“市への愛着率”約9割!静岡県三島市役所の“働きやすさ”と“働きがい”

ワーク・ライフ・バランスの実現や若手活躍に重点を置く企業・組織を特集するこの企画。今回は静岡県東部にある「三島市」の三島市役所にお話を伺いました。

“住環境満足率”9割超の市民生活を支える三島市役所

三島市は静岡県東部、伊豆半島の付け根に位置する人口約10万人のまちです。富士山の伏流水がまちのいたるところに流れることから「水の都」とも呼ばれています。

水と緑に囲まれた豊かな自然が魅力の三島市ですが、東京圏へのアクセスの良さや充実の子育て支援を背景とした「住みやすさ」にも定評があります。2023年に三島市が実施した市民意識調査では“住環境満足率”が93.0%、その住みやすさを裏づける結果となりました。さらに同調査では“市への愛着率”が89.2%と2003年度の調査開始以来最高値に達しており、住みやすい環境の中で、三島市に愛着を感じながら生活している市民が多いことが伺えます。

・2023年度市民意識調査について:https://www.city.mishima.shizuoka.jp/ipn055042.html

自治体名 静岡県三島市
本庁舎住所 静岡県三島市北田町4-47
公式ページ https://www.city.mishima.
shizuoka.jp/
働き方 リモートワーク・時差出勤可能

三島市役所はそんな三島市での市民生活を支えるための中核組織として、さまざまな行政サービスの提供を行っています。また近年では「ウェルビーイング」(※)なまちづくりを進めていくための市民・企業と協働での取り組みにも力を入れています。
※ウェルビーイング…身体的、精神的、社会的に良好で満たされた状態のこと。

さらに市民の住みやすさはもちろんのこと、三島市役所における職員の働きやすさにも重点を置いているのが三島市の特徴。ワーク・ライフ・バランスの推進や、若手職員の活躍促進など、さまざまな角度から働きやすい環境づくりを進めています。

今回は三島市役所人事課副参事の及川さん、同課主査の小柴さん、同課主事の加藤さんに、働きやすい職場環境や若手活躍への取り組みなどについてお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
三島市役所人事課副参事の及川篤子さん

三島市役所
人事課副参事

及川 篤子さん

三島市役所人事課主査の小柴昂之さん

三島市役所
人事課主査

小柴 昂之さん

三島市役所人事課主事の加藤俊太さん

三島市役所
人事課主事

加藤 俊太さん

リモートワーク・時差出勤で、職員の柔軟な働き方を実現

三島市役所の職場風景

編集部

早速ですが、まずは三島市役所のワーク・ライフ・バランスの推進について伺います。三島市役所では働きやすい職場づくりのために、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?

小柴さん

三島市役所ではそれぞれの事情に合わせた柔軟な働き方ができるよう制度を整えています。具体的な制度としては大きく「リモートワーク」と「時差出勤」の2つです。加えて、年間を通してノーネクタイ・ノージャケットで勤務をしており、服装の面からも働きやすい環境を整備しています。

編集部

なるほど。勤務時間や勤務の場所に加えて、勤務中の服装にも柔軟性を持たせた職場環境なんですね。市役所でのお仕事は窓口業務も多いと思いますが、三島市役所でのリモートワークはどのように運用されていますか?

小柴さん

確かに市役所での仕事は窓口業務を中心に対面でのやり取りを要する場面が多く、大多数の職員が同時にリモートワークをするのは難しい状況があります。しかし三島市では子供がいるご家庭などそれぞれの事情を鑑みた上で、必要に応じてリモートワークをできる環境を整えています。実際、月に1~2回の職員もいれば、もう少し高い頻度で定期的にリモートワークを行っている職員もいます。

編集部

それぞれの事情に応じてリモートワークの頻度を調整しながら運用されているんですね。時差出勤についても伺いたいのですが、こちらはどのような制度なのでしょうか。

小柴さん

三島市役所の時差出勤は、勤務時間を1時間刻みで前倒し・後ろ倒しすることで働きやすい時間帯で勤務できる制度です。勤務開始は基本8時半ですが、最も早くて7時半スタート、最も遅くて12時半スタートとすることが可能です。勤務終了時間も勤務開始時間に準じて前後することになります。

編集部

7時半から勤務する場合は16時15分に退勤することができるということですね。時差出勤の制度を運用する上で工夫されていることはありますか?

小柴さん

三島市役所では時差出勤を月単位で固定するのではなく、1日単位での申請制としています。その日の自身の業務の都合、プライベートの都合に応じてフレキシブルに時差出勤を活用できるのがポイントです。

また1日単位での申請制にすることで、部署内で時差出勤する人、通常勤務の人を調整しやすいというメリットもあります。先ほども言った通り、窓口が開いている時間は必ず誰かしら職員が対応する必要がありますが、1日単位での申請制とすることで週の中で通常勤務と時差勤務をする職員を把握できるため「窓口対応できる職員がいない」という状況を防ぐことができています。

男性職員の育休取得率は90%超!「取得が当たり前」の雰囲気が取得を促進

編集部

三島市役所では男性職員の育休取得率が高いということもお聞きしたのですが、具体的な数字などはお分かりになりますか?

