南足柄市役所の職員に聞く:民間企業からの転職理由と、省庁への出向機会もある環境

ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、神奈川県の南足柄(みなみあしがら)市役所にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同市役所で働く魅力をご紹介します。

南足柄市役所は、近年、民間企業からの転職者の採用が半数以上を占める自治体です。事務職では民間企業からの転職者が多く、技術職でも30代後半の転職者を採用するなど、キャリアチェンジを積極的に受け入れています。また、環境省や文部科学省といった国の省庁などへの出向制度を設けるなど、職員の成長を支援する体制も整えています。

さらに、15分単位での時間休取得制度や育児休業の取得推進、ノー残業デーの設定など、ワークライフバランスの実現にも注力。有給休暇を取得しやすい職場風土と相まって、職員が働きやすい環境となっています。

今回は、南足柄市役所における働き方や職場の特徴について、企画部企画課班長の大河原洋史さんと総務防災部総務課主任主事の川口悟史さんにお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
南足柄市役所企画部企画課班長の大河原洋史さん

大河原洋史さん

2015年4月に民間企業から入庁し、市民部税務課に配属。2020年4月から2年間、環境省に出向。2022年4月に市役所に帰任し、環境経済部環境課に配属。現在は企画部企画課で移住定住や公共交通、地方創生施策などを担当。

南足柄市役所総務防災部総務課主任主事の川口悟史さん

川口悟史さん

2017年4月に民間企業から入庁。企画部市民協働課に配属となり、ボランティア団体の支援業務を担当。2019年6月から約1年間、横浜市の一般社団法人に出向。2020年4月に復帰し、2022年から総務防災部総務課で勤務。

南足柄市役所の組織:民間経験者が多数活躍。その転職理由とは

ミーティングをする南足柄市役所職員

編集部

南足柄市役所では、公務員未経験である民間企業からの転職者が多く活躍されていると伺っています。現在、どのような状況でしょうか?

川口さん

事務職の採用では、新卒者より民間企業での経験を持つ中途採用者の比率の方が高くなってきています。技術職については新卒採用が多いものの、もちろん転職者もいて、2024年度も土木職として30代後半の人が1名入庁しています。

南足柄市役所職員と市民との交流風景
▲職員と市民の方々の交流風景。大河原さんが話すように市内には森林が多く、その活用が進められている

編集部

大河原さんと川口さんのお二人も民間企業出身とのことですが、転職を決めた理由について教えていただけますか?

大河原さん

南足柄市役所を志望したのは、「伸びしろがある自治体のまちづくりに携わりたい」という思いがあったからです。

私は元々南足柄市に縁もゆかりもない、神奈川県内のそれなりに発展した中規模自治体の出身でした。ただ、以前から発展した街の風景よりも、山や川などの緑豊かな自然環境や地方都市にある昔ながらの商店やお祭りなどの街のにぎわいのある風景が好きだったので、そんな環境で仕事をしたいなと思っていました。

発展した都会の大都市よりも、懐かしい風景をそのままに、でも住民や訪れた人が過ごしやすい、そんなまちづくりができる自治体を探していたときに出会ったのが南足柄市なんです。

ちなみに、以前は東京や神奈川に住み、主にテレビ番組の制作会社でディレクターとして働いていました。若いころは芸能人がいるような世界や都心の環境への憧れもあったものの、次第に物価の高さや自然のない息苦しい環境が自分の生活に合わないと気づき、転職したという理由もあります。

南足柄市役所の川口さんが企画運営に携わったマラソン大会の様子
▲川口さんが企画運営に携わったマラソン大会の様子

川口さん

私が南足柄市役所に転職したのは、「ワークライフバランスを実現しつつ、接客の経験を活かして人のために働きたい」と考えたからです。

2017年4月に入庁する前はスーパーマーケットで勤務していて、接客や販売の仕事自体は好きだったのですが、シフト制で勤務時間が安定しないという難点があったんです。人の役に立ちたいという点は変えずに時間を決めて働きたいという希望と、出身地が近かったという縁もあり、入庁に至りました。

