企業の新しい働き方をお伝えするこの企画。今回は、主にプラスチック製品の製造を行うアスカカンパニー株式会社にお話を伺いました。
アスカカンパニー株式会社とは
アスカカンパニー株式会社は、プラスチック製品の製造を筆頭に、周辺機器の開発や提供、セミナーの開催、プラスチック周辺のメンテナンスサービスなどを行っています。
アスカカンパニー株式会社は、子育てサポートなど女性が働きやすい体制づくりを積極的に進め、現在では管理職に占める女性の比率が32%と、女性の活躍が目覚ましい企業として注目を集めています。
会社名 | アスカカンパニー株式会社 |
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住所 | 兵庫県加東市河高4004番地 |
事業内容 | プラスチック製品の開発・製造・販売 測定・研究機器・工場自動化に関わる開発・製造・販売・サービス 金型・装置のメンテナンスサービス セミナーによるノウハウの提供 |
設立 | 1968年2月 |
公式ページ | https://askacompany.co.jp/ |
今回は、 取締役管理本部長・門脇さんと管理本部 HRグループ・清水さんにインタビューを実施。デジタルの活用や常に代行者を置くことによる時短勤務のサポート体制、社員の成長を促すきめ細かな面談や研修などについて、お話を聞かせていただきました。
プラスチック製品の製造ほか、周辺機器の開発などを行う
▲アスカカンパニーが製造しているプラスチック製品
編集部
最初に、アスカカンパニーさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
清水さん
アスカカンパニー株式会社は1968年に設立され、2023年度で56年目を迎えました。企業理念として「人々が成長し社会に貢献できる場の提供」を掲げ、よりよい人材の育成に力を注いでいます。
弊社の主な事業はプラスチック製品の製造です。『プッチンプリン』のカップや『ハーゲンダッツ』の蓋などの食品容器を中心に、ステーショナリー用品や赤ちゃん用品、生活用品のプラスチック製品を生産しています。
その他の事業としては、製品の試験や測定に必要な機器を開発し、受託測定サービスとして展開しているほか、カメラ検査や成形技能、IoT・AIの活用において蓄積されたノウハウをセミナーの形でご提供しています。
また、プラスチック生産時に使用する金型など、プラスチック周辺に特化したメンテナンスサービスを同業他社向けに展開しています。
編集部
ありがとうございます。プラスチック製品の製造を中心に、製造や検査時に使用される機器の開発や提供、メンテナンス、そうした知見をもとにしたセミナーなど、プラスチック製造分野にて広く深く事業を展開されているのですね。
女性管理職の比率32%。時短勤務サポート体制で実現
▲アスカカンパニー本社Nサイトエントランス
編集部
アスカカンパニーさんでは、女性が多く活躍されていると伺っています。現在御社で働いている女性や女性管理職の割合を教えていただけますか?
門脇さん
2023年5月時点での従業員数は男性が145人、女性が107人で、男女比は6対4です。管理職は総勢25名で、そのうち女性は8名、32%の割合です。
編集部
2022年の全国調査では女性管理職の割合が平均9.4%※なので、アスカカンパニーさんの女性管理職の比率は非常に高いですね。それを実現できた背景を教えていただけますか。
※帝国データバンクが2022年8月30日に行った「女性登用に対する企業の意識調査」より(帝国データバンクのサイトから引用)。
▲アスカカンパニー本社Sサイト
門脇さん
弊社は兵庫県加東市に本社と本社工場があるのですが、加東市は兵庫のローカルエリアといわれる地域で、雇用不安が常にありました。そのような地理的要因もあり、15年ほど前から、将来的に人の確保が難しくなっていく中で、会社の規模を大きくして人員が必要になった時にどうすべきかを考えていたんですね。
そこで、働きたいけれども子育て中などで時間的制約があり、パートやアルバイトをしている女性たちが正社員として働ける制度があれば、女性の力を借りて会社をまだまだ大きくできると思いました。それから、女性が働きやすい就業環境を作る取り組みを始めました。
1つの仕事に主担当と副担当の2名を配置し、業務の属人化を防ぐ
▲アスカカンパニーさんの打ち合わせ風景
編集部
時間制約がある方は時短勤務を選択されていると思いますが、現在時短勤務で働いている女性社員は何名いらっしゃいますか? また、会社として時短勤務の社員をサポートする体制はありますか?
