企業の成長要因や、女性活躍への取り組み、働き方について紹介するこの企画。今回は全国47都道府県で24時間スマホで呼べるベビーシッター・家事代行サービス「キッズライン」を運営する株式会社キッズラインを取材しました。
ベビーシッター&家事代行のマッチングサービスを提供する株式会社キッズライン
株式会社キッズラインは、スマホから手軽に手配ができるベビーシッターサービスと家事代行サービスを提供するマッチングプラットフォーム「キッズライン」を展開する企業です。サポートを必要とする人と、登録者(サポーター)をつなぐビジネスモデルにより、全国47都道府県においてベビーシッターと家事代行サービスを提供しています。
サービスを提供する総サポーター数は4,000名以上となっており、利用者は事前に全サポーターの詳細なプロフィールや利用者のレビューを見ることができるため、安心して24時間オンラインで手配することが可能です。
現在、全国で10以上の自治体や700社以上の法人が同社のサービスを導入しており、累計依頼件数は200万件と、急成長を遂げています(2024年5月取材時点)。
会社名 | 株式会社キッズライン |
---|---|
住所 | 東京都港区六本木5-2-3 マガジンハウス六本木ビル7F |
事業内容 | インターネットを使った女性支援事業、育児支援事業、家事代行事業 |
設立 | 2014年 |
公式ページ | https://kidsline.me/corp/ |
働き方 | ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク) |
現在、わが国の共働き世帯の割合は専業主婦世帯の2倍となり、子育てや家事は大きな社会課題となっています。株式会社キッズラインはこれまで女性が主に担ってきた育児や家事をテクノロジーを使ってそれらの仕事が得意な人たちとシェアできる仕組みを作り、社会を自由にする新しいインフラを目指しています。
その理念はサービスを提供する側の自社メンバーにも浸透し、フレキシブルな働き方や女性が活躍できる環境を実現しています。
そこで今回は、プロダクトグループ家事代行チームでチームリーダーを務める渡邉智子さんとコーポレートグループでチームリーダーを務める宮坂和子さん、お2人の働き方をモデルにした同社のワークライフバランスへの取り組みや、女性活躍についてお話を伺いました。
保育や家事代行をCtoCでマッチングする「キッズライン」
編集部
はじめに、ベビーシッターサービスからベビーシッター&家事代行サービスへと事業を展開するに至った経緯についてお聞かせいただけますでしょうか。
渡邉さん
当社はベビーシッターや家事代行サービスなどの分野を、CtoCのマッチングサービスとして提供する会社です。ベビーシッターをスマホで探せるサービスから事業をスタートし、2024年7月に創立10周年を迎えます。2018年の11月に新たに家事代行サービスを立ち上げ、こちらはサービス開始から6年目となります。
家事代行サービスを立ち上げたのは、ベビーシッターサービスを提供するなかで、掃除や料理など日常の家事に手が回らないという声が多く寄せられたことがきっかけです。また、ベビーシッターとして働く場合、保育士などの特定の資格や研修受講の要件がありますが、家事の場合は料理が好き、掃除が得意といった自身の経験を仕事に活かすことができます。
スキルを活かしながら隙間時間や好きな時間で働けることは、働き手にとってもメリットがあり、働きたいけれど働けないといった社会課題の解決につながります。このような思いから、家事代行サービスを立ち上げました。
サポーターがベビーシッターと家事代行サービスを同時にお受けした場合(※)は、お子様を見る時間、家事をする時間をしっかりと分けて区別し、安全に細心の注意を払いながらサービスを提供しています。
(※)ベビーシッター、家事代行サービスいずれの登録要件もクリアしているサポーターに限る
家事代行サービス利用が5年で5倍に増加。数字に見る急成長の理由
編集部
ベビーシッターや家事代行サービスのニーズが高まる昨今、創立から今に至るまで、キッズラインさんの成長を実感されることはありますか?
