成長企業や社員のサポート体制などに力を入れている企業を紹介していくこの企画。今回は、企業の法務担当者や法律事務所の弁護士向けにサービスを開発・提供するSaaS企業、「株式会社LegalOn Technologies(リーガルオンテクノロジーズ)」をご紹介します。
株式会社LegalOn Technologiesとは?
株式会社LegalOn Technologies(以下、LegalOn Technologies)は、AI契約審査プラットフォーム「LegalForce(リーガルフォース)」とAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」を提供する企業です。
創業は2017年。四大法律事務所の一つである、森・濱田松本法律事務所から独立した弁護士2名により設立されました。その後、同じく四大法律事務所の一つである長島・大野・友常法律事務所のほか、マッキンゼー、野村証券、トヨタ自動車、Cygamesなどから各執行役員を迎えて事業や組織を拡大してきました。
LegalOn Technologiesが提供するプロダクト「LegalForce」は最新の技術と弁護士の知見を組み合わせ、契約書に潜むリスクの洗い出しや、修正までをワンストップでサポートするものです。導入企業にとっては、契約審査時のリスクの見落とし防止になるほか、契約業務にかかる時間を平均で3割(※)削減できるメリットがあります。
(※)2022年12月 LegalForceユーザーアンケートより
■「LegalForce」サービスサイト
https://legalforce-cloud.com/
また、セカンドプロダクトである「LegalForceキャビネ」は、締結後の契約書の保存・管理をサポートするものであり、契約書をアップロードすれば検索機能で契約書がすぐに見つかり、契約更新のリマインドを受けることができます。これにより、大量にある契約書から時間をかけて探す手間を省略し、不要な契約更新を防ぐことができます。
■「LegalForceキャビネ」サービスサイト
https://legalforce-cloud.com/cabinet
「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る。」というパーパスを掲げるLegalOn Technologiesは、リーガルテック市場のリーディングカンパニーとして、業界に新しいスタンダードを創り出そうとしています。
会社名 | 株式会社LegalOn Technologies |
---|---|
住所 | 東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント6階 |
事業内容 | 契約業務に関するソフトウェアの開発・提供 |
設立 | 2017年4月21日 |
公式ページ | https://legalontech.jp/ |
今回はLegalOn Technologiesの事業成長を支える「強い営業組織」や社内カルチャーについて、セールスイネーブルメントのリーダーである奥川さんにお話を伺いました。
創業6年目にしてサービス導入企業3,000社突破。リーガルテック企業として急成長中
編集部
LegalOn Technologiesさんは「法」と「テクノロジー」を掛け合わせた「リーガルテック」領域のスタートアップでいらっしゃいます。どのような理念のもと、設立されたのでしょうか?
奥川さん
私たちは「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る。」をパーパスに掲げています。
法と言うのは、社会のインフラの一つです。しかし、法が身近なものだという認識は薄く、法を理解してビジネスに活用することは簡単ではないと思います。テクノロジーの力で法を味方にし、世の中がもっと安心して前進できるような社会を創るために貢献していきたいと考えています。
編集部
具体的にどのようなプロダクトを開発・提供されていますか?
奥川さん
弊社はSaaS(※)企業として、2つのプロダクトを開発・提供しています。1つが「LegalForce」というAI契約審査プラットフォームです。これは契約書に潜むリスクの洗い出しから、リサーチ、修正、案件管理など、契約書に関わる業務をワンストップでサポートし、契約の品質向上や効率化を実現するものです。
(※)クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス
▲AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」
奥川さん
もう1つが「LegalForceキャビネ」というAI契約管理システムです。先ほどの「LegalForce」は契約締結前のサービスですが、「LegalForceキャビネ」は締結後の契約管理をサポートするシステムです。現在はこれらの2本柱で展開しています。
▲AI契約管理システム「LegalForceキャビネ」
編集部
「LegalForce」を利用する企業はどのくらい増えているのでしょうか?
奥川さん
「LegalForce」は2019年4月の正式版提供開始から、約4年で3,000社を超える企業や法律事務所に導入いただいています(2023年8月時点)。大手から中小、首都圏だけでなく幅広いエリアで導入が進んでおり、リーガルテック市場の中でも、かなり急成長を遂げていると言える状況です。
編集部
継続的な成長を遂げられているのですね。リーガルテック市場が日本でも広がりつつある中で、LegalOn Technologiesさんの強みはどこにあるとお考えですか?
