新しい働き方を取り入れている企業に、お話を伺っているこの企画。今回は、薬局の事務作業をITで効率化することで、医療現場のアップデートに取り組んでいる株式会社プレカルにインタビューさせていただきました。
株式会社プレカルとは
株式会社プレカルは、薬局向けの処方箋入力代行サービス「precal(プレカル)」を提供しています。薬局業務の中でも特に時間のかかる処方箋入力作業から薬剤師を解放し、本来の業務である調剤や薬歴管理、患者さんとのコミュニケーションなどの作業に集中してもらうことを目的としています。
会社名 | 株式会社プレカル |
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住所 | 東京都北区志茂1丁目16番13号 |
事業内容 | ・オンライン事務員による処方箋入力代行サービス ・クラウドレセコン |
設立 | 2019年7月 |
公式ページ | https://www.about.precal.jp/ |
「precal」の処方箋入力を担当する入力事務員は、大部分がフルリモート勤務。自由な働き方ができる会社の風土や求めている人材について、広報の大須賀さんにお話を伺いました。
薬局向けの処方箋入力代行サービス「precal」を運営
編集部
最初に、プレカルさんの事業内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。
大須賀さん
弊社は、薬局向けに処方箋入力代行サービス「precal(プレカル)」を開発して提供しています。
薬局では患者さんから処方箋を受け取り薬をお渡しする際に、事務員や薬剤師の方が、領収書の発行や薬を入れる袋等を印刷するために「レセコン」というシステムに処方箋内容の入力を行っています。
実は、この処方箋の入力業務が、薬を割ったり袋に入れるという調剤業務や患者さんの対応よりもずっと時間がかかり、業務の最も多くの時間を占めているんです。
このように事務作業に多くの時間を取られて、本来の仕事に時間を割けない現状の解決法として、「precal」は、患者さんの自動受付システム、処方箋の入力代行、さらに入力したデータを「レセコン」に自動入力して、受付から印刷までをすべて自動で完結するサービスを提供しています。
また、2023年5月中のリリース予定になりますが、受付回数が月500回以下なら利用料は0円で利用できる「クラウドレセコン」の開発も進めています。
入力事務員がオンライン上に待機し、薬局から届いた処方箋を即入力
編集部
御社のサービスによって、薬局の事務作業の効率化を図ることができるんですね。御社のサイトを拝見したところ、薬局で患者さん自身が処方箋をスキャンすると、御社に処方箋データが送られてオンライン事務員が入力し、平均4分で薬局のタブレットに入力データが届くとありました。
大須賀さん
開発を進め、現在は平均2分以内で薬局様にデータをお返しすることができるようになりました。入力事務員がオンライン上に待機していて、薬局から処方箋が届くとリアルタイムで入力していきます。入力の速さとともに正確性を担保するため、1つの処方箋を患者、病院、医師等、項目毎に細分化し、更に項目につき、2名が入力する仕組みになっています。
まったく同じ入力を2人が行うことでダブルチェックの機能を持たせ、各項目の2人の入力内容が完全に一致するとステータスが完了に切り替わります。全項目のステータスが完了になると、初めて薬局にデータが送られる仕組みです。
もし、2人の入力に差異があった場合は、ステータスが監査待ちになり、監査チームのチェックが入ります。入力事務員は全員が調剤事務経験者ですが、監査の段階で間違うと薬局に誤ったデータが送られてしまうので、より責任が問われる監査は、限られたスタッフのみ対応するようにしています。
社会の「なんで今までこれがなかったんだろう」を実現
編集部
御社は、代表の大須賀さんをはじめ、現場の課題を知る薬剤師経験者の方々がサービスを立ち上げたと伺っています。
大須賀さん
はい。代表の大須賀が薬剤師として従事していた時に、薬局業界はIT化がまだまだ進んでいないと痛感して、自身でIT化を推し進めるしかないと2019年に起業しました。私たちは、薬局のDXを通じて、社会の「なんで今までこれがなかったんだろう」を実現することをミッションとしています。
そのミッションを体現するために、プレカルには組織が大切にする3つの価値観があります。1つめは「三方よし」。「三方よし」とは、薬局向けのより良いシステムを開発することで、薬の渡し間違いをなくし患者の待ち時間を減らすなど、最終的に患者の利益となることです。2つめは「徹底的なユーザー志向」、3つめが「挑戦と変化を楽しむ」です。この3つの価値観については、公式サイトの採用ページにも掲載しています。
難しいことでもコツコツ解決、挑戦できる人を求める
▲株式会社プレカル広報担当の大須賀さん
編集部
御社では、「三方よし」「徹底的なユーザー志向」「挑戦と変化を楽しむ」の3つの価値観に共感する人材を求めていらっしゃるんですね。
大須賀さん
そうですね。薬局業界にはしがらみが多く、ジェネリック選択など複雑な入力項目にも対応する必要があるので、IT化や「precal」に落とし込むためには、難しい部分や考慮することがあり試行錯誤しています。大きなことをしないと、薬局のIT化はなかなか進んでいかないとも思っています。
そのため、弊社としては、難しいことでもコツコツ解決していくことが得意だったり、挑戦することができる方を求めています。入力業務スタッフ、エンジニア、営業職など、どんな職種でも自分から「これやりたいです」といえる人を求めています。
未経験のことでも、自分のやりたいことに挑戦できる環境
編集部
御社には今まで、どんな挑戦をした方がいらっしゃいますか?
