若手が伸びる東京学芸大学附属竹早中学校の教育現場|ベテラン直伝の授業づくりが学べる職場

ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、東京学芸大学附属竹早中学校にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同校で働く魅力をご紹介します。

教員養成機関としても名高い「東京学芸大学」に属する同校は、教科書編集や資料集の制作などに携わる教員の多さが特徴です。中堅・ベテラン教員を配置した「学年のチーム制」で、若手教員の授業や生徒指導、保護者対応などをフォローしています。学術研究にも力を入れており、学習指導要領の枠にとどまらない教育実践や、若手教員が苦戦しがちな指導案の添削も可能な環境です。

今回は、主幹・研究部の上園 悦史先生から、同校の若手活躍をサポートする校風や教員同士の交流、求める人物像などに関するお話を伺いました。

教育のエキスパートが揃う!若手が成長しやすい竹早中学校

東京学芸大学附属竹早中学校の若手の先生による授業風景
▲若手の先生による授業風景

編集部

まずは、竹早中学校で働く先生方の人数と年代構成を教えていただけますか?

上園先生

正規教員の人数は、合計で24名ほど(2024年12月時点)です。20代は約2名、30代後半の中堅が約5名、40代・50代のベテランが15名以上と、比較的バランスの良い年代構成になっています。

教科書執筆者から学べる育成体制!間近で見られるベテランの指導術

編集部

御校での勤務は若手の先生方にとって、どのような魅力があるのでしょうか?

上園先生

1番の魅力は、指導力のある先輩から直接指導を受けられる環境ですね。本校は東京学芸大学の附属校という特徴から、指導力に長けたベテラン教員が多数在籍しています。国内の公立学校や海外での指導経験を持つ者など、経歴も幅広いです。

新入社員がいきなり現場を任されるケースは少ないですが、教員は例外です。本人の経験・スキルに関係なく、教壇に立つと生徒や保護者から「一人前の先生」として見られます。

だからこそ、若手教員は先輩の授業を見たり、生徒や保護者への対応を相談したりしながら、「ベテラン教員の良さを吸収する」姿勢が必要です。本校には、教科書編集や参考書作成に携わる教員も多いので、若手教員の意欲次第で成長できる環境が整っています。

編集部

上園先生ご自身も、教科書編集に携わっているのでしょうか?

上園先生

はい。私は社会科が専門なので、社会科の教科書執筆を担当しています。教員ごとに担当する教科は違いますが、国語・英語・理科などの教科書執筆を担っているところです。

さらに、教員向けの「指導書」を作成している者もいます。指導書は「先生版の教科書」で、1時間ごとの授業の流れや板書例などが記されています。若手教員にとっても、指導書を手掛けている先輩に相談できるのは心強いようです。

ただ、指導書はあくまでも「基本」なので、生徒の興味を引く授業をするためには教員のアイデアが欠かせません。ベテラン教員は何十年も授業をしてきた分、「教える引き出し」が豊富です。「何か良い教材はないですか?」と質問すると、すぐにアドバイスが返ってきますね。

編集部

上園先生は若手の方から授業に関する相談を受けた際、どのようなアドバイスをされるのでしょうか?

上園先生

体験から掴んだ「楽しい授業をするノウハウ」を伝えていますね。以前、ある若手教員から「面白い授業をするには、どうすれば良いか」と相談を受けたときには、経済の学習シミュレーションの授業を提案しました。株価の変動を扱う単元で、生徒たちが金融の仕組みを予想するという内容です。

社会科は地理・歴史が中心で、「教員が話して、生徒は聞く」授業になりやすい教科です。だからこそ、経済という身近な題材で、「生徒たちが学び取っていく」体験を取り入れることで授業が盛り上がります。後日、シミュレーションの授業を実践した彼は、「指導する側の自分も楽しかった」と話してくれました。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒たちのグループディスカッション風景
▲グループディスカッションを取り入れた社会の授業も好評

編集部

空き時間などに、ベテランの先生方の授業を見せてもらうことは可能ですか?

上園先生

もちろん可能です。私もよく指導力の高い先生方に「授業を見せてください」とお願いしますが、断られたことはありません。実際の授業を間近で参観できるのはもちろん、疑問点についても質問できます。担当する教科を問わず、学校全体で授業力を高め合う雰囲気です。

ベテラン直伝!6名体制の学級経営サポート

編集部

若手の先生が学級担任をする場合には、どのようなサポートをしていますか?