奥川さん
まず、弊社はAIの研究部門を設置し、京都大学との共同研究も行っています。ここでは、AI・自然言語処理技術に関する研究を行っており、それによって最先端のテクノロジーを提供することができています。
また、弊社には法務開発という部署があり、そこには15名の弁護士およびNY州弁護士が在籍しています。この部署は法律に関するコンテンツを開発する部署であり、専任の弁護士とエンジニアが協働して製品開発を行っていますので、法務の実務に則した質の高いプロダクトを提供することができています。
さらに企業法務に精通する法律事務所とも業務提携を行っているので、質の高い法務コンテンツの提供を行うことができています。これらが弊社の強みですね。
成長を支えるのは、プロダクトと営業組織の強さ
▲LegalOn Technologiesさんでは社員数が毎年100名ペースで増え、組織を拡大中
編集部
LegalOn Technologiesさんは2022年6月に資金調達をされたと拝見しました。これにより開発や営業の組織を強化されたのでしょうか?
奥川さん
はい。シリーズDラウンドとして約137億円の資金調達を実施し、人材採用や開発のために資金を投資しています。採用は2021年頃からかなり強化しており、毎年、100名ほど入社しています。2023年8月時点で、従業員数は約500名ほどの規模になっています。
部門ごとの人材比率は、営業が4割、開発が3割、コーポレートが3割という割合で、営業や開発部門の強化だけでなく、管理部門の強化も図っています。
編集部
毎年100名が増えるとは、組織としても大きく拡大をされたのですね。LegalOn Technologiesさんがこのように急成長を遂げられた要因はどこにあるとお考えですか?
奥川さん
成長要因は大きく3つあると思っています。
1つ目がプロダクトの強さです。当社では、プロダクト開発を弁護士が主体となって行っています。その弁護士が、最新技術の知見を持つエンジニアやお客様のニーズを直接拾える営業と密接に連携しながら開発をしているため、お客様のペインに共感しながらも最新のテクノロジーと掛け合わせたソリューションの提供ができています。
2つ目は上と関連するのですが、開発と営業の協力体制がとれていることです。当社は開発と営業の距離感がかなり近く、定期的に意見交換の打合せもあり、双方のリクエストや意見を迅速に受けることができます。時には商談に同席をしてくれることもあり、これは当社ならではの大きな強みだと思っています。
3つ目は、強い営業組織があることです。前職時代にハイパフォーマンスを上げていた営業メンバーを数多く採用できており、それぞれのナレッジを共有し合っているのでメンバー同士で成長し合える環境です。またセールスイネーブルメント(営業組織を強化・改善するための取り組み)によりみんなが成果を上げられるように底上げの支援をしていることが背景にあります。
LegalOn Technologiesでは開発と営業チームの距離感が近い
▲社員同士のコミュニケーションがフラットにとれることを重視している
編集部
プロダクトと営業の強さ、そして、両チームの距離感が近いことが、成長要因となっているのですね。500人ほどの規模感の中で、開発と営業の距離感を保つ秘訣はどこにあるのでしょうか?
奥川さん
まず、エンジニアがお客様の視点に寄り添いたいというマインドが非常に強い点が挙げられます。開発と営業は定例ミーティングを行って意見交換をしていますが、「お客様に価値を届けたい」「だからお客様の意見を聞きたい」という開発者が多いので、積極的に営業やお客様の声を聞く姿勢が生まれています。
また、定例ミーティング以外の場でも、営業からお客様の声を逐一共有するようにしています。これはSlackでも行っていますし、席に行って直接伝えに行くこともあります。当社のオフィスは全職種同じフロアに配置できるようになっています。そのため、開発も営業も距離が近く、すぐに相談したり、共有したりできます。
実は2022年から人数が増えすぎたため、現在一時的に2拠点で活動していますが、2024年5月からは渋谷に移転し、再びワンフロアで全員が一緒に働くことが決まっています。
編集部
ワンフロアにこだわられたのは、メンバー同士の物理的な距離が近いほどコミュニケーション密度が高まるというお考えからなのですね。
奥川さん
はい。代表が「コミュニケーションがフラットにとれること」をもっとも大事にしており、新オフィスもそのような環境にできるよう、選定をしました。
■本社オフィス移転についてのニュースリリースはこちら
https://legalontech.jp/6340/
独自教材でトップセールスの知見を浸透させている
▲独自教材でメンバーの営業力を高める支援をしている
編集部
成長要因として挙げていただいた営業力の強さについて、もう少し詳しく伺いたいと思います。組織として営業力を強化するためにどのような取り組みをされていますか?
