ワークライフバランスや女性活躍など、企業の新しい働き方をお伝えしていくこの企画。今回は企業にITエンジニアを派遣したり、技術を提供するSES(※)事業を運営する株式会社KAMING(カミング)にインタビューをさせていただきました。
(※)SES:システムエンジニアリングサービスの略。システムエンジニアの労働力を顧客に提供する契約形態
株式会社KAMINGとは
株式会社KAMINGは、ソフトウェアやシステム開発・運用などにおいて、客先にITエンジニアが常駐して技術提供を行うSES事業を運営する会社です。
IT需要の高まりを受け、エンジニアがさまざまな場で求められるようになり、SESという働き方が注目されるようになりました。企業が求めるSESを提供することはもちろん、SESでは見落とされがちなエンジニアの働きやすさも追求するのが、株式会社KAMINGのSES事業の特徴です。
会社名 | 株式会社KAMING |
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住所 | 東京都渋谷区代々木1-21-16 アジリア代々木J‘s |
事業内容 | SES事業/VRプロモーション事業 |
設立 | 2014年4月 |
公式ページ | https://www.kaming-corp.com/ |
働き方 | 正社員、フリーランスのいずれかを選択 |
今回は代表の神崎さんに、“エンジニアファースト”を理念に掲げる同社のSES事業の特色や、社員 or フリーランスを自分で選べる制度、女性活躍やメンタルサポートなど同社のワークライフバランスについてお話を伺いました。
エンジニアファーストによる新しいSES事業を展開
▲株式会社KAMINGでは「エンジニアファースト」を理念に掲げ実践している(公式サイトから引用)
編集部
最初に、KAMINGさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
神崎さん
当社ではSES事業とVRプロモーション事業を展開しています。
主力となっているSES事業とは、エンジニアがクライアントである企業様に常駐して技術提供を行うサービスです。当社に所属するエンジニアがさまざまな企業や業界で、WEB系、アプリ開発、組み込み系、汎用系システム開発、ネットワーク及びサーバーの設計・構築、社内SEにおけるインフラ運用などのプロジェクトを請け負っています。
VRプロモーション事業では、既存のGoogleストリートビュー上にプラグインを追加して動画、予約機能、テキスト、画像などのいろいろな演出をカスタマイズできる「Tourmake(ツアーメイク)」などの360度パノラマツアーを導入した施設のプロモーションを展開しています。最近はスタジアムやホテルなど、撮影が難しいとされる大型施設の依頼が増えています。
編集部
Googleの認定パートナー・KAMINGならではのTourmakeによるインタラクティブなバーチャルツアーを体感できる機会が増えそうですね。とても楽しみです。
KAMINGさんでは、採用のメインとなるのは主力であるSES事業で活躍するエンジニアだと思いますが、これほどにさまざまな企業のプロジェクトに参画されているのであれば、自分の興味のある分野にチャレンジできる機会も多そうですね。
常にエンジニアに寄り添い、“働きやすさ”を徹底サポート
▲所属するエンジニアはいつでもKAMINGのバックオフィスに相談ができる
編集部
KAMINGさんでは“エンジニアファースト”を理念に掲げていますが、具体的な内容について教えていただけますか?
神崎さん
当社が掲げるエンジニアファーストの内容は次の3点です。
- 技術力の向上(Career)
- 人間力の向上(Humanity)
- 多様性の尊重(Diversity)
基本的には主体性を重んじていますので、個々の考えを尊重します。とはいえ「市場価値的にはどうなのか」など、立てた道筋に確かさが欲しいケースもありますよね。
そのようなときには、所属しているエンジニアと直接対話をする「Compass」と呼ばれる機会を設けてコミュニケーションを図り、給与アップや参画プロジェクトの不満や、今感じている事などをヒアリングしています。
次に、バックオフィスチームでは月に1回「Review&Creation」というミーティングを実施し、個々の今後のキャリアパスやスキルアップの方向性、本人および顧客の満足度、交渉議題、給与をどうするか等様々な課題をそれぞれの役割から検討していきます。
IT現場では、意外にも現場への不満や心配事を常駐先の企業様に相談するのは簡単ではありません。当社ではエンジニアが不安なく働けるよう、いつでも相談できる距離感でいたり、判断に迷ったらカスタマーではなく、エンジニアの意見を尊重するという「エンジニアファースト」を行動指針としています。
また、不定期ですが、エンジニア同士で交流ができる「KAMING BAR」を開くことで孤立しない環境づくりも行なっています。
▲全体、個別ともに定期定期なミーティングを実施することでコミュニケーションを図っている
編集部
