縁があれば入社していただきたいです。当社のバリューに共感していただける方であれば、同じ目標、同じ目線でともに仕事に励めるのではないかと思っております。
編集部
本日はありがとうございました。
■取材協力
コインチェック株式会社:https://corporate.coincheck.com/
採用ページ:https://corporate.coincheck.com/recruit