ミライのお仕事『注目企業へのインタビュー』企画。今回は、三井物産株式会社にインタビューしました。この記事では、転職を検討されている方に向けて、同社で働く魅力をご紹介します。
「多様性を力に」をバリューに掲げる三井物産は、世界中に広がる事業フィールドで、商社ビジネスを展開する総合商社です。2024年7月には新たな人事制度を導入し、社員一人ひとりが主体的にキャリアを選択できる環境を整備。「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」(※)の推進や柔軟な働き方の実現により、年齢・性別・バックグラウンドに関係なく、誰もが活躍できるフィールドを用意しています。
(※)多様性を受け入れ、全ての人が活躍できる環境づくり
今回は、同社の人事総務部で活躍する平野さんと望月さんに、三井物産ならではの働き方や職場の環境の特徴についてお話を伺いました。
「多様性を力に」をバリューに、D&I活動を推進する三井物産
編集部
三井物産ではダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に力を入れているそうですが、どのような背景があるのでしょうか?
平野さん
三井物産グループでは、多様な価値観・バックグラウンドを有する社員が働いています。私自身は入社以来、国内外のインフラ事業に携わってきましたが、チームのメンバーには他社・他本部・海外・関係会社等異なる経験を持った方や、ジェンダーや年齢、国籍、文化的背景が異なる方も含め、さまざまな方々がいました。
このような多様な価値観・バックグラウンドを持つ社員一人ひとりが最大限に力を発揮し、新たな価値をもたらすことができる環境、多様性が活かされる企業文化を醸成するため、三井物産はバリュー(価値観)の一つに「多様性を力に」を掲げ、D&Iのより一層の強化を進めています。そして、社員一人ひとりにこのバリューが浸透するよう取り組んでいます。
編集部
どのような取り組みをしているのでしょうか?
平野さん
社員への理解・浸透のきっかけとして、MVVとD&Iについて考える「MVV・D&I月間」を年に一度設定し、2021年頃から取り組んできました。初年度は、基本的な考え方についての理解を深めるところから始まり、近年では社員一人ひとりが「自分事」として捉え、それぞれの現場で「実践」していくことをテーマに開催しています。
D&Iを机上の空論にしない。社員参加型のワークショップで相互理解を促進
編集部
MVV・D&I月間での企画の具体例をご紹介いただけますか?
平野さん
全社的な取り組みとしては、経営幹部のメッセージの掲載、室や部単位で行うチーム・ディスカッション、グローバル社員も対象としたオンライン上のワークショップ等を行いました。
また、MVV・D&I月間をきっかけに、各現場の事業環境・職場環境を前提に、社員が主体的に講演会や参加型のワークショップを企画した本部もあります。
編集部
具体的には、どのような企画だったのでしょうか?
平野さん
元スポーツ選手や宇宙飛行士の方を外部講師として招き、組織づくりや相手の立場に立ったコミュニケーション方法、チームをマネージした経験について話を伺ったり、本部長から新人まで世代・部署を超えた社員が参加するワークショップを行ったりしてきました。普段の業務から少し離れて自身の言動を客観的に捉え、チーム員とのコミュニケーションについてヒントを得る機会になっています。
ほかにも、誰しもが持つ無意識のバイアスをテーマにした「アンコンシャスバイアス ワークショップ」、マイノリティ・マジョリティそれぞれの立場での言動が組織に与える影響について考える「インサイダー・アウトサイダーの力学 ワークショップ」がありました。
そこでは、「子育て中の社員は飲み会に参加したくないだろう」「女性社員には重いアサインメントは負担かもしれない」「独身だから長期出張も問題ないはず」等の無意識の思い込みを認知し、バイアスが生じている状況下で的確な判断・対応する為の方法を議論したり、立場の違う社員同士が出席する会議等具体的な場面を想定して各々の視点での言動について話し合ったりしました。
さらに、今年(2024年)は、より具体的な場面を設定しロールプレイを行いました。一つの例をご紹介すると、「成果を上げた部下に重要プロジェクトをアサインしたい上司」と「育休取得を検討している部下」という設定がありました。
上司役と部下役がお互いの事情を知らない状態でコミュニケーションをとり、双方の状況をいかに効果的に引き出し、結論を導けるかに取り組むものでした。このロールプレイでは普段の関係性を逆転させ、部下の立場にいる人を上司役に、上司の立場の人に部下役を担ってもらいました。
▲ワークショップの様子
望月さん
これまで持っていた意識や先入観を変えるには、相手の立場に立つことが大事だと思います。ロールプレイで普段と違う立場に立つことで、「この話をする部下はこんな気持ちなのか」「上司の立場だったらこういう受け止め方になるのか」と体感できます。よりスムーズなコミュニケーションや寛容性が生まれるのではないかと感じますね。
平野さん
結局、「D&Iは大事だよね」と言っても具体的にどうすればいいかが想像できず、行動につなげられなければ机上の空論になってしまいます。現場で発生し得るケースを例に「こういう時は、それぞれの立場でこのようなコミュニケーションの取り方をすればいいのではないか」と考える機会を定期的に設けることで、組織全体の常識・文化が醸成されていくのではないかと思っています。
編集部
ワークショップの参加者からは、どんな声が上がっていますか?