上園先生

学年単位の「チーム制」を採用し、若手教員の学級経営や生徒指導、保護者対応についての悩みを共有できるようにしています。本校は1学年が4クラスですが、6名の教員を配置しているんです。2名の教員は担任を持たず、学年全体の業務をサポートします。

人数が多い分1人ひとりの負担が減り、中堅・ベテラン教員の目が行き届きやすくなるんです。学年の教員をまとめる主任を中心に、保護者対応や生徒指導といった業務はチームでフォローしています。

編集部

業務を補佐する先生は、どのような方なのでしょうか?

上園先生

校内に10名ほど在籍する非常勤講師の先生方に、各学年のサポートをお願いしています。「非常勤」と聞くと経験の浅い先生を想像するかもしれませんが、本校の非常勤講師は例外です。公立学校を勤め上げて退職された60代後半の先生など、教育の知見に長けた方々がそろっています。

生徒たちの問題行動には、必ず何かしらの前触れがあるんです。ただ、若手のころは特に、授業や学級経営などをこなすのが精一杯で、生徒たちの変化を見逃してしまう傾向にあります。

そんなときに非常勤講師の先生方が、プロの視点で生徒のちょっとした発言や行動をキャッチし、担任に伝えてくださるんですね。良い部分はもちろん、「最近、〇〇さんが寂しい表情をしているね」といったベテランならではの感度の高さで生徒たちを見守ってくれています。

理想の授業が実現!教育実践の自由度が高い職場環境

東京学芸大学附属竹早中学校の体育授業風景

編集部

若手でも、「やりたい授業」などを提案できますか?

上園先生

もちろんです。東京学芸大学に属する本校では、教員それぞれの授業実践を論文として残しています。「やってみたい授業」を実践し、「学術情報」という形で世の中に発信できるんです。

過去には、30代の理科教員が公益財団法人が主催する教育学会で、第12回の「理科教育賞」を受賞しました。今まではそれほど重視されなかった「科学者たちの発想」に焦点を当て、哲学的な視点から理科の学びにつなげた点が高く評価されたようです。

彼は、大学院の時代から哲学的な視点からの理科学習を研究し続けてきたそうです。学生時代から抱き続けた「理想の教育」を実践しやすいのは、本校の強みだと思います。

編集部

科学者からフォーカスしていくと、「何のために理科を学ぶのか」が分かりやすいですね。ほかには、どのような授業がありましたか?

上園先生

20代の数学教員が実践した「生活と数学の関連性」に焦点を当てた授業が面白かったですね。「宅配ピザは、注文から30分を超えると半額になる」という取り組みにヒントを得た彼は、生徒たちに「30分以内に宅配ピザを配達するには、エリアを半径何キロメートル以内に絞れば良いか」と問いかけました。

想定外の問いに驚きながらも、生徒たちは必死に宅配可能なエリアを計算していましたね。彼はよく「生活との関連に気付いたら、きっと数学が楽しくなる」と話しています。いつも宅配ピザを頼んでいるのかはさておき(笑)、プライベートな時間にも「面白い授業ができないか」と考えている熱意に感心しましたね。

編集部

若手のころは特に、大まかな流れや発問(教員から生徒たちへの質問)、使用する教具などをまとめた指導案を作成する機会も多いと思います。指導案の作成も、ベテランの先生方にフォローしてもらえるのでしょうか?

上園先生

はい。完成した指導案の添削はもちろん、構想を練る段階での相談も可能です。若手教員のアイデアを尊重しつつ、授業にする視点で「こんなアプローチもあるよ」「本校の生徒には、こういう教材が合っていそうだね」といったアドバイスをもらえます。正直なところ、指導案のクオリティは添削者の力量にも左右されるんですね。本校には研究熱心な教員がそろっているので、指導案を書くスキルも鍛えられますよ。

竹早中学校の雰囲気|相談しやすい職場づくり

東京学芸大学附属竹早中学校の先生方による談笑風景
▲先生方の笑い声が飛び交う「ラウンジ」。外部の方々とのミーティングに使うことも可能

編集部

先生方が忙しく、悩みを相談しにくい実情もあると聞きます。先生方がコミュニケーションを取りやすいように、工夫していることはありますか?

