SDGsの達成に向け、独自性のある取り組みで業界をリードする企業に注目するこの企画。
今回は、ナチュラルオーガニック製品を通してエシカルかつサスティナブルな事業を展開する、株式会社ニールズヤード レメディーズにお話を伺いました。
ナチュラルオーガニック市場で確固たる地位を築く株式会社ニールズヤード レメディーズ
株式会社ニールズヤード レメディーズは、自然療法にもとづき、こだわりの製品を人々へ届けるイギリス発祥のヘルス&ビューティーブランドです。
同社製品の植物原料はオーガニックかつサスティナブルで、製品一つひとつに確かな品質を裏付けるストーリーがあります。企業としての取り組みやブランドポリシーを販売プロモーションに反映させ、製品を取り巻く環境への想いも伝えながら事業を展開しているのが特徴です。
地球環境の保全と事業活動の両立は、企業の規模や利益を意識するほど難しいとされています。そのなかで、同社は業界トップクラスの規模を維持しながら、イギリスの団体「Ethical Company Organisation」に世界で初めて、企業としてエシカル認定100点満点と評価されました。
会社名 | 株式会社ニールズヤード レメディーズ |
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住所 | 東京都渋谷区神宮前5丁目1-17 |
事業内容 | ・自然化粧品の輸入販売 ・アロマセラピーをはじめとする自然療法の普及と啓蒙 ・自然療法に関する教育事業 ・トリートメントに関する技術提供事業、業務提携事業 ・自然食、雑貨販売、レストラン事業 |
設立 | 1994年11月1日 |
公式ページ | https://www.nealsyard.co.jp/ |
代表取締役の梶原建二氏は、ノーベル平和賞受賞者のアル・ゴア氏が立ち上げた「クライメート・リアリティ・プロジェクト」においてリーダーの一翼を担い、講演会やトークセッションで活躍されていることでも広く知られています。
株式会社ニールズヤード レメディーズには、ブランドの在り方や梶原建二氏の考えに共鳴して一員となるスタッフも多いそうです。
▲「クライメート・リアリティ・プロジェクト」のリーダーでもある代表取締役の梶原建二氏
今回は、ショップ人事をご担当する坂入あかねさんと、アミュプラザ博多店で店長を務める月見加奈さんに、SDGsへの取り組みやスタッフの環境への意識、求める人材像について詳しくお話を伺いました。
自然と共存する企業としてグローバル規模でSDGsへ貢献
▲株式会社ニールズヤード レメディーズは本社ビル全体に再生可能エネルギーを導入している。オフィスフロアはナチュラルなインテリアが魅力的。
編集部
最初に、SDGsをテーマにお話を伺います。ニールズヤードさんと言えば本社がエコビルとして有名ですが、どのような建物でしょうか。
坂入さん
東京・表参道にあるニールズヤードの本社では、再生可能エネルギーを導入しています。おかげで、スタッフ一人ひとりに“地球環境に配慮した環境で働いている”という意識が備わっていると思います。
編集部
事業においては、SDGsにどのように関わっておられるのでしょうか。
坂入さん
弊社の製品は自然に支えられており、地球環境への想いはSDGsが大きく取り上げられる以前からブランドのベースにありました。弊社では、本社イギリス主導の活動から日本独自の活動まで、大小さまざまな規模の取り組みをしております。
編集部
SDGsに関わる代表的な取り組みをご紹介いただけますか?
