今まさに成長中で、グローバルなサービス・製品を展開している企業にインタビューする本企画。今回は、株式会社Flow Solutionsにお話を伺いました。
データ活用で店舗運営をスマートに。株式会社Flow Solutions
店舗や施設における分析データの視覚化・分析を可能にし、その先に起こり得る状況まで予測して集客や売上アップに繋げるサービスを提供している株式会社Flow Solutions。主にアパレルなど小売業を中心に、今後必須となるデータドリブンな経営をサポートし、自らも成長を続けています。国際的なメンバーが集まる少数精鋭体制で、社内の自由な雰囲気も特徴的です。
会社名 | 株式会社Flow Solutions |
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住所 | 神奈川県横浜市中区長者町3-8-13 TK関内プラザ3F |
事業内容 | データ分析をもとに、店舗などにおける行動変容を促すサービスを提供 |
設立 | 2012年3月 |
公式ページ | https://www.flow-solutions.com/ |
株式会社Flow Solutionsでカスタマーサクセス担当を務める柳沢さん、株式会社Flow Solutionsでマーケティング担当を務める竹口さんに、小売店の現場から株式会社Flow Solutionsが選ばれている成長の理由、株式会社Flow Solutionsのユニークな企業文化についてお話を伺いました。
「店舗DX」の草分け的な存在であるFlow Solutions
編集部
まず最初に、Flow Solutionsさんの提供しているサービス、ソリューションについて教えてください。
竹口さん
多店舗展開している小売業向けの「Flow」というサービスについて説明します。最近では、店内にセンサーやカメラが取り付けられている店舗が多いと思いますが、私たちは、そういったデバイスや仕組みを活用して、ご来店いただくお客様の動きや店舗スタッフの皆さんの動きをデータ化、視覚化、活用するサービスを提供しています。
「リテールテック」、「リテールアナリティクス」と呼ばれる領域なのですが、いわゆる店舗DXの分野における草分け的な存在です。
編集部
確かに、カメラやセンサーは、最近ではどこの店でも見かけますね。
竹口さん
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降はとくに、店舗設備のデジタル化が急速に進んでいます。例えばデジタルサイネージと呼ばれるレジ前のデジタル広告であったり、セルフレジ、配膳ロボット、注文・予約用のタブレットなどは身近でわかる変化の例ですね。
さらに、お店によってはチェックイン機という会員証とリンクする端末や、レジを通さずにカートに物を入れている状態で決済ができるスーパーマーケットも出現しました。セルフレジも1点ずつのスキャンが不要になったり、高度化も進んでいます。
編集部
セルフレジや配膳ロボットも、データ化に役立つのでしょうか。
竹口さん
IoT(情報機器)については、取得したデータを連携させることで、より精度の高い分析が可能になります。現在、活用が進んでいる色々な機能を店内にフル装備させてみた図がこちらです。
▲株式会社Flow Solutionsがイラスト化した店舗内のデジタル機器。店舗によってさまざまな機器が導入されている
編集部
どれも、すでに私たちの生活の一部となっている身近なものばかりですね。
竹口さん
例えば、最近ではファミリーレストランや病院などでも、事前にwebサイトやアプリで予約ができ、混雑緩和のために待ち時間が確認できたりしますよね。会計も端末を使って個人が完結できるようになっています。
Flowではさらに、お客様やスタッフのみなさんの状況がデータ化できますので、こういった機能が全て結びついていくと、店舗や施設側にとっても、そこを利用する方やお客様にとっても、有益なデータ活用が進んでいきます。
編集部
店内にあるさまざまなデジタル機器からデータを集めて、有効活用するのがFlow Solutionsさんのサービスの柱である、ということですね。
顧客分析は、フィールドワークからデータ分析の時代へ進化している
編集部
店内の情報を集めていくことで、顧客分析、売り上げ分析まで、Flowによって実現できるというイメージで良いでしょうか。
竹口さん
お客様の動きを分析するということ自体は、実はかなり以前から行われていたんです。例えば調査員が店舗に駐在して、どんなお客様が、どんな商品を買っているのか、店内の導線を含めて、うまく機能しているかということを、レポートにまとめたり手動で、その数をカウントしたり。
