成長企業や若手が活躍する企業を紹介していくこの企画。今回は、ゲーム制作の技術や感情を動かすノウハウを活用して企業の課題解決を行う「株式会社セガ エックスディー」をご紹介します。同社は、エンターテインメント業界で培った経験を、ビジネス課題の解決に応用することで注目を集めています。
株式会社セガ エックスディー:ゲーミフィケーションで企業課題を解決
株式会社セガ エックスディーは、株式会社セガと株式会社電通グループの関連企業として、ゲーミフィケーション事業を展開する企業です。
ゲーミフィケーションのメソッドを活用し、戦略設計から事業成長まで一貫して行うDXソリューション事業、セガや自社のマーケティングノウハウを活かしたマーケティング支援事業、販売促進やCRM施策にゲーミフィケーションの知見を活用したSaaS事業、ゲーミフィケーションを用いた企業向けCX人材育成の教育事業の4つを展開しています。
会社名 | 株式会社セガ エックスディー |
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住所 | 東京都新宿区西新宿6丁目18番1号 住友不動産新宿セントラルパークタワー20階 |
事業内容 | DXソリューション事業、マーケティング支援事業、SaaS事業、教育事業 |
設立 | 2016年8月1日 |
公式ページ | https://segaxd.co.jp/ |
今回は株式会社セガ エックスディーを支える若手メンバー2人、エクスペリエンスデザイン部の荻野さんと金城さんに、成長の秘訣や企業風土についてお話を伺いました。
セガ エックスディーの事業展開:ゲーミフィケーションを活用した4つの柱
▲HPでは「ゲーミフィケーションカンパニー」と表現している(同社公式サイトより)
編集部
セガ エックスディーさんは大手企業グループのベンチャー企業でいらっしゃいます。まず、成り立ちについて教えていただけますか?
荻野さん
弊社は2016年に創業し、2023年8月から8期目を迎える会社です。元々は株式会社セガゲームス(現:株式会社セガ)の新規事業部門からスピンアウトしました。2019年7月に電通と資本業務提携を結び、現在に至っています。
福利厚生や組織の体制は安定している一方で、社員や参画メンバーは「エンタテインメントの力で世の中をもっと良くしたい」という意気込みを持ち、チャレンジ精神が旺盛な人が多い会社だと思います。
編集部
御社は、ゲーミフィケーションをドメインに4つの事業を展開されています。「ゲーミフィケーションとは何か?」というところから教えていただけますか?
荻野さん
ゲーミフィケーションとは、簡単にいうと「ゲームのメカニズムを非ゲームの分野に応用することで、ユーザーのモチベーションを高め、その行動に影響を及ぼすこと」と定義されています。欧米を中心に広まり、2010年〜2013年頃に日本に入ってきた概念です。
例えば、お店での会員ランク制度や、ブログ投稿への評価システムなどが日常的なゲーミフィケーションの例です。これらは人々のモチベーションを高め、特定の行動を促す効果があります。
私たちの場合は、もっとゲームの面白い仕組みや体験を提供していくために、ゲーミフィケーションを活用した課題解決を行っています。
編集部
ゲーミフィケーションを活用して、実際にどのような取り組みをされているのでしょうか?
荻野さん
例えば、2022年に税理士法人あさひ会計さんと山形県金山町さんと実施した『町ちがいさがし』という取り組みがあります。これは、地方公会計や自分が住む町の税収の使われ方を知ってもらうための冊子です。
この冊子では、表紙・裏表紙が現在と20年後の未来の金山町になっており、その変化を「まちがいさがし」として遊べるようになっています。これがゲーミフィケーション要素です。
まずはゲームとして楽しみながら町の変化に興味を持ち、インフォグラフィックやイラストを活用した内容を読み進めることで、自分が住む町の財政や政策について知ることができます。
▲荻野さんが手がけた山形県金山町『町ちがいさがし』冊子。表紙は現在と20年後の金山町の未来が描かれた「まちがい探し」になっている。
▲ゲーミフィケーションを活用し、一般的には親しみにくい財政を分かりやすく伝えた
荻野さん
他の部署では、教育事業やマーケティング支援事業も行っています。このように、業種やジャンルを問わず、デジタル化やマーケティング、プロモーションなど広く企業や社会の課題解決に取り組んでいます。
編集部
ゲーミフィケーションは、ゲームのメカニズムを非ゲーム分野に応用していく取り組みなのですね。ホームページの事例紹介を拝見すると、幅広い業界での実績があることがわかりました。
■株式会社セガ エックスディーの取り組み事例紹介はこちら
https://segaxd.co.jp/works/
「衝動」を原動力に:セガ エックスディーが目指す社会課題解決
▲「衝動」を「感情をゆさぶり、心を動かすこと」と定義している(同社公式サイトより)
編集部
セガ エックスディーさんは、企業ミッションに「『衝動』で課題を解決し、人々を幸せに」を掲げていらっしゃいます。「衝動」とはどういうものなのでしょうか?
