倉吉市役所で働く魅力:32歳職員が国のモデル事業に挑戦する若手重視の組織風土

ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、約420名の正規職員が在籍する鳥取県の倉吉市役所にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、倉吉市役所で働く魅力をご紹介します。

同市役所の特徴のひとつが、若手職員の意見を積極的に取り入れ、市長との直接対話の機会を設けるなど、風通しの良い組織文化です。一例として、32歳の若手職員が国のモデル事業に選ばれた公共交通の実証実験を手がけ、住民の生活をより便利にするための挑戦を続けています。職員の成長をサポートする体制も整っており、新しい発想やチャレンジを応援する風土が根付いています。

今回は、倉吉市役所の組織風土や若手活躍の事例について、企画課の藤井さんと建築課の西尾さん、職員課の金光さんにお話を聞かせていただきました。
本日お話を伺った方
倉吉市役所の総務部企画課企画係である藤井さん

総務部・企画課・企画係 主事

藤井 勇輔さん

倉吉市役所の建設部建築住宅課建築指導係である西尾さん

建設部・建築住宅課・建築指導係 建築技師

西尾 侑希子さん

倉吉市役所の総務部職員課人事係である金光さん

総務部・職員課・人事係 主任

金光 智志さん

倉吉市役所の若手活躍事例:32歳で国のモデル事業に挑戦

倉吉市役所で公共交通事業を担当する藤井さん

編集部

若手活躍のテーマについて、実際に活躍されている藤井さんのお話を伺えますでしょうか。

藤井さん

私は入庁6年目の32歳です。平成31年に前職から転職して市役所に入庁しました。前職はSE系の営業職で、関西方面でJRなどにデジタルサイネージやシステムを販売する仕事をしていました。

現在は公共交通事業を担当しており、路線バスの再編や新しい交通システムの導入を手がけています。具体的には、路線バスだけではカバーできない住民のために、AIを活用した需要応答型交通(AIデマンド)乗合タクシー、公共ライドシェア、さらにはシュタットベルケ(※後述)という新たな仕組み導入を検討しています。これらの取組は、国のモデル事業に採択され、2024年10月からは過疎地域の関金地区で実証実験を始めています。

現在行っている実証実験は、倉吉市内の中心部から関金地区の谷深くまで延びていたバス路線を短縮し、代替となる交通手段として関金地区内を走る乗合タクシーを導入するものです。山間部のバス路線を廃止する代わりに、乗合タクシーという代替手段を導入し、利便性を高める実験を行っています。

これが実験の第一段階です。将来的には、再生エネルギー事業と連携して、売電収益を公共交通事業に充てることで、持続可能な公共交通体系となるような仕組み(シュタットベルケ)の構築に向けて検討を深めているところです。

編集部

この公共交通事業を担当されることになった経緯について教えていただけますでしょうか。

藤井さん

元々、公共交通を担当する職員が、私の上司に当たる職員1人しかいませんでした。その上司は通常の交通業務に加え、国の別のモデル事業も担当しており、新たな事業に対応するのが難しい状況でした。私は当時、中山間地域の振興や官学連携事業の担当をしていて、上司の事業を手伝うこともあり、「ぜひ藤井くんにお願いしたい」ということで担当することになりました。

編集部

現在の業務のやりがいや魅力を教えてください。

藤井さん

やはり公共交通を変えることには、大きな責任とやりがいを感じています。公共交通の変化は、人々の生活様式に大きく影響します。特に私が担当している関金地区は私の出身地でもあり、住民の方々とは顔が見える関係性です。40回以上の住民説明会を重ねて、納得いただけたときの達成感は大きいですし、やりがいや満足感を感じています。

編集部

住民の方々への説明は具体的にどのように進められているのでしょうか。

藤井さん

住民の方々にとって、新しい交通システムはなかなかイメージがつきにくいものです。多くの方が自家用車中心の生活をされているため、公共交通自体にあまり関心がない状況です。説明会を開いても、来られる方は自治公民館(いわゆる自治会・町内会)の中心的な方々で、実際にサービスを必要とする方々は、移動手段がないため説明会の会場にも来られないことが多いんです。

そのため、私たちの方から積極的に出向いていく形を取っています。各地域の公民館や集会の会場まで足を運んで、きめ細かく説明を行っています。また、1人では対応しきれないので、集落支援員という専門の職員を雇用し、関金地区に配置することで、より多くの住民の方々の声を聞けるよう工夫しています。