渡邉さん
キッズライン全体としては累計依頼件数が200万件、サービスを提供する登録スタッフを当社ではサポーターと呼んでいるのですが、こちらは全国47都道府県で4,000名以上となっております。
2018年に始まったキッズラインの家事代行サービスは年々利用者が増加しており、特に子育て世帯においては5年で5倍の伸びとなっていることからも、ニーズの高まりと成長を実感しております。
なかでも自分の得意とする家事を活かせる家事代行サービスでは、長く専業主婦をされてきたベテラン主婦の方の登録も増えており、2023年12月時点で1,700名を超える家事サポーターが登録しています。
編集部
なるほど。共働き世代が増え、子育てや家事負担が大きな社会課題となっている今、貴社のサービスはまさに時代にフィットしているということが、数字にも如実に現れていると感じます。
経済産業省「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」に登録事業者として参画
編集部
キッズラインさんは2024年4月には経済産業省「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」(※)に登録事業者として参画されたと伺っております。こちらについても詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
(※)家事支援実証事業に関しては、2024年末までの事業とされている(2024年6月現在)
渡邉さん
こども家庭庁の「企業型ベビーシッター割引券制度」や、「東京都ベビーシッター利用支援事業」の取扱事業者としてこれまで認定をいただいておりましたが、このたび家事代行サービスにおいても「家事支援サービス福利厚生導入実証事業」の登録事業者として参画させていただくことになりました。
実証事業では、各地域の中小企業などが従業員の福利厚生支援の一環として家事代行サービスを導入する際に、利用料の3分の2を国が負担します。従業員の家事負担を軽減し、ライフイベントとキャリア形成の両立の実現や、多様な人材が活躍できる環境を整えることで、労働力不足の解消や企業の生産性向上などに貢献していくことを主な目的としています。
編集部
家事代行サービス利用料の3分の2を国が負担するとなれば、利用者は経済的にもかなり負担が軽減されますね。キッズラインさんが実証事業に参画することで今後、どのようなことが期待されると思われますか?
渡邉さん
既に法人のご担当者様からのお問い合わせも多くいただいており、実証事業の参画は今後の事業展開においてもかなりの影響がありそうだということを実感しています。
実証事業(※)が具体的にスタートするのはこれからになりますが、家事代行の必要性が効果検証として実証されることで家事支援サービス福利厚生導入が継続されると、より多くの方に家事代行業界としても貢献できるのではと思っております。
キッズラインが選ばれる理由は安全&安心と、カスタマイズ可能なサービス提供
編集部
累計依頼件数やサポーター数の増加に加え、家事支援サービス福利厚生導入実証事業の登録事業者参画など、目覚ましい発展を遂げられているキッズラインさんですが、貴社のどのような点が評価につながっていると思われますか?
渡邉さん
1つは、“誰にお願いできるのか”、”いつお願いできるのか”が、明確になっていることと分析しています。例えば、当日になって急にベビーシッターを依頼したいというニーズに対し、当社ではサポーターの写真を掲載、プロフィールやスケジュールも可視化されているので、利用者様はスピーディーかつ、安心して依頼をすることができます。
同じ仕組みを家事代行でも実践しているので、他人を家に入れることに抵抗がある方でも、どの方が来てくれて、何が得意なのか、どのような経歴なのか事前に知ることで安心感を得ることができます。このような安全・安心への取り組みが、評価につながっていると思われます。
編集部
例えば、掃除を中心にお願いしたい、料理を作り置きしてほしいといったニッチなニーズに対しても、利用者はプロフィールなどを検討したうえで、選択できるのでしょうか。
渡邉さん
もちろん可能です。3時間のうち、1時間は水回りの掃除、残り2時間を料理など、ご依頼はご家庭の状況に合わせてカスタマイズができます。例えば、離乳食や幼児食を作るといった個別のニーズにも、サポーターに相談したうえで対応が可能です。ご家庭それぞれのニーズに合わせてサービスの選択ができることも当社を選んでいただいている理由の1つになっていると分析しています。
編集部
パッケージされたサービスではなく、ニーズに合わせたサービスを提供することで、利用者は本当に必要なサービスを受けることができるのですね。
ベビーシッター&家事代行なら“キッズライン”。認知拡大と少子高齢化への社会貢献が目標
編集部
働き方の多様化やワークライフバランスへの取り組みが強化されることが予想される昨今、ベビーシッターサービスや家事代行サービスのニーズはますます高まることが予想されます。キッズラインさんの今後の展開、方針についてお聞かせいただけますでしょうか。
渡邉さん
「キッズラインといえば、ベビーシッターと家事代行がある」と、認知してもらえることをまずは目指したいと思っています。ベビーシッターはおかげさまで広く認知いただいていると実感していますが、家事代行サービスもようやく国の補助制度が実証事業に採択され、その必要性が認識されつつあります。
