株式会社スタイルブレッドが「町のパン屋」から売上高30億円になった理由

注目企業の躍進の秘密と成長を支えるカルチャーを探る本企画。今回は、冷凍パン製造・販売をてがける株式会社スタイルブレッドを取材しました。群馬県桐生市で大正時代から続く「町のパン屋さん」が年間売上高30億円のパンメーカーに成長を遂げた経緯や、従業員の7割を占める女性が活躍できる理由についてご紹介します。

冷凍パンの製造で躍進する株式会社スタイルブレッド

株式会社スタイルブレッドのクロワッサンを手に食事をしている様子

株式会社スタイルブレッドは焼成冷凍パンを製造・販売する食品メーカーです。焼きたての状態で急速冷凍した同社のパンは、必要な量をいつでも最高の状態で味わうことができると高い評価を集め、全国約3,500社のホテルやレストランに採用されています。

また2018年に立ち上げた一般消費者向けブランド「Pan&(パンド)」は、オンラインストアでの直販のほか、デパートやスーパーでの販売も広がり、順調に売上を伸ばしています。

会社名株式会社スタイルブレッド
住所群馬県桐生市広沢町1-2525-2
事業内容パンの製造・販売
設立2006年5月(創立1930年)
公式ページhttps://stylebread.com
働き方ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)※職種による

今回は、そんな株式会社スタイルブレッドのアドミニストレーショングループヒューマンリソースチームリーダーの石田優子さんとPRチームキャプテンの柚木彩花さんに、事業の特徴や成長の背景について伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社スタイルブレッドアドミニストレーショングループの石田優子さん

株式会社スタイルブレッド
アドミニストレーショングループ
ヒューマンリソースチームリーダー

石田 優子さん

株式会社スタイルブレッドPRチームキャプテンの柚木彩花さん

株式会社スタイルブレッド
PRチーム
キャプテン

柚木 彩花さん

前身は大正時代から続く「町のパン屋さん」

株式会社スタイルブレッドの企業理念を示した公式ホームページの画面
▲株式会社スタイルブレッドの企業理念(公式サイトから引用)

編集部

まずはスタイルブレッドさんの事業内容から教えていただけますか?

石田さん

弊社は「パンを通じて上質な時間を創り、パンを通じて心の贅沢を創る。」をミッションに掲げ、焼成冷凍パンの製造販売を行う会社です。前身は群馬県桐生市で大正時代から続く町のパン屋さんで、戦後に学校給食用パンの製造をてがけ、1970年代には市内に3店舗を構えるなど、時代に応じて事業を拡大してきました。

2006年、4代目にあたる田中知が「スタイルブレッド」を立ち上げ、レストランやホテル向けの冷凍パン事業をはじめました。さらに、2018年3月にはコンシューマー向けブランド「Pan&(パンド)」を発足させています。

編集部

BtoB、BtoCのどちらの事業にも取り組んでいるのですね。

冷凍パンは全国3,500社以上のホテルやレストランで採用

株式会社スタイルブレッドの前身「田中製パン所」が展開する店を撮影した古い写真
▲株式会社スタイルブレッドの前身「田中製パン所」

編集部

スタイルブレッドさんが冷凍パンに特化したメーカーになったのには、どういった経緯があったのでしょうか?

石田さん

代表の田中がパン職人の修行を終え、知り合いのフレンチレストランのシェフから「料理のためのパンを焼いてほしい」と依頼されたことがきっかけです。

ホテルやレストランにはパンを焼く専門の職人がいるところもありますが、そこまで手間やお金をかけられるところは多くありません。シェフの依頼を受け田中は、ベーカリー用のパンを作りながら、レストラン用のパン作りを模索しはじめました。

柚木さん

料理に合う美味しいパンを完成させるのは大変だったようです。田中は本場のパンを学ぶためフランスに足を運び、その後、食事パンを販売するベーカリーをオープンさせるなどしながら探究を続けました。

ただ、売上にも苦戦します。そんな折、海外研修で訪れたアメリカで美味しい冷凍パンと出合いました。

編集部

当時すでに、日本にも冷凍パンはあったのではないでしょうか?