結果、「今日は来店者が100人で、そのうち男性が60人で、AとBの商品を比較して、実際に買ったのはA。その際に接客したスタッフは誰で、接客対応は良かったまたは悪かった」といったことを、レポートにまとめていたわけですが、現在は、それをカメラやセンサーを使ってどこまで代行できるかというのが、テーマと言えるかもしれません。
今はAI技術が急速に進んでいるので、パンデミック以降の変化として顕著な、マスクをしているお客様の属性分析(性別、年齢など)もかなりの精度でできています。
編集部
AI技術の進化が、データの精度をさらに高めているんですね。Flow Solutionsさんでは、精度の高いデータを分析することで、どのようなメリットを生み出せるのでしょうか。
竹口さん
やはり、最終的には、お店の売り上げに繋がり、お客様にとってもまた来店したくなる場所を作ることになるかと思います。
お問い合わせいただく内容も、お店のレイアウト変更にこういったデータを活用したい、または広告・プロモーションの効果をなるべく正確に計測したいなどさまざまです。店舗のデータ活用についてのご要望はお客様によって多岐にわたります。
またパンデミック以降の例になりますが、レジの前に行列ができるのは、ある程度仕方ないとみんなが考えていましたが、ソーシャルディスタンスが必要になり、行動変容が起きました。こういった変化に対してもFlow Solutionsのサービスを活かすことができます。
編集部
情報を統合するだけでなく、視覚化してお店自体も変えていくというイメージですね。
竹口さん
Flowにはレポートの連携機能などもありますので、データを中心にした社内のコミュニケーションも生まれやすいと感じています。やはりツールやサービスを入れただけでは変化は起きづらいので、店舗で働く方々だけでなく、それに関わる方全員で共有して、みんなで考えていくことで、環境も変わっていくのではないでしょうか。
編集部
データがそれを活用する人も変えていくということなんですね。
「Flow Assistant」のアドバイスで、スタッフ全員がスーパー店長になれる
編集部
店舗のデータ収集、分析を行う企業がたくさんある中、Flow Solutionsさんが多くの小売店やブランド企業に支持されている理由を教えてください。
柳沢さん
1年ぐらい前から提供を始めている、「Flow Assistant」という機能が好評です。
編集部
「Flow Assistant」はどのような機能を持つサービスなのでしょうか。
竹口さん
今までの日本の小売業では、ある店舗にとても優秀な店長さんがいて、「この店長さんがいると、なぜかたくさん売れるよね」みたいなことが多かったと思います。私たちは、そういった「なぜか」を分析した上で、何をするべきかを明確にし、共有することで他の店舗でもそれを再現できるようにしています。
編集部
従来は、ある名物店長さん個人が属人的にやっていた仕事などを、Flowを使ってデータを分析することで会社全体にまで共有できる、ということですね。
柳沢さん
Flow Solutionsの代表はカナダ出身なのですが、すごくできる店長、この店長がいるとなぜか売れるという店長を「スーパースター」と呼んでいます。そして各店舗のスタッフの皆さんをスーパースターに育てることも、私たちのミッションの一つと考えています。
編集部
「Flow Assistant」がデータ分析に基づいたアドバイスを行うことで、お店で働くスタッフ各々がスーパースターの店長と同じように動ける、というイメージでしょうか。
竹口さん
売り上げなど定量データと合わせて定性データを発信できますので、今すべきことが自動で共有され、それを実行することで店舗のみなさんが理想的に活動できていくのだと思います。
柳沢さん
Flow Assistantは、実際にお客さんにも使っていただいていく中で、さらに進化をしています。
基本的には、今の売り上げと前年の比較を自動でまとめて通知したり、データ起因として売り上げや予算達成率が下降傾向になったときに、原因として考えられる項目はこちらですと、通知を飛ばすことによって、全店舗に対策を共有し、本部が目標とする売り上げを達成することができます。
データがあっても見る余裕がない、読み方がわからないスタッフの方も、Flow Assistantがアドバイスをすることですぐに行動ができる。そんなデータの活用方法を私たちはご提案しています。
編集部
難しいデータ分析の詳細部分はさておき、「今、何をすればいいの」という肝心な部分を、忙しいスタッフの皆さんに伝えることができるサービスなんですね。
Flow Solutionsのサービス導入例とは。スタッフ間のコミュニケーションが肝!
