働く人たちのワークライフバランスを大切にし、若手が活躍できる職場づくりを進めている企業や自治体にインタビューする本企画。今回は茨城県南部にある「土浦市」の土浦市役所にお話を伺いました。
豊かな自然、整備された住環境など多彩な側面を持つ「茨城県土浦市」
土浦市は、日本で2番目の大きさを誇る湖「霞ヶ浦」と、名峰「筑波山」を望む茨城県南部の都市です。
日本有数のサイクリングロードがある”自転車のまち”、日本三大花火大会のひとつ「土浦全国花火競技大会」が開催される”花火のまち”としても知られています。
また、穏やかな気候を生かした農業が盛んです。れんこんの生産量は茨城県が全国の約半分と日本トップで、土浦市も農林水産課に「日本一のれんこん担当」を発足させるなど力を入れています(※)。
(※)土浦市の農林水産課資料を参照
そのほか四季折々の景色を楽しめる公園や歴史ある建造物、緑と水に恵まれた街であり、交通網が発達し都心にもアクセスしやすい街でもあります。
自治体名 | 茨城県土浦市 |
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本庁舎住所 | 茨城県土浦市大和町9番1号 |
公式ページ | https://www.city.tsuchiura.lg. jp/ |
土浦市では、SDGsの考え方に基づいたまちづくりを進めています。妊娠前からの切れ目のない子育て支援が最大の特徴で、充実した住環境や豊かな教育環境も相まって子育て世帯から人気も高いです。
市民の住みやすさの整備だけではなく、職員の働きやすさの充実も図っており、特に女性職員の活躍推進と子育て支援策に注力しています。
今回は土浦市役所における女性職員の方々の活躍を推進する環境や施策、SDGsの理念に基づいたまちづくりについて土浦市役所の中山さんにお話を伺いました。
女性活躍を推進中。女性管理職の増加を重点目標に
編集部
土浦市さんでは、女性職員の方のご活躍を推進されているとお聞きしました。まず基本的なデータからお伺いしたいのですが、現状の女性比率を教えてください。
中山さん
女性比率の現状値は大体31.5%です。2022年度は31.4%、2021年度は31.2%で、近年は徐々に増加しています。
土浦市では女性活躍推進法に基づき「女性職員活躍推進プラン」を策定しています。この計画の中で、女性管理職の割合増加を重点目標に定めています。
実際に部長級、課長級の女性の方もどんどん増えており、女性管理職の割合は2021年度が24.2%で、2022年度は25.6%、2024年度は28.0%と増加傾向にあります(消防職は除く)。
編集部
女性職員さんがより活躍できるように、また女性管理職を増やすためにどのような施策をされていますか?
中山さん
土浦市では人材育成基本方針というものを設けており、それに則って人事制度の構築を行っております。
土浦市では、採用から約10年間で3か所程度のジョブローテーションを行うことで、3つの行政分野における知識や経験を培い、自らの適性や能力等を踏まえたキャリアデザインができるようにしています。
その上で、能力や実績、そして本人の希望を尊重した昇任・昇格ができるような形で人材育成を図っている状況です。
また、マネジメント能力など管理職に必要とされる能力を向上させるような研修は、男女の区別なく実施しています。
外部で行われているリーダー養成研修などにも積極的に職員を派遣しています。地方公共団体における女性幹部職員の登用を促進するため実施されている総務省自治大学校の「第1部・第2部特別課程」にも毎年派遣しております。
職員の育児支援に注力し、性別に限らず育児と両立できる職場環境を整備している
編集部
女性職員活躍推進プランや、関連する新子育て支援プランの策定など、女性活躍を促進させようという流れは市役所全体に浸透しているのでしょうか?
中山さん
そうですね。特に育児支援は力を入れている部分です。例えば女性職員の育休取得割合は、過去3年間100%を維持しています。
それに加えて男性職員の育休取得率も、2020年度は35.1%、2021年度が58.3%で、2022年度は48%と増加傾向にあります。男性職員大体2人に1人が育休を取得している職場になっています。
編集部
男性も女性も育休取得ができるような職場になってきているということですね。
中山さん
そうですね。男性も女性も育休を取得することで、キャリアプランなどに影響がないようにしております。極端な話ですが、育休を取得したからといって管理職になれないということはありません。
育休取得など男女関係なく、平等に扱える職場環境を整えている状況です。
編集部
育休から復帰して子育てしながら働かれる職員さんも多いと思います。こうした育児と仕事を両立されている方をサポートする制度、取り組みはございますか?