奥川さん
営業力の支援をする工夫としては、私が携わっているセールスイネーブルメントがあります。弊社の営業メンバーの約9割は、法務知見を持たずに入社しています。メンバーがいち早く現場で活躍する営業パーソンになれるよう、まず、初期のオンボーディング支援に力を入れています。
さらに、商談に出てからの支援、営業現場に加入後も継続的にパフォーマンスが上がるような支援という3本柱で行っています。
編集部
御社のプロダクトは専門性の高い商材だと思いますが、法務に関する知識や経験を持たない方が大半でいらっしゃるのですね。どのようなツールや方法で、新人メンバーを支援されるのでしょうか?
奥川さん
弊社独自の教材を使って支援しています。私たちは現場で実績を上げてきたセールスのノウハウをまとめた100ページ以上の教材を作っており、新人メンバーは最初にこれを教科書として勉強します。
加えて約20本の動画教材も作成していますので、自身のペースで自学自習を行えます。さらに毎日ロールプレイング&フィードバックを行うことで、学習の進捗を細かく確認します。
編集部
現場のトップセールスのナレッジを浸透させるための教材がまとまっているのですね。商談に出てからの支援、パフォーマンスを上げるための支援については、いかがでしょうか?
奥川さん
成績が少し伸び悩んでいるメンバーがいる場合、営業ツールを使ってどこに弱みがあるのかを分析します。弱みが事前準備にあるのか、提案にあるのか、クロージングにあるのかを把握し、そこを改善支援していきます。育成支援の前後でどう成績が変化したかも確認し、良くなったところなどをフィードバックするように努めています。
パフォーマンスを上げるための支援は、営業組織全体に対して行っています。リーガルテック市場や世の中の環境が変化する中で今どのような提案が良いのか、どのような訴求がお客様に響くかということをまとめ、メンバーにディレクションしていきます。
▲教材には代表の角田弁護士からのコメントを、箸休めのために引用している
セールスイネーブルメントにより有効商談化率が30%改善したメンバーも
▲営業組織の強化について語る奥川さん
編集部
LegalOn Technologiesさんでは営業プロセスを定量的・定性的に分析し、営業組織を強化されていることがわかりました。セールスイネーブルメントを始めた背景について、教えていただけますか?
奥川さん
取り組みを始めたのは、2023年の4月からです。以前の営業組織には2つ課題がありました。
1つは営業が本人の努力に頼ってしまっていたことです。教育は「習うより慣れよ」といった感じで、先輩の商談を見て自分で学んでいくスタイルでした。そのため、メンバーによってパフォーマンスにばらつきが出てしまいました。
もう1つは、チームに配属後の支援がチーム任せになっていたことです。配属チームによって育成結果に濃淡が出ており、成長率に差が出ていました。
そこで、会社としても営業力を高いレベルで均等化し、かつ均質的な成長を促したいと考えました。
編集部
現在、取り組みを始めて4ヵ月目ですが、すでに成果は出ていますか?
奥川さん
はい。如実に出ています。商談をした後、見積もりを出し、お客様に検討いただけるところまで至った場合を「有効商談化率」として出していますが、この数値が全体的に5~10%改善しました。中には30%近くアップしたメンバーもいます。
また、新人メンバーについては、以前は入社後1ヵ月は研修をしていましたが、今では9~10営業日で商談デビューできるようなスピード感でオンボーディングもできています。
▲セールスイネーブルメントにより営業メンバーの有効商談化率が5~12%改善した
編集部
セールスイネーブルメントを推進したことで、大きな成果が出ているのですね。営業組織の強化について、今後の展望も教えていただけますか。
奥川さん
イネーブルメント対象をもっともっと広げていきたいと思っています。現時点ではフィールドセールスのみの育成支援を行っていますが、ゆくゆくはインサイドセールスやカスタマーサクセスにも広げ、もっと営業組織を底上げしたいと思っています。
それぞれの機能やコツも違うと思いますので、その部分もトップセールスからキャッチアップしながらイネーブルメントを構築していきたいと思いますね。
▲奥川さんは今後、すべての営業プロセスにおいてセールスイネーブルメントを行い、営業組織を底上げしたいと考えている
社内には成長意欲が高く、共有マインドにあふれた人が多い
編集部
法務知見がなくても活躍する営業メンバーのお話からは、学び、行動し、振り返ることで成果を出す社員さんの姿が浮かびました。LegalOn Technologiesの社員にはどのような方が多いのでしょうか?共通する資質はありますか?