実際に働いてみて、直接市民と関わりながら、その生活を支えるような仕事ができていることにやりがいを感じます。

例えば以前所属した市民協働課では、市内でマラソン大会を開催したいというボランティア団体のサポートとして、会場準備やランナー送迎バスの手配、道路使用許可の取得など、行政が間に入ることでスムーズに進められる作業の手伝いを経験しました。また、市内在住の外国人向けに日本語を教えるボランティア団体に対しては、教室の会場を市側で提供するといった支援もしましたね。

市役所業務が未経験でも、風通しがよく教え合うサポート体制があるので安心

編集部

民間との違いはあったかと思うのですが、入庁後の周囲のサポートについてどのように感じましたか?

大河原さん

私は入庁当時、税務課で窓口業務を担当していましたが、周囲の職員はみんな優しかったです。南足柄市役所の特徴かもしれませんが、職場の風通しがとても良いです。よく耳にするような「縦割り行政」という言葉は当てはまらない印象ですね。

例えば市民の方が隣の窓口からこちらに来る際、担当者はお聞きした話を丁寧に引き継いでくれるなど、部署間の連携もうまく取れています。

また、市役所は基本的に3年ごとに異動があるため、着任早々だとわからないこともありますが、職員は皆同じ立場なので、「お互い様」の精神で質問しやすい環境となっています。そのおかげで、日々いろんな知識やノウハウを学ぶことができています。

川口さん

私も、先輩職員から仕事のやり方や行政の仕組みについて丁寧に教えてもらえました。

また、入庁前の面接で「やりたいことは何か?」と聞かれ、「ボランティア団体の支援をしたい」と話したところ、最初に配属された市民協働課でその業務に取り組めました。ですから、最初からモチベーションが高い状態でスタートできたのですが、それも南足柄市役所の仕事に早くから馴染めたことにつながったと感じます。

南足柄市役所の成長機会:出向で経験を積み、業務に活かせる

南足柄市役所が主催した「南足柄市カーボンニュートラル・キックオフフォーラム」の様子
▲環境省に出向した大河原さんが経験を活かし、主担当として業務に携わった「南足柄市カーボンニュートラル・キックオフフォーラム」の様子

編集部

南足柄市役所の特徴として、他自治体や民間企業など外部に出向して学ぶケースが多いと伺いました。お二方も過去に経験されたとのことですが、どちらに出向されたのでしょうか?

大河原さん

私は2020年から2年間、環境省に出向していました。出向先では、地球温暖化対策の最前線で働き、国の地球温暖化対策計画の改定にも携わることができました。それまで地球温暖化に関する知識はあまり持っていなかったのですが、出向先の部署では、環境省の職員の皆さんや、同じように自治体や民間企業から出向してきた方たちのおかげで、大変多くのことを学ぶことができました。

その後は南足柄市役所に戻り、環境省での経験を活かした取り組みに励みました。当時は国が2050年までに脱炭素化(カーボンニュートラル)を目指す宣言を行ったばかりであったため、南足柄市も脱炭素化を進めるべく、2022年をキックオフイヤーとして「南足柄市ゼロカーボンシティ宣言」を行いました。

また、市が脱炭素化に向けた取り組みを進めることを市民や市内の事業所の皆様に知っていただくために、「南足柄市カーボンニュートラル・キックオフフォーラム」を開催しました。

このフォーラムでは、ご参加いただいた約700名の会場の皆さんと一緒に環境保全や脱炭素化に向けた宣言を読み上げたほか、南足柄市が市内企業とパートナーシップ協定を結び、協力して脱炭素を目指すことの発表を行いました。

さらに、子どもたちに「未来の南足柄市の自然を守るために今からできること」について作文で発表してもらったり、元環境大臣を招いて基調講演をしていただいたりなど、大人から子どもまで歌やダンスも交えながらの楽しめるフォーラムを開催できました。

