地域留学を通じて教育と地域社会のシステムを「魅力化」する一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム:地域留学で実現する教育と地域の魅力化

SDGsの実現に向けた事業を展開し、若手社員が生き生きと活躍できる職場づくりを進めている企業や団体にインタビューする本企画。今回は、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームの取り組みについてお話を伺いました。地域や教育の魅力を高める活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する同団体の取り組みに迫ります。

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームが実現する「地域みらい留学」

「意志ある若者にあふれる持続可能な地域・社会をつくる」というビジョンを掲げ、高校生が別の地方の高校へ越境入学して学ぶ「地域みらい留学」プログラムを提供している一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム。このプログラムは、生徒個人の学びだけでなく、受け入れ地域全体の魅力向上を目指しています。熱意ある職員が活躍し、特に20代からジョインするメンバーが多く、若い力が推進力となっています。

会社名 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム
住所 島根県松江市東本町二丁目25-6みらいBASE2階
事業内容 ・地域みらい留学事業
・コーディネーター採用・配置・育成支援事業
・評価事業
・しまね事業
・都道府県伴走事業
・みらいハイスクール事業
設立 2017年
公式ページ https://c-platform.or.jp
働き方 ・ハイブリッド勤務(出社+リモートワーク)
・スーパーフレックスタイム制

今回は、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームのみらいハイスクール事業部マネージャーである小谷祐介さんと、経営企画部(採用担当)マネージャーである黒谷直子さんに、子どもの教育環境や地域づくりなどSDGsに直結する事業内容、若手スタッフの活躍についてお話を伺いました。

本日お話を伺った方
一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームのみらいのハイスクール事業部マネージャーである小谷祐介さん

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム
みらいハイスクール事業部マネージャー

小谷 祐介さん

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームの経営企画部(採用担当)マネージャーである黒谷直子さん

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム
経営企画部(採用担当)マネージャー

黒谷 直子さん

「地域みらい留学」が提供する高校生への多様な学びの機会

地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)に参加した高校生たち
▲地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)に参加した高校生たち

編集部

はじめに、SDGsというテーマでお話を伺いたいと思います。地域・教育魅力化プラットフォームさんの事業は、SDGsに直接関連していると思われますが、具体的な事業内容について教えていただけますか。

小谷さん

「地域みらい留学」という事業があります。これは生徒が都道府県の枠を越えて、全国各地の魅力ある公立高校に進学できる仕組みです。都心の偏差値偏重の価値観から脱却し、自分の興味や関心を基準に「学びたい場所」「やってみたいこと」から、主体的に進路を選択できるのが特徴です。

編集部

子ども達に多様な学びの機会が提供されているわけですね。どのくらいの方が参加しているのでしょうか。

小谷さん

2024年3月現在、受け入れ側の地域の高校は100校を超えました。2023年度4月進学の1年生では、700名以上の生徒が地域みらい留学生として高校進学を選択しています。プログラムの認知度が大きく向上していると実感しています。

「みらいハイスクール」:全国の学校と企業をつなぐ新たなネットワーク

地域・教育魅力化プラットフォームの隠岐の島町への地域みらい旅(みらたび)
▲地域・教育魅力化プラットフォームの隠岐の島町への地域みらい旅(みらたび)

編集部

地域みらい留学以外にも、取り組んでいる事業はありますか。

小谷さん

現在、「みらいハイスクール」という事業を立ち上げて、地域での学びをさらに発展させる計画を進めています。

私達が行っている地域みらい留学は、参画する高校だけでなく、その高校がある地域の人・もの・こと、地域課題も全て教育資源と捉えています。「地域丸ごと学校だ」という考え方で、生徒たちの教育環境を整備しているのが特徴です。

地域みらい留学では、地域外から生徒が入ってくることで、受け入れ地域の高校の存続にも繋がるなど、持続可能性の面でのメリットもあります。

「みらいハイスクール」は、地域留学の受け入れを含めた高校魅力化を先進的に進めている高校や地域同士をネットワーク化する試みです。各学校・地域の独自の資源や教育資源を共有し、境界を越えた多様な学びの場を創出することを目指しています。

