独自のサービスを展開しながら成長を続け、SDGs達成のための取り組みも進めている企業にインタビューする本企画。今回は、リスク管理をベースとして、プライバシー、セキュリティ、データガバナンス、AIガバナンスの分野でコンサルティング事業を展開しているテクニカ・ゼン株式会社にお話を伺いました。
プライバシーなどを専門にコンサルティング事業を展開
▲代表取締役である寺川さんの著書。グローバル企業のデータ保護対応の体制整備や、プライバシーの専門家育成のためのトレーニングなどを実施している
テクニカ・ゼン株式会社は、リスク管理をベースとして、プライバシー、セキュリティ、データガバナンス、AIガバナンスの分野で事業を展開しているコンサルティング会社です。
グローバルに事業を展開している企業に対し、各企業に適したテイラーメイドでのデータ保護に対する体制整備を支援するなど、企業がより効果的にコンプライアンス対応を行えるよう、コンサルティング、トレーニング、伴走支援を通じてお客様のお手伝いをしています。
会社名 | テクニカ・ゼン株式会社 |
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住所 | 兵庫県芦屋市岩園町23番-45号-205 |
事業内容 | リスク管理をベースとした、プライバシー、セキュリティ、データガバナンス、AIガバナンスのコンサルティング |
設立 | 2015年11月 |
公式ページ | https://technica-zen.com/ |
個人情報の取り扱いに関して各国で規制が厳しくなっていくなか、多くのグローバル企業がプライバシー保護に取り組んでいます。それに伴い、テクニカ・ゼン株式会社へのコンサルティングやトレーニングの依頼が増えています。事業の成長と並行して、テクニカ・ゼン株式会社では子どもたちがインターネットを賢く使えるようにデジタルリテラシーを高める社会貢献活動も行っています。
同社の成長要因や社会貢献活動について、代表取締役の寺川貴也さんにお話を伺いました。
顧客と汗を流す伴走力がテクニカ・ゼン株式会社の強み
▲クライアント企業の個人情報保護対応を向上するサービスを展開している(公式ページより)
編集部
初めに、テクニカ・ゼンさんの事業内容について伺わせてください。
寺川さん
テクニカ・ゼンは、リスク管理をベースとして、プライバシー、セキュリティ、データガバナンス、AIガバナンスを支援するコンサルティング会社です。なかでも、プライバシーのコンサルティングが軸になっております。
データの時代と言われる中、世界各国でプライバシーに関する法律の整備が進んでいます。各国の法規制の内容は当然国ごとに異なっています。その一方で、企業はできるだけシンプルなコンプライアンス対応を行いたいと考えます。
当社は、グローバルに事業を展開するお客様を対象として、プライバシー関連法に対応するために必要なガバナンス体制の整備とその運用支援を行っています。
また、クライアント企業の社員さんへのコンプライアンス教育、コンプライアンス対応に必要なソフトウェアの導入サポートなども手掛けております。
▲世界で8万人の会員を有するプライバシー専門家協会であるIAPPの日本唯一の公式トレーニングパートナーでもある
編集部
やはり個人情報に対する規制への対応は難しくなっているのでしょうか?
寺川さん
2018年に欧州で個人情報に関する法律「GDPR(※)」が制定され、それをきっかけにブラジルや米国の一部の州、タイ、中国、韓国など日本企業にとってビジネス上の関係が深い国々で個人情報に関する法整備が一気に進みました。
(※)「EU一般データ保護規則」。個人情報の保護や取り扱いについて厳格に定められており、違反した場合は莫大な制裁金が課される。
消費者や社会のプライバシーに対する視線が厳しくなる中、企業は信頼を損なわない事業運営が求められるようになっています。複雑化する規制状況を整理しながら、いかに効率良くコンプライアンス対応を進められるかが企業にとって重要な課題の一つとなっています。
編集部
同様のサービスを展開されている企業はいらっしゃるのでしょうか?また、競合他社と比較した際のテクニカ・ゼンさんの強みは何でしょうか?
