新しい働き方を取り入れ、社員がいきいき働く企業にインタビューするこの企画。今回は70年以上の歴史を持ち、独自の製法で米菓などの製造販売を行う、三州製菓株式会社を取材しました。
三州製菓株式会社とは
三州製菓株式会社はロングセラー商品である揚げ煎餅「揚大丸」をはじめ、「季ごよみ」や「萬葉花集」、「パスタスナック」など、バラエティー豊かな菓子類を独自製法で製造販売している会社です。
会社名 | 三州製菓株式会社 |
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住所 | 【埼玉第1工場】 埼玉県春日部市豊野町2-8-3 【埼玉第2工場 本社・事務室 S-terrasse エス・テラス】 埼玉県春日部市銚子口979番地 |
事業内容 | ・菓子専門店向けの高級米菓(せんべい、あられ)および揚げパスタの製造販売 ・同業他社の追従を許さない独自性のある魅力的な商品を提供(取引先は全国地域有力店、百貨店、有名テーマパーク等) |
設立 | 1950年7月1日 |
公式ページ | https://sanshu.com/ |
働き方 | フレックスタイム制(部署による) |
今回は、三州製菓株式会社の若手や女性が活躍できる環境やカルチャーについて、代表取締役社長の斉之平さんと、マーケティング部 部長の松本さん、マーケティング部 企画室マネージャーの小菅さんの3人にお話を伺いました。
ニッチな市場へこだわりの米菓を届ける
▲三州製菓さんでは主力商品の「揚大丸」の他、カレー味の煎餅など個性豊かな米菓を製造販売している
編集部
まず、三州製菓さんの事業内容を教えてください。
斉之平さん
三州製菓はお煎餅をメインにお菓子の製造販売をしている会社です。お米を原材料とする米菓は日本ならではのお菓子であり、弊社は創立当初からお煎餅を作り続けています。主力商品である揚げ煎餅の「揚大丸」は原材料にもこだわり、国産米・国産丸大豆醤油を使用しています。
お煎餅以外にも揚げ煎餅の製造ノウハウを活かし、「パスタスナック」という、パスタを揚げたお菓子を製造販売するなど、個性豊かなお菓子をお客様に提供しています。
製造した商品を販売する場所として、お煎餅の専門店も運営しております。直営店とフランチャイズ合わせて、東京・神奈川・埼玉などに11店舗ほど展開しています。
また、OEM(※)にも力を入れており、テーマパークや高速道路のサービスエリア、全国のお菓子の専門店様などで販売しております。
(※)OEM…メーカーが自社のブランドではない、他社のブランドの製品を製造すること
このように、商品の流通に関しても一般のスーパー様というよりは、もう少しニッチな市場に向け、個性を打ち出した商品を届けています。
伝統を守りDX化も進める、三州製菓の進化の形
編集部
三州製菓さんでは、付加価値のある商品作りというところで、商品の製造では積極的にDX化(※)を進めていると伺いました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?
(※)DX化…デジタルトランスフォーメーションの略。デジタル技術を使い、社会や顧客のニーズに応える新たな価値を創造すること
斉之平さん
おっしゃる通り、2023年4月現在、三州製菓では受発注の入力作業をAIで自動化するなどDX化を進めています。これにより、できる限り人手の足りない部署へ人員を割り当てられるようにしたいと考えております。
特に新しい取り組みとしては、人員の省人化と品質の均一化を図るべく開発を進めているAI検知器(アルゴスボックス)です。製菓業界でこれだけDX化を推進している会社は珍しいと思います。
▲三州製菓さんが開発したAI検知器(アルゴスボックス)。先進的な取り組みで業務の生産性を向上させている
編集部
三州製菓さんが同業他社様に先駆けてDX化を進めていこうと思ったのは、どういった理由からなのでしょうか?
