Clearは日本酒の可能性に挑戦する。「社内角打ち」など独自の仕組みを紹介

さまざまな企業の取り組みや魅力をお伝えしていくこの企画。今回は日本酒の未来をつくる事業を展開しているスタートアップ企業「株式会社Clear」を取材させていただきました。

インタビューで印象的だったのは、ゆるぎない日本酒への熱い思いと、社員の実情に合わせ「働きやすさ」をつくりあげる柔軟な姿勢です。魅力的な福利厚生制度についてもご紹介いただいたので、ぜひご覧ください。

株式会社Clearとは

株式会社Clearのビジョン
▲「日本酒の未来をつくる」という力強いビジョンを掲げる(会社概要資料より引用)

株式会社Clearは「日本酒の未来をつくる」をビジョンに掲げており、国内外に日本酒情報を発信するWEBメディア「SAKETIMES」の運営と、ラグジュアリーな日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」を独自に展開しています。

会社名 株式会社Clear
住所 東京都渋谷区渋谷1丁目17-4 PMO渋谷9階
事業内容 ・日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」の運営

・日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」
・「SAKETIMES International」の運営
設立 2013年2月
公式ページ https://clear-inc.net/
働き方 ハイブリッド勤務
フレックス

設立から10年。「SAKE HUNDRED」のお酒が海外メディアに取り上げられたり、エッフェル塔でのクラシックコンサートの乾杯酒に選ばれたりと、業界に大きな風穴を開けながら株式会社Clearは成長を続けています。

今回は求める人材像や社内の雰囲気について、コーポレート人事/カルチャーチームの古川理恵さんにお話を伺いました。

本日お話を伺った方
株式会社Clear コーポレート 人事/カルチャーチーム 古川 理恵さん

株式会社Clear
コーポレート 人事/カルチャーチーム

古川 理恵さん

日本酒に特化したWEBメディアとブランド事業を展開

株式会社Clearの軸となる2つの事業のイメージ

編集部

まずはじめに、Clearさんの事業内容を教えていただけますか。

古川さん

現在、私たちが事業として展開しているのが、日本酒専用のWEBメディア「SAKETIMES」と、オリジナルの日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」の2つです。

「SAKETIMES」はClear設立の翌年、2014年に創業しました。日本酒ビギナー向けの知識から、専門家の教科書にもなるくらいのコアな話、また酒蔵のバックストーリーまで、あらゆる情報を掲載しています。「飲む・買う」より先に「知る」ことで、多くの人に日本酒を好きになってもらうことを目指しています。

メディア運営では代表(代表取締役CEOの生駒龍史さん)も自ら取材に同行したり記事を書いたりしていたのですが、そこで日本酒をさらに好きになるとともに、いろいろな課題も見えてくるようになってきたんです。

日本酒専門のメディアを立ち上げて業界に貢献できているという自負はありつつも、経済的にインパクトを与え、業界全体の成長により一層寄与したいとの思いが強くなってきました。そして、2018年に「SAKE HUNDRED」を創業したという流れになります。

高価格帯市場を創造する「SAKE HUNDRED」が成長のきっかけ

株式会社Clear代表の生駒龍史さんと談笑する社員
▲社内のLAB(ラボ)スペースで社員と談笑する代表の生駒さん

編集部

日本酒業界のさらなる発展を目指し、Clearさんが立ち上げたブランド「SAKE HUNDRED」について、もう少し詳しく教えていただけますか。

古川さん

ワインやウイスキーでは存在している「高価格帯市場」が、日本酒にはありません。それはすごくもったいないことで、業界の課題といえますが、同時に可能性でもあるんです。

そんな状況で世に出した「SAKE HUNDRED」は、単なる高級路線(プレミアムライン)ではなく、香りや味わいにとどまらず体験的な豊かさなどの情緒的価値を提供できる唯一のラグジュアリーブランドです。このブランドを広めていくことで、日本酒の高価格帯市場を作り上げたいと思っています。

編集部

その「SAKE HUNDRED」がスタートしてから、急成長を続けられていますね。

古川さん

ありがとうございます。私たちClearは「SAKE HUNDRED」が立ち上がったタイミングで上場を目指し、拡大路線に乗り出しました。なぜなら、日本酒産業の規模拡大に寄与するためには組織自体も大きくなる必要があるからです。

このときから、採用活動も積極的に行うようになり社員数も増えていきました。当初は厳しい状況もありましたが、社会情勢の影響で「おうち時間」を大事にするようになり、2021年には「SAKE HUNDRED」の売上が年商20億円、昨対比13倍と大きく成長することができました。

編集部

そうした成長の原動力はどこにあるのでしょうか?