寺川さん
いわゆる「ビッグ4」と呼ばれる大手会計事務所のコンサルティング部門が同様のサービスを提供されています。ビッグ4とは、アーンスト・アンド・ヤングさん、デロイトトーマツさん、PwCコンサルティングさん、KPMGコンサルティングさんを指します。
これらの会社と比較したときのテクニカ・ゼンの強みは、伴走力が挙げられると思います。大手のコンサルティング会社はハイレベルなフレームワークを提供するサービスに長けています。非常によく考えられた仕組みを提供することができるのが大手コンサルティング会社の強みです。
一方で、自転車を漕いだことがない人に対し、いきなり自転車に乗ってくださいといってもこけてしまうように、個人情報保護の対応にも成長ステージがあります。
クライアントが目指したい個人情報保護対応のレベルと現状のギャップの間にステップを設定し、そのギャップを埋められるよう伴走してともに汗を流すというのがテクニカ・ゼンのスタンスです。いきなり完璧なものを目指すのではなく、抑えるべきところを抑えながら少しずつレベルアップをしていく、というアプローチです。
編集部
クライアントとともに成長していくというスタイルでサービスを提供されているのですね。
個人情報保護への関心が高まるのに比例して成長を続ける
▲子育て中の社員も多い。社員が働きやすい環境を整えていることも成長要因の一つとなっている
編集部
個人情報保護への関心が高まる中でテクニカ・ゼンさんのサービスへの需要も高まっていると思いますが、売上などの実績について伺わせてください。
寺川さん
テクニカ・ゼンには社員が私も含め7名在籍しておりますが、残念ながら、現状コンサルタントは私一人です。それでも、スタッフの協力もありチームワークの中で仕事ができているため、売上は現在年商5,000万円程度になりました。
最近はAIのニュースもよく耳にするようになりましたが、データの時代においてはデータ保護の重要性がますます高まっており、それに伴いお仕事も増えているというのが現状です。
編集部
成長に関してプライバシーへの関心度の高まりという外的要因をお話しいただきましたが、社内的な要因は何かございますでしょうか?
寺川さん
やはり社員が良い仕事をしているということが挙げられると思います。当社では良い仕事を「お客さんが喜んでくれる仕事」、「働く仲間が喜ぶ仕事」、「工夫のある仕事」と定義して取り組んでいます。社員がリラックスしながら楽しんで仕事をすることで、創意工夫が生まれている状態を目指しています。
私も社員が自分たちのペースで、自分たちのやり方で仕事ができるような環境を作ることを心掛けています。
編集部
仕事に楽しみを見出している社員が活躍することで良いサービスを提供できるということですね。
寺川さん
「仕事がおもしろくない」と思いながら働いている方は、良い仕事はできないと思います。お店でも一生懸命仕事をしている人を見たら、「この人から買いたい」と思いませんか?私は社員にも、そうやって働いてほしいと思っています。別の言葉で言うならば、前向きに仕事ができるような場所を作りたいなと考えています。
編集部
実際にテクニカ・ゼンさんの社員さんはどのような働き方をしていらっしゃるのでしょうか?