坂入さん
グローバルな例として、我々がテーマとしている課題のひとつに教育や女性支援があります。たとえばケニアでは、樹木から採取した樹脂をもとにした香料「フランキンセンス」の仕事に関わる女性の自立を促すため、売り上げの一部を子どもたちの教育費に充てる活動をしています。
マダガスカルでは、精油の原料となる植物「パルマローザ」や「イランイラン」の栽培に関わる女性の子どもが通えるよう、学校環境を整える活動にも貢献しています。
▲樹脂からできる香料フランキンセンスの生産に関わるスタッフ。材料となる樹脂は“砂漠の真珠”とも呼ばれている
編集部
ニールズヤードさんのほかの取り組みもぜひご紹介ください。
坂入さん
植物が育つ過程で、受粉を担うみつばちは欠かせない存在です。しかし、現在みつばちが急激に減少していることをご存知でしょうか。この問題に対して、弊社では製品を挙げて対策に乗り出しています。
具体的には、ケア商品Bee Lovely(ビーラブリー)シリーズを立ち上げ、みつばちを取り巻く環境の改善を目的に、売り上げの一部を寄付するといった取り組みです。2011年から10年以上かけ、これまでに5,600万匹以上のみつばちを救ってきました。
▲ニールズヤードではBee Lovely(ビーラブリー)シリーズの売り上げの一部を慈善団体へ寄付し、養蜂家をサポートしている
▲ニールズヤードはガーナの「Bees for Development」の活動も支援している
坂入さん
資源の持続可能な利用もオーガニックコスメメーカーとして弊社が注力しているテーマのひとつです。化粧品の原料となる植物は、気候条件や環境によっては絶滅の危険にさらされるリスクがあります。
年々植物の絶滅危惧種は増えており、昨今のオーガニックコスメやナチュラルコスメの人気ぶりもその要因として一役買っているのが現状です。生産地域によっては利益優先、持続的な保全まで配慮せず植物を乱獲するケースも見受けられます。
こうした問題に対して、メーカーには継続的な栽培や保全ができるよう現地とコミュニケーションを取りながら買う責任があります。そこで弊社では価格を保障するほか、地元の環境教育にも取り組んでいます。具体的には乱獲や土地開発を防ぎ、苗を育て植樹をするなどの活動を進めています。
天候の影響で原料供給量に偏りが生じる、特定の生産地に負担をかける、などがないよう、ひとつの原料に対して複数の供給元を確保していますが、それでも絶滅が危惧される植物に関しては安定な収穫が見込めるまで思い切って関連商品の生産を中止する決断も苦としておりません。
SDGsへの配慮はニールズヤードのスタッフにとって“当たり前”
編集部
ニールズヤードさんのこうしたエシカルな取り組みや環境に対する想いは、やはり社員の方々にも浸透しているのでしょうか。
坂入さん
弊社で働くスタッフは、もともと環境や倫理、健康への意識が高く、社会の課題に配慮した取り組みを自然にとっています。
たとえば、マイバッグ・エコバッグにしてもそうです。弊社では何年も前から、それこそ巷で流行る以前から当然のように取り入れられていて、オフィスに全員が使えるバッグが常設されていました。
また、クリスマスコフレには間伐材を使った緩衝材を入れておりますが、導入初期はスタッフが自ら手で裂いて作っていたというエピソードもあります。
弊社ではレストラン「BROWN RICE(ブラウンライス)」を展開しており、素材の皮まで食して恵みをまるごと取り入れる“一物全体(ホールフード)”の考え方を重視しています。こうした物を残さず大切にするといった姿勢も社内に浸透していると思います。
ニールズヤードには、SDGsに配慮した取り組みに当たり前に賛同できる風土がありますね。
日本では独自に「MySR」を推進!“当事者意識”を育み1歩を後押し
編集部
ニールズヤードさんの日本独自の活動についてもぜひ教えてください。どのようなアクションを起こしているのでしょうか。
坂入さん
日本においては社内で「MySR(私の社会的責任)」プロジェクトを立ち上げ、スタッフの意識改革を進めてきました。CSR(企業の社会的責任)をより“自分ごと”としてとらえ、“できることから1歩踏み出そう”という想いを込めて“My”SRとしたのがネーミングの由来です。
MySRでは、ニールズヤードのブランドポリシーや全社キャンペーンを通して環境問題や社会的責任について学び、一人ひとりが個人レベルでできることを考え、それらを実際に行動に移してきました。
5つのテーマ「森を守ろう」、「海を守ろう」、「食べ物を守ろう」、「女性・子供を守ろう」、「動物を守ろう」に合わせてチームを編成し、スタッフが有志で自由に参加・活動しています。たとえば「女性や子どもの支援」チームでは、フードドライブや“こども食堂”さんへ食材を持ち寄るといった活動をしています。