編集部

住民の方々の反応はいかがでしょうか。

藤井さん

最初は無関心な方が多く、何度説明に行っても「前回どんな話でしたっけ」というところからのスタートになることもありました。でも、実際に導入した乗合タクシーを使っていただいた方々からは「とても良い取り組みを入れてくれた」と感謝の言葉をいただいています。観光のため地区外から来られた方々からもアンケートで高い評価をいただいており、非常に嬉しく感じています。

若手職員の意見が反映される職場環境。市長と直接対話できる機会も

倉吉市役所の第2庁舎の外観

編集部

若手職員さんの活躍や成長を後押しするような取り組みはございますか。

金光さん

若手職員の活躍に関する取り組みとして、市役所内で市役所改革ワーキンググループという組織がありました。20代を中心に、最年長でも30代中盤の若手職員約10人が集まって、若手の目線で市役所の職場環境や業務を行う上での改善案を考える取り組みを行っていました。

今の市長が就任されてからは、新たに若手職員が市長と直接話せる機会が設けられ、若い職員の意見や考えが反映されやすい職場環境が整ってきていると感じています。若い職員だから意見を言えないということはなく、むしろ若手の意見が歓迎される雰囲気があります。

藤井さん

市長との対話の機会は、元々、市長が市民の声を聞くために企画したものなんです。その中で、職員の声も重要という考えから、採用10年以内の若手職員約30名が集められ、市長と副市長と車座で対話する機会として昨年開催されました。

若手職員からの意見から予算化を検討している事例もあります。例えば、建設技術系の職員から「災害対応業務(復旧作業等)で濡れたり汚れたりするので、シャワールームが必要だ」という意見があり、新たに設置される拠点倉庫にはシャワールームの設置が検討されていると聞きました。

職員の服装や身だしなみについても、これまでのような堅苦しい身なりだけではなく、ある程度の柔軟さを求める声が市長と副市長に理解されました。こうした改革が進むことで、新しい考え方を持った若手職員がより働きやすくなるのではないかと思っています。

男女比はほぼ半々。子育て支援と職場環境の充実で女性の管理職登用も進む

倉吉市役所で建築技士として活躍する西尾さん

編集部

女性職員さんの割合や管理職の状況など、具体的なデータを教えていただけますでしょうか。

金光さん

正規職員の男女比率は、ここ数年、男性55%、女性45%とほぼ半々で推移しています。会計年度任用職員を含めると、全体では女性の方が多くなります。正規職員が418名、会計年度任用職員も同数程度在籍していますが、会計年度任用職員は8割程度が女性です。また、管理監督職における女性比率は、令和6年度は32.2%となっています。

編集部

女性活躍推進に向けた取り組みについて、具体的な施策などはありますか。

金光さん

性別による区別なく、能力のある職員を適切に登用しています。女性は出産や育児で一定期間お休みされる方も多いですが、そういった状況もある中で実力のある方をしっかりと評価し、登用しています。

編集部

子育て支援や育休の取得状況、復職後のサポートについてはいかがでしょうか。

金光さん

女性の産休・育休取得率は100%です。男性の育児参加も推進しており、配偶者出産休暇の取得率は90%以上、育児休業の取得率も70%を超えています。男性の育休期間は1ヶ月程度の短期間の取得もありますが、子育てへの参加を積極的に呼びかけています。

また、職員課に女性の保健師を配置し、健康面での相談体制を整えています。この職員は、再任用職員として長年の経験もあることから、職員にとって相談しやすい環境となっています。外部の産業医との連携も行っており、職員の心身のケアに努めています。

建築技士として活躍する女性職員が感じるやりがいと働きやすさ

倉吉市役所の本庁舎にある建築住宅課の窓口
▲本庁舎にある建築住宅課の窓口

編集部

建築部門で活躍されている西尾さんのお仕事についても教えていただけますでしょうか。

西尾さん

私は入庁2年目で、主に建築確認申請の審査業務や建築計画の事前相談を担当しています。具体的には、証明書や認定書の発行、昇降機や防火設備の定期点検の受付などの事務的な業務に加え、違反建築の防止のためのパトロールや、解体工事現場での適正な分別解体の確認など、町の安全を守るための業務を行っています。