南足柄市役所が主催した「南足柄市カーボンニュートラル・キックオフフォーラム」の様子
▲「南足柄市カーボンニュートラル・キックオフフォーラム」のさまざまな取り組み

大河原さん

結果的にさまざまな年代や立場の人々が一堂に会し、「みんなでカーボンニュートラルを盛り上げていく」という機運をつくれたのではないかと感じます。環境省で得られた知識や経験を活かせた事業でしたのでとても印象に残っていますし、個人的にも非常に貴重な経験になりました。

川口さん

私は2019年から約1年間、南足柄市役所と民間企業が協力して立ち上げた横浜の一般社団法人に出向し、そこで南足柄市を活性化するためのイベント企画などに携わりました。

先ほどお話したマラソン大会も、もともとは一般社団法人の前身団体が立ち上げたという縁もありましたし、市内に人を呼び込むための起爆剤となるような取り組みをいろいろと実施できて、すごく学びになりましたね。

環境省・文部科学省などの省庁や他自治体など出向先はさまざま

編集部

川口さんや大河原さんの例以外では、どんな出向先があるのでしょうか?

川口さん

国の省庁ですと、環境省以外だと文部科学省に出向している職員がいますね。南足柄市役所としては、市職員が国の中枢などで経験を積み、そこで得た知見を持ち帰ることで、市の発展に貢献してもらいたいという狙いがあります。

ほかにも、観光PRに力を入れている先進的な自治体や、神奈川県への出向を行っていますので、職員にとってはさまざまな機関での経験を積めるチャンスがあります。もちろん、職員全員に出向の機会があるわけではありませんが、毎年数名の職員が出向をしています。

編集部

ちなみに、出向先はどのように決まるのですか?

川口さん

先ほど例に挙げた観光分野への派遣については、もともと秘書広報課でシティプロモ―ションを担当していた職員が選ばれるなど、個人の希望、経験やバックグラウンドへの考慮は一定程度あると考えて良いかと思います。

南足柄市役所のワークライフバランス:15分単位で時間休が取れる

編集部

南足柄市役所では職員のワークライフバランスを実現するために、どのような取り組みをしていますか?

川口さん

15分単位で時間休を取得できることは、南足柄市役所の特徴の一つです。昼休憩を少し延長したい時に15分や30分だけ時間休を使う人もいれば、資格勉強のために2時間休むといったように、職員それぞれが事情に合わせて柔軟な使い方をしています。

また、3歳未満のお子さんを育てている職員は1日1時間の特別休暇を取ることができます。16時頃に退勤して保育園の送り迎えに行く職員も少なくありません。さらに、男性も含め育児休業取得率がほぼ100%に達しているほど育児休業取得に対する意識も高いので、子育てしながら働きやすい環境だと感じます。

そのほか、ノー残業デーを水曜日と金曜日の週2回設けています。もちろん、部署によっては残業をせざるを得ないタイミングはあるのですが、そんな時は誰か一人に負担が集中するようなことは避け、課全体で業務を割り振り、仕事へのモチベーションを保つようにしています。

有給休暇が取りやすい雰囲気。まとまった休みで海外旅行に出かける職員も

編集部

職場の雰囲気などで、職員の働きやすさにつながっていると感じることはございますか?

川口さん

先ほど大河原がお伝えした「風通しの良さ」が、有給休暇の取りやすさにも表れていると感じます。休みを取る時に上司に報告する際、難色を示されたような経験はありません。むしろ「どんどん休んでよ」といった雰囲気で休暇を取ることができています。

大河原さん

私も有給休暇はとても取得しやすいと感じます。有給休暇の申請時にあれこれ聞く上司もいるとSNSなどでよく見かけますが、個人的には、入庁時に先輩が話していた「人の有給休暇の申請にケチをつけるな」という言葉が印象に残っています(笑)。

編集部

ちなみに、南足柄市役所の職員さんはお休みをどのように活用されているのでしょうか?