「エコアクション」キャンペーンや講演会の企画でスタッフの意識に変化
編集部
ニールズヤードさんのMySRプロジェクトに実際に参加されたお話や、大きな反響を得られた事例があればご紹介ください。
月見さん
MySRの活動は多岐に渡ります。私は「海を守ろう」チームに所属し、全国の店舗メンバーと協力して、社外向けキャンペーンと連動した社内向けキャンペーン「エコアクション」を企画したり、講演会を企画したり、社内広報として「海活新聞」を作製してコラムを配信したりしました。
編集部
「エコアクション」企画についてぜひ具体的に教えてください。
月見さん
「エコアクション」は、約100項目のエコな行動と海の生き物を描いたぬり絵を配布し、クリア数に応じて海の生き物を塗っていく企画です。エコアクションの達成度はぬり絵の完成度で共有でき、本社と全国の店舗で結果を競いました。
項目は「エコバッグを使う」、「油物を捨てる際は拭いてから破棄する」といった日常生活で取り組めるアクションから、「ビーチクリーンに参加する」といった自ら意識しないと実現できないようなアクションまで幅広く用意しました。多くのスタッフに意欲的に取り組んでいただけたと思います。
編集部
素敵な企画ですね。講演会についても詳しくご紹介ください。どのような経緯で実現したのでしょうか。
月見さん
講演会は、福岡県で活動する一般社団法人ふくおかFUN代表理事の大神弘太朗氏にお話しいただきました。日頃尽力されている環境活動やダイバーとして海に潜っているからこそ見える世界を、独自に「自然伝承」という形で伝えておられる方です。
まずは私だけお話を伺う機会があったのですが、大変エネルギッシュな人柄と活動に感銘を受け、「ぜひニールズヤードの仲間にも彼の話を聞いてもらいたい!」と、講演を依頼させていただきました。
編集部
講演会の内容が大変気になります!どのようなポイントに心を動かされたのでしょうか。
坂入さん
社内向けの講演会では、現在の海がどのような状態に陥っているか、海の生き物がどのような危機に瀕しているか、かなり具体的に話していただきました。その問題に正面から向き合い、大神さんがダイバーとしてできることを一つひとつ着実に行動していることも知りました。
大神さんは、「これは難しい」「これはやれない」ではなく「難しそうだけどちょっとやっちゃえ!」と、とにかく行動していて、それが大きな衝撃でした。「なんとかしたい」という想いを原動力に、世界を動かそうとしていることが強く伝わってくるんです。
その想いが同じエネルギーを持つ人を引き寄せ、輪が広がっています。泣けてしまうくらい熱く、たくさんのことを教えていただきました。
編集部
講演会の反響はいかがでしたか?
坂入さん
大神さんのメッセージに後押しされ、“とにかく行動する”キッカケをもらえたスタッフがとても多い印象です。「何かやりたいけど何ができるかわからない」と足踏みしていたニールズヤードのスタッフみんなが「こんなことからでも、まず自分がやればいいんだ!」という意識を持てました。
月見さん
講演会後はさまざまなスタッフから「とても良かった」と声をかけていただき、“普段はクールなあの人が珍しく熱くなっていた”といった反響も耳にしました。弊社には真面目で優しいメンバーが揃っており、矛盾を抱える環境問題に引っかかりを感じ、悩むスタッフも多くいます。
そこに、大神さんのエネルギッシュな雰囲気と言葉が大いに響いたのではないかと思います。
一人ひとりができることを継続…MySRで広がる輪
▲「MySR」はスタッフのライフスタイルに徐々に定着している。定期的にビーチクリーン活動に取り組むスタッフも
編集部
月見さんがMySRプロジェクトに参加されたのは、そもそもどのような想いからでしょうか。
月見さん
私がニールズヤードに入社した当時は、まだSDGsという言葉がない時代でした。それなのに「社長はプラスチックが嫌いなんだよ」といった話を割とすぐに耳にしたんです。はじめは「どういうこと?」と頭の中がクエスチョンマークでいっぱいでしたね。
それをキッカケに海洋生態系へ影響を及ぼすマイクロプラスチックや化粧品に含まれるプラスチック素材のスクラブの存在などを知ることになりました。
私はもともとアロマやハーブ、オーガニックの考え方が好きで、エコや環境といったワードへの興味がありました。加えて、入社から間もない時期にこうした環境問題を知ることで、価値観や行動が変わっていったように思います。
はじめは1人でコツコツと、「こんなことをしても意味がないかも…」といった取り組みを続けていましたが、「なんとか活動の幅を広げたい」と考えていた時期に、タイミング良く社内でMySRの公募があり、手を挙げた次第です。
編集部
MySRプロジェクトの取り組みが、社員の方々の“社会的責任に配慮した行動”の定着・継続につながっているという実感はありますか?