編集部

今のお仕事のやりがいや魅力はどんなところに感じていますか。

西尾さん

もともと住宅に関わる仕事がしたくて、前職でも住宅会社で働いていました。今でも、建築確認申請の審査や住宅が完成した後の完了検査を通じて、住宅に関わることができています。

また、住宅だけでなく、ハウスメーカーや工務店ごとの特徴や構造の違いも学べ、店舗や工場などの大規模な建築物やエレベーター設備など、さまざまな建築物に携わることができるのも楽しく、やりがいを感じています。

編集部

現在の働きやすさについてお伺いできますか。

西尾さん

前の会社では転勤や部署異動があり、1年も経たずに異動することもありました。自分の将来を全く想像できなくなり不安になって「自分の居場所を見つけたい」と思い転職しました。

建築技師として働く女性は私だけですが、事務職の方には女性が多く、コミュニケーションが取りやすい環境です。体調面など女性同士の方が相談しやすいことも相談できる環境で、周囲の方々も気にかけて声をかけてくださって、安心して働くことができています。

倉吉市役所の職場文化:挑戦を応援する風土と柔軟な指導

倉吉市役所の受付

編集部

職場の雰囲気や働き方について教えていただけますでしょうか。

藤井さん

税金や国民健康保険等の法定事務では、法令遵守や正確な業務遂行を重視する傾向があります。一方で企画系の部署はルーティーン的な業務は少なく、新しい事業がどんどん作られます。積極的にチャレンジしたい人にとってもとても良い環境だと感じています。

また、意欲的な方には多くのチャンスがあり、チャレンジを応援してくれる職場文化があります。私の上司は、最低限クリアすべき水準を明確に示してくれるため、それを踏まえた上でプラスアルファの取り組みができます。難しいチャレンジをして仮に失敗しても、最低限の基準をクリアできていれば、新しい挑戦を認めてもらえます。

金光さん

私たちの自治体は人口5万人弱の中規模組織で、正規職員が約420名います。比較的小規模なため、部署が異なっても職員同士が顔見知りという関係性があります。異動しても初対面という状況はほとんどなく、それが職場の雰囲気にも良い影響を与えていると思います。

編集部

上司との関係性はいかがですか。

藤井さん

行政は基本的に縦割りで、交通担当は交通分野のことだけを考えがちなのですが、私の上司は倉吉市全体としてどうあるべきかという視点で指導してくれます。

例えば、交通だけでなく、交通を活かした買物環境の充実、予約システムのデジタル化、それに伴うデジタルデバイド対策など、そこに暮らす人たちの生活をイメージして、様々な観点から事業を組み立てていくことを教えてもらっています。

相談やアドバイスを求める際には、上司は非常に柔軟に応じてくれます。上司からも客観的な意見を求められることもあり、相互に相談し合いながらアイデアや意見を出し合い、二人で事業を高めていくという形で進めています。

編集部

新入職員への指導体制についてはいかがでしょうか。

金光さん:当然に職員研修も実施しますが、実際の業務を通じて学ぶことを大切にしています。研修で学ぶことは基礎的な内容になりますので、それを現場でどう活かすかを大切にしています。

藤井さん

交通政策に関しては、法律の制約が大きいため、長年担当していても理解できないことが多く、実際に取り組んでみて改めてその難しさを感じています。特に大きな支えとなったのは、現在一緒に交通政策を担当している上司の存在です。

上司は、制度の細かな部分や大枠の考え方について、非常に的確に指導してくれています。単に「ここに書いてあるから」といった形式的な指示ではなく、まずは「こういう方向で進めたい」というイメージを描き、それに基づいて法律をどのように適用するかを考えるアプローチを教えていただきました。上司のサポートがあってこそ、今の状況を乗り越えられていると感じています。

倉吉市で叶える理想の働き方:充実した生活環境

倉吉市役所の本庁舎の外観

編集部

読者の方に向けて、倉吉市で暮らす魅力について教えていただけますでしょうか。

藤井さん

倉吉市は都会すぎず田舎すぎない、ちょうど良いバランスの街だと感じています。子育て環境が特に充実していて、産婦人科や小児科などの医療機関が人口当たりで全国上位に入るほど多く存在します。東洋経済の住みよさランキングでも、医療機関に関する充実度は常に上位にランクインしています。

また、教育環境も整っていて、小学校から高校まで、さらには4年制大学もあります。適度に若者もいて活気がある一方で、都会のような通勤ラッシュもありません。自分の時間や家族との時間を大切にできる環境が整っています。