エンジニアが自分らしく、やりがいを持って働ける環境を整えることが、エンジニアファーストの真髄なんですね。
業界最高水準80%還元を実現できる理由
編集部
エンジニアへの報酬の還元率が業界最高水準の80%を誇るKAMINGさんですが、高い水準を維持する秘訣を教えてください。
神崎さん
不必要なものをほとんど削ぎ落としたことが、理由としてあります。
例えばオフィスです。当社の主力であるSES事業はオフィスに社員が出社する働き方ではないので、豪華である必要はありません。
私も以前派遣会社で働いたことがありますが、そんなに豪華にできるならちょっとくらい時給を上げて欲しいと思ったものです。
▲シンプルなオフィスにすることでコストを削減。ムダを削ぎ落とすことで高い還元率を実践している
神崎さん
また、ペーパーレス化することで、無駄な紙の管理コストや郵送コスト、事務コストを大きく削減することができます。データのやり取りが中心になるので、高額でサイズの大きいレーザープリンターなんかもいらないですよね。
最近、代表電話といえば営業電話ばかりきますし、実務担当者同士は直接携帯電話に連絡することが多い時代ですので、最初から電話回線も引かずに、電話の受付代行サービスを使っていました。
とはいえ、SES事業は契約や案件の管理がかなり複雑なので、どこの会社もだいたい最初から事務員を雇います。当社では、すべて勝手に計算して請求書を自動で作ってくれて、指定のアドレスへ送信までしてくれる独自の業務システムを構築しました。
これで繁忙期となる月末締日でも、私と採用人事のたった2人で、しかも締日当日にほとんど完了してしまいます。これは業界でも間違いなく史上最速です。
現在は所属するエンジニアが80名になったこともあり、1人を増員した4名体制でバックオフィスを担っています。スタッフの満足度を上げると同時に、還元率とエンジニアファーストを高い水準で維持することに尽力する方針です。
編集部
現場で頑張っているエンジニアに正当な報酬を支給するため、不必要なものを削ぎ落とすこともまた、エンジニアファーストの理念に基づいていることがわかりました。
個々の価値観で正社員orフリーランスの雇用形態が選べる
▲懇親会や忘年会は正社員、フリーランスを問わず参加できるフラットな関係性がKAMINGの特徴
編集部
KAMINGさんでは正社員・フリーランスといった雇用形態を選べるとのことですが、選択制にした理由をお聞かせください。
神崎さん
SESが企業側から受け取る報酬は労働時間ではなく、技術への対価です。つまり、このエンジニアが案件に入ったらいくら、といったように金額が決まっています。
それに対し、当社がエンジニアに業界最高水準の80%を還元しているのは、先ほどもお話ししたエンジニアファーストという考えがあるからです。正社員、フリーランスの還元率は同じなので、自分にとってどの働き方が合っているかを判断してもらうため、選択制を設けています。
編集部
還元率が同じでも、フリーランスを選ばれる方が多いのはどのような理由があるのでしょう。
神崎さん
フリーランスを選ぶ理由は、報酬の提示額が正社員に比べて多いことです。正社員の場合、所得税のほか、健康保険や厚生年金などの社会保険が給与から引かれた額が支給されますが、実はこれが何より高いのです。
フリーランスになってももちろん保険代はかかりますが、社会保険よりは大幅に安いのが実情です。保障は異なりますが、他で補填を図ります。給与から差し引かれることはありませんので、手取りは上がります。
また、個人事業主となるフリーランスは、エンジニアの業務に必要な支出が経費計上できます。例えば、家賃、光熱費、スマートフォンなどの通信料、パソコンの購入費、セミナー代金、その他交際費などで、支払っていた税金が安くなる(可能性がある)ことも、フリーランスを選ぶ大きな理由になっています。
以上のように、フリーランスを選択すると経済面のメリットが大きいですが、私が思う最も大きな収穫は自立心じゃないかと思います。
設立当初はフリーランスのみの採用を行なっていましたが、社員を採用するようになってからは、社員として入社して、後からフリーランスに切り替えるという流れになってきています。
編集部
「社員」という雇用形態を選ばれる理由はどういったものなのでしょうか。
神崎さん
帰属意識とか、繋がり、護られているような心理的安全性を得られることではないでしょうか。あとは「ただ、なんとなく」とか(笑)。
KAMINGの世界ではどちらの雇用形態でも、扱われ方とか、優先度合いとか、業務内容や報酬の還元率も差別がありません。
個々の価値観をベースとしているので、どちらを選ぶにしても、納得感や主体的な実感を伴います。私の中では正社員、フリーランス、パート、アルバイトを区別する必要性はあまりわからなくて、「常に目の前に◯◯さんというユニークな人間がいるだけ」だと思っています。
メンバーの「自分らしく働く」を守るため、フリーランスへの切り替えもサポート
編集部
フリーランスになると額面上の収入が増えますが、確定申告でつまづく方も少なくないのではないかと思います。これに対して、KAMINGさんではなにかサポートをされているのでしょうか?