古川さん

要因はさまざまですが、一つは代表の生駒の熱量と、ブランド・商品そのものへの絶対的な自信ではないでしょうか。大規模な資金調達を可能にしたのは、会社の戦略や実績への評価もあるでしょうが、やはり、生駒の日本酒に対する熱意があってのことだと思います。

彼と話をすると誰もが「この人が日本酒の未来をつくるのだろうな」と信じられるくらい、信念と熱意を持っている人間なんです。

また、社員一人ひとりが、SAKE HUNDREDのお酒が世界一美味しいと心から思い、ブランドの価値を信じています。そこに揺るぎない自信があるので、大きな壁に直面しても頑張り続けることができます。

ミッション「日本酒の未来を切り拓く」への思いは社名にも

株式会社Clear10周年記念イベントの様子

編集部

これまでのお話で日本酒に対する熱い想いを感じたのですが、御社の理念についてお聞かせいただけますか。

古川さん

Clearのビジョンは「日本酒の未来をつくる」というものです。日本酒は伝統産業の一つですから、業界の中には、次世代に守りつなげていくことを大事にされている方がたくさんいらっしゃいます。それも大事ですし、素晴らしい考え方です。

ただ、私たちがスタートアップとしてやるべきことは何かというと、「守る」のではなく「未来をつくる」ことです。それが私たちの存在意義だと考えています。

編集部

これまでの伝統を大事にしながらも、新しいことにもチャレンジしていきたいということですね。

古川さん

そのとおりです。ビジョンを達成するために掲げているミッションも、「日本酒の可能性に挑戦し、未知の市場を切り拓く」としています。

現在も美味しい日本酒はたくさんありますが、さらに美味しい日本酒を作ることに挑戦していますし、飲むだけじゃない経験をしていただくことで、楽しさや面白さも知ってもらいたい。そういった未知の市場を切り拓き、Clearが成長することで日本酒業界全体の規模を大きくしていきたいと考えています。

社名である「Clear」も、日本酒の透明感を表現すると同時に、「切り拓く」という意味が込められているんです。

編集部

他のお酒と比べて、日本酒に対してハードルの高さを感じていらっしゃる方もいるかもしれません。Clearさんは、伝統を守るのではなく攻めの姿勢で業界全体をリードすることで、日本酒の業界全体を大きくしようとされているんですね。

現在の働き方はハイブリッド。気軽に話せる環境を構築

執務室で仕事をする株式会社Clearの社員

編集部

続いて、働き方について伺いたいと思います。最近では社会情勢も変わりつつありますが、Clearさんの出社等のルール設定をお教えください。

古川さん

現在は水曜日と金曜日が出社奨励日で、毎月第1週はなるべく出社するという形にしています。それ以外は各人の判断です。業務に応じて、対面でのミーティングが必要だったり、現物の確認が必要だったりするときは出社するし、それがないときにはリモートワークでも問題ありません。おおよそ週2〜3回出社するメンバーが多いようです。

編集部

出社とリモートのハイブリッドで、基本的には個々人の裁量に任せているのですね。

古川さん

そうですね。代表は「対面でのコミュニケーションのほうがスピーディーに意思決定ができるから出社をベースにしたい」という考えを持っています。実際、2022年4月に現在のオフィスに移転する際も「来たくなるオフィス」をテーマに設計しているんです。

ただ、在宅勤務を前提に入社した社員や、地方在住の社員もいます。いきなり出社を基本にするのは難しい面もあるので、2023年2月からはバーチャルオフィスも試しています。大切にしたいのは「カジュアルにコミュニケーションできる環境」です。だとしたら、バーチャルオフィスで自由に話しかけられる空間を設けることで問題はカバーできるという考え方です。

導入してみたところ、バーチャルオフィス上でみんなが気軽に話しかけることができるので、すごくいい影響が出ていますね。

フレックスにより、代表も17時に退社して保育園にお迎えに

会議をする株式会社Clearの社員

編集部

Clearさんの勤務時間については、基本的なルールの設定はされているのでしょうか。

古川さん

弊社では、10時から17時をコアタイムとしたフレックスタイム制を取り入れています。コアタイムが少し長めなのは、ディスカッションが必要となるシーンが多く、ミーティングを設定しやすいようにしているためです。