柚木さん

冷凍パン自体はあったのですが、冷凍するために開発されたものは少なく、正直あまり美味しいとは言えなかったようです。しかし、アメリカで食べたパンはとても美味しく、しかも、「冷凍だから美味しい」と言われたことに田中は衝撃を受けます。

そして、美味しいパンを全国に届けるための手段として冷凍を採用し、5年の歳月をかけて、現在のパン作りにたどりついたのです。

株式会社スタイルブレッドのパンをトースターで焼き直している様子
▲株式会社スタイルブレッドが製造している焼成冷凍パン。トースターで焼き直せば、焼きたてのような美味しさが味わえる

石田さん

当初は冷凍パンの良さを理解してもらえず、売上も厳しかったと聞いています。しかし、東京のホテルやレストランにアプローチをし、ランチで1万円以上するような高級店から認められ、徐々に広がっていきました。

リベイク(再焼成)するだけで香り高い焼きたてのようなパンができることに加え、冷凍により品質を維持しながら保存できる利便性も評価され、現在(2023年9月)では全国3,500社以上のホテルやレストランに採用いただいています。

柚木さん

おそらく、みなさんも気づいていないところで、弊社のパンを口にしているのではないかと思います。

取引先拡大で売上高30億円に。従業員は1年で100人増

株式会社スタイルブレッドの工場でのパン作りの様子

編集部

スタイルブレッドさんの直近の業績について伺えますか。

石田さん

ありがたいことに業績は右肩上がりで、2023年度は売上高30億円を達成しました。BtoBの取引先がレストランやホテルだけでなく、保育園や医療施設、社員食堂、機内食、食材宅配などへと拡大していることが一因となっています。

編集部

業績が好調であれば、従業員の数も増えているのではないでしょうか?

石田さん

従業員数は2010年から2020年の10年間で10倍に増えました。2022年から1年間ではさらに100名近く増え、2023年9月時点で349名となっています。

累計販売個数1,500万個!自宅で焼きたてパンが食べられる「Pan&」

株式会社スタイルブレッドが手がける一般消費者向けブランド「Pan&」のイメージ写真

編集部

一般消費者向けブランド「Pan&(パンド)」についても、設立の経緯や反響に関して教えていただけますか?

石田さん

「Pan&」はご自宅でも手軽に焼きたてのようなパンを食べていただきたいという思いからスタートしました。2020年以降、社会情勢の変化で人々が外出や外食がままならなくなり、おこもり需要が高まったことをきっかけに、「自宅で焼きたての美味しいパンが食べられる」ということで「Pan&」の需要も広まりました。

累計販売数は、2023年3月時点で1,500万個を突破し、公式オンラインショップ「Pan&オンラインストア」の利用者数も12万人を超えました。

柚木さん

「Pan&」は、デパートやスーパーなどでの販売にも注力しています。ギフトや福袋としてもご好評いただいています。

株式会社スタイルブレッドが手がける一般消費者向けブランド「Pan&」のギフトボックス
▲「Pan&」のギフトボックスも人気

編集部

「Pan&」が人気を集めている理由については、どのようにお考えですか?

石田さん

忙しい日々の中、なかなかベーカリーまで買い物に行けない方もいらっしゃると思います。そんな方でも、トースターで温めるだけで焼きたてのようなパンが食べられることが支持されているのだと思います。

編集部

手軽に美味しいパンが食べられるということが大きな要因なのですか?