編集部
柳沢さんはカスタマーサクセスということで、お客様と接する機会が多いと思いますが、Flow Solutionsさんのサービス「Flow」を導入した企業について、印象に残っているケースはありますか。
柳沢さん
アパレル「FREAK'S STORE」などを展開している株式会社デイトナ・インターナショナル様のオペレーションが印象に残っています。
編集部
どういった経緯で、株式会社デイトナ・インターナショナル様ではFlowを導入したのでしょうか。
柳沢さん
始めは、来店客数をマニュアルで計測していた部分を自動化したい、というご要望からスタートしました。買上者数、購買率、セット率、客単価など実際にデータを収集して活用する中で、担当者様から「店舗運営に関わるスタッフ個人にフォーカスしていきたい」というお話を伺いました。
データをどのように活用していくべきか、かなり綿密に考えてオペレーションをされていて、「購買率というものは、どういう意味を持つのか」とか「お客様の通行数に対して、来店率が上がった、下がったという状況を店舗としてはどう捉えるべきか」というところを検証した上で、実際の対応をお店のスタッフに全て委ねる形を取っていらっしゃいました。
編集部
現場の方と本部が、データ活用のありかたについて認識を共有したということでしょうか。
柳沢さん
はい。現場に判断を委ねる前段として、データの見方や現場の状況について各店舗のスタッフにヒアリングを行い、本部の方と、店舗の店長、店舗リーダーが「実際にこういうことをした方がいいよね」と話し合って、データを軸にした施策を実施しはじめたことが印象的でした。売上は、前年比25%アップという好成績を残しています。
編集部
売り上げを上げるためにツールを導入するだけではなくて、店舗運営の改善に生かしていく、人材育成の面からも活用シーンを共有することで、うまくいくという事例ですね。
柳沢さん
弊社としても、ミーティングの内容を伺って、活用の仕方をご提案させていただいて、伴走させていただきました。本部と店舗スタッフのコミュニケーションを綿密にされているところが、うまくいった理由だと考えています。
データを取るだけではなく、社内でのコミュニケーションが肝になる、と株式会社デイトナ・インターナショナル様の担当者とお話をさせていただいて思いましたね。
編集部
導入した企業からは、非常に満足のいく結果が得られている、ということですね。導入委託企業様、お客様の数は増えていらっしゃるのでしょうか?