中山さん
全国的に採用している自治体も多いかもしれませんが、部分休業制度というものがあります。これは就業時間の前後に、1日最大2時間の休業を取ることができる制度です。
土浦市の就業時間が8時半〜17時15分なのですが、朝8時半〜10時半を休みとしたり、8時半〜9時半と16時15分〜17時15分に分けて休みを取ったりということが可能です。これによって、保育園の送迎がしやすくなっています。
また、子の看護休暇制度もあり、子ども1人につき5日間、2人以上で10日間取得可能です。自分の子もそうなのですが、子どもは急に発熱したり、体調を崩してしまったりすることがあります。
子の看護休暇制度は、当初は小学校入学前の子が対象でしたが、現在は小学生まで拡大しています。
編集部
中山さんもお子さんがいらっしゃるそうですが、子育てのしやすさに関してはどう感じていらっしゃいますか?
中山さん
妻も働いているので、子どもが前日の夜に発熱したり、朝方発熱したりしたときに、どうしても休めない場合もあります。
そのときに私が子の看護休暇制度で休むなど、お互いに支え合いながら仕事と育児を両立できています。
県内唯一の女性市長、職員も女性活躍を推進していく意識が強い
編集部
土浦市の安藤市長も女性ですが、女性市長になったことで何か変化はございましたか?
中山さん
県内唯一の女性市長ということで、土浦市がよりリーダーシップを発揮していくという姿勢を感じています。
実際にダイバーシティ推進室という組織もできました。今までは違う名称で活動していましたが、2024年4月から名称を変更して、気を新たに様々な取り組みをしております。
編集部
茨城県の中でも土浦市は女性が活躍する自治体だというイメージを持たれるように、プランを進めていて、今まさに変わっている途中ということですね。
SDGsの理念のもと、心豊かに住み続けられるまちづくりを進めている
編集部
土浦市さんではSDGsの理念の下、まちづくりの指針となる「第9次土浦市総合計画」を策定されていますが、特に力を入れている、もしくは特徴的な取り組みなどあれば、お教えいただきたいです。
中山さん
総合計画では、基本目標の1つとして「心豊かに住み続けることのできるまちづくり」を掲げております。SDGsの17目標のうち特に、4「質の高い教育をみんなに」、5「ジェンダー平等を実現しよう」、10「人や国の不平等をなくそう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」に該当する目標です。
この目標のもと「結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた、切れ目のない総合的な施策」を主に行っております。
国の方でも子どもに関わる政策を推進する組織として、こども家庭庁を2024年から設置しています。土浦市ではそれに先駆けて、子ども・子育てに関係する部署を再編成し、一つにまとめた「こども未来部」という部署を2021年度に新設しました。
そして、2024年度から「こども家庭センター」という相談支援窓口を、国や他の市町村に先駆けて設置しています。
子どもに関わる各所を一体化し、切れ目のない支援が可能に
編集部
こども家庭センターとは具体的にどのようなことをされるのでしょうか?
中山さん
こども家庭センターは、母子保健係とこども相談係の2つの係で構成され、母子保健と福祉の一体的な支援を行います。母子保健と児童福祉の専門職が中心となって、子どもや子育て家庭の相談を受けたり、保健指導やサービスにつなぐ支援をしています。
今までは妊産婦さんや乳幼児の保護者の相談は「母子保健係」が、子育てに関する様々な心配ごとは「こども相談係」が対応し、支援を行ってきました。
こども家庭センターに統合することで、妊娠する前、妊娠した後、そして出産、子育てまで、切れ目のない支援を行うことができています。
編集部
支援が途切れてしまうことなく、安心して出産前から育児までサポートが受けられるのですね。子どもを大事にする自治体・組織であることを感じながら働けるのは、やりがいにつながるのではと感じました。
中山さん
そうですね、こども未来部のある課で働いている方もそのようにお話されていました。
従来は妊娠期から乳幼児期は保健福祉部の健康増進課とこども相談課、就学前の幼児教育・保育はこども福祉課などと、時期や年齢、悩みによって対応する部署が異なりました。そのため、各々でできる支援や課題がバラバラの状態だったんですね。
こども未来部ができたことで、バラバラだったものも一括されたため、組織として切れ目なく集中して支援に取り組めるのは大きい、とのことです。
ただ、国や他の市町村に先駆けてやっているため前例があまりないので、その点は大変に感じているそうです。
でも、今まで見えなかった課題や、今まで見過ごされてきたことを拾い上げることができており、それはやりがいだと、話されていました。
サイクリング環境の整備を進める土浦市。これを機に趣味にする職員も
編集部
SDGsに関連して、他にも特徴的なプロジェクトがあったら伺いたいです。
中山さん
最近ですと、土浦市はまちづくりの一環としてサイクリング環境の整備に力を入れています。茨城県や近隣市町村と連携して、つくばりんりんロードと霞ヶ浦自転車道などを一体化したサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」を整備しました。
他にも、土浦駅直結の駅ビルの中に、サイクリング拠点施設となる「りんりんスクエア土浦」やサイクリストにも対応した宿泊施設「星野リゾートBEB5土浦」が入っています。
また、つくば霞ヶ浦りんりんロードの沿線に、休憩スポットになるような「りんりんポート土浦」を開業したり、市内店舗や施設にサイクリストも行けるように自転車が置けるスタンドを設置したり、地域全体が一丸となって取り組んでいます。
着実に自転車利用環境への整備は進んでおり、そのおかげで休日はもちろん、平日でもサイクリストの方を見かけるようになりました。
編集部
土浦市さんはサイクリングが身近な環境なんですね。サイクリングが趣味の職員さんもいらっしゃるのですか?
