ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、「働くがやりがいに、そして人生を幸せに」という理念のもと、企業の人材開発や組織づくりをサポートするHRブランディング企業「つむぎ株式会社」にインタビューしました。
人材戦略をトータルで企業を支援する同社は、人材戦略を練るだけではなく、会社の信念の軸となるVMV※(ビジョン・ミッション・バリュー)の策定から現場の育成・採用支援まで、幅広くサービスを提供しています。
※VMV…一般的には「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」だが、ビジョンを重要視するつむぎでは「VMV」の順で表現している
同社の特徴は、やりがいを持って働くということを事業だけでなく社内においても徹底していることです。「パーソナルVMV」制度で社員個人の目標をしっかりと定め、それに対して会社は年間10万円の補助をするなど、業務委託を含めたすべてのメンバーが成長して目標を達成できるようサポートしています。
今回は、そんな同社の企業理念や取り組みを中心に、代表取締役の前田亮社長にお話を聞かせていただきました。
社員のやりがいを重視!自己実現と成長をサポートする制度が充実
編集部
御社は「働くがやりがいに、そして人生を幸せに」という理念を、事業面だけでなく、社内制度にも反映されているそうですね。社員のやりがいを高めるための制度や取り組みについて教えていただけますでしょうか?
前田さん
「パーソナルVMV」という制度を設けています。これは、自分自身が何を大切にするかを固め、自分の人生や目指したい方向性を深く理解することを目的とする当社独自の取り組みです。
具体的には、社員一人ひとりが大切にする価値観やビジョン、ミッション、やりたいことをシートに記入して明確にした上で、代表である私自身が毎月全員と1on1を行い、個々の成長目標や実現したいことについて話し合います。
▲個人の目標設定から実現までを支援する「パーソナルVMV」シート。画像は前田さんのもの
前田さん
そして、話し合いのなかで出てきた目標や“やりがい”につながる要素を具体的な仕事に結びつけ、それがお客様への価値提供と会社の収益に繋がるサイクルを作ることを大切にしています。個人の目標は多様で、車の購入をはじめ具体的な目標からキャリアの方向性まで、幅広い内容が含まれています。
また、個人の意思を尊重しながら挑戦できる環境を整えるのが当社のポリシーなので、例えば事業運営の中で「営業が必要」となった場合に、まずは社内でチャレンジしたい人を探すようにしています。経験者を採用した方が良いという考えもありますが、私はたとえ経験がなくても、その人を育成する方が良いお金の使い方だと考えています。
成長支援:自己啓発費が最大10万円まで会社負担だから、個人の成長につながる
編集部
パーソナルVMVで設定した目標の実現に向けて、どのようなサポート制度がありますか?
前田さん
やりたいことが出てきた場合、会社として後押しするため、「VMV実現予算」という名前で、最大10万円までの予算を用意しています。
これは自己啓発や成長のために活用できる制度です。これまでの利用者は延べ8〜9人程度ですが、ほとんどの場合、社員は10万円の予算枠を超えて自己負担もしながら学んでいます。それだけ本気で学びたいという意欲を持って、自己投資をしているのです。
編集部
この予算はどのようなことに活用されていますか?
前田さん
これまでに、コーチング研修、編集講座、ライティングスキル向上のための講座、さらにはMBA取得など、様々な形で活用されています。
予算の利用に際しては、なぜそれを学びたいのか、それが会社のミッションにどのように貢献するのかについて、事前に十分な話し合いを行います。この過程で、必要性が低いと判断される場合は承認されないこともあります。
例えば、HRブランディングチームのメンバーは、ウェルビーイングやエンゲージメントといった重要な要素に関わる中で、ポジティブ心理学という学問のスキルを習得するために活用しています。これは自身の提供するサービスの価値を高めることにつながるため承認されました。
社員の活躍事例:26歳で事業部長に!成長意欲あふれるメンバーが活躍
▲年齢に関係なく実力と意欲で評価される同社では、若手メンバーが多く活躍している。
編集部
活躍されている社員の方々の事例について教えてください。
前田さん
当社の2つの事業部門のうちの1つ、カケハシ事業部の部長を務める最年少メンバー26歳の社員のエピソードをご紹介します。彼女は紡ぎ手(つむぎ株式会社におけるインタビューライターの呼称)として入社し、業務を遂行するなかでメンバーや仕事が増えていきました。その過程で、自ら働く環境を整備する立場で貢献したいと手を挙げ、部長に就任しました。
部長に就任してからは、カケハシ事業部の業務全体を整理しました。例えば、受注から納品までのスケジュール管理において、どのタイミングで何をするかを全て整理し、さらにサービスラインナップごとに異なる業務フローを『このサービスならこの流れで、この商品ならこの流れで』というように、全て体系的に整備しました。
さらに彼女は部長職をこなしながら、2024年4月から、なんと大学にも通い始めたんです。
編集部
すごい成長意欲ですね!パーソナルVMVで目標を定め、その実現に向けて突き進んでいることがよくわかります。部長として抜擢された理由を教えていただけますか?