ベビーシッターと家事代行サービス、どちらにおいてもキッズラインを選んでいただけることが大きな目標です。
また、家事代行は子育て世帯だけではなく、高齢の両親の実家を掃除してほしい(※)といった、高齢者に向けたサポートのニーズも高まっています。介護や少子化対策も含め、国や地方自治体が動き始めているので、当社としてもさまざまな分野における社会貢献ができればと考えています。
(※)現時点のキッズラインの家事代行サービスでは、離れた土地で別居している親の実家の片づけを依頼することはできない
編集部
超高齢化社会と長く叫ばれていますが、国や自治体だけでは対応しきれていない実情があるなか、このような社会課題にキッズラインさんが貢献することで、豊かな社会が実現すると感じました。
9割が女性のキッズライン。子育て中のメンバーは男女合わせて7割
編集部
続いて、キッズラインさんの女性活躍へのお考えや取り組みなどについて伺います。現在の社員数と女性が占める割合についてお聞かせください。
宮坂さん
従業員メンバー85名のうち、9割が女性、子育て中の従業員は男女合わせて7割となっております。事業やサービスの性質上、女性メンバーが多いのが実情ですが、最近は男性からの応募も増えており、男性メンバーも増やしていきたいと考えております。
編集部
社員メンバーの働き方から見ても、子育てをしながら仕事にもコミットしていることがわかりますね。
育休インターンからジョイン。子育てと仕事を両立できるキッズラインの働き方
▲キッズラインのオフィスの一部。出社とリモートを柔軟に選択できる
編集部
渡邉さんは家事代行サービスの立ち上げにインターンとして携わった時は育休中だったと伺っております。ジョインのきっかけや育児と仕事を両立しながら働くことへの率直な思いをお聞かせください。
渡邉さん
新卒で証券会社に入社した私は、2人目の育休中に当社が募集していた「育休インターン」という珍しいワードに惹かれ、インターンシップに応募しました。子どもを持つ立場として家事代行サービスがあったらどれだけ助かるかということを、当事者として感じながらジョインしたことを覚えています。
働きやすさを感じたのは、出社とリモートが併用できることとフレックスタイム制度です。保育園の発表会や小学校の面談など、半休や全休を取る必要がある時も、フレキシブルに調整しながら働けるというのは、本当にありがたかったです。
子どもが小学生にあがると、夏休みなどの長期休暇は学童保育が定員オーバーで預けることができなかったり、振替休日で平日に子どもが1人で家にいる時間が出てくるので、在宅ワークという選択肢があることで安心して働けると感じています。このように、家庭の状況に合わせて働き方を調整することができます。
編集部
リモートワークやフレックスタイムを選択する際、出社勤務の回数やコアタイムなどのルールはあるのでしょうか。
渡邉さん
リモートワークに関しては状況に合わせてフレキシブルに選択ができます。フレックスタイムにはコアタイムはありますが、特別な事情がある場合は中抜けも可能です。どの働き方を選択する場合も、一緒に働くメンバーとの間でしっかりすり合わせをし、自分で設定した目標に対して責任を持って取り組むことで理解を得ることができます。
オンラインと対面による定期面談で円滑なコミュニケーションを実現
編集部
状況に合わせてフレキシブルな働き方ができるからこそ、コミュニケーションが重要になってくると思われます。声かけなど、キッズラインさんが工夫されていることはありますか?
宮坂さん
リモートワークではオンライン通話やSlackのチャットツールを使って積極的にコミュニケーションを取っています。会社としても定期的に対面での懇親会の機会を設け、チーム間の連携強化や他部署のメンバーとの交流に努めています。オンラインと対面のメリットをバランス良く取り入れることで、円滑なコミュニケーションが図れているように感じます。
渡邉さん
Slackの育児チャンネルでは育児に関する相談や雑談で盛り上がることもあります。ランドセルが壊れた時はいろいろなアドバイスをもらい、助かりました(笑)。他にも、子育てやお受験に関する悩みも気軽に相談できます。
編集部
1人で仕事をするリモートワークの場合でも、相談や雑談できる環境があることで、孤独感やストレスを抱えることなく仕事ができますね。
当事者意識を持ってサービスの必要性を感じているメンバーがジョイン
編集部
キッズラインさんで活躍しているメンバーは、どのようなマインドを持って日々の業務に向き合っているのでしょう。
渡邉さん
子育て中のメンバーが多いことからもわかるように、事業に対して当事者意識を持っている者が多いと感じます。サービスを広めたいと思っている者や、利用者の立場でベビーシッターや家事代行サービスの良さを実感している者、サポーター経験があり、当社のサービスをより良くしたいと考えている者など、いろいろな視点から熱意を持ってジョインしている印象です。
編集部
キッズラインさんのメンバーは、単なる仕事ではなく、自分自身の日常をより良くするためにどうするべきかを考え、日々の業務に取り組んでいるのですね。
レガシー、カルチャー、組織体系を自分たちの手で創ることがやりがい
編集部
渡邉さんご自身は、大手企業からキッズラインにジョインしたことで、どのようなことにやりがいを感じていますか?