斉之平さん
私が個人的にベンチャー企業の社長様などとお付き合いがあり、そこでAI技術のことなどを知ったんです。調べてみると、自社でも取り入れられそうだったので、DX化を進めることにしました。
弊社は製菓業としてそれなりの歴史がある会社ですが、伝統を未来へ繋げていくためには、歴史の中で培ってきたことを守りつつ、社会やお客様のニーズに合わせて、会社のあり方を柔軟に変化させていかなければなりません。DX化の推進もその一つです。
子育て中でも安心して働ける三州製菓の「お互い様」の精神
編集部
三州製菓さんではかなり早い時期から、女性が活躍できる環境整備をされてきたと伺いました。女性の活用を積極的に進めてきたのには、何か理由があるのでしょうか?
斉之平さん
おっしゃる通り、三州製菓では早くから女性の活用に力を入れており、2013年に国から「くるみん認定」(※1)を受け、2016年には「えるぼし認定」(※2)も受けています。
(※1)くるみん認定…企業として、女性が長く働ける環境や制度が整っているという国の認定
(※2)えるぼし認定…企業として、女性が活躍する環境が整っているという国の認定
弊社が女性活用に取り組む理由は、商品を企画する上で女性の視点が欠かせないためです。なぜなら、弊社のお客様の8割から9割は女性だからです。
実際、商品の企画をしている企画室のメンバーは全員女性で、本日同席している小菅がマネージャーをしています。
編集部
なるほど。では小菅さんにお伺いしたいのですが、企画室では具体的にどのような方が働いていらっしゃるのでしょうか?
小菅さん
はい。今、斉之平から話がありましたように、企画室は私がマネージャーをしておりまして、他に社員が6名と、パートの方が4名おります。
メンバーの中には小学生や中学生のお子さんを育てている方も多く、2023年4月現在、産休中の方も1名おります。お子さんの学校行事などで休む場合は事前に伝えてもらい、仕事を前倒しで依頼するなどして対応しています。
編集部
なるほど。しかし、子どもの発熱などで急に休まなくてはいけなくなった、ということもあると思うのですが、そういった場合はどのような対応をされているのでしょうか。
小菅さん
そうした場合は、出勤しているメンバーでフォローしながら仕事を進めています。三州製菓の社員には「お互い様」の精神が浸透しており、企画室のメンバーに限らず、誰かが休まなくてはいけなくなった時、周りが助けるのが当たり前になっています。そういった点で、私自身も非常に働きやすさを感じています。
また、弊社はフレックスタイム制を導入しているので、休むまでいかなくても、「子どもの具合が悪いので、病院に連れていってから出社したい」といったことも可能ですし、子供の行事に合わせて出勤時間を調整することもできます。
編集部
社員の間に「お互い様」の精神が根づいているからこそ、子育て中の女性が安心して休むことができるのですね。フレックスタイム制があることで、フレキシブルな働き方ができるのも、無駄がなくて良いなと感じました。
三州製菓ならではの製法を活かして生み出された「パスタスナック」
編集部
企画室の業務というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
小菅さん
企画室は、主に自社ブランドの商品やOEM商品のパッケージ形態や販売価格、デザインの方向性等を検討し、市場に合った商品を設計していく部署になります。具体的な商品でいうと、事業紹介で斉之平からお話しさせていただいたパスタスナックの企画も行いました。パスタスナックは小さな商店で作られていたもので、私の好きなお菓子の一つでした。
担当していたOEM商品のコンセプトに合っていたため、三州製菓の揚げ煎餅の製法を活かし、パスタを揚げる事が出来ればヒットするのではないかという思いから、パスタスナックの企画がスタートしました。
弊社のパスタスナックは、揚げせんべいで培った独自製法により、カリカリ触感に仕上げておりますので、一度食べていただければ、やみつきになると思います。
▲三州製菓さんの企画室から生まれたパスタスナック。トマト味やソルト味など10種類の定番の味に加え、期間限定の味も販売される
編集部
たしかに美味しそうです。小菅さんは普段から企画のアイデアを得るために、色んなアンテナを張られているのでしょうか。
小菅さん
そうですね。パスタスナックを企画した時もそうですが、普段の生活の中でも、「私だったらどんな商品を買いたいだろうか」「こんなお菓子があったらいいのに」等、色々考えていました。
企画室にいるメンバーは皆、お菓子が好きなので、市場に出ている新商品をチェックして、「こんな商品が出たみたいだよ」といった感じで、日々情報共有をしています。
編集部
企画室にはお菓子の好きなメンバーが集まっていて、日々、お菓子に関する情報交換をしているのですね。その様子を想像すると、なんだかとても楽しそうです。「自分も企画室で働いて、お菓子の企画をしてみたい」と思う方も多いと思います。
30代前半で部長職も。若手の活躍を支える周囲の協力体制
編集部
三州製菓さんでは女性だけでなく、若手の社員も活躍されているそうですね。本日、同席していただいている松本さんも、30代前半でマーケティング部の部長として活躍されていると伺っております。マーケティング部というのはどのような部署なのでしょうか?