大河原さん

ある職員は、よく3〜4日まとめて休暇を取ってスキーや山登りを楽しんでいます。ちなみに、私は温泉が好きで、よく旅行に出かけています。

湯河原町に神奈川県市町村職員共済組合の保養所があり、県内の市町村の職員全員が利用できて、組合割引も受けられるので、私も何度か利用しています。ほかの職員と一緒に仕事終わりに保養所で集合して、レクリエーションをしたり、宴会をしたり、温泉に入ったりしていましたね。

最近も、仲良くしてもらっている先輩と広島や名古屋に行くことがあります。そう考えると、同期に限らず、職員同士の結びつきが強いことも南足柄市役所の特徴かもしれません。

南足柄市役所からのメッセージ:採用は人柄を重視!

南足柄市役所総務防災部総務課主任主事の川口悟史さん、南足柄市役所企画部企画課班長の大河原洋史さん

編集部

最後に、南足柄市役所ではどのような方を募集されているかについて伺えますか?

川口さん

当市役所では人柄を重視した採用を行っていますし、できる限り前職での経験を活かすことのできる部署に配属するよう、努めています。ですので、どんな方でも力を発揮できる場所があるはずです。また、ジョブローテーションもあるので、自分自身の強みを発見できる機会もあると思います。

大河原さん

先ほど申し上げた通り、個人的には当市にはまだまだ伸びしろがあると考えています。ですから、市に貢献したいという思いを持った方はもちろん、地方都市だからこそできること、新しいことにチャレンジしてみたいという方は大歓迎です。

南足柄市にある「道の駅 足柄・金太郎のふるさと」
▲市内にある「道の駅 足柄・金太郎のふるさと」。豊かな自然が南足柄市の特徴

大河原さん

また、当市は市域の3分の2が自然豊かな山林となっていますが、決して不便な場所ではありません。市内には6つの駅があり、路線バスも充実しています。また、高速道路のインターチェンジも近く、隣接する小田原市には新幹線の駅もあるため、交通アクセスは良好です。

おいしい水に恵まれていることも特徴で、都会過ぎず田舎過ぎない、ちょうど良いバランスの街です。そんな暮らしやすさも、南足柄市役所で働く魅力の一つだと思います。

編集部

本日はありがとうございました!

編集後記

印象に残ったのは、「伸びしろ」がたくさんあるという市のポテンシャルを活かすべく、民間から入庁後、ジョブローテーションや出向などで経験を積み活躍できるという点でした。また、取材時のお二人の温かく仲が良い雰囲気からは、南足柄市役所の風土がそのまま伝わってくるような気がしました!

南足柄市役所の働き方のまとめ

採用の特徴
  • 事務職の採用は民間からの転職者が半数以上
  • 30代後半の技術職採用実績あり
  • 人柄重視の採用方針
キャリア形成
  • 国の省庁への出向機会あり
  • 他自治体や民間企業への出向も
  • 前職の経験を活かせる配属を考慮
職場環境
  • 部署間の連携が円滑
  • 職員同士の仲が良く質問しやすい
  • 専門知識を教え合う文化あり
働き方
  • 15分単位で時間休取得可能
  • 週2回のノー残業デー
  • 有給休暇が取得しやすい
  • 育児休業取得率はほぼ100%
やりがい
  • 市民生活を支えられる
  • 地域活性化に貢献できる

南足柄市役所の基本情報

南足柄市内の桜と紅葉の風景
▲南足柄市大雄町の「大雄紅桜」と、大雄山最乗寺の紅葉

市役所名 神奈川県 南足柄市役所
住所 神奈川県南足柄市関本440
公式ページ https://www.city.minamiashigara.
kanagawa.jp/
採用ページ https://www.city.minamiashigara.
kanagawa.jp/machi/soshiki/recruit/
募集職種 事務職、技術職、その他専門職
取材・編集
大滝雄介のプロフィール写真

ミライのお仕事
編集部

大滝 雄介

企業の採用や働き方に関する取材を担当し、これまでに三井物産株式会社やヤマハ発動機株式会社、サイボウズ株式会社など、約650件の取材実績あり。編集歴は15年にわたり、出版社勤務時代には官公庁や健康保険組合の機関誌・パンフレットなどを企画段階から多数制作。