神崎さん
確定申告は、希望者に対して弊社の顧問税理士が確定申告を代行しています。初年度はほとんどの方がこの代行を利用しています。
初心者向けに勉強会も開催していて、もちろんお金はとってはいませんが、内容は高額なセミナー級です。
また、個人事業主(フリーランス)の場合、請求書の発行などの事務作業を自身で行うのが一般的ですが、実作業に集中してもらうため、支払通知書という形で毎月こちらの方から各自に送るようにして、業務に集中できる仕組みが出来上がっています。
その他にも、フリーランスになっても社員と同様に健康診断も無料で受けられますし、弁護士になんでも無料相談ができるという福利厚生のような制度もあります。本業以外にも、副業とかプライベートな内容でもOKというのがポイントです。
編集部
個人事業主であるフリーランスは、社会保障をはじめ、健康診断なども自分で手続きをする必要がありますが、KAMINGさんがしっかりサポートしてくれることで、業務に集中できるというわけですね。
神崎さん
これまで社員として働いてきた方がフリーランスに切り替えることで、経費や税金の支払い、収支の管理をすべて自分でやることに不安を感じるのは十分理解できます。また、企業の一員から個人になることへの不安もあるでしょう。
できれば事前に心配を完全に取り除いてあげたいのですが、厄介なことに実際にフリーランスになるまで安心を得ることはありません(笑)。
ただ、安心して欲しいのですが「だまされたー!」と離職してしまったり、社員に戻ったひとは過去一人としていないのです。不安があれば、私は最後までお付き合いします。
編集部
雇用形態によって区別されないことで、それぞれが自分らしく働くことができるのは、新しい雇用のあり方だと感じます。とことんエンジニアファーストを貫くことが、KAMINGさんの最大の魅力ですね。
ワークライフバランスを調整し、女性が活躍できる環境を提供
編集部
女性も多く活躍しているエンジニア業界ですが、出産や育児による休職や時短など、SESという働き方では難しいこともあるかと思われます。KAMINGさんではのような対策を取られていますか?
神崎さん
全体の23%を占める女性エンジニアが活躍している当社では、産休・育休に加え、働き方についても事前に常駐先のクライアント様と調整するようにしています。例えば、子育て中の方が多く利用している時短という働き方ですが、もっとフレキシブルな方が良いのではという考えがあります。
お子さんが体調を崩して保育園から呼び出しがかかり、時短で仕事を切り上げたとしましょう。帰宅後、家族のサポートを得られ、仕事に戻れる状況になったとしても、時短勤務で退社したあとだと業務を再開することができません。その場合、早退や遅刻によって業務から離れた時間を、他の空いた時間で埋められる仕組みがあれば解決します。
このようなことをクライアント様と事前にしっかり話し合い、理解を求めることでSESでも肩身の狭い思いをすることなく、仕事と子育てを両立することができます。常駐先のクライアント様はエンジニアの家庭環境を把握しているので、急な早退や遅刻も受け入れてくれます。予測不可能な子育てに合わせて、働き方に柔軟性を持たせることがこれからの女性活躍には必要になると考えます。
編集部
事前にKAMINGの営業担当者が状況をしっかり伝え調整をすることで、エンジニアに働きやすい環境を提供しているというわけですね。
神崎さん
仕事と子育ての両立には常駐先のクライアント様の協力が必要不可欠ですが、中には子供を保育園に預けるとどのようなことが想定されるかを理解できない方もいます。私には保育園に通う2歳の子供がいるのですが、園内で風邪が蔓延すると感染するリスクは一気に高まり、保育園が閉鎖することもあります。子供から親が感染すると出社どころではありませんよね。
先が読めない子育てに、時短のようにスケジュールをかっちりはめこむのは難しく、柔軟性を持って働くことができれば生産性はもっと上がるはずです。そのような現実を誠意を込めて説明し、理解を得ると共に関係性を築き、調整をするのも当社の役目です。
編集部
これから結婚や出産を控えている女性エンジニアにとっても、KAMINGさんがクライアントとしっかり調整してくれるおかげで、安心して働くことができますね。
KAMING流のメンタルケアは「休むことを止めない」
編集部
昨今はスタッフのメンタルケアを実施している企業が増えています。多くのエンジニアが所属するKAMINGさんではどのようなサポートをされていますか?