松本さん
マーケティング部は組織再編によって新たにできた部署で、開発室と企画室、営業課とBtoC(※)事業課の4つの課からできています。4つの課を1つの部署に統合したことで、一般のお客様からの要望を反映した商品を、企画、開発、そして営業まで、スピード感を持って行えるようになりました。
(※)BtoC…一般の個人の消費者をターゲットとするビジネスモデル
マーケティング部には店舗スタッフを入れると60名ほどが在籍しており、全体を統括する部長と、小菅など、それぞれの課のマネージャーがおります。
編集部
部長として60人の社員を束ねていらっしゃるのですね。松本さんは新卒で入られたのでしょうか。
松本さん
はい。新卒で入って11年目です。ですから、今年で33歳になります。マーケティング部の社員はほぼ私より歳上なので、部長職に就いた当初は少し難しさを感じました。
しかし、三州製菓の社員は基本的に良い方ばかりなので、今は皆さんからアドバイスをいただきながら、一緒に部署を良くしていくという形でまとまっています。
編集部
部署の皆さんの意見を吸い上げながらマネジメントしているのですね。
松本さん
はい。私が部長職に就いたのは、ちょうど世界的な規模で感染者が広がっている時期でした。社会が大きく変化する中で、部長の私に求められたのは、変化に対応できる組織を作ることだったんです。そのためには、私個人のやり方を押し通すのではなく、部署にいるいろいろな世代の方の経験や知恵を広く取り入れる必要がありました。
皆さんの意見を取り入れつつ、時代に即していない部分は変えながら、新しい意見は積極的に取り入れるようにしています。そうすることで、今後どんな社会的変化があっても、対応できる組織になると思っています。
編集部
若手が活躍するには、本人の能力だけでなく、周りのサポートが大切だと思います。その点、三州製菓さんには、若いうちから役職に就いて活躍できる環境と、それを支える周囲のバックアップ体制があるので、能力を活かして働きたいと思っている若い方にとっては理想的な職場だと思います。
若手が変化を起こせる。「製販会議」改革で業務を効率化
編集部
先ほど、松本さんから周りの意見を取り入れながらマネジメントを行っているというお話がありましたが、実際、松本さんが周りの意見を受けて改革したことなどがあれば教えてください。
松本さん
いろいろありますが、一番行って良かったと感じるのは、提案中の企画から確定した企画まで、すべての進行中の企画をリスト化し、月イチの製販会議で共有し、準備を進めるようにしたことです。今までも製販会議はあったのですが、当社の販路が専門性を伴い、かつ多岐に渡ることもあり、それぞれの商品の担当者が直接製造の担当者の方と話していました
製販会議では、たいてい1年先を見据えながら商品企画を行い、それに合わせて人員の確保など製造計画を練っていきます。今までですと、自分が担当している商品以外は企画や製造計画がどのように進んでいるか見えていない状態で、そのためにトラブルがおこることもありました。小ロット多品種という会社の強みは残しつつ、企画から製造までの商品の流れが共有されたので、業務がやりやすくなりました。
意見が通る風通しの良さが社員を自走させる
編集部
松本さんは30代前半で部長として活躍されていますが、三州製菓さんではどのような基準で若手を登用しているのでしょうか?
