若手のチャレンジを歓迎し、働きやすい職場作りに努めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は宮崎県宮崎市のお話を伺いました。
市制100周年を迎え次の100年に向けて動く宮崎県宮崎市
中心部の近くに海と山を有する自然豊かな中核市が、宮崎県宮崎市です。一年を通して比較的温暖な気候にあり、冬から春にかけて多くのプロスポーツチームがキャンプ地として拠点を置きます。
南国の雰囲気に包まれている街はリゾート地としても人気が高く、チキン南蛮やマンゴーなどのグルメでも知られている自治体です。
自治体名 | 宮崎県宮崎市 |
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住所 | 宮崎県宮崎市橘通西1丁目1番1号 |
公式ページ | https://www.city.miyazaki. miyazaki.jp/ |
2024年4月に市制100周年を迎える同市では、多くの若手職員が活躍しています。より働きやすい職場を作ろうとペーパーレスをはじめとしたDXにも取り組んでおり、次の100年に向けて歩みを進めています。
同市の働き方や若手の活躍ぶりについて、総務部人事課 課長補佐の竹下和摩さん、同課主事の松永拓真さんにお話を伺いました。
市政史上最年少の新市長のもとで進められる新しい試み
▲市政史上最年少の清山知憲市長のもとさまざまな新しい取り組みが実行されている
編集部
2022年に宮崎市では市政史上最年少の清山知憲市長が就任されました。就任後2年ほどが経ちましたが、庁舎内の雰囲気にはどのような変化があったでしょうか?
竹下さん
宮崎市に限らず、自治体はトップが変わると庁舎内の雰囲気も大きく変わります。清山市長が就任されてからは、よりスピード感を求められることも増え、とにかく前に進めるためチャレンジしていこうという雰囲気が強まったと感じていますね。
公民連携のプロジェクトなど、さまざまな新しい取り組みが進められています。
編集部
例えばどのようなプロジェクトが進められているのでしょうか?
竹下さん
民間との連携の部分でいえば、例えばマッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」を運営しているエウレカさんとのコラボが挙げられます。宮崎市役所の職員をはじめ、地元企業の社員さんたちにペアーズの利用を促す取り組みが進められています。
ペアーズでお相手を見つけるためのノウハウを解説する勉強会を市が開いたり、勉強会の参加者にペアーズの利用クーポンを配布したりしています。一連の取り組みは、九州では初めてのことです。
そのほか市内の公園に大人の方にも集まっていただけるよう、利用方法の規制を緩和して大人が参加できるイベントを開催するといった取り組みもありますね。
編集部
新市長のもとで、宮崎市としてもさまざまな新しい取り組みを進めていらっしゃるのですね。
2~3年目の職員でも新事業を提案可能、チャレンジしやすい環境
編集部
宮崎市役所内の雰囲気の変化がお話しから伺えますが、市長と職員の関係性についてはいかがでしょうか?
松永さん
清山市長が就任されてからは、多くの若手職員が市長と会話する機会が増えたと感じていると思います。実際に、各部局の若手職員と市長がフリーで意見交換をする場を設けていただきました。また、職員と市長の合同勉強会が定期的に開かれているのですが、その場では他市の市長さんや民間企業の方などをお呼びしてお話しいただき、若手職員が市長の考えを直接聞くことのできる機会になっています。
全庁的な課題などについて職員が気軽に提案し、市長にも確認していただける仕組みも試行的に始まりましたので、より提案しやすい雰囲気になりました。
編集部
清山市長が就任されて、若手の意見を吸い上げる機会が増えたのですね。
松永さん
清山市長が就任されて若手職員と市長の距離が縮まったというのはありますが、宮崎市役所では市長就任以前から若手が事業を企画し、実現できる環境にありました。2~3年目の職員であっても、新しいことを提案できる雰囲気はありましたね。
特に清山市長就任後は「新しいことを求めているのでとりあえずやってみよう」という文化はより強くなったと思います。
編集部
チャレンジしやすい環境にあるということですね。
部署異動は3~5年スパンで実施、職員に求められている専門的なスキル
編集部
竹下さんと松永さんのそれぞれのご経歴について伺わせてください。
竹下さん
私は入庁して25年目になりまして、福祉や観光、財政などさまざまな分野の業務を担当してきました。途中で宮崎県庁に1年派遣されたこともあります。
松永さん
私は入庁して8年目です。現在の総務部人事課に異動になるまで2課経験しております。最初の課は税関係の業務を担う納税管理課に所属しており、4年目からはデジタル関連の情報政策課に4年在籍していました。
編集部
自治体はジョブローテーションが多い印象ですが、宮崎市役所ではどれぐらいのスパンで異動があるのでしょうか?