石田さん

手軽で美味しいことが一番かと思いますが、それだけではないと考えています。最近はSDGsへの注目が集まるなか、環境への意識が高まっていて、フードロスを気にする人も増えていますよね。

弊社の冷凍パンはほとんどが365日の長期保存でき、食べたいときに食べたい分だけ使えます。フードロスが抑えられることも魅力として受け止められていると考えています。

柚木さん

また、余計な添加物も使っていません。食材宅配での売り上げが伸びていることなどを見ると、お子さんに安心安全な食品を食べさせたいという親御さんのニーズにも応えられているのではないでしょうか。

地元産小麦など素材にこだわり、独自の酵母で甘味を引き出す

株式会社スタイルブレッドの一般消費者向けブランド「Pan&」のパンが並ぶ食卓風景

編集部

スタイルブレッドさんのパン製造におけるこだわりについて、お聞かせいただけますか。

石田さん

もちろん、パンの味と品質には強いこだわりがあります。メインの素材となる小麦粉は、群馬県産を中心とした国産小麦を使用しています。

また、パン作りに重要な塩は、小麦の産地に合わせて使い分けています。群馬県産の小麦粉には国産の塩を使い、フランス産の小麦粉にはフランスの伝統塩「ゲランドの塩」を使っています。

柚木さん

パンを美味しくさせるのに重要なのが酵母なのですが、スタイルブレッドでは自社で独自培養した「桐生酵母」を使っています。この酵母は小麦の甘みを引き立て、軽やかな風味と味わい生み出します。

そして、生地作りから焼き上がりまで2日間かける「低温長時間熟成製法」も用い、酵母の性質を最大限に活かすパン作りをしているのです。

石田さん

もともとが町の人に愛されたパン屋さんですし、代表の田中にはパン職人としての熱い思いがあります。そのこだわりが工場の製造工程の細部にまで生きています。

編集部

パンの製造規模が大きくなったとしても、味へのこだわりは昔から変わらないのですね。

焼きたての美味しさを閉じ込めるマイナス45度の急速冷凍

株式会社スタイルブレッドの工場でスタッフがパン作りをしている様子

編集部

スタイルブレッドさんのパンの美味しさには、冷凍技術も大きく関係しているのではないでしょうか?

石田さん

そうですね。弊社では冷凍食品ブームより前から、急速冷凍の技術を開発してきました。パンは焼きたてがいちばん美味しい状態で、10分、20分と時間がたつにつれて冷めて乾燥をして硬くなり、デンプンが劣化して食感が悪くなります。

しかし、スタイルブレッドのパンは一番美味しい状態の焼きたてのパンをマイナス45度で、急速冷凍して、美味しさを閉じ込めています。そのため、食べるときにリベイクしていただくことで美味しさが蘇り、焼きたてのような状態で召し上がっていただくことができます。

柚木さん

こうしたこだわりをもって作られる弊社のパンは、その美味しさもさることながら、レストランやホテルにとって使い勝手が良く、人手不足を解消する「お助けパン」の面もあるんです。その点からも、焼成冷凍パンのニーズは今後、さらに高まるだろうと考えています。

従業員の7割が女性。育休からの復帰率はほぼ100%

打ち合わせをする株式会社スタイルブレッドの女性社員

編集部

スタイルブレッドさんの採用ページを拝見すると、女性の方が多く活躍されている印象です。女性の割合はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

石田さん

会社全体としては7割が女性で、製造の現場になるとさらにもう少し女性比率が高まります。男女関係なく評価され、ポジションも決まる人事制度なので、女性リーダーが増えている印象はありますね。

編集部

スタイルブレッドさんで、女性が活躍できる理由はどんなところにあるのでしょうか?