門脇さん
現在時短勤務の女性は10名で、来週1人復帰するので11名になります。過去に時短勤務をしていて、今はフルタイムに戻っている社員も含めると累計30~40人になると思います。女性に限らず、男性でも時短勤務を選択される方もいるので、男性も含めるともっと多くなりますね。
基本的に1つの仕事を主担当と副担当の2人が担当するようにして、常に代行者がカバーできるようにしています。自分の主業務(主担当)と誰かの業務のサポート(副担当)を兼任しているマルチタスクの社員に関しては、ジョブ型給としています。
そうしたところ、サポートしている社員が忙しくて自分はそうでもないという時は、自主的に手伝うなどの助け合いが生まれました。その結果、全体的に残業時間が減ってくるなどの効果もありました。弊社は5日間連続で有休を取得するよう推奨しているので、常に誰かがサポートできる体制はそのためにも良いと思っています。
編集部
常に代行者がいる体制は、安心感がありますね。女性の管理職の方々は、どのような部署で活躍されていますか?
門脇さん
開発部門や製造現場、品質管理など、女性の管理職が活躍している部署はさまざまです。時短勤務をしながら管理職になった社員も多いです。女性は決まった時間内にタスクをこなそうと工夫している人が多いと思います。特に小さな子どもがいる場合は夕方のお迎えは絶対ですから、それまでにどのように時間を使えばよいかと考えていますね。
また、会社としても、社内のシステムや情報プラットフォームを、子育て世代の声を起点に改善し、業務の効率化を図っています。社内のシステムはすべて自社開発なので小回りが利くんです。
当事者の意見を聞き、子育てと仕事の両立を支援
▲社員のお誕生日会の様子
編集部
アスカカンパニーさんは、子育て世代からヒアリングする機会を設けているのでしょうか。
門脇さん
はい。月に1回、経営トップが参加する誕生日会を開催しています。該当月に誕生日を迎える社員が5人ずつ呼ばれて、社長と一緒に食事しながら「最近どう?」とコミュニケーションを取っています。誰でも年に1回社長と対話する機会があるので、子育て世代の社員からの要望もそこで聞くことが多いです。
社長からは会社の業績や方向性の話がありますが、堅苦しさはなく雑談も多いです。その時の「子どもは何歳になった?」という会話から、社長が子どもの誕生日に絵本のプレゼントを贈ってくれることもあります。
編集部
アスカカンパニーさんのように従業員250名という規模ですと、社長と社員が直接コミュニケーションを取る機会は貴重だと思います。門脇さんや清水さんはどのような会話をされましたか?
門脇さん
私は兼業農家をしているので、来週は田植えがあるという話をしました。田舎なので、私以外にも兼業農家の社員がいて、農作業のために有休を使う人も多いんです。9月後半から10月にかけては稲刈りがあるので、そのために有休を使う人が増えるだろうという話をしました。
清水さん
私は入社後、誕生会が社会情勢の影響で中止になってしまって、これから参加する予定です。社長からは普段から食堂などで気軽に声をかけてもらっていて、「妹さんの就活どう?」など、私の家族のことまで気にかけてくださっています。
門脇さん
ちなみに、弊社の代表取締役兼CEOの長沼誠を、長沼さんとか、長沼社長とか、社長と呼ぶ人はいなくて、たいてい下の名前で、誠さんや、まこっさんと呼んでいます。私も下の名前で呼ばれる方が多いですね。門脇さんと呼ばれるのが4割、下の名前で呼ばれるのが6割ぐらいです。
編集部
御社では下の名前で呼び合う文化があるんですね。アットホームな社内の雰囲気が伝わってきます。
育児休暇中にお祝い金を支給。2022年は男性の育休取得率80%に
▲アスカカンパニー本社Sサイトエントランス
編集部
アスカカンパニーさんは子育てサポート企業の中でも特に優秀な企業が認定される「プラチナくるみん」を取得されていますね。
門脇さん
はい。最初は子育て中の女性が働きやすくしようという取り組みでしたが、それを10年程続けた頃に、子育てを卒業した女性たちから「お母さんだけでなく、お父さんも参観日や入学式に行ってあげたら」とか、「男性も育休を取って、奥さんを楽にさせてあげなよ」といった声が出てきて、女性が男性の育児と仕事の両立を後押ししてくれるようになってきました。