竹下さん
宮崎市役所では慣例として入庁10年目までに3課を経験するという目安があります。ですので、おおよそ3年ほどで異動するというのがこれまでの流れでした。
しかし、最近では部署に在籍する期間が平均しておおよそ4~5年ほどと長くなりつつあります。これは職員に対してより専門性が求められるようになっているということもありますし、市民との関係性も考えてのことでもあります。
特に地域の方と関わりが深い部署で3年で異動となりますと、せっかく関係性が作れてきたところで異動となり、またゼロから関係性を作り直すことになってしまいます。これらのことを総合的に考えて部署の在籍期間が決められています。
入庁10年目ほどで市外の組織に派遣、市役所に戻ってからは専門分野で活躍
編集部
竹下さんは県庁へ派遣されたご経歴をお持ちですが、市外の組織に派遣されるケースも多いのでしょうか?
竹下さん
しっかり調べたわけではないのですが、他の自治体の方からお話を伺った限りでは宮崎市役所は国などの機関に派遣される人数が比較的多いのではないかと思います。
職員として脂が乗った時期に派遣されるため、市としては残ってばりばり活躍してもらいたいところでもあります。ただ、市役所以外のそれぞれの組織で得るものは大変大きいと思いますので、より優秀な人材を派遣していくという流れは今後も続くのではないかと思いますね。
編集部
実際にどのような組織に派遣されているのでしょうか?
竹下さん
最近では、総務省のデジタル関連の部署に派遣された職員がいますね。今は市役所に戻って、情報政策課で活躍しています。また、総務省の外郭団体の自治体国際化協会という団体がありますが、そこで中国に派遣された職員は戻ってきた後にインバウンド関連の業務に携わっています。
おおよそ10年目ぐらいの職員が派遣されますが、ちょうど市役所の業務に慣れている時期です。そんな時期に違う環境で働くという機会は、新しい気付きを得られる良い機会だと感じています。
編集部
市外の組織への派遣は転職のようなインパクトがあると推察されますが、大きな成長の機会となっているのですね。
新庁舎建設計画と同時に進められているデジタル化の取り組み
▲新庁舎建設に合わせて庁舎内でデジタル化が進んでいる
編集部
現在新庁舎の建設も予定されているとのことですが、働く環境も大きく変わりつつあるのですね。
松永さん
新庁舎については2031年度中の運用開始が予定されています。新庁舎というハード面はもちろんですが、同時にペーパーレスの取り組みなどソフト面も変えていこうという動きが進んでいます。
竹下さん
私自身、ペーパーレスについて最初は不安を持っていました。しかし、ほかの課に協議に行くときもパソコン1台持てば全て済みますし、今ではデジタル化の便利さを感じています。
編集部
デジタル化の恩恵は職員だけにとどまりません。市民向けにも児童扶養手当の現況届など紙での手続きが必要だったものが、今ではオンラインで申請できるようになりました。市民にとってみれば市役所に訪れなくても手続きができますし、職員も作業の効率が上がっています。
なぜ今までデジタル化を進められてなかったのかと今では思っていますね。
編集部
デジタル化が進んだ背景には何があるのでしょうか?
竹下さん
デジタル化が進んだ背景にも、清山市長の影響があります。「デジタルチャレンジ宣言」というのを市長が掲げられて、すぐに実行に移しました。
デジタル化に向けた代表的取り組みとしては、民間企業出身のデジタル人材を採用したことが挙げられます。そこから一気に取り組みが加速しましたね。
編集部
デジタル化が進んだことで変化したこととしてはほかに何が挙げられるでしょうか?
