エンジニアがやりがいを感じながら、成長できる環境を作っている企業にインタビューするこの企画。今回は、「宅急便」でおなじみの、ヤマト運輸株式会社にお話を伺いました。
進化を続け、「次の運び方」をつくるヤマト運輸株式会社
ヤマトグループは、1919年の創業以来日本の物流インフラを支えてきた、誰もが知る歴史ある企業です。
1976年には、大口の荷物をまとめて配送することが合理的とされていた時代において、小口の荷物を個人宅まで配達するという革新的な「宅急便」を発売し、今でも宅配業界において圧倒的なシェアを誇っています。
イノベーションを大事にするヤマト運輸株式会社は、時代の変化に合わせて進化を続けてきました。現在も、ユーザーの声に耳を傾け、テクノロジーの力を最大限に生かすことで、時代の先をゆく運び方を作り出すことを目指しています。
会社名 | ヤマト運輸株式会社 |
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住所 | 東京都中央区銀座2-16-10 |
事業内容 | 「宅急便」など各種輸送に関わる事業 |
設立 | 2005年3月 ※ヤマトグループ(大和運輸株式会社)の創業は1919年11月 |
公式ページ | https://www.kuronekoyamato.co.jp/ |
働き方 | リモートワーク、フレックスタイム制度※事業所によって異なります |
今回は、革新を続けるヤマト運輸株式会社のデジタル部門の強みや、システム開発へのこだわり、エンジニアの皆さんの働き方にスポットをあてて、デジタル推進部のマネージャーである鈴木さんと、プロジェクトマネージャーを務める北澤さん・多田さんにインタビューさせていただきました。
目指すのは、高い付加価値を生み出すエンジニア集団
編集部
はじめに、ヤマト運輸さんでエンジニアの育成を担当されている、鈴木さんと北澤さんにお話をお伺いしたいと思います。
まずは簡単に、お二人がこれまでどのようなお仕事をされてきて、今どのようなことをされているのか教えていただけますか?
鈴木さん
私はもともと、2005年にグループ会社のヤマトシステム開発に新卒で入社し、そこでエンジニア、フィールドSE、プロジェクトマネージャーの業務を経験しました。その後2022年にヤマト運輸へ出向となり、現在はエンジニアの育成を含めたデジタル部門の組織力強化に取り組んでいます。
北澤さん
私は、2007年にヤマトシステム開発に入社し、エンジニアやフィールドSEの経験を積んだのちに、2022年にヤマト運輸へ出向となり、鈴木と同じチームで仕事をしています。
編集部
お二方とも、出向という形でヤマト運輸さんでお仕事されているのですね。
鈴木さん
そうですね。元々ヤマト運輸のシステムは、主にヤマトシステム開発が開発・運用を行っていました。
しかし、これからの時代は、事業やプロダクトへの理解を深めたうえで、スピード感を持って付加価値の高いシステム開発を行っていく必要があるというところから、ヤマト運輸本体にデジタル組織が生まれることとなりました。
それに伴い、私たちを含めて、総勢500人程度の社員が、ヤマトシステム開発からヤマト運輸へ出向となりました。
もちろん、ただ開発するメンバーの所属が変わったというだけでは意味がありません。事業会社として価値提供できる組織を作るということをミッションとして、採用や育成活動などに取り組んでいます。
独自開発のエンジニア育成ツールで個人のスキルを見える化
編集部
エンジニアの育成活動とは、具体的にどのようなことに取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
鈴木さん
まず着手したのは、スキルの可視化です。個人のスキルを定量的に測って、強みや弱みを可視化できるようなツールをオリジナルで作って、それぞれの現場で運用してもらうということをはじめました。
編集部
ヤマト運輸さん独自のツールを使用されているのですね。そのツールで評価の対象となるスキルは何要素くらいあるのですか?
鈴木さん
全部で19要素ですね。事業会社として必要な「企画力」を測る要素が12個と、「システムの開発・運用スキル」を測る要素が7個です。
編集部
ヤマト運輸さんならではの、求められるスキルがあれば、例を教えてください。
鈴木さん
「企画力」に関しては、例えばファシリテーション能力や現状の業務分析力などがあります。弊社は会社の規模が大きく、関係者も多いため、合意形成してプロジェクトを前に進めていくスキルが重要となってきます。
「システムの開発・運用スキル」に関しては、一般的なシステム開発・運用に必要なスキルと同様のものではありますが、プロダクトの理解や事業理解というのも評価対象としています。
編集部
単純に手を動かせばいいということではなく、事業全体を理解した上でシステム開発を進めていくことが求められているというわけですね。
1on1による定点観測でスキルアップを支援
編集部
その人材育成ツールは、各組織でどのように運用されているのでしょうか?
北澤さん
まずは年に1回、スキルを評価して自分の現在地点を把握したら、それを踏まえて「次の1年間でどのレベルを目指すのか」「そのために何をするのか」という目標を設定します。
そのうえで、四半期に1回のペースで、各組織内で取り組み状況のレビューを実施しています。
編集部
マネージャーと1on1を実施するのでしょうか?