ただ、育児休業手当は給与の約6割の支給であるため、収入面の不安があるという声があったので、給与満額に足りない4割分は会社から出産祝い金として支給することにしました。祝い金は25日間を上限に設けているので、育児休業を1ヶ月間取る社員が多いです。1ヶ月を超えて育休を取得すると収入が下がってしまうので、出産祝い金以外の形で補完したいと思っているところです。
育休を取得した社員は、周囲の人に「めちゃくちゃいいよ」と勧めてくれるので、どんどん育休の取得率が上がっています。2022年は男性の育休取得率80%で、子どもができた5人のうち4人が取得しました。2023年は、今のところ100%取得です。アスカカンパニーには育児に参加している男性社員も多く、弊社のサイトには、彼らによる「パパ座談会」も掲載しています。
編集部
「パパ座談会」を拝見しました。関西らしいノリの良さがあって、とても楽しそうな雰囲気が伝わってきました。御社には男性・女性問わず、子育てと仕事を両立しているロールモデルがたくさんいらっしゃるので、これからライフステージが変化する若い方も心強いでしょうね。
きめ細かな面談と研修で、社員の成長を促す
▲アスカカンパニー本社Nサイトリビング
編集部
御社には経験値に合わせた研修があるそうですが、どのような内容か教えていただけますか。
門脇さん
入社3年目、5年目、7年目と3階層に分けて、それぞれスタートアップ研修、マインドアップ研修、ステップアップ研修を行っています。ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルに重きを置いています。
スタートアップ研修では、お金がどういうものかや、給料明細で引かれているお金は何に使われているかといった知識を得ます。マインドアップ研修では、今度はどういう人になりたいのかや、自分のキャリアプランを考えます。
将来的に専門職系に行きたいか、マネジメント系に行きたいかがある程度見えてくる時期に行うステップアップ研修では、自分の方向性をよりシャープに絞り込み、そのために足りないものは何かを投げかけていく研修をします。
編集部
御社のサイトで、営業部門から研究科品質管理課に異動した方の記事を拝見したのですが、このように研修を機にキャリアを変えていく方も多くいらっしゃるのでしょうか?
門脇さん
そうですね。社員には上司と相談しながら、5年計画でおおまかに自身のキャリア像を持ってもらいます。また、私が入社5年目までの社員全員と年に1回面談をして、特に興味ある仕事や、1つの仕事を極めたいか、視野を広げたいかなどの希望を聞いて、組織の編成時期と突き合わせながら人事異動をしています。
編集部
社員全員を希望のキャリアに導くのは大変だと思いますが、そのための施策や工夫はありますか?
門脇さん
人材ポートフォリオを会社でしっかり持っていて、次世代の人員をこの部署に充てたいといった人事戦略を、月に1回役員が集まって決めています。駄目ならまた戻せばいいというスタンスなので、フットワークは軽いです。社会の変化が激しいので、あまり決めすぎても動きにくくなってしまうかなと。
▲アスカカンパニー関西工場
編集部
部署ごとに、異動するために必要なスキルはありますか?
門脇さん
異動にあたって、異動先で必要なスキルは求めないようにしています。「将来のためにやっておいた方がいいよ」と言われても、なかなか身につかないので。壁にぶつかって、何とかしないといけないと思ったときに勉強するのが一番身につくんですね。
私自身も営業以外の仕事は全部経験しているので、若い社員にもできるだけいろんな仕事を経験してもらいたいと考えています。ただ、なかには製造一筋、開発設計一筋という社員もいるので、そのような意向も尊重して後押ししています。
編集部
人事評価で大事にされていることはありますか?
門脇さん
弊社では成長に重きを置いていて、半期に一度行う人事評価の面談を「成長面談」と呼んでいます。成長面談では半年前と比べて良かった点と、会社として求めていることを伝えて、これからはこういうことをやりましょうと、フィードバックとフィードフォワードをセットにして話すことを大切にしています。
編集部
成長面談では具体的にどのような話があるのか、清水さんの体験をもとにお話しいただけますか?