このネットワークに都市部の高校や企業、大学、卒業生を含めた大人たちが加わることで、地域の枠を越えて多様なロールモデルに出会える仕組みづくりを進めています。

様々な「出会い」を通じて、留学生だけでなく地元の高校生もチャレンジする機会を創出することが私たちの狙いです。

編集部

地域みらい留学のノウハウや繋がりを生かして、都会から地域への一方的な流れだけでなく、より広範囲にファクターを繋げ、新たな価値を創出する取り組みですね。

小谷さん

はい。誰もが生まれる場所を選べるわけではありませんが、学ぶ場所や相手は選択できると考えています。日本のどの地域にいても「自分もこんなチャレンジをしていいんだ!」と思ってもらえる、そんな世界を目指しています。

編集部

「みらいハイスクール」は、現在どのような段階にあるのでしょうか。

小谷さん

2023年度より、地域の高校7校と都市部の高校1校をみらいハイスクールモデル校とし、協働しながら構想実現に向けて歩み始めました。2024年度は協働する学校や企業も増える予定で、本格的なスタートの年となります。

編集部

具体的には、どのような取り組みを想定していますか。

小谷さん

わかりやすい例を挙げると、ネットワーク化している学校の生徒が、学びたい場所で学びたいときに自由に学校間を移動できる状態を目指しています。この考え方を私たちは「自由越境圏」と呼んでいます。

例えば山間部の学校の生徒が海洋資源について学びたいとき、ネットワーク内の離島にある学校で海について学ぶことができます。

自由越境を目指す取り組みの一つとして、2023年度に「地域みらい旅」という短期の越境プログラムをモデル校内で開発しました。夏に全国5ヶ所で実施し、多くのモデル校の生徒が越境を体験しています。また、教員も生徒とともに越境体験をするという新しい試みも同時に実現しています。

パーソルホールディングスとの連携:高校生向けキャリア探究プログラムの展開

地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)に参加した高校生たち
▲地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)に参加した高校生たち

編集部

学校同士だけでなく、企業とのネットワーク化も進んでいるのでしょうか。

小谷さん

2023年に、人材サービス会社のパーソルホールディングスさんとパートナーシップを結びました。キャリア探究という観点で、オンラインプログラムを共同開発しています。

パーソルホールディングスさんには多様な働き方をされている方々とのつながりがあります。オンラインで生徒たちにそういった方々と接点を作り、講義を受けたり、どんな生き方をしてきたかを聞いたりする機会を提供しています。これにより、生徒たちが働くことや生きることについて、自分なりに考えていく時間を持つことができると考えています。

具体的には、半年間にわたり生徒たちはオンラインで「自分はどう働きたいのか」、「働くとは何か」について考える授業を受けます。そして最後に、東京のパーソル本社で開催される発表会に向けて、初めて対面で集まりました。

編集部

最近では、高校におけるキャリア教育の重要性がより高まっていますね。人材サービス会社の強みを活かした内容で、参加した生徒たちにとって貴重な経験になったのではないでしょうか。

発表会はどのような様子でしたか?

小谷さん

発表会では、生徒たちが授業を通じて自分がどのように考えを深めたか、今後どのようにキャリアを考えていくかについて発表し合う場となりました。

活動の原点:島根県隠岐島前高校での「高校魅力化」の取り組み

島根県隠岐諸島の雄大な自然
▲島根県隠岐諸島の雄大な自然

編集部

地域・教育魅力化プラットフォームさんの活動理念や背景についてお聞かせください。

黒谷さん

2008年に、島根県の隠岐島前高校で始まった「高校魅力化プロジェクト」と海士町での人づくり・地域づくりの取り組みが、私たちの活動の源流です。

全国的に人口減少が課題となる中、海士町では現在、公的機関の人口予測を大きく上回る人口を維持しています。さらに2050年に向けて、生産人口の割合が増加する兆しも見えています。

編集部

離島という条件を考えると、素晴らしい成果ですね。

黒谷さん

これは海士町が15年以上、高校と地域の魅力化に取り組んできた結果です。

私たちの大きな目標は、単に高校時代を過ごすだけでなく、将来地域の担い手となる意志を持つ人材を育成することです。そのためには、移住を前提とせず、滞在を通じて若者に選ばれる地域づくりが重要です。

若者に選ばれない地域には持続の可能性はないのです。地域に人を集めるには、実社会で魅力的な課題を見つけ、挑戦できる環境を整える必要があります。意志ある若者の育成と地域づくりが現在の大きな課題です。

編集部

生徒の留学サポートと地域の活性化を同時に進めているのですね。海士町以外の地域でも同様のプロジェクトが進んでいますか?