同席の赤池さん
寺川や私も含め、テクニカ・ゼンには子育て中の社員が多く在籍しています。それもあって、当社は子どもの都合で遅めに出勤したり早めに退勤したりということが自由にできます。自分の仕事をしっかりこなしていれば自由に働くことができるという環境なのが、とてもありがたいですね。
今後はAI分野にも展開、目指すはデータ保護を通じたより良い社会の形成
編集部
今後の事業展開についてお教えください。
寺川さん
コンサルタントの採用の促進と、プライバシーをテーマとしたソフトウェア開発を考えています。また、トレーニング事業も強化して、確かなプライバシーへの理解をもった専門家を日本に増やしたいとも思っています。
その他、当社はAIガバナンスについても積極的に情報収集を行っており、OECDやアランチューリング研究所を始め世界各国のリーダーとコネクションを構築できています。素晴らしいリーダーから得た知見を日本に伝えるために、AIガバナンスについても今後はサービスを展開していく方針です。
こういった活動を通じ、データについて安全安心な社会を実現するためのサポートやサービスを引き続き行っていきたいと考えています。
これまでもそうですが、私たちの仕事のフィールドは国内のみにとどまらず、グローバルだと考えています。当社のスローガンである”To make the world a better place”を一緒に実現する仲間が増えると嬉しいです。
編集部
ChatGPTが話題になったころにはプライバシーに関する課題も指摘されていました。今後もよりプライバシー保護に関するニーズも高まっていきそうですね。
寺川さん
プライバシー保護へのニーズは企業はもちろんですが、今後は一般市民の間でもより高まっていくと考えています。特に、個人がデータをコントロールしたいというニーズが高まってくるかもしれません。
これからは企業のデータの取り扱いについて一般市民がより厳しい目で見ていくことになると思いますし、データ保護に関してより良い社会を作るようなツールを私たちとしても世の中に提供していきたいですね。
編集部
テクニカ・ゼンさんはミッションとして「私たちは、人が自由に尊厳をもって暮らすことができる世界を創造します」を掲げていらっしゃいますが、まさにそれを体現されていると感じました。
デジタルリテラシー教育を行うCyberSafetyを日本で展開
▲子どもたちにデジタルリテラシー教育を届けるCyberSafetyを日本で展開している
編集部
プライバシーやデータ保護に関してより良い社会を目指されているテクニカ・ゼンさんですが、現在具体的にどのような社会活動をされているのでしょうか?
寺川さん
テクニカ・ゼンはCyberSafetyグループという世界的なオンラインリテラシー教育を行っているグループの一員です。私は日本の代表を務めています。
CyberSafetyグループはもともとアメリカの著名な弁護士のパーリー・アフタブ(Parry Aftab)さんという方が25年以上前に立ち上げた団体で、子どもたちが賢くインターネットを利用できるためのデジタルリテラシー教育を届けています。
私たちは普段企業に対してプライバシー対応のコンサルティングをさせていただいておりますが、もっと直接的にこの大切なテーマを人々に届けることができる活動はないかと感じていました。
そんなときにパーリーさんに出会い、オンラインセーフティの課題に気付かされ、彼女の活動に参画することにしたのです。今でこそ総務省がオンラインセーフティについて素晴らしいサイトを提供してくれていますが、当時は日本には子どものデータ保護について十分な情報が見当たらなかったため、できることから始めるということでCyberSafetyグループの一員となりました。
編集部
デジタルリテラシーに関する教育活動をされている寺川さんは、現在の情報セキュリティ教育についてどのようにお感じになられているでしょうか?
寺川さん
デジタルリテラシーについては子どもはもちろん、大人の方もまだまだ学習途上の段階だなと感じています。例えば、オンラインゲームでユーザー同士でチャットができるということを知らない大人は割とたくさんいます。でも、子どものトラブルはそういった場所で生じがちです。
情報セキュリティ教育については、警察や弁護士の方が学校で説明するということが今は行われているようです。もちろんそれでも十分だと思うのですが、より専門的に取り組んだ人が情報提供をし、現場の課題に取り組むということがあってもいいのではないかなと思っています。私たちが活動する時は、できるだけ生活に近い部分での話をするように心掛けています。
編集部
テクニカ・ゼンさんの活動が広がることで日本のデジタルリテラシーも根元から高まっていきそうですね。
社会に貢献して誰かの役に立つことで結果的に売上も付いてくる
編集部
テクニカ・ゼンさんでほかに展開している社会貢献活動があればお聞かせください。
寺川さん
テクニカ・ゼンは発展途上国の子どもたちの生活環境を向上させるべく活動しているプラン・インターナショナルというNGOのスポンサーを2017年から続けています。また2021年からは毎年フードバンク関西に寄付を行っています。
プランインターナショナルは発展途上国の子どもたちに機会を提供するというスタンスに共感し、私が大学生のころから個人的にサポートを続けていたNGOです。フードバンク関西は、地元芦屋で活動する、捨てられる予定だったまだ食べられる食べ物を必要としている福祉施設・団体や個人へとどけてくれるNPOです。
私たちは今幸運にも事業を継続することができていますが、これは何も私たちがすごいからではなく、私たちのサービスに価値を見出し、サービスを利用してくださったお客様がいらっしゃるからだと思っています。私たちは、仕事をさせていただく機会を与えられているだけだと考えています。
そうやっていただいた機会から得られた利益はできる範囲でちゃんと世の中に還元していきたいと思っています。当社では、毎年、利益の一部をプラン・インターナショナルや関西フードバンクなどの社会的に価値のある活動されている団体に寄付するようにしています。
その他、海外ではLGBTQ+の若者を支援する団体にも2年前から寄付を続けています。
編集部
CyberSafetyグループのお話でもわかるように、テクニカ・ゼンさんのスタンスとして社会貢献への思いが強いと感じましたが、その点はいかがでしょうか?