清水さん
私の上司が門脇さんなので、門脇さんに面談をしていただいています。面談の前に、自分の成果や成長した点をシートに入力して提出し、それから面談となります。6ヶ月間で何ができたか、成長できたかのフィードバックと、今の業務を極めていきたいか、ほかの仕事にも目を向けたいかなどのヒアリングがあります。今後のキャリアについても相談できる機会になっています。
編集部
面談で社員1人1人の特性や希望をキャッチアップし、立場や経験に合わせた研修で社員の成長を促進されているのですね。
アットホームな雰囲気の中で成長したい方は応募を
▲アスカカンパニーの人事を担当する門脇さん(右)と清水さん(左)
編集部
御社は新卒入社3年以内の定着率が100%と伺いました。それを実現できた背景について教えていただけますか?
門脇さん
1年目の社員に関しては、上司との成長面談以外に、人事面談を年に3回ほど行っています。成長面談はキャリア形成のサポ―トがメインですが、人事面談では仕事の内容だけでなく、私生活の悩みも聞きます。
また、採用段階から、弊社の社風に合っている方かどうかをしっかり見て採用しているので、入社後のギャップが少ないのかなと思います。
編集部
ありがとうございます。ちなみに、清水さんはなぜアスカカンパニーさんに入社したいと思ったのですか?
清水さん
私は先輩から「生活は婚活と思え」とアドバイスをもらい、彼氏を探す感覚で就活をしました。彼氏にするなら、一緒にいて落ち着く人や、自分らしくいられる人がいいなと思ったので、就職先もそれを条件にしました。
さまざまな会社のインターンシップに参加したのですが、アスカカンパニーのインターンシップが一番番落ち着く環境だと感じました。当時は門脇さんと今育休を取っているもうひとりの上司が楽しそうに仕事をされていて、とても良い雰囲気が感じられました。
また、他社の面接は「事業について教えてください」や「入社後に何をしたいですか」など、一方通行で硬い印象でしたが、アスカカンパニーの面接は良い意味でフランクでした。私の趣味を掘り下げてくださって、なぜその趣味に目覚めたかに気づいたりと、自分の新しい発見をたくさんできたんですね。
自分が成長できそうな環境だと思い、第1志望にしました。内定のお電話をいただいた時はうれしすぎて涙を流してしまったのですが、当時の採用担当の方も一緒に泣いてくださって、「1人の学生にこんなに思いを込めてくださる会社はないな。私もここで一緒に働きたい!」と思って入社しました。
編集部
ありがとうございます。面談時にコミュニケーションをしっかり取られていて、相性の良さが分かったうえで入社されたのですね。
▲アスカカンパニー関西工場の食堂
編集部
最後に、この記事を読んで御社の採用に興味を持った方に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。
門脇さん
ワークライフバランスの取り組みについては、自社開発のDX、IoT、AIを駆使しながら行っています。一例としては、人の目視による検査検品をカメラに置き換えて、後からデータをチェックできるようにしました。
時間的な制約が減って時短勤務の社員も対応できるので、子育てとの両立支援や女性活躍、残業時間の削減にもつながっていると思います。ちなみに、弊社の平均月間残業時間は12.9時間です。また、そうしたデジタル技術に関しても、開発から自分たちでやろうという社内風土があり、社員のチャレンジや成長を促進していると考えています。
人事を担当していると、営業や事務など職種を決めて就活や転職活動をされる方が多いと感じますが、自分の知っている範囲で職種を選ぶのはもったいないと思います。人の可能性はもっと広いので、業種や職種を絞りすぎず、社風で会社を選ぶのも良いのではないかと思います。
働きやすさでいうと、社風や会社の空気感が肌に合うかどうかが、長く楽しく働ける最大のポイントだと思っています。できるだけいろんな会社の空気を吸って、いいなと思う会社を選んでいただきたいですし、その一つにアスカカンパニーがなれたらと思っています。
編集部
アットホームな雰囲気の中、きめ細かな面談や研修で成長できる仕組みを整えていらっしゃる、御社の魅力が伝わりました。本日はありがとうございました。
■取材協力
アスカカンパニー株式会社:https://askacompany.co.jp/
採用ページ:https://askacompany.co.jp/aska-saiyo/