神崎さん
私の場合、休むことを止めないことをポリシーとしているんです。“やらない”ことに徹することで気持ちが楽になることがあるからです。不調が続き、一番困っているのは本人ですよね。そんな時に周囲の良くしようとするムードは、かえってプレッシャーになります。本人も周囲もありのままを認めるスタンスを取ることで、頑張らなくてもいいんだ、このままでもいいんだ、と、リラックスすることができるのではないでしょうか。
エンジニアに限ったことではありませんが、一度現場を離れた方の中には、今度こそ頑張ろうと無理をした結果、同じ症状を繰り返し、働くこと自体が難しくなってしまうことがあります。他社ではブランクがあることをマイナスと捉え、書類選考で落ちてしまうケースがほとんどです。
もちろん、回復するに越したことはないのですが、「明日は頑張ろう!」という言葉は、一見前向きなようで、今日を否定することにもなってしまいます。「頑張れない日だって決してダメではない。体調がすぐれないのなら休みましょう」と、今の状況をストレートに受け止め、決して急かさないことが大事です。
そうすれば徐々に回復へと向かっていくと私は思いますし、実際にメンタルに不調を抱えていたエンジニアも多数採用していますが、7割くらいは回復していきました。
編集部
つい、「頑張って!」と、声をかけたくなりますが、あえて何もしないことがプレッシャーやストレスを与えないことになるんですね。
神崎さん
クライアントからは勤怠・体調管理の徹底を強く要求されたり、1日も早く出社してほしいと言われることもあります。もちろん、気持ちは痛いくらいに理解できますが、それらは全て健康な方の発想なんですよね。
特にメンタルの不調は風邪とは違い、もしかすると一生付き合っていく症状かもしれません。一時凌ぎでエンジニアを無理に復職させたとしても、再び体調を崩せば結果的にクライアントに迷惑をかけることになります。その負のループを断ち切るには、ありのままを受け止め、流れに任せることが必要なのではないでしょうか。
心身の不調によって、仕事に復帰できないまま潰れてしまうのは、やはり悲しいですよね。SESのように業務委託として仕事を請け負う業界は、発注側の企業としては業務以外のところに関与しない、できないという事が多いです。でも、現場で頑張った結果として心身に不調をきたしているわけですから、当社としてはフォローする責任があると思っています。
編集部
SESという働き方は、常駐先の社員ではないため、どうしても孤立しがちですよね。そこに対し、KAMINGさんがしっかりフォローし、SES業界に蔓延する課題に真摯に向き合われていることを、神崎さんの言葉から感じることができました。
主体性を持って働ける方を歓迎
編集部
KAMINGに興味をお持ちのエンジニアの方に対して、ここで改めて、SESとして働くメリットを教えていただけますか?
神崎さん
1つの企業に所属しているエンジニアは、企業内のプロジェクトにしか携わることができません。それに対しSESは、あらゆる業界、業種の企業に参入できるため、多種多様なプロジェクトに参画することができ、短期間でスキルアップを目指せることがメリットとして挙げられます。
また、クライアントである企業様はSESエンジニアに対し、基本的に労務管理や指揮命令を行う権利はなく、もし働く環境が自分に合わないと感じたら、営業とも相談の上、案件自体を変えてみるということができるのも、SESの特長かと思います。
編集部
最後に、メッセージをお願いいたします。
神崎さん
KAMINGでは、多様性をとても大切にしています。
正社員で入社した後フリーランスに転向したり、請け負う業務案件の内容も自分で選ぶことが可能です。このように、自分らしく働ける環境を見つけたいという方にはフィットするのではないでしょうか。
また、多様性の中にも、主体性を持って自分でしっかり考えて仕事に向き合えるか、という点も大事にしています。とはいえ、自分にはどんな働き方が合っているのか、目指すキャリアがどこにあるかを見極めることが難しいことがあります。「自分らしさってなんだろう」と、わからない方もいるかもしれません。
そんな時はぜひ、私たちと対話をしましょう。人と話すことで自分でも気づかなかった本音や新たな気付きが見えてくることがあります。自分らしく生きること・働くことに興味がある方は、ぜひ応募いただけたら嬉しいです。
編集部
今回は、KAMINGさんが掲げられる「エンジニアファースト」について様々なお話を伺えましたが、そこに感じられたのは、KAMINGの、しいては代表である神崎さんのメンバーに対する強い愛情でした。「なにか困っても相談できる」そんな信頼を持って仕事に向き合えるというのは、メンバーにとってとても心強いですね。
今日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。
■取材協力
株式会社KAMING:https://www.kaming-corp.com/
採用ページ:https://recruit.kaming-corp.com/