ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、東京工業大学発(現:東京科学大学)のスタートアップで、独自の触媒技術を活用したアンモニアプラントの開発に取り組むつばめBHB株式会社にインタビューしました。
同社は、環境負荷の低減と食糧安全保障の実現に向けて、世界各国でプロジェクトを展開しています。博士課程修了者や大手化学メーカーの研究者など、高度な専門性を持つプロフェッショナルが集まり、まだ世の中にない技術の実用化に挑戦しているのが特徴です。
今回は、つばめBHB株式会社における環境・食糧問題への取り組みや働き方について、財務・経理部門経理・ユニットマネージャーの平佐さんにお話を聞かせていただきました。
東工大発スタートアップが挑む、革新的なアンモニア合成技術
編集部
御社は少し珍しい事業を展開されているかと思います。組織の特徴やグローバルな働き方について伺う前に、まずは事業内容についてご紹介いただけますか?
平佐さん
当社は「独創的な技術を活用することで環境・食糧問題にかかる人類課題を解決し、 持続可能な社会を実現する。」をビジョンに掲げ、低温・低圧でアンモニア合成が可能なアンモニア製造プラントの社会実装・商用化に取り組んでいます。
アンモニアは植物の生育に必須な窒素、リン、カリウムのうち、窒素を含む重要な物質として、主に肥料の原料として使用されています。アンモニアの合成技術自体は100年前に確立されているのですが、この技術がなければ現在80億人とも言われる世界人口を支えるだけの食糧生産は実現できなかったでしょう。人類の進歩における重要な転換点の1つだと考えています。
近年では肥料としての利用だけでなく、水素キャリア(※)や、CO2を排出しないカーボンニュートラル燃料としての活用など、アンモニアに秘められた新たな可能性にも注目が高まっています。このようにアンモニア合成技術を通じて幅広く社会貢献できる事業を展開しているのが当社の特徴です。
※水素キャリア:貯蔵や運搬などの取り扱いが難しい水素を効率よく運搬・貯蔵するために変換する水素を含む物質のこと。
編集部
アンモニアの合成技術における御社の強みを教えてください。
平佐さん
世界のアンモニアの合成方法は、現状大規模プラントによる一極集中型生産が主流です。その多くは天然ガスなどの化石燃料を使用しているためにCO2排出量が多く、また実際に肥料を使う発展途上の農業国ではなく中国やロシアなどの資源保有国に生産が偏っているという問題があります。
その点で我々は独自の触媒技術を持ち、それを実装するための小型アンモニアプラントを1から開発してアンモニアの地産地消を促進しています。これによって一極集中を防ぎ、CO2排出の抑制や農業国の発展に寄与しています。この「小型アンモニアプラント」は、世界的に見てもほとんど例のない画期的な取り組みです。
現在は非常に小型なプラントの開発を行っていますが、将来的には大型化し、生産量を増やしていくことを目標としています。
高度な専門性を持つプロフェッショナルが集う職場環境
編集部
御社にはどのようなメンバーが集まっているのでしょうか。
平佐さん
年齢層は20代から60代までと幅広く、アンモニアプラントの設計・製造に向けて、さまざまな技術者が集まって開発を進めています。東京工業大学発(現:東京科学大学)のスタートアップということもあり、博士課程を修めた研究室のメンバーや大手の化学会社の研究者など、高いスキルレベルを持つ者が多くなっています。年齢層の高いメンバーの中には会社の社長や役員を務めていた者がいるのも特徴的です。
そういったハイレベルのメンバーがスタートアップである当社に参画しているのは、会社ビジョンに共感し、事業の意義を感じているからです。私自身、子どもが生まれたことをきっかけに、カーボンニュートラルや環境問題に真剣に取り組める企業であることに魅力を感じて当社への転職を決意しました。将来世代のために明確な意義を持つ事業を展開している点に魅力を感じ、多くのメンバーがジョインしてくれています。
編集部
職種や仕事内容についても教えていただけますか?
平佐さん
弊社の組織としては、大きく分けて触媒を研究する研究開発部門、プラントを開発設計するエンジニアリング部門、国内外の市場開拓から受注を担う事業開発部門、受注後の案件遂行を担うプロジェクト部門、そしてコーポレート部門があります。現在特に募集を強化している「プロジェクトマネージャー」の方には、受注からプラント完成までの約3年間という長期プロジェクトのマネジメントを担っていただきます。具体的にはプラントを組み上げるための機器の選定や調達、工程管理全般が担当業務です。
編集部
さまざまな経歴の方が集まっているというお話がありましたが、具体的にどのような経験を活かせるのでしょうか。
平佐さん
化学メーカーなどで工場設備の設計や予算管理に携わった経験がある方とは親和性が高いと思います。特に当社では海外を主戦場にしているため、海外でのプラント建設経験がある方の知見は大いに活かせるでしょう。
実際に社内にはアルジェリアでのプロジェクト経験者や東南アジアの現地プラントに携わっていたメンバーなど、海外でのプラント建設経験が豊富な人材が在籍しています。まだ世の中にないプラントの開発・建設において、こういった経験やノウハウは非常に重要だと考えています。
海外プロジェクトが豊富で、グローバルに活躍できる
編集部
海外プロジェクトについて伺いたいのですが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
平佐さん
世界各国様々なエリアからお問い合わせいただいていますが、その中でも注力しているのがグリーン肥料のプロジェクトです。肥料を輸入に頼っている国々の農場に我々のアンモニアプラントを設置することで、より良質かつ環境にやさしい肥料を安定的に供給できる仕組みを構築し、その国の安全保障にも貢献できます。
このビジョンの実現のために、日々社員が世界中を飛び回っている状況です。
編集部
海外プロジェクトに関わる社員はどの程度の語学力を求められるのでしょうか。
平佐さん
まず海外営業では当然、海外のお客様とのやり取りを英語で行うため、ビジネスコミュニケーションができる語学力が必要です。エンジニアに関してもプロジェクト推進にあたって英語でのやり取りが必要な場面があるため、ある程度の語学力は必要です。ただしエンジニアの場合は高い語学力というよりは専門性がより重視されます。
技術職の裾野拡大のため、外国籍メンバーも積極的に採用
編集部
外国籍メンバーの採用もされているのでしょうか。
平佐さん
はい。日本では海外と比べてプラント建設の実例自体が少ないため、経験者を獲得していくために採用を外国籍メンバーにまで広げています。現在はエンジニアリング部門にフィリピン出身のメンバーが複数名在籍し、活躍しています。
編集部
外国籍のメンバーがいることで、社内に影響を感じることはありますか?