柳沢さん
これまで100以上の企業様、900以上の店舗に導入され、順当に増加をしている状況です。導入店舗は前年に比べて平均してパフォーマンスが18%ほど伸びていることが確認できています。
編集部
Flow Solutionsさんの提供するサービスは、成果をあげながら導入先を広げているのですね。
Flow Solutionsで働くグローバルなメンバー
編集部
2024年2月現在、Flow Solutionsさんのメンバーは何人ほどいらっしゃるんですか。
竹口さん
国内のメンバーは9名です。それぞれ役割が専担化されていて、マーケティング、カスタマーサクセス、セールス、開発担当のメンバーがいます。
柳沢さん
海外のメンバーは、開発部門がパキスタンにあり、バックエンドサイドが10名います。日本国内で仕事をしていただいている方もいます。国内外を合わせて、総勢20名ほどのスタッフが働いています。
パキスタンのチームの中にはオーストラリアの方などもいますし、日本で働いている方の中にも北欧の方がいたり、国際的でバックボーンはさまざまですね。社長のチャドも含めて。
編集部
社長様が外国の方で、国際的なメンバーが多いとなると、コミュニケーションはどのように取っているのでしょうか。
竹口さん
そのときのメンバーや会議によって使い分けているという感じです。ただ、細かいニュアンスであったり、開発の専門的な部分になると、英語でのコミュニケーションが多いのではないでしょうか。とはいえ、僕はあまり英語が得意ではないので、AI翻訳ツールを使ったりしています。
柳沢さん
私がカスタマーサクセスとしてお客様の声を聞き取って、開発や製品化に反映するよう英語の対応をする形になっています。デザイナーの担当者に細かいニュアンスのオーダーを出したり、開発のためにはシステムの使い方に関する質問や改善の可否について、開発チームとディスカッションをしたりしています。
編集部
社内のコミュニケーションは英語が主流なんですね。
海外企業に近いフラットな企業文化も
編集部
Flow Solutionsさんの企業のカルチャーは、海外企業に近いイメージでしょうか。
柳沢さん
かなり近いと感じます。
積極的にコミュニケーションを取るムードですね。別々の場所でリモートワークをしているメンバーもいるのですが、オフィスに集まるタイミングもありますし、お互いに、ヒストリー、カルチャーの部分を理解しながら、言語の壁を越えて尊重しあえ、とても楽しい雰囲気で仕事をしています。
編集部
Flow Solutionsさん独自の特徴的な社内制度はありますか。
竹口さん
求人する際に記載していたのは、有給休暇が無制限とかですね。実際にはチームワークで仕事をしているので、あまりの長期間で使用されたケースはないようですが。海外のメンバーが多いので、帰省する際などにはとても良い制度だと思います。
編集部
社員の方々を思っての制度なのですね。
まだ名前がついていない新分野、ビッグピクチャーを一緒に描こう
編集部
記事を読んでFlow Solutionsさんに興味を持った方に向けて、メッセージを伺えればと思います。
竹口さん
開発環境が海外にあり、一緒に働くメンバーも国際的なので、いろいろなカルチャーに触れることができる面白さがあると思います。最初はインターンとして入ったメンバーが開発の主要メンバーになった例もあるのですが、いつの間にか英語がペラペラになったそうです。ネイティブの社員が驚くぐらいのレベルまで。
また、Flowというサービスは、まだはっきりした分類名がないサービスです。たとえば「エクセル=表計算ソフト」、「セールスフォース=SFAツール」と言うように、一言でみんなが理解できるようなカテゴリができて、日本全体に浸透していくように注力していきたいと考えています。
そんな未知の部分が多い領域に踏み込んでいける前向きな方が向いているのではないかと思います。
自分たちが作っているプロダクトに愛着を持って、競合他社も含めて市場自体を広めていこうという気持ちが持てるとやりがいも大きいですよ。
編集部
まだ名前のない未知な分野を一緒に作り上げていくチャレンジができるというフェーズですね。柳沢さんからも、メッセージをお願いできますでしょうか?
柳沢さん
やはりチャレンジング精神が旺盛な方が、弊社には合うのかなと思います。加えるとしたら、「ビッグピクチャーをちゃんと持っているか」というところでしょうか。
少数精鋭の会社なので、年齢を問わず大きなクライアントを受け持つことになります。裁量権は存分に与えられるので、いかに論理的に、数字に基づいてビッグピクチャーを描いて、実行をしていく継続力が大事です。海外的な思考として、失敗ありきの文化ではあるので、挑戦を続けられる人が道を切り拓いていくイメージです。
もう一言加えさせていただくと、小売業に対しての情熱・理解がある方だとさらに良いかもしれません。私自身も小売業の前歴があり、店舗運営をさせていただいた知識が今生きています。小売業のスタッフ、運営をサポートしたい、小売業界に貢献をしたいという情熱がある方と、一緒に働きたいと思っています。
編集部
近い将来、Flow Solutionsさんが提供しているFlowは、全国、全世界で当たり前のように使うサービスになるんだろうな、とお話を聞いて感じました。これから名前が付いていく分野を開拓していく、挑戦しがいのある仕事ですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社Flow Solutions: https://www.flow-solutions.com/