私自身の転職理由として最も大きかったのは子育て支援の充実でした。以前は大阪で働いていましたが、保育園への入園が難しく、また都会の空気で体調を崩しやすかったことから、子育ての環境や健康面を考えて地元の倉吉市への転職を決意しました。

編集部

余暇を過ごす場所についてはいかがでしょうか。

藤井さん

市内には無料で利用できる施設が充実しています。例えば、市の中心部には「エースパック(鳥取県立倉吉未来中心)」という県営施設があり、ホール機能を備えているほか、大規模な遊具や芝生広場があります。また、今年度末には隣に県立美術館もできる予定です。雨の日でも施設内でイベントが開催されているので安心です。

また同施設内にある「鳥取二十世紀梨記念館」は子供向けの展示が充実しており、子供が楽しめる施設となっています。中心部以外の地区にも、自由に遊べる場所が多くあり、子供ものびのびと過ごせる環境で、仕事とプライベートの両立がしやすい環境が整っています。

編集部

求める人材像を踏まえて、倉吉市で働くことに興味・関心のある読者に向けてメッセージをお願いします。

金光さん

まず第一に、倉吉市に愛着を持っている方に来ていただきたいと考えています。本市の職員は、本市出身者はもちろん、市外出身の方も多く在籍しています。また「ひなビタ♪」というデジタルコンテンツがきっかけで倉吉市に魅力を感じて入庁された方もいます。

このように、いろいろなバックグラウンドを持つ方々が集まる中で、「倉吉での暮らしに愛着を持ち、愛着ある自治体を成長させていこう」という気持ちを共有できる方とご一緒に働けたら嬉しいです。先ほど藤井さんがお話ししたように、倉吉市は住みやすく魅力がたくさんありますので、来ていただけたらきっと好きになってもらえると自負しています。

編集部

暮らしやすい倉吉市に魅力を感じている職員さんが多く、互いに支え合いながら働いていることが伝わりました。愛着のある地域の一員として、人々の生活に直接影響を与える仕事に情熱を持つ方には、ぴったりではないでしょうか。本日はありがとうございました。

編集後記

上司が「まずはこの水準を目指そう」と最低ラインを示すことで、若手の挑戦を後押ししていると感じました。また、市長と若手職員の対話を通じて、シャワールーム設置や服務の見直しなど具体的な制度改革が進み、若手の意見を積極的に反映させようとする組織の姿勢が感じられました。

この記事のまとめ

組織の特徴
  • 正規職員約420名の中規模組織
  • 男女比率はほぼ半々(男性55%、女性45%)
  • 顔の見える関係性が築きやすい職場環境
若手の活躍
  • 市役所改革ワーキンググループで若手の意見を積極的に採用
  • 市長との直接対話の機会(車座会議)あり
  • 新しいチャレンジを応援する文化
子育て支援・福利厚生
  • 女性の産休・育休取得率100%
  • 男性の育休取得率70%以上
  • 女性保健師による相談体制あり
  • 産業医との連携による心身のケア体制が充実
育成体制
  • OJTを重視した実践的な学びの環境
  • 先輩職員による自然な指導文化が定着
求める人物像
  • 倉吉市に愛着を持ち、まちづくりに貢献したい人
  • 地域の課題解決に意欲的な人
  • 住民目線で考えられる人
立地・環境の特徴
  • 医療機関が充実(産婦人科・小児科が人口当たり全国上位)
  • 教育環境が整備(小学校から大学まで)
  • 無料で利用できる施設が充実
  • 通勤ラッシュがなく、ワークライフバランスが取りやすい

倉吉市役所の基本情報

自治体名 倉吉市役所
住所 鳥取県倉吉市葵町722
働き方 ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)
公式ページ https://www.city.kurayoshi.lg.jp/
採用ページ https://www.city.kurayoshi.lg.jp/
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募集職種 一般事務・保育士・土木技士・建築技士
取材・編集
紫竹淳志のプロフィール写真

ミライのお仕事編集部

紫竹 淳志

元新聞記者として約10年間、地方行政や選挙、プロ・アマチュアスポーツなど幅広い分野の取材経験あり。ミライのお仕事では、ソフトバンク株式会社や東京商工会議所、株式会社オープンハウスグループなど、数多くの著名企業や教育機関への取材を担当。