上園先生

教室・職員室以外の、第三の居場所として「ラウンジ」を設置しています。ラウンジは職員室と印刷室の間に位置するため、印刷のタイミングで必ず通ります。プリントの印刷を待つ教員たちが自然とラウンジに集まり、お菓子を食べながら近況を報告し合うケースもあるようです。

ラウンジの壁には黒板が設置されていて、授業参観の希望を書いたり、連絡事項を共有したりできます。慌ただしい仕事だからこそ、少人数で腰を落ち着けて話せる居場所を作っています。

教科ごとの「研究室」を設置。専門性を磨ける教科別研究室の特徴

東京学芸大学附属竹早中学校の資料室

編集部

教科の先生方が集まって、話をする場所はありますか?

上園先生

教科ごとに設置された「研究室」では、担当同士で集まって話せます。例えば、歴史の授業が終わった後に板書の写真などを見ながら「良い意見が出ていたね」「次の授業はこんな導入が良さそうだね」と振り返ったり、次回の授業の流れを相談したりするケースもあります。

非常勤講師の先生方も交えながら、「生徒の意欲を引き出すには、どのような教材を使えば良いですか」と教科指導に関する話し合いも日常的に行われているようです。

東京学芸大学附属竹早中学校のプール授業風景
▲屋上のプールなど、校内の設備も整っている

若手の夢を応援!自由な教育に挑戦できる環境

東京学芸大学附属竹早中学校の主幹・研究部を務める上園悦史先生
▲取材に対応してくださった上園 悦史先生

編集部

最後に、教員を希望している方々に向けたメッセージをお願いします。

上園先生

竹早中学校は「生徒に教える」と同時に、教員たちが「"好き"に挑戦できる」環境です。「学ぶ」という言葉は、「真似する」が語源だといわれています。若手の方々にはぜひ、ベテラン教員の指導を真似し、良さを貪欲に吸収していただきたいです。

楽しい授業をするポイントは、教員の「アイデア」にあると思います。一方で、アイデアを授業として組み立てるには、ある程度の経験・スキルが求められます。若手教員が「こんな授業がしたい」と声を挙げたときに、中堅・ベテラン教員が「こうすればもっと面白くなるよ」とフォローする体制が整っているのは、本校ならではの強みです。

力のある先輩教員からアドバイスをもらいながら、授業力・指導力を磨いていきたい方は、ぜひ本校にお越しください。

編集部

多くの学校現場が「指導するベテランがいない」状況に直面する中で、困ったときにすぐ相談できる御校は若手の方にとっても心強い場所ですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

記事のまとめ

東京学芸大学附属竹早中学校のグラウンド風景

若手教員の成長環境
  • ベテラン教員による丁寧な指導案確認と実践的アドバイス
  • 1学年6名のチーム制で、ベテラン教員のサポート体制が充実
  • 他教員の授業見学が自由にでき、すぐに質問できる環境
教員の専門性
  • 教科書編集や資料集制作に携わる教員が多数在籍
  • 公立私立など様々な学校種での経験者が在籍
  • 海外日本人学校での教育経験を持つ教員も在籍
職場環境
  • 職員室に加え、ラウンジという気軽な交流スペースを設置
  • 各教科の研究室での日常的な対話を通じた学び合い
  • 20代から60代まで、バランスの取れた年齢構成
教育の自由度
  • 教員の「やりたいこと」を実現できる自由な校風
  • 若手教員の研究や新しい教育手法の提案を積極的に採用
  • 学習指導要領に沿いつつ、改善を目指す柔軟な姿勢
求める人物像
  • 自身の興味関心を教育現場で実現したい意欲のある人
  • 他者から学び、吸収する姿勢を持つ人
  • 教育実践の改善に意欲的に取り組める人

東京学芸大学附属竹早中学校の基本情報

東京学芸大学附属竹早中学校の外観

住所 東京都文京区小石川4-2-1
創立 1947年4月
公式ページ https://www2.u-gakugei.ac.jp/~takechu/
採用ページ https://www2.u-gakugei.ac.jp/~jinjika/shokuin-bosyu/
募集職種 教員
取材・編集
紫竹淳志のプロフィール写真

ミライのお仕事編集部

紫竹 淳志

元新聞記者として約10年間、地方行政や選挙、プロ・アマチュアスポーツなど幅広い分野の取材経験あり。ミライのお仕事では、ソフトバンク株式会社や東京商工会議所、株式会社オープンハウスグループなど、数多くの著名企業や教育機関への取材を担当。