大須賀さん
入力事務員として入社した社員が、上長との個人面談の際にWebデザインをやってみたいと希望して、未経験から徐々にWebデザインの仕事を担当するようになった例があります。その社員は弊社での経験を生かしてWebデザイン会社に転職した後、弊社に戻りWebデザイナーとして働いています。
編集部
ご本人も努力されたと思いますが、御社としても新しい業務の機会を与えたり、バックアップができる環境があるということですね。
大須賀さん
そうですね。私自身も入力事務員として入社しましたが、広報の仕事にも興味がありますと伝えたところ、広報業務の仕事もさせてもらえるようになりました。現在は、スーパーバイザーと人材採用が主で、広報は業務があるときのみ担当しています。自分のやりたいことに挑戦できる環境だと思います。
入力事務員の多くがシフトなしのフルリモート勤務
▲株式会社プレカルのオフィスの様子
編集部
現在は入力事務員を募集していると伺っています。
大須賀さん
はい、そうです。入力事務員は業務委託者・パート・社員で構成されていて、現在は業務委託者とパートを募集しています。
パートは週1回出勤が必要になりますが、業務委託者はシフトがなく、全員フルリモートでお仕事をしていただけます。在宅でお仕事をしたいときに自由に参加していただき、仕事をした分だけ給料を支払う完全出来高制となっています。
2021年の4月から業務委託者の採用を始めたのですが、今では業務委託者約300名、パート5名で、業務委託の方がほとんどです。
編集部
業務委託者はかなり自由度が高く仕事ができるのですね。採用されるために必要な資格や条件を教えてください。
大須賀さん
調剤事務の経験は必須ですが、資格は求めていません。仕事の上では、お客様に速く、ミスなく返信できることが重要です。
また、処方箋は手書きで読みにくいものもあり、マニュアル通りにいかないことがけっこうあります。そんなときに、わからなければすぐに誰かに聞ける、コミュニケーションがきちんと取れることも大事ですね。
事務員の多くは主婦。隙間時間で仕事ができるのが魅力
編集部
処方箋の入力作業は、主に病院が空いている時間になると思いますので、月曜日から土曜日のお昼ぐらいまでの稼働が多いのでしょうか?
大須賀さん
そうですね。土曜日はお昼頃までで閉めてしまう病院が多いので、入力作業の量も連動します。平日は9時から19時まで病院が開いているので、コンスタントに仕事があります。お昼時は送られてくる処方箋の量も減ります。
編集部
働いている方は、どんなバックグラウンドの方が多いのでしょうか?
大須賀さん
主婦の方が多いですね。パートは全員主婦の方ですし、業務委託者もほとんど主婦の方ですね。世代は20代半ばから50代までと幅広いです。小さいお子さんがいる方からは、隙間時間に仕事ができてありがたいと言っていただくこともあります。フルリモートやテレワークに魅力を感じて応募してくださる方が多いです。働かれている方は全国各地にいて、沖縄の方もいらっしゃいます。
編集部
住んでいる場所を問わず、フルリモートで自由な時間に働くことができるのは魅力ですね。
バーチャルオフィスを導入し、質問&返答を素早くスムーズに
編集部
フルリモートの方がほとんどという状況ですが、何かコミュニケーションツールのようなものを使われていますか?
大須賀さん
弊社では、業務委託者を採用するようになった2021年4月から、バーチャルオフィス「oVice(オヴィス)」を導入していて、入力作業を開始する前に入室し、入力作業ができなくなったら退出していただきます。
わからないことがあれば、そこで質問できます。先ほどお話しした、入力事務員と監査チームも、このバーチャルオフィス上でコミュニケーションを取って連携しています。
編集部
質問しやすくするなど、コミュニケーションを取りやすくする目的で導入されたのでしょうか?
大須賀さん
一番の目的は、コミュニケーションの時間を効率化する目的です。業務委託者とのコミュニケーションには「Slack」も活用しているのですが、テキストだけのコミュニケーションだと時間がかかりすぎてしまうケースがあります。特に、今届いている処方箋に対しての質問となると、いち早く処理を行う必要があるにも関わらず疑問点の解消に不必要に時間をかけてしまうことになります。
そうすると、お薬をお待ちの患者様にも迷惑をかけますし、入力作業を行うメンバー自身も1案件に対して多くの時間を要すことになります。入力メンバーは案件単価なので、とうぜんながら1案件あたりにかかる時間をできるだけ短縮したいはずです。その双方を満たすために、声でコミュニケーションがとれるバーチャルオフィスシステムを導入しました。
編集部
患者様のためだけでなく、入力メンバーのことも考えての対応ということですね。「いつ仕事をしてもよい」という自由がある分、完全出来高制というシビアな面もあるので、働き手にとってこういった配慮はとても嬉しいと思います。
大須賀さん
そうですね。今後もさらに多くの薬局に利用してもらうためには、今まで以上に多くの入力事務のかたにご活躍いただく必要があります。決まったシフトがなく完全リモートで自由度が高いので、他の職場では働きづらいという方でも働きやすいのではないでしょうか。
入力事務は、調剤事務の経験がある方でしたら気軽に始められるお仕事だと思います。興味をお持ちいただけた方は、ぜひ気軽に応募していただければと思います。
編集部
本日はありがとうございました。
取材協力
・株式会社プレカル:https://www.about.precal.jp/
・採用ページ:https://precaljp.studio.site/