北澤さん
1on1の相手はマネージャーに限らず、その人と向き合える上司・先輩であれば誰でも良いという運用にしています。例えば1つ上の先輩でも問題ありません。
編集部
その人をしっかり理解できている人であることが大事だということですね。
北澤さん
そうですね。組織や人によって育成の方向性や評価にばらつきが出ないように、そのツールの中では、目指すべき理想の姿というのも具体的な指標として示しています。
「自分は今どこの位置にいるのか、次に上げるには、具体的に何をやらなくてはいけないのか」ということを誰でも同じものさしで評価できる仕組みになっています。
編集部
すべての社員が、必要なスキルや次のステップに進むための基準を共通辞書として持っているというわけですね。
実際に運用を開始されてまだ1年ほどかと思いますが、社員の皆さんからはどのような声が聞こえてきますか?
北澤さん
感覚的にしか評価できていなかった社員のスキルを、しっかりと指標で測れるようになったという点は、成果だと思います。
「その人の伸びているところを把握できてよかった」「できていると思っていたことも、理想の姿の指標と照らし合わせるとまだまだだった」など、スキルの評価が可視化・標準化できるようになったという声が実際にあがってきています。
編集部
効果的に人材育成を行うための仕組みができたので、これからその仕組みにしたがって、育成を進めていく段階ということなのですね。
ユーザーのことを考えた提案で、価値の高いシステムを作る
編集部
ここからは、エンジニアとしてシステムの開発・運用を担当されている多田さんにお話をお聞きしたいと思います。多田さんは現在、どのようなお仕事を担当されているのでしょうか?
多田さん
「クロネコメンバーズ」という個人向け会員サービスのシステムを担当しています。例えば、お荷物を受け取る日時を変更する画面を作ったり、お荷物のお届け予定日を通知する機能を開発しています。
編集部
多田さんは中途でヤマト運輸さんに入社されたとお聞きしていますが、開発現場の雰囲気や仕事の進め方などで、何か前職と違うと感じることはありますか?
多田さん
前職はSIerだったので、事業会社の方が決定したことを実現するというのがミッションでしたし、「作る」ということに重きが置かれていました。
今は、ヤマト運輸にとって必要なことは何かを自分で考え、提案することも大事なミッションなので、以前よりビジネスの視点を持って仕事ができていると感じています。
編集部
まさに、先ほど鈴木さんがおっしゃっていた、「事業会社として価値提供する」ということですね。
ビジネス視点での提案が実際にシステムに反映された事例があれば教えてください。
多田さん
例えば、東京マラソンやサミットなど、大きなイベントがあるときは、交通規制などによりどうしてもお荷物の配送が遅れてしまうケースがあります。
その遅延情報をホームページで公表するという対応をとっていますが、それだけではユーザーに情報が行き届かないことがあるため、クロネコメンバーズの通知機能を改修することになりました。
当初の要件は、「対象者にメルマガを送る」という単純なものでした。しかし、大雨や地震といった災害発生時などでは、状況によって対象が異なる地域や商品などの条件をその都度エンジニアが登録する必要があり、スピーディーに対応できないという課題がありました。そのため、エンジニアを介さずとも、担当部署で条件設定すればすぐに通知ができる専用の画面を作成することを提案し、実現しました。
編集部
もともとの要件に従ってただ作るということではなく、ユーザー目線でより良いサービスを考えながら、それを実現されたということですね。
多田さん
作って終わりではなく、作ったサービスがどのように使われるかまで見守ることになるので、ユーザーが使いやすいシステムを提案するという癖が身に付いたと感じています。
セールスドライバーの「1秒」へのこだわり!運転日報開発秘話
編集部
ほかにも、ユーザー目線で細部にこだわり、開発を行った事例があれば、教えてください。
鈴木さん
エンドユーザーではないのですが、現場のセールスドライバー目線での開発を行ったという事例を1つ紹介させてください。
2017年頃の話ですが、全国の集配車に、「Neco-Assi(ネコアシ)」と呼ばれる通信機能付きの車載端末を搭載するというプロジェクトがありました。弊社は、「安全第一、営業第二」の理念を掲げています。1日の運行状況のデータを車載端末経由で収集し、そのデータをドライバーの安全管理に役立てています。
その車載端末の導入に合わせて、ドライバーが1日の終わりに毎回出力する運転日報を、自動通信化しました。
それ以前は、ドライバーが配達を終えて営業所に戻ると、携帯しているポータブルポスと呼ばれる端末から、手動で通信を行っていました。車載端末導入によってできた通信ネットワークを使えば、人が作業する前にシステムが先回りして対応できるのではないかと考え、自動化の実現に至りました。
編集部
ほんの数分、数秒でも、毎日の積み重ねを考えるとかなり大きいですよね。
ヤマト運輸(同席の男性)
そうですね。セールスドライバーは全国に約6万人ほどおり、たった1秒違うだけでも仕事に与えるインパクトは大きいです。物流の効率化が社会的な課題となっている中で、いかに事務作業を削るかというのは、私たちのミッションでもあります。