前田さん
まず、組織の課題に気づき、自ら手を挙げて改善に取り組む主体性を持っていたことが大きいです。事業部のメンバーは彼女より年上ですが、誰よりも積極的にメンバーへの感謝や評価を示していました。この関わり方により、メンバー全員で助け合える関係を築きました。
とはいえ年齢的にはまだ若く、業務経験の少ない中ですので、全て完璧にこなしているというわけではありません。彼女が部長という役割を担い、メンバーは部長とともに助け合いながら進めていっています。
当社自体が上意下達型のマネジメントではないため、部長が部下をマネジメントするのではなくチームで仕事をする環境だからこそ成り立っているとも言えますね。
編集部
その他にも、メンバーをご紹介いただきたいです。
前田さん
若くして活躍しているメンバーは多いですが、一例を挙げると、独学でマーケティングを学んでマーケティングチームに参画した後、その経験から更なる学びを求めてMBA進学を決意し、環境を積極的に活用しながら次々とスキルを身につけている27歳のメンバーもいます。
このような若手登用の事例は、当社では珍しくありません。年齢や経験に関係なく、意欲と実力次第で大きな裁量とチャンスが得られる環境が整っています。
経営方針:「やりがいを持って働く」想いを社外・社内で貫く
▲理念を大切にしながら、一人ひとりが自分らしく働ける環境を整備
編集部
これまで伺った制度や成長支援は、御社の企業理念に紐づくものだと思います。改めて、御社の経営方針の土台となるつむぎの企業理念を教えていただけますか?
前田さん
私たちは、『働くがやりがいに、そして人生を幸せに』という「Vission」を掲げています。Vissionというのは「Vision×Mission(※)」を組み合わせた造語で、私たちが目指すべき方向性であると同時に、日々大切にしたい価値観でもあることから、このような表現としています。
※ミッションは企業が社会で実現したいこと、ビジョンは企業のミッションが実現したときの状態を指す。
働く時間は人生の大きな部分を占めています。その時間がやりがいに変わることで、人々の人生はより豊かになると考えているんです。そのような人を一人でも多く生み出すには、個人ではなく会社への支援が必要でしょう。
私は、やりがいのある会社に共通するものは、ビジョンや理念といった信念があることだと考えています。そのため、やりがいのある会社づくりを支援することが私たちの使命です。
この考え方は、クライアント企業に対してだけでなく、社内でも大切にしています。社員一人ひとりがやりがいを持って働き、それがお客様への価値提供につながり、経済的にも精神的にも豊かになれるような好循環を作ることを意識しています。
とはいえ、正直、日常の仕事の中でVMVを意識して仕事をすることは少ないと思っています。一つひとつの仕事でVMVを意識するなんてことは、できないですよね。だからこそ定期的に立ち止まって考える時間を設けることが重要だと考えています。
編集部
立ち止まって考え、御社の理念やVMVを振り返るための機会はあるのでしょうか?
前田さん
月1回の頻度で、オンラインで1時間、ビジョンやステートメント、バリューについて考える「VMVワーク」という時間を設けています。
例えば、当社のブランドスローガンである「人と企業と未来を紡ぐ」を、実際の業務でどう実践するかについて話し合います。お客様へのインタビューをする際、このスローガンをどのように反映させるかなど、具体的な実践方法をメンバーで議論しています。
▲月1回の「VMVワーク」で全社員が理念について話し合う
働く環境:完全テレワーク。主体性を発揮して働ける
編集部
続いて、御社の働き方について伺います。重視しているポイントは何でしょうか?
前田さん
重視しているのは「主体性」で、これは私たちが大切にしているカルチャーの1つです。つむぎは完全テレワークを導入していて、働く時間と場所に制約されない働き方をしているため、最高のパフォーマンスを出すためには主体性の発揮が不可欠だと考えています。
自律的に働けていれば柔軟な働き方を実現できますが、それができないと細かなマネジメントが必要になってしまいます。そのため、主体性を積極的に発揮していこうという意識をメンバー全員で共有しています。
編集部
就業時間の管理や評価について教えていただけますでしょうか?
前田さん
当社が重視しているのは、生み出される価値です。そのため社員には就業時間の規定はありますが、業務委託メンバーについては、時間での契約は行っていません。「これだけの時間を確保して働いたから、その時間分だけ賃金を支払う」という発想は持ちたくないと考えています。
例えば、10分で素晴らしい成果を出せるのであればそれで良いですし、逆に10時間かけても期待する価値が生まれないのであれば、それは適切ではないと考えます。仕事の依頼とクオリティに基づいて金額を決定し、それに対してどれだけの時間を使うかは個人に委ねています。
量より質を重視。リモートワークでのコミュニケーション施策
▲オンラインでもオフラインでも活発なコミュニケーションを重視
編集部
完全テレワークだと、コミュニケーションが足りなくなるケースもあるかと思います。つむぎではどのような取り組みをされていますか?