荻野さん
私たちがキーワードにする「衝動」とは、人の感情をゆさぶり、心を動かすことです。エンタテインメント分野は、人がやってみたいと思うような強い感情を作ることが得意ですので、そこをうまく活用したいと考えています。
また、ビジョンに「X-tainment Company」という言葉を掲げています。X-tainmentは造語ですが、ゲームづくりで培ったエンタテインメントの力をさまざまな分野のお客様に提供し、社会課題の解決につなげたいという想いを込めています。
急成長するセガ エックスディー:100人規模へ向けた組織拡大
▲社員規模はもうすぐ100名となる株式会社セガ エックスディー。金城さん(左)は2022年に入社した1人
編集部
セガ エックスディーさんは2023年8月に8期目を迎えたところと伺いました。会社や事業の成長について教えてください。
荻野さん
ゲーミフィケーションに特化した企業がまだ少ないため、市場としてはブルーオーシャンです。私たちは目前のお客様の課題に向き合い、良いサービスを共創し、ゲーミフィケーションという言葉の認知度を上げて、市場を盛り上げる段階にあります。
2022年から広報体制を整え発信を強化したことで、お問い合わせが増加しています。ゲーミフィケーションを活用した企業の情報は、月に100本〜200本ほど世の中に出ていますが、その中でセガ エックスディーが関わっているものは全体の10~20%を占めています。
そのため、ゲーミフィケーションの事例を検索すると、私たちの取り組みが目につくことが多く、最近ではプレスリリースや事例に関するニュースを見てご連絡をいただくことも増えました。
近年は採用を強化しており、新たにジョインしたメンバーが事業を盛り上げてくれています。
編集部
メンバーが急増しているのですね!どのくらい増えていますか?
荻野さん
2022年は12名の増加、2023年はさらに著しく増えており、8月までで約20名がジョインしました。2023年8月現在、社員数は84名です(役員除く、アルバイトや派遣社員含む)。採用した約半数がエクスペリエンスデザイン部に所属しています。
企業としては、"100人の壁"(※)がそろそろ見えてきており、より組織やマネジメント体制を整えているところです。
(※)100人の壁:会社組織が大きくなる中で発生する問題。100人を超えるとマネジメント面やコミュニケーションコストなどで不具合が生じるとされている。
ワンストップソリューションの強み:コンサルから開発まで一貫対応
編集部
ゲーミフィケーション市場や活用の場は今後拡大していくのでしょうか?
荻野さん
はい、確実に伸びていくと思います。特に成熟した業界では、製品やサービスの機能的価値による差別化が難しくなっています。そのため、企業は「良い製品を作ること」よりも「利用者の心に響く体験を提供すること」を重視する傾向にあります。これは、カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)と呼ばれるものです。
ゲームの楽しさや面白さを演出する技術は、「ついやってしまう」という衝動を生み出すのが非常に上手です。そのため、CXを重視する企業にとって、ゲーミフィケーションは大変有用なツールになると考えています。
編集部
その他に、ゲーミフィケーション市場の成長要因はどこにあると分析されていますか?
荻野さん
セガ エックスディーの強みは、業界を問わず多様な法人のお客様と協力関係を築き、それぞれの課題に対して適切な解決策を提供できていることだと考えています。
さらに、コンサルティングから受託開発までワンストップで対応できる会社は少ないのが現状です。私たちは、お客様に寄り添いながら、包括的なサービスを提供できることも大きな強みだと認識しています。
若手登用の実例:31歳課長が語るセガ エックスディーの「任せる」文化
▲メディアライターからプロデューサーへ。自身のキャリアを語る荻野さん
編集部
ここからは、セガ エックスディーさんの若手活躍についてお伺いします。お2人とも若手で活躍するリーダーでいらっしゃると思います。まずは、荻野さんから、入社後のキャリアについて伺えますか?