このように、システムとビジネスの両面を理解したうえで、提案し、実践できるというのは、やはり事業会社の内部にあるデジタル組織だからこそできることかなと考えています。
「使命感」と「助け合い精神」がチーム力を高めるカギ
編集部
お仕事をされている中で感じる、ヤマト運輸さんならではのカルチャーや、社員の皆さんの特徴があれば教えてください。
鈴木さん
「自分たちは社会のインフラを支えている」という使命感を持ち、その社会貢献性にやりがいを感じているメンバーが多いと思います。
共通の想いが存在しているため、仲間意識も強く、協力し合うということが当たり前に行われています。
その助け合いの精神がチーム力を高めていると思いますし、ヤマト運輸の魅力だと感じます。
編集部
実際に、社員の皆さんの使命感や、助け合い精神を感じた具体的な体験談があれば、教えてください。
北澤さん
以前私が携わった案件に、新サービスを開発するというプロジェクトがありました。
基幹システムの改修が必要で、携わるメンバーも100人規模という大きなシステム開発でしたが、サービス設計が固まってからシステムリリースするまでの期間が、3か月ぐらいしかありませんでした。
私は、プロジェクトマネージャーとして、この難易度の高いプロジェクトを運営しなければならなかったのですが、関係するさまざまなチームのメンバーが、自主的に必要な作業を洗い出し、改修作業やシステムテストもスムーズに対応してくれて、本当に助かったのをよく覚えています。
そのチーム力により、短い期間でも無事にサービス提供まで実現することができました。
編集部
3か月というのはかなりのスピード感が必要ですよね。ヤマト運輸さんのチーム力が、プロジェクトを成功に導いたということですね。
チーム力を発揮し、コロナ禍にスピード導入を成し遂げた「置き配」対応の配送商品「EAZY」
編集部
そのほかにも、チーム力が発揮された事例があれば、紹介していただけますか?
多田さん
コロナ禍の2020年6月に発売した、「置き配」も選択できるEC向け配送商品「EAZY(イージー)」も、同じようにチームが一致団結して、短い期間でリリースさせたプロジェクトです。
元々コロナ禍以前から、EC化の進展に伴って多様化する受け取りニーズに対応するため、新しい配送商品の開発を進めていました。そのような中、コロナ禍により非対面で安心な配達を希望するお客さまのニーズが顕在化したため急きょ発売を早めることになりました。
編集部
プロジェクトの規模感を考えると、かなりのスピード感だと思いました。社員の皆さんが一丸となって動いたからこそ実現できたというわけですね。
リモートで柔軟に働く。エンジニアが働きやすい環境も魅力
編集部
少しテーマを変えて、エンジニアの皆さんの働き方について教えてください。ヤマト運輸さんでは、リモートワークも導入されているとお聞きしていますが、どのくらいの頻度で出社されているのでしょうか?
多田さん
人によりますが、多い人で、週に1回から2回程度出社しているというイメージです。
開発に入ると、出社する必要性も減ってくるので、人によっては、月に1回から2回程度しか出勤しない方もいます。
編集部
業務に支障がなければ、柔軟に調整できるということですね。勤務時間についてはどのような運用ルールがあるのでしょうか?
多田さん
フレックスタイム制度を採用しています。
10時頃から業務を開始する人が多いですが、夜間作業があった場合には翌日の出勤時間を遅らせるなど、状況に応じて柔軟に調整しています。
編集部
リモートワークを行う方が多い中で、他のメンバーとのコミュニケーションはどのように取られているのでしょうか?
多田さん
オンラインコミュニケーションツールを活用して、不便さを感じないコミュニケーションが実現できています。チームによっては、朝会を行うなどのルールを作って運用しています。
編集部
ヤマト運輸さんでは、エンジニアの皆さんが場所や時間を自由に選択しながら働ける環境も整っているのですね。
これからのヤマト運輸を共に創ってくれる方を募集
編集部
最後に、ヤマト運輸さんに興味を持たれた方に向けて、採用に関するメッセージをお願いします。
鈴木さん
ヤマト運輸は、長い歴史がある会社なので、昔ながらの会社という印象があるかもしれませんが、チャレンジ精神をもって新しいことにも積極的に取り組んでいます。
また、先輩や直属の上司はもちろん、経営陣も含めて、意見が言いやすい風通しの良さも魅力のひとつです。
そして、事業会社としてよりよいサービスが提供できるよう、組織力の強化にも取り組んでいます。
事業会社の中で働く魅力はこれまでもお伝えしましたが、開発企画から運用まで、さまざまな業務を経験できます。こうした環境に興味を持っていただけた方は、ぜひご応募いただければと思います。
これからのヤマト運輸を一緒に作っていただける方を募集しています!
編集部
ありがとうございます。「次の運び方をつくる」という強い想いのもと、新しいことにも積極的にチャレンジされているヤマト運輸さんは、エンジニアの皆さんにとってとても魅力的な環境なのではないかと感じました。
本日は、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
■取材協力
ヤマト運輸株式会社:https://www.kuronekoyamato.co.jp/
採用ページ:https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/corp/recruit/