及川さん

三島市役所では男性職員の育休取得率が90%超となっています。育休対象となる男性職員のほぼ全員が取得できており、中には1年以上取得した男性職員もいます。

編集部

ものすごく高い数字ですね!男性職員の育休取得を促進するために工夫されていることはあるのでしょうか。

及川さん

人事課で職員に向けた制度の紹介なども行っていますが、取得を呼びかけた結果というよりも、三島市役所内で「男性が育休を取得するのが当たり前」という雰囲気が醸成されているからこその数字なのではないかと思います。多くの職員が育休を取得しているので、職員間で話をすることで「取得するのが当たり前」「これくらいの期間取得しても良いんだ」という意識が育まれているのではないでしょうか。

編集部

そういった意識は、子育ての当事者ではない職員にも浸透しているのでしょうか?

及川さん

はい。三島市では市民の子育て支援に力を入れているため、自然と職員全体に子育てに対する理解が醸成されているのではないかと思います。

実際、業務をどう割り振るか、育休に入る前にどれだけ準備をするのかということも含めて、周囲の職員がしっかりと協力しながら取得しやすい環境づくりを進めてくれているんです。そういった周囲の理解と協力があるからこそ、三島市役所では多くの職員が育休を取得できているのだと考えています。

若手職員の「発想力」「行動力」を活かしたゴミ減量の取り組み

編集部

続いて若手活躍のトピックについても伺います。三島市役所ではどのような人材を求めていらっしゃるのか、また活躍している若手職員の方にはどのような特徴があるのかを教えてください。

小柴さん

三島市役所では現在、「発想力」や「行動力」で変化を起こす人財の育成に力を入れています。今後の三島市を見据えて、新たな市の魅力の創出や発信に積極的に取り組んでくれる方を三島市としては求めています。

市役所の業務は毎年同じことを繰り返すケースも少なくありません。しかしその中でも決まったことだけを行うのではなく、三島市のためにできることを考えて提案し、自ら実行していける職員が増えているなと感じています。活躍している職員というのは、若手の頃からそういった積極性を発揮している者が多いですね。

及川さん

広域的な研修を行うこともありますが、そういった機会に手を挙げて参加する若手職員は多くなっています。積極的に自分のスキルアップを行っているなという印象がありますね。

編集部

実際に「発想力」や「行動力」を体現するような、若手職員の方の活躍エピソードがあれば教えてください。

小柴さん

メルカリを活用してゴミの減量を図るという、若手職員のアイディアによって生まれた取り組みがあります。市民から粗大ゴミ等として出されたゴミの内まだ使えるものをメルカリで出品し、売上を市の財源にするという取り組みで、ゴミの収集を担当する部署の若手職員が企画しました。この取り組みは2023年から実施されており、静岡県として初の試みとしてテレビなどさまざまなメディアに取り上げていただきました。

編集部

その若手職員の方からアイディアが出て実行に移すまで、どのくらいの期間があったのでしょうか?

小柴さん

この取り組みについては、2か月程度だったと思います。

編集部

とてもスピーディーに実行に移すことができるんですね!

小柴さん

大きなお金のかかる取り組みについては予算との関係があるのでどうしても時間がかかってしまう面はありますが、今回のようなあまりお金のかからない取り組みであれば、法律やルールを確認した上であればそこまで時間を要さず実行に移すことができます。また静岡県では初の取り組みですが、全国的には先進事例があるため、そういった点でもスムーズに進行することができたのではないでしょうか。

編集部

三島市役所の若手職員の方が、そういった先進事例にアンテナを張っていたからこそ実現できた取り組みなんですね。

三島市の未来を見据えた「自主研究グループ」の活動が若手活躍を後押し

編集部

他にも三島市役所で若手職員が主導したプロジェクトなどはありますか?

小柴さん

最近ではデジタルの担当部署が主導して発足した若手職員中心のプロジェクトチームがあります。半年程度のプロジェクトの中で、外部講師を招いた先進的なAIの生成ツールやメタバースの分野の勉強会を実施し、部課長級の職員に向けてデジタルを活用した市役所業務改善の提案発表を行いました。

編集部

こうした若手職員を中心としたプロジェクトは、デジタル分野以外にもあるのでしょうか?

及川さん

はい。三島市役所では市政課題に関するテーマを研究する「自主研究グループ」に対して支援を行っているのですが、その中には若手職員を中心としたグループもあります。まちづくりをテーマとして活動などを積極的に展開していますよ。

編集部

まちづくりに関する活動というのは、具体的にどういったことを行っているのですか?

及川さん

市民や地域組織などと交流しながら、三島市の地域課題解決に向けたさまざまな活動をしています。例えば最近では、三島市役所で実施した6日間の学生インターンシップの内の1日を、その自主研究グループにお任せしました。

このときのインターンシップにおける課題解決に向けたグループワークのテーマは「移住・定住」だったため、自主研究グループの職員には学生と一緒に、移住者なども含めた市民へのヒアリングを実施してもらいました。最終的にはインターン生に三島市への移住・定住者を増やすための施策を提案してもらったのですが、自主研究グループの職員には学生が検討を行う際のファシリテーションなども行ってもらいました。

編集部

そういった場で市民にヒアリングをして得られた意見を元に、自主研究グループとしても施策立案を行うのでしょうか?