荻野さん
私は2018年の入社当時、セガ エックスディーの前身となるセガゲームス(現セガ)DMS事業部でゲーム攻略サイトのライターをしていました。そこからプロデューサーになるという異例の転身を経験しました。
新規事業としてゲーム攻略サイトの事業が立ち上がり、私は記事のライティングを担当していました。その後、部長から「ちょっと手伝ってくれ」と声をかけられ、ゲーミフィケーション事業に携わることになりました。
ゲームのディレクター経験がなかったため、プロジェクトに参画しながら1から仕事の進め方を学びました。当時の課長からビジネス感覚や企画の作り方を教わり、チームリーダーを経てプロデューサーとなり、29歳で課長代行、31歳で課長というキャリアを歩んできました。
編集部
未経験から現場を任せられたことで、急速に成長されたのですね。最初に部長から声をかけられたのは、どのような仕事ぶりが評価されたのでしょうか?
荻野さん
当時のゲーミフィケーション事業はまだ初期段階で、お客様への提案フォーマットもない状態でした。そのため、綿密なリサーチや企画立案、お客様への提案など、地道な作業が必要でした。
ライターの経験が活かされ、リサーチや企画立案、資料作成をスピーディに行うことができました。膨大なリサーチ業務を懸命にこなした結果、その点を高く評価されました。
編集部
事業立ち上げ期に必要なスピード感や行動力が評価され、抜擢されたのですね。課長代行になられたとき、部下の年齢層はどうでしたか?
荻野さん
当時4名をマネジメントしていましたが、全員30代でした。
編集部
年上のメンバーを率いることになったのですね。セガ エックスディーさんでは、年齢に関係なく責任ある立場を任せることが多いのでしょうか?
荻野さん
はい。年功序列での昇進は全くなく、時には抜擢人事も行われます。年齢に関係なく、メンバーにチャンスを与え、責任や裁量を渡していく風土があります。
未経験からの急成長:入社半年で複数プロジェクトを任された金城さんの挑戦
▲プロダクトマネージャーとして活躍する金城さん
編集部
金城さんは2022年11月にご入社と聞いています。「任せる」文化について、どのように感じていらっしゃいますか?
金城さん
思いっきり任せてくれる文化が根付いていると感じています。
私は前職で広告業界のプランナーをしており、異業種からの転職でした。入社後は、OJTで先輩社員と共にいくつかのプロジェクトで経験を積み、2023年3月から、3つ〜4つのプロジェクトを任せてもらえるようになりました。
編集部
プロダクトマネージャーはどのような役割を担っているのですか?
金城さん
プロデューサーの補佐として現場をまとめつつ、プレイヤーとして提案する企画の中身を考えます。通常、1つのプロジェクトで、社内のディレクター、エンジニアやデザイナー、外部のパートナー企業の方を3人〜10人のチームとしてまとめる役割を担っています。
編集部
入社当初は、不安を感じませんでしたか?
金城さん
ゲーム業界未経験でしたが、自分から積極的に取り組むのが好きだったので、責任ある仕事を任せてもらえるのはありがたかったです。
最初に一緒に仕事をしたプロデューサーがゲームプランナーとして豊富な経験を持つ方で、質問にも丁寧に答えてくれたことも大きな支えになりました。また、組織のマネジメントを行う課長陣もプロデューサーとして現場の第一線で活躍しているので、日々の業務で困った際は親身になって相談にのってもらえるという安心感がありました。
編集部
現場を熟知したマネージャーがいる安心感があるからこそ、思い切ったチャレンジができるのですね。プロダクトマネージャーの提案に対して、課長や他のメンバーから意見が出ることはありますか?
金城さん
はい。全員がモノづくりに情熱やこだわりを持っていること、また実際にお客様向けのサービスとして世に出ていくこともあり、アイデアをより良くするためのフィードバックを受けられますし、上長も含めて積極的にディスカッションを行います。ただし、社員の人柄は概して温和で親しみやすいので、コミュニケーションは建設的で友好的です。
きちんと指摘してもらえるという意味では、完全な放任主義ではありません。自分の企画の質を高めるために、上司・同僚を含めて協力してくれる環境があります。
「共に達成しよう」の実践:週1回の「トモタツブレスト」が象徴する社内文化
編集部
社員さんの雰囲気や社内カルチャーについてお聞きしたいと思います。荻野さんの感じるカルチャーはどのようなものですか?
