独自のサービスと若手の活躍で成長を続ける企業をインタビューする本企画。今回は、自動運転や災害対応、ドローンなどの無人航空機の安全性を担保するために欠かせない「高精度位置情報」をさまざまな産業に提供しているダイナミックマッププラットフォーム株式会社にお話を伺いました。
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社とは
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社は、自動車の自動運転・先進運転支援システムや自律型モビリティ、空港管理、防災・減災、無人航空機の安全な飛行等のために欠かせない空間情報をデータ化し、あらゆる企業に提供しています。目指しているゴールは「この地球のすべてをデジタル空間に」です。海外にも事業を展開しており、独自の領域で強みを発揮しています。
会社名 | ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 |
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住所 | 東京都渋谷区渋谷2-12-4 ネクストサイト渋谷ビル12階 |
事業内容 | 自動運転・ADASをはじめ多様な産業を対象とした高精度3次元データの提供 |
設立 | 2016年6月13日 |
公式ページ | https://www.dynamic-maps.co.jp/ |
自動運転などの新技術が世の中で求められると同時に、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社も設立以来成長を続けています。成長要因の一つとして挙げられるのが、若手が活躍できるカルチャーです。
事業の強みや実際の若手社員の活躍ぶりについて、社長室長の猪俣光俊さん、データ統括部データ製造課の久保田涼太郎さん、人事部採用担当の沖田晴子さんにお話を伺いました。
自動運転や防災に欠かせない「空間情報のデータ」を扱う
▲空間情報を測定するシステムを搭載した計測車両などを活用してデータを収集している
編集部
初めに、ダイナミックマッププラットフォームさんの事業内容について伺わせてください。
猪俣さん
ダイナミックマッププラットフォームの事業内容は、一言で言うと「高精度3次元データの生成と提供」です。あらゆる場所や物の「空間情報」を集めデータ化し、様々な産業で役立つプラットフォームを提供しています。
ダイナミックマッププラットフォームが設立以来続けている主要サービスは、自動運転・先進運転支援システムに欠かせない高精度3次元地図データ(HDマップ)の提供です。こちらの地図データは、道路上の区画線や道路標識など実際に存在するものだけでなく、現実世界に実在しない車線の中心線などをデータ化しています。
空間情報のデータの活用先は、自動運転のみにとどまりません。ドローンや防災、インフラ管理といった幅広い分野で役立つものであり、現在多くの産業に用途が広がっています。
編集部
空間情報のデータは具体的にはどのように活用されているのでしょうか?
猪俣さん
空間情報のデータは、例えば除雪作業の現場でご活用いただいております。
除雪作業というのは従来、経験豊富な熟練者によって進められてきた作業です。しかし高齢化が進む中で熟練者の引退が進むと、経験の浅い作業者には「ガードレールやマンホールがどこにあるのか雪に埋もれて分からない」という状況が発生してしまいます。そのまま作業を進めてしまうと、マンホールを傷つけたり、重大な事故につながってしまいます。
そこで、冬に除雪作業を行う際は、ダイナミックマッププラットフォームが夏の間に測定した除雪作業範囲の空間情報をもとに、カーナビのように自己位置や障害物等の位置を正確に手元の端末で確認しながら作業を進めていただいているのです。作業の経験があまりない方でも、安全に作業に取り掛かっていただけます。
編集部
自動運転だけでなく、さまざまな現場で空間情報のデータが活用されているのですね。ほかの活用シーンとしてはどんなものが挙げられるでしょうか?
猪俣さん
空間情報は、カーボンニュートラル実現に向けた取組みの中でも活用されています。電気効率の向上は、電気自動車の業界で盛んに研究が進められているテーマです。
電気自動車は、坂を登ると電気が使われ、下ると電気が貯まっていきます。ダイナミックマッププラットフォームは空間の高さのデータも正確に持っていますので、データを活用することで道路ごとの電気消費量・充電量といったガソリン車でいう「燃費」の計算をより正確にシミュレーションすることが可能となります。
これに基づいて、CO2排出量を抑えたルート探索や効率的な充電ステーションの設置等に役立てることができます。
アメリカ企業の買収で事業拡大のスピードアップを実現
▲グループ会社メンバーとのコミュニケーションも活発
編集部
海外にも事業を展開されているそうですが、現状についてお教えください。
猪俣さん
ダイナミックマッププラットフォームは2019年にアメリカの同業会社を買収しました。それを皮切りに、海外展開を進めています。スタートアップ企業が、海外買収をすること自体珍しいことだと思います。
現在(2023年8月時点)、ダイナミックマッププラットフォームには280人ほどの社員が在籍しているのですが、約3分の2がアメリカで働いています。市場が大きいアメリカで事業の拡大を図っているという状況です。
編集部
アメリカの企業を買収することで得られたメリットは何でしょうか?