前田さん
リモートワークという特性上、コミュニケーションの「量」だけを担保する施策は確実にうまくいかないと考えています。そのため、“質をいかに高めるか”ということに意識を向けています。
その取り組みとして、仕事をスムーズに進めるための基礎となるコミュニケーションを促進するため、雑談と相談の場である「ザッソウ」のほか、月に1回メンバー同士で1対1のランチで交流をする「ラウンドロビンランチ」を設け、基本的な信頼関係を育む環境を整えています。
なお、「ザッソウ」は月1回の頻度です。深刻な相談は別途個別対応としていますが、『最近こんなことが気になっている』といった軽めの相談や、ちょっとした気がかりなことを共有する機会となっています。
編集部
日常的なコミュニケーションの様子を教えていただけますか?
前田さん
新入社員からよく「会社の会議が騒がしいですね」と言われます(笑)。これは、みんなが積極的に参画してくれているからです。会議だけでなく、チャットもすごく賑やかで活発なコミュニケーションが行われています。
採用方針:異業界からの転職も歓迎。価値観のマッチを重視
▲異業界からの転職者も多数。多様なキャリアを持つメンバーが活躍。中央に立つのは取材に応じてくださった代表の前田さん。
編集部
御社には様々なバックグラウンドを持つ方が在籍されているとのことですが、具体的にどのような業界や職種からの転職者が多いのでしょうか。
前田さん
当社では異業界からの転職者が多数活躍しています。児童発達支援、住宅メーカー営業、フリーランスなど、多様なバックグラウンドを持つメンバーが、それぞれの経験を活かしながら新しい価値を生み出しています。経験のない領域でも、意欲があれば積極的にチャレンジできる環境があります。
なお、当社のメンバーの9割は業務委託契約で働いています。当社にとって業務委託と正社員は雇用形態の違いだけであることをよく伝えています。そのため、業務委託メンバーにも「会議に出てください」などと普通に声をかけており、社員と同様に会社活動に関わってもらっています。
編集部
メンバーが御社を選んだ理由としては、どのような声が多いですか?
前田さん
当社のサービスの1つ、「パーソナルブランドブック」に魅力を感じたり、長期伴走型のコンサルティングに興味を持ったという声が多いですが、理由はさまざまです。
ただし、特定の仕事だけを目的に来られる方はあまり採用していません。なぜなら、単に仕事内容だけを見れば、他社でも同様の機会は得られるからです。それよりも、当社の理念やブランドメッセージに共感してくれること、その価値観を理解してくれていることを重視しています。採用面接では、ほぼその理念への共感だけを見ています。
編集部
年齢も重視されないのでしょうか?
前田さん
当社では採用時に年齢を見ていません。履歴書も細かくは見ていないので、入社が決まってから「そういえばどちらにお住まいでしたか?」といった会話をすることもあります。当社にとって年齢は基準にならず、考え方を重視して採用を行っているため、結果として若い人が多くなったと分析します。
つむぎ株式会社から読者へのメッセージ
編集部
それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
前田さん
私はメンバーによく「会社のために人が働くのではなく、一人ひとりが働くために会社がある。だから会社を上手に使いなさい」と伝えています。やりたいことや実現したい未来を持っている方にとって、当社は"上手に使える場所"だと思います。
また、特徴的なのは「手を挙げる」だけでなく「手を下ろす」ことも大切にしている点です。やってみたけれど違うと感じた場合、それを否定的に捉えません。単に『ここは自分の弱点だから』というネガティブな理由ではなく、『この分野の方が自分の価値を出せると思うから、ここに全力を注ぎたい』という積極的な理由で方向転換する場合は、それを支持します。つまり、挑戦して分かったからこそ、どこに注力すべきかが見えた上での決断を重視しています。
このように、新しいことへのチャレンジも方向転換も「前向きな選択」として受け入れる文化がある当社は、個人では実現が難しいことでもチームで協力することで可能にしたいと考える方にとって、魅力的な環境が整っています。挑戦したいことが明確で、チームでの協働を大切にできる方はぜひ、当社でその力を発揮していただきたいと考えています。
それぞれの夢や目標に向かって共に成長していける仲間を待っています!
編集部
個の成長がつむぎ株式会社の成長につながることを、今回のインタビューを通じて実感することができました。また、御社で働く楽しさを感じつつ、自身が実現したいことにも取り組める働き方は、転職を希望する多くの読者が理想的かつ、魅力的な働き方と感じたと思われます。
本日はありがとうございました。
編集後記
また、「社員を時間で縛らず、成果で評価する」という方針のもと、フリーランス出身者や異業界からの転職者が活躍している様子に、多様なキャリアを受け入れる柔軟さを垣間見ることができました。
この記事のまとめ
働き方の特徴 |
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組織文化 |
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キャリア開発支援 |
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若手の活躍機会 |
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求める人物像 |
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つむぎ株式会社の基本情報
住所 | 東京都品川区大井1丁目6−3アゴラ大井町ビル 3階 |
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事業内容 | ・HRブランディング事業 ・カケハシ事業 |
設立 | 2020年1月 |
働き方 | リモートワーク |
公式ページ | https://tsumugi-mirai.jp/ |
採用ページ | https://www.wantedly.com/ companies/company_9514841 |
募集職種 | ・HRブランディングプランナー ・セールス ・紡ぎ手(インタビューライター) |