ただ、それ以外の時間は、出社・リモートと同じく個人に任せています。17時に退社して、いったんお子さんとの時間を楽しんでから、20時に戻って仕事をするメンバーもいます。また、代表自身も毎週水曜日は17時に退社して、お子さんの保育園のお迎えに行っているんです。

編集部

柔軟な制度設計を用意していて、メンバーの皆様がうまく活用して働いているんですね。

古川さん

制度も状況にあわせてどんどんと変えていっています。業務の調整などメンバーが自分で判断できることと、たとえば子どもが熱を出して中抜けするときも「お大事に」「大丈夫だよ」とサポートして送り出す雰囲気があるので、働きやすい環境だと思います。

編集部

代表も育児に参加されているということで、育児の都合で中抜けするときなど、会社全体にフォローしていこうという雰囲気があるんですね。

飲み会を中心としたコミュニケーションの機会も多数

株式会社Clearの23年度キックオフイベントの際の写真
▲Clear23年度キックオフイベント。社外の会場を借りて、普段のチームとは異なるグループでワークショップに取り組む

編集部

Clearさんでは、社内でのコミュニケーションを活発化するような工夫はされているのですか?

古川さん

はい。Welcomeランチや社員の懇親会には補助を出していますし、社内で気軽に飲む機会も多いですね。

たとえば「今週のお酒」という制度があって、これは商品開発担当者が毎週3本の日本酒をピックアップし、メンバーはその1週間の好きなタイミングで試飲できるというものです。目的は「テイスティング能力を上げるため」なのですが、金曜日にお酒が残っていたら、おつまみも取り寄せてそのまま飲み会になることもめずらしくないんですよ(笑)。

四半期末には特別に飲み会を開催したり、2023年2月には設立10周年のイベントを開催してすごく盛り上がりました。また、社内には角打ちスペースがあり、自社製品だけでなく他社のお酒も置いていて、カジュアルに飲めるようにしています。

株式会社Clear社内で開催された飲み会
▲日常的に開催されている社内飲み会。セラーには自社ブランドのほか、研究用のお酒がいっぱい

編集部

お酒を通じてのコミュニケーションは、まさに日本酒の楽しさを体験することでもありますね。その他の制度はいかがでしょうか。

古川さん

従業員同士が感謝の気持ちを贈り合う「ピアボーナス制度」も、コミュニケーション施策の一つですね。お互いに「ありがとう」を贈りあった結果ポイントが貯まると、ランチで使用できるチケット等と交換できるんです。お酒とかけて「みんなでありがとうを醸造しよう」という意味で、「サンキューブリューワリー」と名づけています。

整体の費用を会社が半額負担!充実の健康サポート施策

株式会社Clearの夜間の執務室

編集部

その他に、Clearさんが独自に設定されている社員をサポートする仕組みはあるのでしょうか。

古川さん

週1回、オフィスに整体師が来てくれて施術を受けることができ、その費用の半分を会社が負担する「オフィス整体」は弊社独自のものだと思います。整体もそうなのですが、朝礼時に体操をする、健診の受診や休暇の所得を促すなど、「社員に健康でいてほしい」という考えを強く持っています。

WHOは「健康とは病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。弊社も体の健康はもちろん、心の健康と社会的健康も大事にしていきたいと考えています。家族との時間も大事ですし、社内やパートナー企業との人間関係も大事です。

株式会社Clearのバリューのひとつ「健康志向でいよう」とそれに紐づく行動指針「Clear Common Sense」
▲バリューのひとつ「健康志向でいよう」と、それに紐づく行動指針「Clear Common Sense」(採用サイトから引用)

編集部

社員に健康でいてほしいというのは、会社として定めている価値観なのでしょうか。

古川さん

そうですね。弊社は「未来視点で発想する」「共に成長する」「成果に執着する」「いつでも誠実に」「健康志向でいよう」という5つのバリューを掲げています。そして、この5つのバリューそれぞれに日常の具体的な行動を紐づけた行動指針「Clear Common Sense(CCS)」を定めています。

メンバーに健康的に働いてもらえるよう、制度は今後も実情に合わせて整えていきたいと思っています。すでに、小さいお子さんがいる方が気兼ねなく行事休暇を取れるよう設定したり、時間休や有給での生理休暇も導入しています。

編集部

バリューと行動指針を拝見するだけで、Clearさんが「何を大事にされているか」という部分がすごくよくわかります。それを具体的な行動指針として落とし込み、制度設定にも反映されているということですね。

バリューを体現したイベント「Win Session」

日本酒を試飲する株式会社Clearの社員

編集部

これまでお話しいただいて、Clearさんのカルチャーがすごく魅力的だと感じたのですが、そのカルチャーを体現したようなイベントなどはありますか?