小谷さん

みらいハイスクールのモデル校として協働している学校では、地域と学校の連携が強く、皆さん前向きです。地域の更なる活性化や、地域での学びをより魅力的にするための方法を日々議論しています。

編集部

今後の地域の発展が楽しみですね。

「旅する高校生」の誕生:地域みらい留学がもたらす学びの多様性

隠岐の島町にて、地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)で出会った牛▲隠岐の島町にて、地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)で出会った牛

編集部

地域・教育魅力化プラットフォームさんのプロジェクトを通じて成長をした生徒さんの例を教えてください。

小谷さん

例はたくさんありますが、最近聞いた生徒のエピソードをお話させていただきます。

東京都に住んでいる生徒で、「このまま東京の高校に進学していいのか」と考えたそうです。自然や昆虫などの生き物が好きだったこともあり、地域みらい留学に興味を持ち、島根中央高校に3年間の地域留学を決めました。

島根中央高校は「みらいハイスクール」のモデル校でもあるため、この生徒は短期の越境プログラムにも参加し、山形県での体験もしています。

山形県遊佐町の遊佐高校短期プログラムに参加したことがきっかけで、今度は自ら高知県へ一人旅をしたそうです。高知でヒッチハイクをしていたら、ある町の町長の車に偶然乗せてもらい、興味深い話ができたと聞きました。

さらに、短期プログラム参加時は高校1年生でしたが、「地域みらい留学365」への希望もあり、山形県小国町の小国高校に高校2年で1年間留学することになりました。

東京から島根、島根から山形県遊佐町、そして様々な旅を経て山形県小国町へと、「旅する高校生」とも呼ぶべき生徒が現れたことは、私たちにとっても喜ばしいことです。

編集部

地域・教育魅力化プラットフォームさんの事業を活用して、生徒自身が様々な場所に行く力とコミュニケーション能力を身に付けているんですね。

小谷さん

私たちの予想を上回る形で私たちのプロジェクトを活用してくれて、驚いているところでもあります。

編集部

大人の想像を超えて、子どもたちが成長している例ですね。

島根を拠点とした活動展開:リモートワークで全国に広がるチーム体制

地域・教育魅力化プラットフォームのオフィス

編集部

地域・教育魅力化プラットフォームさんで働いているメンバーの皆さんについて伺います。住んでいる場所は、多様なのでしょうか。

黒谷さん

私は今、島根県松江市に住んでいます。メンバーの8割ぐらいは島根県に住んでいますね。松江に通える範囲内で暮らしています。あとの2割ぐらいは東京や佐賀に拠点を置きながらリモートを中心に勤務しています。

小谷さん

私は島根県雲南市です。家を買って移住しました。

編集部

現在、全体で何人のメンバーがいらっしゃるのでしょうか。

黒谷さん

2024年3月現在、35人ぐらいです。設立当初から比べるとメンバーは増え続けています。私が入社した2021年には15人ぐらいでしたが、今や倍以上になっています。このペースでの成長は非常に印象的です。

求める人材像:教育経験よりも変革への情熱を重視

隠岐の島町にて、地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)で訪れた岩倉の乳房杉(ちちすぎ)
▲隠岐の島町にて、地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)で訪れた岩倉の乳房杉(ちちすぎ)

編集部

メンバーの皆さんは、教育業界の経験がある方が多いのでしょうか。

黒谷さん

教員や教育業界を経験していた人は多くありません。人材系の企業をはじめ様々な業界で働いていた方が私たちのテーマに関心を持ち、それぞれの強みを生かして活動している印象です。

教育の経験が必須な団体ではないんです。むしろ、私たちのテーマについて強い関心があり、現在の教育のあり方や日本の地域を変えたいという思いがある方なら、誰でも大歓迎です。

編集部

小谷さんは、どういう思いを持って地域・教育魅力化プラットフォームにジョインされたのでしょうか。

小谷さん

私は、教育系メディアでのキャリア経験が長いです。私立中学校や私立高校の広報支援、入試設計のアドバイス、外部からのコンサルタント的な学校支援を担当していました。

その後、学校の内部で働きたいと考え、学校法人に転職しました。約2年間の在籍で目標を達成できたため、今度はより大きな枠組みで教育業界を変えていくことやシステムづくりにチャレンジしたいと考えていました。そんなときに出会ったのが、地域・教育魅力化プラットフォームでした。