中山さん
はい、ロードバイクを購入して、休日に霞ヶ浦の周りをはじめ色々な場所でサイクリングを楽しんでいる職員も多数おります。
やはり自分の働いている職場の取り組みや実際に業務で関わったことをきっかけに、趣味となるケースが多いようです。
編集部
サイクリングが趣味の職員さんにとっては、自分で感じたことも施策に反映していける楽しさもありそうですね。
未知のことにも取り組む市の姿勢が、職員のやりがいに
編集部
土浦市さんは、保守的にならず、前例のないことにも先駆けて取り組まれています。だからこそ得られるやりがいもあるのでしょうか?
中山さん
そうですね。土浦市の市民や職員のニーズに即し、前例のないことにも積極的な姿勢は実際に働いてみて実感しました。
自治体の業務内容は法令で決められている部分が大半なのですが、それ以外の業務もあります。それが前例がないケースというのも多々あります。その中で、自分の意見が求められたり、自分の考案したことが形になったりする場面も多いです。
そのため、職員みんな、自身が携わる施策などに対して、責任を持ってやっていますし、そのことをひしひしと感じる組織だと思います。そして、それがやりがいにつながっているのだろうとも思います。
編集部
やりがいがある仕事でも大変なことも多いと思います。どのように仕事のモチベーションを維持していますか?
中山さん
私は民間企業から転職して市役所に入庁しました。民間との違いとして、公の利益を追求する点が挙げられます。
企業においては事業を継続させるためには利益を追求していくことは必須です。企業は利益を追求することで顧客に価値提供することができますが、自治体では各業務・事業を通して社会や市民の皆さんにとっての利益を提供します。
個人的に公共の利益を追求していくことが合っていると感じていて、それが一つのモチベーションになっています。
編集部
自分のやっていることが、会社の利益になることももちろん大事ですが、市や市民の皆さんのためになることがモチベーションになっていて、そのためにどんどん新しいことに取り組もうという姿勢にも繋がっているのですね。
「土浦愛」がある方、将来的に持つことができそうという方を採用したい
編集部
それでは最後に、土浦市の職員さんとして、フィットする人物像や一緒に働きたい人物像をお聞かせください。
中山さん
人材育成基本方針のなかで、土浦市として目指すべき職員像として「はすの穴から未来を見通し、霞ヶ浦のように広い視野をもって自ら考え行動する職員」を掲げています。
れんこんの生産量が日本一だったり、日本で2番目に大きい霞ヶ浦や充実したサイクリング環境を有していたり、という土浦市の魅力が入っているのが特徴です。
この職員像に向けて、「土浦愛」「市民志向」「チャレンジ志向」「経営志向」の4つの視点を常に持つことを求めています。
特に重要なのが「土浦愛」です。人材育成基本方針では、土浦愛とは、土浦が大好きで誇りと愛着をもち、地域の宝に磨きをかける、としています。
行政はある程度法令によってやることが決められています。そのため、自治体によって業務が全く違うということはありません。
どの自治体でも同じような業務をやる中で、土浦を愛し、誇りと愛着を持つことが必要であると考えています。
先ほど申し上げたサイクリングや自然をはじめ、多彩な食や歴史など様々な魅力を持ったまちです。採用時に土浦愛を持っていただいていればいいですが、その時に持っていなかったとしても、業務等で関わるうちに好きになっていただけるポテンシャルが土浦市にはあると思っています。
土浦市役所での仕事は、土浦市に当然関係する仕事のため、市の魅力に触れて好きになることもあると思いますし、自分が頑張ることで土浦市を良くすることができるので、やりがいに繋がると思います。
土浦出身であったり、在住されていたりする方はもちろん、他の地域に住んでいても土浦が好きで役に立っていきたいと思う方、少しでも興味があるという方は、職員としてぜひ採用したいです。
編集部
土浦市さんは国や他の自治体の先駆者となって、女性活躍の推進や切れ目ない育児支援などに取り組まれています。「土浦愛」がある方はもちろん、土浦市さんの前例のないことにも取り組む姿勢に共感し、触発された方もフィットしそうだと感じました。
公式サイトに募集状況が掲載されているので「土浦市で働きたい」という思いがある方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
本日はありがとうございました。
■取材協力
茨城県土浦市:https://www.city.tsuchiura.lg.jp/
採用ページ:https://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/dir003016.html