猪俣さん
ダイナミックマッププラットフォームの社員は8割ほどがエンジニアです。アメリカのエンジニアと日本のエンジニアで相互交流が深まり、研究開発が加速化していることは、買収のメリットの一つとして挙げられるでしょう。
また、買収した会社がアメリカの大手自動車メーカーであるゼネラルモーターズと関係が深かったことも利点の一つですね。
ダイナミックマッププラットフォームは、会社設立の経緯から日本の主要な自動車会社が株主に含まれています。そのような背景もあって日本の自動車業界とは良好な関係を構築してきたのですが、欧米の自動車業界とは一から関係を構築する必要があり、容易ではありませんでした。
その点、買収をきっかけに世界最大規模の自動車メーカーとスムーズに密接な関係を構築できたことは成長の大きな要素です。これらのメリットがあったことで、よりグローバルな事業拡大のスピードを加速することができました。
編集部
社内ではエンジニアの交流、社外では大手自動車メーカーとの関係構築など、内向き外向き両面で良い効果が得られたのですね。
社会的にサービスが求められ毎年成長を実現
▲ダイナミックマッププラットフォーム株式会社の吉村修一社長と北米子会社のChris Thibodeau社長
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんの業績について伺わせてください。
猪俣さん
ダイナミックマッププラットフォームは直近5年間平均で年率約50%のペースで売上高が伸びています。成長の要因としては、ダイナミックマッププラットフォームのビジネスが様々な社会課題の解決に役立ち、ニーズが高いということが挙げられるでしょう。
例えば、日本ではこれから高齢化が進みます。高齢者の自動車事故が増えることが予想される中で、快適かつ安全な自動運転を実現しなければなりません。
また、過疎地域の人流をどうするかという観点でMaaS(マース)(※1)等の特定エリア内でのモビリティサービスが注目されていますし、物流業界の2024年問題(※2)の観点でトラックの隊列走行も実用化が進められています。ダイナミックマッププラットフォームが取り扱っているデータは、それらの課題解決にも貢献できるのです。
(※1)Mobility as a Serviceの略語。鉄道やバス、カーシェア、自動運転など複数の公共交通機関、移動サービスを組み合わせ、最適な移動を実現することや、それを目的とした検索・予約・決済などを一括で行うサービスを指す。
(※2)2024年4月1日から適用される「働き方改革関連法」に関連して物流業界に発生するさまざまな問題のこと。年間時間外労働時間の上限規制が物流業界にも適用されることで、輸送距離の制限から収入が減少し、労働力不足に拍車がかかることが懸念される。
編集部
社会的な需要が高いダイナミックマッププラットフォームさんのサービスですが、競合は存在しているのでしょうか?
猪俣さん
競合については、日本にはいないのではないかと思います。ダイナミックマッププラットフォームは、HDマップの開発を実現するために、政府主導のプロジェクトから「オールジャパン」という姿勢で設立された会社です。高精度な空間情報のデータを扱うために関係各社が出資し、協調しながら事業を進めております。
世界に目を向けてみると、欧米には同じような事業を展開している会社はあります。しかし、ダイナミックマッププラットフォームのように日本、アメリカ、欧州と世界中広範囲のデータをカバーし、一桁cm級の精度の高さを実現できているところは他にはないと思います。
編集部
独自の分野でサービスを展開しているからこそ、成長を続けられているのですね。
「自分たちで会社を作る」という方針のもとプロパー社員も増加
編集部
成長を続けられているダイナミックマッププラットフォームさんですが、成長と並行して社員数も増えているのでしょうか?
沖田さん
先ほどお伝えした通り、ダイナミックマッププラットフォームはさまざまな会社が出資し設立されました。そのため出向者で構成される会社でしたが、2018年の後半から直接雇用を始めました。
直接雇用の社員は2019年4月1日時点で4名でしたが、現在は61名にまで増えています。2年ほど前から「自社採用を強化する」という方針を掲げ、直接雇用の社員を増やしてきました。
さまざまな分野から人が集まってきているというのも、成長要因の一つだと思います。
編集部
幅広い業界にサービスを展開しているからこそ、さまざまな分野の人材が活躍できると感じました。成長過程にある会社で働くことで得られるやりがいは何でしょうか?
猪俣さん
成長企業であるからこそ、ダイナミックマッププラットフォームは新しいことにチャレンジできる環境にあり、それを期待されています。個人がやるべき業務も日々変わっていきますし、幅広いです。だからこそ楽しい部分もあるのではないでしょうか。
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんは未来の社会に必要不可欠なサービスを展開されています。未来の変化を楽しめることがやりがいの一つなのかなと感じました。
新卒2年目で海外出張やプロジェクトリーダーを経験
▲ハッカソンの打ち合わせをしている久保田さん(中央)たちのようす
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんでは若手の社員も活躍されているそうですが、活躍例として久保田さんのお話を伺わせてください。
久保田さん
私はダイナミックマッププラットフォームに新卒で入社して、現在2年目になります。入社前からもともと3次元データに興味があり、データ製造課に所属しております。
プロジェクトのリーダーを任せてもらったこともあるなど、普通の会社だったら2年目で経験できないであろうことを経験させていただいていますね。
編集部
実際にどんなお仕事を任せられているのでしょうか?