松永さん
デジタル化が進んだことにより、テレワークが普及しました。お子さんが体調を崩されてどうしても家にいなければならないという状況のときなど家庭の事象にあわせてテレワークを実施する職員もいます。
ワークライフバランスを取るためや一人で集中して作業を行う際等の有効な手段としてテレワークが導入されています。
編集部
ペーパーレスによってフレキシブルな働き方が実践されているのですね。デジタル化以外に、働き方で変化した部分はございますでしょうか?
松永さん
2023年10月からは、オフィスカジュアルでの出勤が可能になりました。また、フレックスタイムを試験的に一時導入したこともありますし、今は職員の働き方について変えていくためのチャレンジをする時期に当たると思います。
ただチャレンジするだけではなく、チャレンジを終えてどうだったかというアンケートを職員から取って振り返りも行っています。
育休を取得する男性職員も増えていますし、これからも職場環境はより良い方向で改善されていくと思いますね。
田舎でも都会でもない「ちょうど良さ」が宮崎市の魅力
編集部
25年間職員として働いてこられた竹下さんが思う宮崎市の魅力は何でしょうか?
竹下さん
宮崎市に移住した方からは「宮崎市はちょうどいい街だ」というように言われますね。田舎すぎることもなく、都会すぎることもない地方都市という印象なのだと思います。初めて移住される方にとってはちょうどいい街だといえるのではないでしょうか。
海と山にも近いですし、サーフィン目的で移住される方もいらっしゃいます。東京からは距離もありますが空港も中心部に近いため、アクセスに困ることはありません。
編集部
松永さんはいかがでしょうか?
松永さん
採用にも携わっていて他市から来た若手職員と話すこともありますが、宮崎市について「居心地がいい」と聞きますね。竹下も話していた通り、都会と田舎のちょうど中間にあたるというのが宮崎市の魅力なのだと思います。
編集部
生活に困るほど田舎でもなければ気疲れするほど都会でもない。このちょうど良さが宮崎市の魅力なのですね。
一般事務職にも社会人枠創設、チャレンジできる人材を求める
▲「宮崎市役所には新しいことにチャレンジしようという思いに応える環境がある」と話す竹下さん
編集部
市役所での勤務を経験していない民間からの人材について宮崎市役所はどのように考えていらっしゃるのでしょうか?
松永さん
宮崎市役所では従来から技術職で社会人枠を設けて民間の人材を採用していました。一般事務についてもかつては募集していてしばらく中断していたのですが、2023年度から一般事務でも社会人枠を復活させました。
背景として民間で培った経験を市役所にも取り入れたいという思いがあります。地元の方はもちろん、市外の方でも宮崎市が好きだという方であれば大歓迎です。
編集部
社会人枠で採用した一般事務の職員に求めることは何でしょうか?
竹下さん
技術職であれば、例えば民間でインフラ事業に携わっていた方であればそのまま宮崎市役所の水道局に入ってスキルを生かせると思います。
一般事務の職員には直接的なスキルというよりは、民間で培った経験や、市役所にずっと勤めていた職員からは生まれない発想をお持ちの場合もあるでしょうし、そこに期待したいですね。
編集部
最後に、宮崎市役所に興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
松永さん
冒頭でも申し上げた通り、宮崎市役所は若手の意見が通りやすい環境にあります。チャレンジ精神や新しい発想にあふれた方と一緒に働きたいですね。
竹下さん
市役所の業務について固いイメージを持っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、実はそんな雰囲気はありませんし、新しいことにチャレンジしようという思いに応える環境があります。チャレンジしてみたいことをお持ちの方は、ぜひご応募いただけると嬉しいです。
編集部
新しい取り組みを次々と実施されている宮崎市役所さんだからこそチャレンジできる機会が数多くあるのだと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
宮崎県宮崎市:https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/
採用ページ:https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/city/adoption/