渡邉さん
現在、プロダクトグループ家事代行チームリーダーを務めるにあたり、ベンチャーならではの経営部分や全体像に入り込んで仕事ができることにやりがいを感じます。そのなかで自分で課題を見つけ、可視化していきながら解決していくのですが、さまざまな角度から課題を拾い、すり合わせて全て自分たちで創っていくことがとても面白いです。
組織体系は大企業と比べると確かに整っていない部分はありますが、レガシー、カルチャーも含め、自分たちで作っていけることに醍醐味があるように感じます。
編集部
渡邉さんは大企業からベンチャー企業であるキッズラインに転職し、活躍されているロールモデルになっているんですね。採用に携わっている宮坂さんは、子育て世代が大企業で働く難しさや課題を感じることはありますか?
宮坂さん
採用活動を通して思うのは、「大企業の場合、制度が整っていても、育児と仕事の両立が難しいと多くの方が感じているのではないか?」ということです。
全ての大企業に当てはまることではないかもしれませんが、例えば出産前と同じような働き方をしたくても子どもの急な体調不良等で休まざるを得なかったり、在宅ワークに制限があったり、子どもより自分のペースに合わせた生活スタイルにしないといけなかったりなど、決められたルールの中での両立に大きな負担を感じている印象です。
当社に転職をご志望いただく方の理由のひとつに育児と家事の両立がありますが、ベンチャー企業への転職はこれまでの働き方と全く異なるため、不安に感じる方がいるのも事実です。そのような方に対し、渡邉の選択や働き方を知って「子育てをしながら自分らしく働けるんだ」と感じていただければ嬉しいです。
若手を積極的に採用し、インターンシップと人材育成を強化
編集部
キッズラインさんでは人材を育成するにあたり、どのような採用ポリシーを掲げているのでしょうか。
宮坂さん
企業としてプロダクトも成長するなか、やはり若い力が必要になってくると考えています。当社はベンチャー企業なので、インターン生や新卒をどのように育成していくかは課題としてあるのですが、前提としてあるのは当社のビジョンに共感できることです。
学生の他、保育士など資格を持っている方にも長期的にインターンシップに参加いただき、共に成長していくことができれば幸いです。実際にインターン生としてジョインした場合のポジションはオープンとし、適正に合ったポジションで経験を積んでいただきたいと考えています。
本気で育児や家事の課題を解決したい方、果敢に挑戦できる方を歓迎
▲今回取材に対応頂いた宮坂さん(左)と渡邉さん(右)
編集部
最後に、この記事を読んでキッズラインさんの事業やビジョンに興味を持たれた方々にメッセージをお願いします。
渡邉さん
育児、家事にはさまざまな社会課題があり、考え方や捉え方の変化が激しいのが実情です。働き方の多様性やワークバランスへの考え方など、環境が大きく変わるなかで、「自分のやるべきこと、役割はなんだろう」と、考えながら行動できる方が当社にはマッチすると思われます。自分で課題を見つけ、解決のために周囲を巻き込みながらアクションができる方を歓迎します。
私が自分によく言い聞かせているのが、難しい課題に直面した時、「無理、できない」と逃げるのではなく、そこから一歩踏み出し、どうすればできるかを主体性を持って具体化することです。
本気で育児や家事の課題を解決したいという強い思いを持っていらっしゃれば、わが社で活躍できます。どんどん挑戦していける方の応募をお待ちしています。もちろん、育児中の方も大歓迎です。
編集部
育児や家事の負担という社会課題の解決に寄与するキッズラインさんの事業は、すべての人がいきいきと自由に暮らせる社会につながる、とても意義のある事業だと感じました。
本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社キッズライン:https://kidsline.me/corp/
採用ページ:https://kidsline.me/corp/team-colors/