久保田さん
いろいろな仕事を任せてもらえていますが、特に印象深いのはイベントの企画とアメリカに出張したことです。
イベント企画については、ダイナミックマッププラットフォームの高精度3次元データをもっと知ってもらおうとハッカソン(※3)を昨年冬に企画しました。こちらの企画は成功して自分にとっても良い経験となりました。
企画する上でどのように予算を取っていくか、どのように上長から承認を得ればよいのかなど、会社のお金の使い方を学ぶことができました。先輩や上司の支援もありがたかったです。
(※3)ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語。エンジニアやプログラマーなどのソフトウェア開発の関係者がチームを組み、一定期間でプログラム開発やサービスを考案し、成果を競い合うイベント。新規事業の創出や社内外コミュニティの構築などの成果が期待できる。
次に、アメリカ出張についてですが、アメリカと日本の作業工程を統合するという目的で渡米しました。私のほか2名でアメリカへ向かったのですが、まずは向こうの作業工程を理解することから始めましたね。5日間ほど滞在し、現在は統合の方法について提案をしている段階です。
私はイギリスに12年間ほどいたことがあるのですが、自分の英語力を発揮できる環境で仕事ができていると実感しています。
編集部
入社前に持っていた関心や経験を生かしながら、思っていたような活躍ができているということですね。
久保田さん
ダイナミックマッププラットフォームに入社する前に達成したいと思っていたことが、予想よりも早く達成できています。自分の友人の話を聞いてみる限りでは、かなり早い段階でプロジェクトマネージャーだったり海外出張だったりを経験できていると思います。
編集部
新卒2年目では考えられないような経験ですね。所属年数に関係なく活躍できるダイナミックマッププラットフォームさんの社風が伺えます。
中途入社の社員は周りと協調しながら自走できる人材が多い
編集部
久保田さんは新卒で活躍されていますが、中途で活躍されている方はどんな方が多いのでしょうか。
沖田さん
中途で入社して活躍される方は、何事も積極的に前向きに取り組まれる方が多いですね。
ここ最近、中途入社の方はダイナミックマッププラットフォームの新規事業に興味を持って入社される方が多いのですが、やはり実際に扱っているデータについて理解することは難しいと考えています。すべての人が3次元データに関わっている業界から入社するわけではないので、ほとんどの方がはじめて扱う商材といっても過言ではないかもしれません。
ダイナミックマッププラットフォームが取り扱っているのは地図でなく『データ』として理解し、「データと何と結びつければおもしろいのだろう」と考えられる方が活躍されているように感じています。
編集部
自分でビジネスの楽しみを見つけられる人材が多いということですね。
沖田さん
これまで何かしらの経験を積んできたこともあると思いますが、ダイナミックマッププラットフォームに中途で入社する方は早くから自走する方が多いですね。とはいえ、基本的には周りへの信頼やリスペクトを忘れず協調しながら自走していってくれる社員が多いです。
ダイナミックマッププラットフォームは、誰か特定のスタープレーヤーがいるというよりは、自走できる人材がバランスよく揃っているという会社だと思います。
チャレンジングなカルチャーながら落ち着いた「大人」の会社
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんの社内の雰囲気についてもお教えください。
久保田さん
ダイナミックマッププラットフォームの社員は、フランクで接しやすい方ばかりです。オフィスがオープンな状態なこともあり、すぐに誰かに話しかけられる雰囲気があります。私は積極的に話したいタイプなので、いろいろな方にお話に付き合っていただいています。
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんの活発な雰囲気が伝わるお話ですね。
猪俣さん
スタートアップということで「まずはやってみよう」といったチャレンジングなカルチャーはありますが、程よく落ち着いた雰囲気もあると思いますね。
若手が活躍していますが、平均年齢は40歳ぐらいであり、年齢や経験、バックグラウンドが様々な方が集まっていることもあって、それぞれのバックグラウンドを尊重しています。
編集部
ダイナミックマッププラットフォームさんの社内の雰囲気はスタートアップと長い歴史を持つ企業のいいとこどりといえそうですね。
地道な仕事の先にあるものを作りたいという人材を歓迎
▲「地道に仕事を進めて『その先を作りたい』という方を歓迎したい」と話す沖田さん(左)
編集部
最後に、ダイナミックマッププラットフォームさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
沖田さん
ダイナミックマッププラットフォームはスタートアップではありますが、今は事業あるいはプロジェクトをどのように軌道に乗せていくかというフェーズに入っています。なので、ゼロからイチを作るというよりは「現状からさらに発展させる」ということが得意な方に入社していただきたいです。
ダイナミックマッププラットフォームのビジネスは新しいですが、仕事自体はかなり地道なものだと思います。新しいことであっても、取り組み始めからすぐおもしろいというケースはあまりないでしょう。ですが、その先に見えるものは必ずおもしろいと思うので、地道に仕事を進めて「その先を作りたい」という方を歓迎したいです。
編集部
新しいことへの挑戦は一見すると華やかな道のりに見えますが、地道な作業がベースとなっている。ダイナミックマッププラットフォームさんが大切にされている仕事への姿勢が伝わってきました。本日はありがとうございました。
■取材協力
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社:https://www.dynamic-maps.co.jp/
採用ページ:https://www.dynamic-maps.co.jp/recruit/