荻野さん
ナレッジシェアが非常にオープンにできる社風だと思います。例えば、自分があまり詳しくない業界の新規案件が来たら、みんなに相談します。そこで、過去に類似の経験がある人やターゲットになりそうな人の意見をもらったりします。
Slackのチャンネルや社内wikiのようなものがあり、業務の合間を縫って自由に投稿しています。その他にも週に1回、エクスペリエンスデザイン部の部会の中でブレスト(※)を行っています。
(※)ブレスト:ブレインストーミングの略。多くの参加者がディスカッションを行い、アイデアを自由に発言することで、解決策を出していく手法。
このブレストは、当社のバリューの1つ「共に達成しよう」にちなんで「トモタツブレスト」と呼んでいます。何か案件で困ったことがあったら、この週1回の「トモタツブレスト」で、約30人の社員が一斉にブレインストーミングを行います。
編集部
大勢の社員が一堂に会してブレストをするのですね。バリューが皆さんの中で根付いているのだと感じました。
創造性を育む社内文化:ゲーム分析から自販機の仕掛けまで、自発的な取り組み
編集部
Slackや社内wikiでは、どのようなことが共有されていますか?
荻野さん
業務に活かせそうな本の学びや、興味深いサービス・プロダクトについて共有しています。金城さんはゲーム分析のコンテンツを発信していますよね?
金城さん
はい!ゲーム好きな仲間との会話がきっかけで、ゲーム分析を始めました。現在プレイ中のゲームや新作ゲームの魅力を分析しています。社内にはエンタメ好きが多いので、楽しみながら自発的に行っています。
荻野さん
金城のゲーム分析はゲームのメカニズムや面白さを人に伝える糧になると考えています。非ゲーム領域のお客様に提案する際、ゲームの面白さや仕組みを納得していただく必要があります。そのため、「何が楽しかったのか」「なぜ楽しいと感じたのか」を日常的に深掘りして言語化することが良いトレーニングになると思います。
アウトプットの形は人それぞれです。例えば、謎解きが好きな社員がいて、オリジナルの謎解きを作成し、社内の自動販売機に貼って社員が楽しめるようにしています。謎解きの内容は会社や社員に関連するものだったり、過去の謎を組み合わせたりと、かなり本格的です。
編集部
面白いですね!待ち時間をエンタテインメントにしてしまうのですね。誰が発案して、実施しているのでしょうか?
荻野さん
謎解きが好きなメンバーたちが、週に1回、紙を貼り替えています。
金城さん
全くの無報酬です(笑)。他にも、来社をエンタテインメントにした『おみやげカプセル』という取り組みがあります。オフィスにお越しいただいた方へのおもてなしです。
▲来社をエンタテインメントにした『おみやげカプセル』
金城さん
社員のインプットやアウトプットから、自社らしさを体現するコンテンツに至るまでエンタテインメント尽くしなので、弊社のエンタテインメントを活用した提案はかなり強みだと考えています。
セガ エックスディーが求める人材像:エンタメで社会を変える野心を持つ仲間
▲「エンタテインメントで社会を良くする野心を持った人と働きたい」。セガ エックスディーでは仲間を募集中
編集部
最後に、セガ エックスディーに興味を持った読者に向けて、「こんな人は活躍できる」「こんな人と一緒に働きたい」というメッセージをいただけますか?
荻野さん
私たちは正しさだけでは解決できない問いに対し、"楽しい答え"でアプローチしていくような会社です。日常の面倒な課題に対しても「こうやったら面白くなるよね」と遊び心を持てる人、お客さまからの要望や制約がある中でも「こうすれば面白いのでは」とアイデアが閃く人は、活躍できると思います。
金城さん
セガ エックスディーはエンタメやモノづくりへの情熱を持った人が多く、それを応援してくれる会社です。同じゲーム会社でも論理的思考重視の社風の会社もありますが、当社は社員が一丸となって楽しみながら進む社風です。このような環境を楽しめる方と一緒に働きたいです。
編集部
お二人のお話から、一人ひとりの情熱をみんなで分かち合うような雰囲気が感じられました。
金城さん
はい。サークルのような熱量で仕事ができる、今の環境はとても良いと感じています。
荻野さん
エンタテインメントの楽しませる仕組みやパワーを活かして良い社会を作りたい、エンタテインメントの可能性を広げたいという野心を持った方と一緒に働きたいです。
編集部
荻野さん、金城さん、本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社セガ エックスディー:https://segaxd.co.jp/
採用ページ:https://segaxd.co.jp/recruit/