古川さん

四半期末に行っている「Win Session」がまさに当てはまると思います。「Win Session」は成果を上げる仕組みの一つで、社員それぞれが「この四半期に自分がどれだけ成長したのか」「どんなことを頑張ったのか」をプレゼンするイベントです。

プレゼンの形式は自由で、もちろん真面目に報告してもいいですし、漫画のラストシーンの1コマを引用したり、自分の写真を加工する人がいたりと、個性が出てとても面白いですね。プレゼンというと堅く感じてしまうのですが、実際にはすごく盛り上がる時間なんです。

最後は、全員で投票して一番成果を出した「MVQ(Most Valuable Player of Quarter)」を決定します。MVQになった人は、商品開発担当者がピックアップしたレアな日本酒が授与されます。

編集部

MVQに選ばれると、すごく嬉しいでしょうね。普段あまり関わりのないメンバーの取り組みを知ることができるのもメリットが大きそうです。

古川さん

それはおっしゃるとおりで、やはりチームが違うとお互いの活躍が把握しづらかったりするので、そこを共有できるのは良い点ですね。あとは、純粋に頑張った自分自身を褒め、仲間と褒め合うこと自体がすごく楽しいんですね。

他のメンバーの成果を見ることで新しい発想を得て、チームで成長できる。また、コミュニケーションも活発になりますので、社会および組織の一員として健康的に働くこともできます。先ほどご紹介した5つのバリューのすべてを詰め込んだのが、Win Sessionといえるかもしれません。

全体の4割が女性。日本酒の未来を信じるメンバーが揃う

酒蔵を見学する株式会社Clear社員の写真
▲ときには、メンバーで酒蔵を見学しに行ったり、実際に造りの体験をしたりすることもある

編集部

Clearさんで働くには、やはり日本酒の知識は必要なのでしょうか?

古川さん

面談の際も「日本酒は詳しくないけどいいんですか」と気にする方が多いのですが、日本酒の知識などは採用でも考慮していませんし、お酒に強くても弱くても関係ありません。大事なのは、日本酒の豊かさや可能性を信じることができるかどうかです。

実際に、代表の生駒もビール一杯で顔が真っ赤になるくらいお酒に弱いですし、他の社員もお酒が強い人ばかりではないんですよ。

編集部

日本酒を事業として扱ってらっしゃるので男性社員が多いと思い込んでいたのですが、女性の方が4割ほどいらっしゃるんですね。

古川さん

そうなんです。お酒の知識の有無やお酒が強いかどうかが関係ないのと同様に、採用時に性別で判断することは一切ありません。むしろ、直近では女性の採用比率が高くなっているんですけど、それもたまたま「この人と一緒に働きたいな」という方が入社されただけですね。

採用ではスキル・カルチャーのフィットをともに重視

お話を聞かせていただいた株式会社Clearコーポレート 人事/カルチャーチームの古川理恵さん

編集部

Clearさんが、採用時に重視しているポイントはありますか?

古川さん

会社によって考え方は違うでしょうが、弊社はスキルフィットとカルチャーフィットをともに重視しています。今まさに必要なポジションだから中途採用をしているわけで、スキルフィットはとても重要です。また、カルチャーが合わない人が加わったときにチームに与える影響は計り知れませんから、その点も採用時には確認させていただいています。

編集部

カルチャーにフィットする人とはどんな人でしょうか?

古川さん
先ほどお話しした5つのバリューと、それに紐づくClear Common Senseが身についている人、もしくは大事にしたいと意識してくれる方は、弊社のカルチャーにフィットすると思います。もちろん、ビジョンやミッションに共感していただけるかという点も非常に重要です。

編集部

最後に、Clearさんに興味をもった読者の方に、メッセージをお願いします。

古川さん

私たちは、メディアの会社でも、日本酒ブランドの会社でも、マーケティングの会社でもなく、「日本酒の未来をつくる」会社です。日本酒の可能性を信じられる方、日本酒の豊かさや美味しさを世界に届けたいと思う方は、ぜひ一緒に働きましょう!

編集部

本日お話しいただいた内容から、Clearさんがどのような想いで日本酒に関連する事業を展開されているか、またビジョンを叶えるためにメンバーをどうサポートされているか、よくわかりました。ありがとうございました。

■取材協力
株式会社Clear:https://clear-inc.net
採用ページ:https://clear-inc.net/recruit