斉之平さん
松本については、私が2年前に社長に就いたタイミングで、組織を全部見直した際、年齢や性別関係なく、一番実力があったため、部長に抜擢しました。特に、会社全体を見る視野の広さを評価しました。
松本さん
少し補足させていただくと、私が部長職に就けたのは三州製菓の社風のおかげもあると思っています。私は、良くも悪くも自分の意見をはっきり言うタイプなのですが、それを生意気と思わず、受け入れてくれる会社の雰囲気があるからこそ、部長として皆をまとめられています。
改善案や新商品の企画など、若手が意見をあげやすい雰囲気というのは、私だけでなく、他の社員も感じていることだと思います。
小菅さん
たしかに、社内の風通しの良さというのは、私も感じています。
編集部
三州製菓さんは70年以上の歴史を持つ会社ですが、年功序列のような古い体制ではなく、若手の意見に耳を傾ける、組織としての柔軟さがあるのですね。
斉之平さん
私は、社員各自が「やらされている」という意識ではなく、自分の仕事に自ら面白みを見出し、自走してくれるのが、組織としての理想形だと思っています。
その理想が体現できた例として、女性マネージャーと若手メンバーで構成されるBtoC事業課のEC事業があります。
EC事業というのは、自社サイトやAmazon、楽天などに商品を出店する事業なのですが、最初は私が指揮を執っていました。しかし、BtoC事業課のメンバーに任せてからは、彼らが自らECサイトについて学んでくれて、どんどん成果を出してくれました。今では彼らのアイデアを反映しながら、大きな事業に成長しています。
編集部
若い方の意見を否定するのではなく、チャレンジさせてあげる土壌があるからこそ、社員の方が仕事を楽しんで自走してくれるのでしょうね。
斉之平さん
そうですね。先ほどお伝えしたように、私自身もベンチャー企業の社長様の意見などを受けて、社内のDX化などを進めていますし、社員にも自ら新しい風を起こすつもりで意見を出してほしいと思っています。
求めるのは三州製菓と共に挑戦・成長出来る方
編集部
最後に、三州製菓さんに興味を持たれた方へ、社長の斉之平さんからメッセージをお願いします。
斉之平さん
三州製菓は、数年以内に業界ナンバーワンになることを目指しています。高い利益率で社員の平均年収を上げていくことで、世間の方がメーカーに抱く「仕事がきつい割には給料が低い」というイメージを刷新したいと考えています。
もともと、「お菓子作り」というのは夢のある仕事なので、そこにしっかりした報酬があれぼ夢があり、かつ幸せな仕事になると思っています。そうした思いに賛同していただける方に来てほしいですね。
また、先ほど小菅からお話しさせていただいたように、弊社には子育て中の社員が多くおり、制度面でも、社内の雰囲気としても、仕事と子育てを両立できる環境が整っています。
実際、結婚や妊娠で辞めた方はほとんどおらず、皆、復職して活躍しています。結婚しても、子どもが産まれても、長く会社で活躍したいという方には最高の職場だと思います。
編集部
長く働けるというところでいうと、三州製菓さんではシニアの方も活躍されているようですね。
斉之平さん
はい。60歳になると雇用形態が変わるのですが、基本的には本人に働きたいという希望があればずっと働くことができます。実際、製造現場のスタッフで年配の社員がおりますが、皆さん、やりがいを持って仕事に取り組んでくださっています。
子育て中の女性からシニアの方まで、さまざまな方がスクラムを組んでチームワークで仕事をしているのが三州製菓の強みであり、魅力だと思います。
編集部
1つの会社に若い方も、子育て中の方も、シニアの方もいて、互いに影響を与えながらそれぞれが輝いている。その多様性こそが三州製菓さんの魅力であり、御社で働く面白さなのだろうと思いました。
老若男女問わず、情熱を持ってお菓子作りに携わりたい方は、ぜひチャレンジしてみてください。その情熱を受けとめてくれる人と雰囲気、そして制度が三州製菓さんにはあると感じました。
本日はお話を伺わせていただき、ありがとうございました。
■取材協力
三州製菓株式会社:https://sanshu.com/
採用ページ:https://job-gear.net/sanshu/