寺川さん
私は、別に会社自体を大きくすることを目標とはしていません。結果的に大きくしたほうが良いのであれば大きくなるし、そうでないなら、適切なサイズの会社に落ち着くのではないかと思っています。
それよりも、私が関心があるのは意味のあるサービスを提供できるかです。社会に貢献して、誰かの役に立っていれば売上はついてきますし、新しいチャンスもやってくるのではないか、という感じです。ビジネスにおいてキャッシュは必要ですが、手段を目的とはき違えてはいけないと思っています。
スタッフにもいつも「お金を追うな、仕事を追え」言っているのですが、「なぜ自分たちは仕事をしているのか」「仕事をすることの先にはどんな未来が生まれるのか」ということを大切にしています。自分たちだからこそ社会に届けられる価値を意識して、ぶれないことが大切だと思います。
結果として世の中の役にたっているのであれば私たちとしても幸せです。自分たちの方向性を決めるのは代表である私の大切な仕事だと考えています。
テクニカ・ゼン株式会社という”舞台”に合っている人材を求める
▲「プロフェッショナル人材に入社いただきたい」と話す寺川さん(左から2番目)
編集部
これからテクニカ・ゼンさんが求めていくのはどのような人材でしょうか?
寺川さん
優秀な人材は常に募集しています。コンサルタントや新たな製品作りをリードできる方は、特に募集しています。
誰かの役に立つには、役に立つことができる能力がなければいけません。そういった力を育んできて発揮する場所を探している人にとっては、当社はとてもいい場所ではないかと思います。あと、人としての「優しさ」も大切ですね。
編集部
最後に、テクニカ・ゼンさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
同席の赤池さん
雑談が気軽にできるような、基本的なコミュニケーション能力を持っている方に入社いただきたいです。一時期在宅勤務が流行りましたが、今はオフィスに回帰している動きも見られます。やはり、コミュニケーションが一番大切だと多くの方が気付いているのだと思うのです。
雑談の中から新しい何かが生まれることもありますので、そういった何気ないコミュニケーションを大切にされる方と仕事がしたいですね。
寺川さん
私としては、自分の仕事にプロとしての基準や誇りを持っているプロフェッショナル人材に入社いただきたいです。私は会社を舞台と捉えています。その舞台がどれだけ整備されているのか、それは劇場によって異なるでしょう。
自分がテクニカ・ゼンという舞台にあっているのかというのは入社の前に考えていただきたいです。
私たちの売上だけを求めないというスタンスに共感できるのか、変化の速い業界で学び続け成長することができるのか。社会に貢献したいという気持ちがあるのか。そういった私たちの方向性と自分の方向性が合うということであれば、ぜひ弊社に応募いただきたいですね。
編集部
プロフェッショナルと社会貢献。この2つがテクニカ・ゼンさんで働く上でキーワードになってくるのではないかと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
テクニカ・ゼン株式会社:https://technica-zen.com/
採用ページ:https://technica-zen.com/recruit/