平佐さん
外国籍のメンバーとは英語でのコミュニケーションが中心ですが、時折日本語も教えながら話しており、双方の語学力アップのモチベーションにつながっています。また月1回の全社会議では、フィリピン国籍のメンバーのために英語の同時通訳を導入し、会社の現状や取り組みについて全社員で共有できる環境を整えています。
国籍や文化などさまざまな面で社内に多様性が生まれていくことで、世界各国のお客様のニーズにもより応えていくことのできる体制になると確信しています。
フラットな組織体制と、挑戦を推奨する会社カルチャー
編集部
御社の社内に共通する価値観などがあれば教えてください。
平佐さん
最近、全メンバーを巻き込んでボトムアップで会社のビジョンやミッション、バリューの見直しを行いました。それを受けて設定したのが「スピードと挑戦」「当事者意識」「知の結集」という3つのバリューです。「さまざまなバックグラウンドを持った者たちが協力し、まだ世の中にないものをつくる」という当社の事業を成し遂げていく上で欠かせない価値観となっています。
編集部
実際にこのバリューが体現されていると感じる場面はありますか?
平佐さん
当社には高い専門性を持つ方や前職で肩書を持っていた方が多く集まっていますが、立場や肩書に関係なくお互いに尊重し合うフラットな組織文化は、まさに「知の結集」というバリューが体現されているなと感じます。
フラットな組織文化はオフィス設計にも表れており、完全フリーアドレス制で社長室などの個室も設けておらず、誰もが同じスペースで仕事をしています。気軽なコミュニケーションが取れるため、後から加わったメンバーも意見を出しやすい雰囲気となっています。
また職種問わず、一人ひとりが大きな役割を任される中で成長できる環境があるのもポイントです。私自身も前職では経験のなかったIT領域を任され、日々新しいことに挑戦できています。会社全体が前例のないことに挑戦しているからこそ生まれている挑戦の機運は、まさに「スピードと挑戦」を体現したカルチャーといえるでしょう。
海外とのやり取りや子育てとの両立がしやすい、フルフレックスの柔軟な働き方
編集部
その他にも、御社ならではのカルチャーや働き方の特徴はありますか?
平佐さん
当社ではフルフレックス制を導入しており、柔軟な働き方が可能です。海外プロジェクトに関わるメンバーは時差の関係で深夜に会議設定があることもありますが、必要に応じてリモートワークとフルフレックスを活用して調整しながら働いています。
また子育て世代の社員も多く、子育て支援に対する理解がとても深い会社だと感じています。私自身も毎日3歳の子どもの保育園送迎をしながら働いています。
スキルを活かして、前例のない「アンモニアプラントの建設」に挑戦したい方を歓迎
編集部
最後に、転職を検討されている方々へ向けてメッセージをいただけますでしょうか。
平佐さん
つばめBHBはアンモニア合成技術において、世界でもトップクラスの技術力を持っていると自負しています。環境分野には再生可能エネルギー関係などさまざまな技術がありますが、海外との競争が激化しているのが現状です。その中で、当社のアンモニア合成は世界に通用する可能性を秘めた数少ない日本発の技術だと考えています。
化学系の研究開発に従事できる大企業は多くありますが、当社では一人ひとりの役割が大きく、会社を動かしている実感を持ちながら働けるのが魅力です。まだ世の中にない「小型アンモニアプラント」の開発にチャレンジしたいという意欲を持つ方との出会いを楽しみにしています。
編集部
平佐さん、本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました!
編集後記
この記事のまとめ
事業の特徴 |
|
---|---|
グローバル環境 |
|
組織文化 |
|
求める経験・スキル |
|
企業の方向性 |
|
つばめBHB株式会社の基本情報
企業名 | つばめBHB株式会社 |
---|---|
住所 | 神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-12新横浜スクエアビル6階(本社) |
事業内容 | ・オンサイトアンモニア供給システムの研究開発、販売及び設備保全 ・アンモニア合成触媒の研究開発、製造及び販売 ・アンモニア及びアンモニア関連製品の製造及び販売 |
設立 | 2017年4月 |
働き方 | フルフレックス制度 |
公式ページ | https://tsubame-bhb.co.jp/ |
採用ページ | https://tsubame-bhb-recruit.wraptas.site/ |
募集職種 | プロジェクトエンジニア |