奥川さん
成長意欲が高いことです。もっとキャッチアップしよう、もっと営業力を高めよう、もっとビジネスパーソンとして成果を出そうというメンバーが非常に多いです。これは営業組織だけではなく、全社に共通して言えます。
編集部
そのほか、奥川さんが感じるLegalOn Technologiesの”カルチャ―”はありますか?
奥川さん
社内には、共有することを尊ぶカルチャ―が根付いているなと思います。
弊社では毎週1回、全社員がオンラインで一斉に集まる全社定例が開催されます。そこでは、各部署の動きだけでなく、経営会議の内容も基本的にすべて全社員に公開されます。そのため、今みんなが何を考えていて、どのような動きをしているのかが分かりますし、それを見て追加のアイデアが入れば成果も最大化されます。
営業組織においても、共有する文化はかなり根付いています。お客様に許可を取ったうえで録画をした商談の動画は、メンバー同士で共有し、フィードバックをし合っています。1人の成功事例や良い取り組みを隠すのではなく、お互いに共有し、お互いに強めていこうというマインドがあります。
編集部
そうなんですね。まさに「成長意欲」と「共有し合う文化」があるからこそ、セールスイネーブルメントの成果がスピーディに出ているのだと感じました。
▲「LegalForce」導入3,000社のリリース発表を報告するSlackの様子。情報を共有し、たたえ合う文化がある
大きく伸びしろのある会社で大きな変化を起こしたい人を募集
▲「大きく伸びしろのある会社」と自社の魅力を語る奥川さん
編集部
成長中のリーガルテック市場をけん引するLegalOn Technologiesさんですが、あえて「課題」をお聞きすると、どのようなことがあると感じられますか?
奥川さん
そうですね。製品がユニークかつ他にはないものであるがゆえに、まだまだリーガルテック自体を知らないお客様が多いことです。その意味では、ポテンシャルを秘めた製品と言えます。もっと多くのお客様に「LegalForce」や「LegalForceキャビネ」を知っていただき、導入していただくことで、多くの会社の課題解決に貢献したいと思います。
編集部
これから開拓していく市場ということですね。LegalOn Technologiesさんでは市場拡大に向けて、採用を強化していらっしゃいます。どのような人材を求めていますか?
奥川さん
よく「LegalOn Technologiesさんはもう、ある程度成熟したメガベンチャーですよね」と言われるのですが、まだまだこれからだと思っています。
事実として、2023年4月にセールスイネーブルメントが立ち上がり、7月には営業組織改編を行ったところです。会社としてはまだまだ完全体ではなく、大きく伸びしろがあります。
日本には企業が約420万社あり、当社のサービスはまだ1%未満の企業にしか導入されていません。自分の力で市場を開拓したい、市場をもっと大きくしたい、もっと大きな変化を起こしたいと考えている方と、ぜひ一緒に働きたいです。
編集部
LegalOn Technologiesさんは社員数が500名を超える規模ですが、まだまだ変化していくフェーズなのですね?
奥川さん
はい。私たちはリーガルテック企業として、法令順守やコンプライアンスにはこだわっています。そのため、法務や労務回りが整っており、エンプロイーサクセスという部署で社員ケアも行っています。こうした会社としてのベースはできあがりつつも、まだまだスタートアップの醍醐味を味わえる、非常に面白いタイミングだと思います。
編集部
奥川さん、本日はありがとうございました!
市場を開拓したい、自分の手で変化を起こしたいというパイオニア精神を持った方は、ぜひLegalOn Technologiesさんのホームページや採用ページをご覧ください。オープン社内報ではさまざまな社員さんや取り組みを知ることができます。
■取材協力
株式会社LegalOn Technologies:https://legalontech.jp/
採用ページ:https://recruit.legalontech.jp/
オープン社内報「LegalOn Now!!」:https://now.legalontech.jp/