最初は、「東京からできることを手伝おう」という気持ちでしたが、気が付いたら松江に移住することになっていました(笑)。

若手が活躍する職場環境:メンバーの平均年齢は30代前半

地域・教育魅力化プラットフォームのオフィス
▲地域・教育魅力化プラットフォームのオフィス。壁・床はスタッフたちで手作り

編集部

地域・教育魅力化プラットフォームさんでは、20~30代のメンバーも活躍していますか。

黒谷さん

はい、ここ数年で若手が増えています。現在、地域・教育魅力化プラットフォームのメンバーの平均年齢は30代前半です。

以前は、様々な仕事経験を持つ30代半ばの人たちが中心でしたが、最近は20代の方も多く入ってきてくれるようになりました。学校との渉外活動やマーケティングの分野にも力を入れており、若い力に支えられています。

編集部

若いメンバーも、教育業界に関心があったり、大きな事業に関わりたい気持ちがあったりするのでしょうか。

黒谷さん

そうですね。みんな大体ポジティブな姿勢を持っています。

小谷さん

教育をより良くしたい、生徒により良い環境を提供したいという思いを、ほぼ全員が持っています。心に熱い想いを抱いているメンバーばかりですね。

成長の機会:OJTを中心とした挑戦的な職場環境

地域・教育魅力化プラットフォームの地域みらい旅(みらたび)で行った花火の様子

編集部

若手メンバーのスキルアップについては、何か制度はありますか。

黒谷さん

業務教育はOJTが基本です。教育制度に沿ってスキルを学ぶというより、仕事をする上での裁量を持たせることで成長していくイメージですね。

地域・教育魅力化プラットフォームでは全員が未経験の領域という仕事がほとんどなので、日々チャレンジの連続です。失敗を恐れずにアクションを起こし、変化する環境の中で、成長するフィールドをご用意できると考えています。

編集部

20代でジョインしてくれたメンバーで、未経験から成長をした方のエピソードをお伺いできますか。

黒谷さん

新卒で入職したメンバーがいます。彼は大学時代、海外に留学していましたが、コロナ禍で帰国せざるを得なくなり、帰国後にインターンとして一緒に働き始めました。大学生で経験も浅い状況でしたが、学校や自治体への営業活動を行っていたのを覚えています。

その彼が今では、町長や役場の課長、校長先生と自信を持って話をし、「この地域には、地域みらい留学が必要です」と新しい仲間を増やしているのは素晴らしいと感じています。

編集部

全くセールスは未経験だったところから、学校や自治体などの大きな組織への営業活動ができるようになったんですね。

黒谷さん

そうですね。彼は事前に議会の議事録などを読み込み、「こういう話をしていましたよね」とストーリーを組み立てて、事業を進めてくれています。現在は新規営業チームの重要なメンバーとして活躍しています。

国全体の教育システムを変革する可能性:魅力的な仕事の醍醐味

地域・教育魅力化プラットフォームの2024年1月の集合写真

編集部

最後に、この記事を読んで地域・教育魅力化プラットフォームに興味を持った方へ、採用に関するメッセージをお願いします。

黒谷さん

地域・教育魅力化プラットフォームは、日本で唯一無二の事業を展開しています。島根という拠点から、国全体のシステムを変える可能性を持つ事業を行っているので、地方から大きなスケールで、しかも迅速に働きたい方は、ぜひ一度お話ししましょう。カジュアル面談でも構いませんので、いつでもご連絡ください。

小谷さん

大規模な事業で、個人の裁量も非常に大きく持てる職場です。環境の変化が激しい中で、「では、どうしていくか」と柔軟に考えられる方には、非常に魅力的な仕事だと思います。他にはない独自性のある仕事なので、ぜひお問い合わせいただければ幸いです。

現在、教育現場には「教育や学校の仕組みをもっと良くしたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。私たちの事業は、教育全体の枠組みやシステムを作るプラットフォーマーとしての役割が中心です。地域・教育魅力化プラットフォームでは、そうした思いを実現できる可能性が大いにあります。

編集部

教育の枠組みづくりから取り組めるということですね。ちなみに、島根県の住み心地はいかがですか。

小谷さん

島根は非常に素晴らしいです。私が住んでいる雲南市は山深く、自然が豊かです。自然が好きな方にはおすすめです。黒谷が住んでいる松江市も本当に住みやすい環境だと思います。

編集部

子どもたちのためにも、地域のためにも魅力を広げていく、地域・教育魅力化プラットフォームでは、まさに未来を創造するための唯一無二の仕事を行っていることがわかりました。本日は、ありがとうございました。

■取材協力
一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム:https://c-platform.or.jp
採用ページ:https://c-platform-or-jp.webnode.jp/%20%E6%B1%82%E4%BA%BA%E6%83%85%E5%A0%B1%EF%BC%92/