柚木さん

一つは、リモートワークを取り入れ、フレキシブルな働き方ができる点にあると思います。営業職はどうしても出社率が高くなるなど全員が在宅で仕事ができるわけではありませんが、基本的には社員の状況に合わせた柔軟な働き方が認められています。

石田さん

スタイルブレッドは「業務内容に応じて、成果を出せる働き方をしよう」という考え方なんです。女性の働きやすさでいえば、産休育休の取りやすさもありますね。加えて、産休育休からの復帰率もほぼ100%です。

柚木さん

弊社は東京にもオフィスがありますが、2023年春から夏にかけて3〜4人、育休産休明けで復帰しています。

編集部

スタイルブレッドさんでは産休育休から復帰するのが当たり前になっているのですね。

石田さん

育休と復帰を繰り返して、3人のお子さんを育てながら働いているメンバーもいます。今まで積み上げてきた知識や仕事のスキルを、出産や育児を理由に手放してしまうのはもったいないというのが会社の考え方です。現状に満足せず、今後もさらに体制を整えていきたいと考えています。

地域に根ざした社風で地元出身者が多数活躍。Iターンも歓迎

株式会社スタイルブレッドの東京オフィスの様子

編集部

スタイルブレッドさんが、採用の際に求めるスキルや経験を教えてください。

石田さん

経験があれば、それはそれで歓迎しますが、未経験でも問題ありません。それは、パン作りを担う製造チームも同じです。バックアップ体制が整っていますので、まったくの未経験からチャレンジして国家資格である「パン製造技能士」の資格をとったメンバーもたくさんいます。

編集部

働いている方には地元出身者が多いのでしょうか?

石田さん

従業員には地元の人間が多いですし、一度、桐生を出た経験はありながら「やっぱり地元で働きたい」と戻ってきたメンバーも何名かいます。そういった人たちが集まるのはやはり、スタイルブレッドが地域とのつながりが強い企業だからだと思います。

例えば桐生市内のイベントでは、形が揃わず商品として出せないパンを無償提供していて、たくさんの方が弊社を知ってくださっています。今でも「タナカパンさんでしょう?」と声をかけていただくこともあります。

柚木さん

また、自家製の「桐生酵母」を使っていることをはじめ、弊社のパンは桐生の自然環境の中で作られています。だから、地元とのつながりはなくてはならないものだと考えています。

石田さん

この先も、UターンはもちろんIターンも歓迎します。桐生市では空き家をリノベーションして使うと補助金・助成金が出るなど、行政のサポートもありますので、移住という選択もあるのではないかと思います。

求めるのは自発的に行動でき、チャレンジャー精神のある人材

会議室で打ち合わせをする株式会社スタイルブレッドの女性社員たち

編集部

スタイルブレッドさんで活躍できる人材とは、どのような方でしょうか?

石田さん

仕事は個人の裁量に任される部分も大きいので、自ら考え、自発的に行動できる方が合うと思います。社歴に関係なく、実績を出していけば評価される人事制度ですので、頑張りたい方、どんどん自分で裁量をもって仕事を進めていきたい方にはぴったりだと思います。

柚木さん

パン好きな方はもちろんですけど、挑戦したいことがある方のほうが弊社とのマッチングはいいように思います。やりたいと思ったことに挑戦できる会社なので、何か熱い思いがある方にぜひ、応募いただきたいですね。

取材に対応いただいた株式会社スタイルブレッドの社員2名
▲取材に応じてくれた柚木さん(左)と石田さん

編集部

最後にスタイルブレッドさんに興味を持った方へメッセージをお願いします。

柚木さん

私は入社前、冷凍パンの存在すら知らず、「スタイルブレッドってどんな会社なんだろう?」というところからスタートしました。でも、スーパーで「Pan&」のパンを買って食べてみたら本当に美味しくて、その味に感動して「絶対、入社したい!」「冷凍パンの存在を世に広めていきたい」と思ったんです。

代表の田中はよく、「炊きたてのご飯がいつでも食べられるように、焼きたてのパンも当たり前に食べられる世の中を作りたい」と言っています。焼きたてのようなパンが当たり前に家で食べられる、そんな新しいライフスタイルを作っていく仲間になっていただければと思います。

編集部

パンへのこだわりと熱い思いがスタイルブレッドさんの成長のエネルギーなのだと感じました。本日はありがとうございました。

■取材協力
株式会社スタイルブレッド:https://stylebread.com
採用ページ:https://stylebread.com/recruit/