及川さん

自主研究グループの活動は目先の仕事に活かすというよりも、中長期的なまちづくりのために活かしていくための取り組みです。そこで得られる情報は現在自分が所属している部署に関するものとは限らないため、活動を行いながら部署横断的な知識、情報を積み上げていっています。

また今回のような学生との交流も含め、市内でのネットワークづくりを行っているのが、このまちづくりに関する自主研究グループの活動の非常に重要なポイントです。学生インターンシップで行った市民ヒアリングも、自主研究グループが日頃構築してきた市民とのネットワークがあったからこそできたことでもあるんです。そういった職員の姿を見た学生から「こういう先輩と一緒に働きたい」という声も挙がっていました。

編集部

三島市全体を見据えた活動となっているんですね。活動を通じて市民の方との信頼関係を構築されているのも印象的です。

民間企業を経験して感じる“市役所ならでは”の特徴

編集部

三島市役所で働いている中で感じること、やりがいなどについても伺っていけたらと思います。加藤さんは中途で三島市役所に入職されたとのことですが、前職ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

加藤さん

前職では民間企業で営業職を5年経験しました。現在は三島市役所に入って5年目で、2課目の配属先となる人事課で業務に従事しています。

編集部

加藤さんが感じる民間企業と三島市役所でのお仕事との違いはどういった点にありますか?

加藤さん

三島市役所に限らず市役所全体に共通する話ですが、大前提として市役所では法律やルールに則って仕事をする必要があります。そのため「正確性」と「慎重性」が求められるのは市役所ならではの特徴ですね。その分民間企業と比べて検討が進むスピードは遅い面はありますが、逆に言えば地盤をしっかりと固めてから進めていけるというメリットもあるのではないかと思います。

仕事の面では、売上や利益など数字的に自分の仕事の成果が分かりやすい営業職に対して、市役所での仕事は必ずしも目に見える結果が出るわけではありません。そういった面で難しさを感じることはありますね。

また市役所の大きな特徴としてあるのが、必ず定期的に異動があること。私も最初に配属されたのは教育関係の部署で、今の人事課とは全く異なる業務内容でした。同じ市役所内で幅広い業務を経験できるというのは、市役所ならではの特徴だと思います。

「市民の三島市への愛着」と「職員の仲の良さ」が三島市役所で働く魅力

三島市役所の部活動の様子
▲陸上競技部では皆でマラソン大会に出場することもあるそう!

編集部

現在働いている中で感じる、三島市役所ならではの特徴や魅力を教えてください。

加藤さん

三島市役所で働いていて実感するのが、「三島市に住んでいる市民には三島市が好きな人がとても多いな」ということです。私自身もその1人。市民の方も、働いている職員も皆三島市が好きなので、そういう意味でとても働きやすさを感じています。

小柴さん

三島市役所は職員同士の仲がとても良く、温かい雰囲気があるのが特徴です。配属された部署内だけの話ではなく、サークル活動や部活動を通じた部署や年代を超えたつながりがあるんです。それは働きやすさの一つの要素になっているのではないでしょうか。

及川さん

三島市では市長が「職員一丸となって三島市の発展に全力で取り組む」ということをとても強調しています。その機運の下で、“チーム三島”として皆で仲良く取り組んでいるのが、三島市役所の一番の魅力です。

編集部

素敵ですね!ちなみにどのようなサークル活動があるのでしょうか?

小柴さん

体育系のものから文化系のものまで、本当にさまざまなサークル・部活動がありますよ。私自身も陸上競技部に入っていますし、有志で行っているバレーボールのチームにも入れてもらっています!

さまざまな経験を三島市のために活かしていきたい方を歓迎

編集部

最後に、三島市役所でのお仕事に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

加藤さん

先ほども言った通り、市役所での仕事には必ず異動があるため、幅広い業務を経験し、さまざまな分野の知識を身に付けることができます。一つの職場で幅広い仕事に従事できるのは、三島市役所で働く上での大きなメリットです。

また部署が変わるとはいっても、同じ三島市役所内で働くことに変わりはありません。今は違う部署で働いている職員もいずれは同じ所属で仕事をすることになるケースも珍しくありませんし、今の仕事での知識や経験が他で活きることもあります。それは前職での経験も同じ。私自身、営業経験が今の仕事での考え方などに活かされているなと思う場面が多くあります。いろいろな経験を三島市のために活かしていける環境があるので、気になる方はぜひ一緒に働けると嬉しいです。

編集部

市民調査結果が示すように“市への愛着率”が高い三島市。三島市役所でも「三島市が好き」という気持ちを形にしていけるような、さまざまな挑戦の機会があると感じました。市民にとって住み良いまちづくりを進めながら、同時に職員にとって働きやすい環境づくりを進めているのも印象的です。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

■取材協力
三島市:https://www.city.mishima.shizuoka.jp/
採用ページ:https://www.city.mishima.shizuoka.jp/maincategory0731.html