坂入さん
MySRはスタッフ一人ひとりの意識に変化を及ぼし、行動のキッカケになっていると思います。MySRを通して、これまでスタッフが個人で取り組んでいた環境活動やアイデアを社内全体で共有できたのは大きな転機でした。
小さなことですが、「生ゴミをベランダで簡単に資源にできる“コンポスト”があるよ」と誰かが声を挙げたら一気にみんなが買って始めた、というエピソードもあります。
MySRの活動はコロナ禍以降、会社主導の大々的な活動は鳴りを潜めていますが、個々のつながりはずっと続いています。それぞれのチームで連絡を取り合っていたり、個人で活動していたり、会社として蒔いた種が根付いている感覚があります。
月見さん
私はMySRの活動時にお誘いいただいたご縁で、一般社団法人ふくおかFUNの「あしもとから」というゴミ拾い活動に継続参加しています。はじめは会社が定めた活動の日に参加していましたが、今では会社の枠を超えて個人的に継続しています!
求めているのは、目に見えない“根”の部分まで大切にできる人
編集部
ここからは、ニールズヤードさんの職場環境や採用についてのお話も聞かせてください。まずは職場環境について、社員の働きやすさへのこだわりはありますか?
坂入さん
意図しているわけではありませんが、ニールズヤードはスタッフの95%以上が女性です。弊社では、お客様の健康と美容に寄与する企業として、スタッフもしなやかに働き続けられるよう、「性別や年齢に関わらず誰もが働きやすい職場」の実現を目指しています。
たとえば、育児・介護・療養・学び…といった個々のライフスタイルと実際のワークスタイルの調和も、重視するテーマのひとつです。会社としてさまざまな選択を受け入れ、現場の理解を得て浸透させることに注力しています。
編集部
採用についても教えてください。ニールズヤードさんではどのような人材を求めておられますか?
坂入さん
私達が大切にしているのは、物事の“根っこ”の部分です。ニールズヤードのロゴマークをイメージいただくと分かりやすいかと思います。
我々の仕事は、表向きはオーガニックスキンケア商品の販売ですが、ショップスタッフは「お客様のお力になりたい」という思いを最も大切にして、店頭に立っています。目に見えない部分を重視しているんです。
そのため、我々はお悩みを抱えて訪れたお客様に対し、「自分ができる範囲でなんとか力になりたい」「お客様に寄り添いたい」といった想いを持てる仲間と仕事をしたいと考えております。
接客や販売に苦手意識がある、オーガニックコスメに興味はあるけど詳しくない、といった方も心配ありません。スキルや知識は少しずつ身につければいいものです。お客様を想いやる気持ちがあれば、自分自身を生かしながら楽しく仕事をしていただけます。
編集部
転職されてくる方々も、SDGsや社会的な課題への意識・想いが強いのでしょうか?
坂入さん
そうですね。SDGsや社会的な課題に対して意識が高い人、地球環境を大切に思っている人が多い会社だと思います。
スタッフのなかには、ほかの業界や、SDGsと企業活動の両立に課題を抱える企業出身で、“自身の信条”と“会社の製品・業務”の矛盾に苦しんで転職してきた人もいます。そういった面で、ニールズヤードは自分の気持ちを大事に、ブレのない生き方ができるブランドだと思います。
仕事ですからきちんとメリハリをつけて業務にあたる必要がありますが、自社の製品に誇りを持って働ける環境です。
編集部
ニールズヤードさんには、環境問題や社会が抱える課題に対して当事者意識を持ち、行動を起こせるスタッフが多いと知り、感銘を受けました。
当たり前のようにSDGsに配慮できる社風は、地球環境の保全と事業活動の両立でジレンマを抱える方にとって大変な魅力かと思います。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
■取材協力
株式会社ニールズヤード レメディーズ:https://www.nealsyard.co.jp/
採用ページ:https://hrmos.co/pages/nealsyard