平野さん
「自分事として考えを深める良いきっかけになった」「普段の自分とは違う視点で物事を考えることができ、相互理解のきっかけになった」「定期的にD&Iについて思い出す機会になっている」といった声を聞きます。
また、各ワークショップのテーマに合わせ講師がコミュニケーションにおけるコツやテクニックなども教えてくれるので、組織全体のコミュニケーションスキルの向上につながっていればと思います。
「暗黙のルール」の解消は、キャリア採用社員の働きやすさにつながる
編集部
ほかにも、ワークショップがもたらすメリットがあれば教えてください。
平野さん
D&I浸透・実践の取り組みは、キャリア採用で入社した方の受け入れる体制を考えることにもつながると思います。
当社のキャリア採用比率は40%ほど(2024年時点)ですが、例えば、暗黙のルールの元で仕事が進められていると、新しく入社してきた人は戸惑ってしまいますよね。周囲は暗黙のルールを理解しているから、疑問があっても言い出しづらい雰囲気があると思います。
また、お互いに共通認識を持って進めていると考えている仕事でも価値観が異なるケースがあるはずで、まずはそれらに気づき、ルールを明文化する等の工夫が必要となります。
各現場でマニュアルやオンボーディング体制の整備は進んでいますが、先ほどお話したD&Iに関する各種取り組みは、社員一人ひとりがキャリアの多様性を受け入れる文化の醸成に結び付くと思います。
次世代の女性リーダー候補を育成するプログラム
編集部
御社は女性活躍の推進にも力を入れているそうですが、女性の社員や管理職の割合はどのような状況ですか?
平野さん
当社は現在、女性社員が占める割合が全従業員の30%、女性管理職比率は10%強(2024年時点)となっています(※1)。管理職を担うバンド(役割等級)の上位役職等級には女性社員は多いとは言えない状況です。そこで、次世代の女性リーダー候補を育成するプログラムをいくつか用意しています。
(※1)新たな目標値として2031年3月期の20%達成を設定
取り組みの一つに「Sponsorship Program(スポンサーシッププログラム)」という経営会議メンバーがスポンサーとなるシニアリーダー候補育成プログラムがあります。
本プログラムでは、当社の会長やCFO、CHROなどの経営幹部がスポンサーを務め、1年を通してシニアリーダー候補の女性社員に対し、月に1回の1on1を通してキャリアに関する助言や指導を行い、ストレッチアサインメント(※2)につなげます。
(※2)社員の成長を促すため、通常より少し高度な仕事を任せる育成法
編集部
参加者からはどのような反応がありますか?
平野さん
「育児の関係で夜の時間を活用した広い交流の機会に出席しにくい状態だったが、プログラムを通じて新しいつながりや発想が得られ、視野を広げられた」「ネットワークを広げることができ、本当に役に立った」「経営目線で物事を見る、考えるヒントを得ることができた」といった反応がありました。また、プログラムに参加することで女性同士の横のつながりがつくれることも好評です。
望月さん
管理職の女性が職場で同じような悩みを持つ人と関わるケースは現状、多くありません。そんな中で、スポンサーシッププログラムを通して同じ立場の女性に「こういうケースではどうしていますか?」などと相談できることは、心の支えにもなっているのではないかと思います。
平野さん
ほかにも当社には、「Women Leadership Initiative(ウーマンリーダーシップイニシアチブ)」というプログラムがあります。これは、次世代の女性リーダー候補者を育成し、多様な女性リーダーのモデルをつくるために用意されたものです。
内容としては、リーダーとして求められる組織開発の考え方についての講義を受講し、リーダーとしての自覚を促す為のアセスメントの実施や経営幹部との対話等を行っています。
編集部
多彩な試みをしているのですね。
平野さん
同時に、周囲が女性社員への理解を深めることも大切にしています。先日は経営幹部・部長級社員が集まる会議に外部講師として産婦人科医の先生をお招きして、「働く女性の健康課題とキャリア~職場における相互理解・コミュニケーションの深化」をテーマにお話いただき、大事な気づきの機会となりました。
人事総務部としても女性社員向けにアンケートを実施し、課題を抽出して取り組んでいくなど、新たな試みを仕掛けていきたいと思っています。
2024年7月に人事制度を改定。職種は「総合職」に一本化
編集部
御社では2024年7月から新しい人事制度を導入したと伺いましたが、導入にはどのような理由があるのでしょうか?
望月さん
事業環境が多様化、複雑化し、全ての社員が日々高度化する職務においてプロフェッショナルとしての活躍が求められている状況下で、社員一人ひとりが自分の成し遂げたいキャリアプランを描き、より一層活き活きと活躍できるようにするためです。
そのために、それぞれが求めるスキルや経験を得たり、活かしたりできる機会を増やし、ライフプランに合わせた働き方がしやすくなるような制度を整備しました。
編集部
具体的にはどんな変更を行なったのですか?
望月さん
「担当職」と「業務職」という枠組みを廃止して「総合職」へ一本化し、総合職の中に「職務グループ」を新設しました。職務グループは非管理職が対象で、事業の最前線で動くBusiness Development(BD)、ミドルオフィス業務を担うBusiness Intelligence(BI)、コーポレート部門のCorporate Excellence(CE)の3つに分かれます。
これらの職務グループは移行ができます。例えば、現在BDの業務を担当している人が、DXなどの専門性を活かしてBIの仕事に移りたい場合、上長と相談の上で適切な職務があれば移行できます。
移行の意志は、年1回実施する「人材開発・活用調査」という上長との面談で、社員が「CAN(できること)」と「WILL(やりたいこと)」を共に伝えます。上長からは「MUST(アサインしたい仕事)」や本人への期待を語ってもらいつつ、職務グループの希望など社員自身がやりたいこともしっかりと対話してもらい、キャリアプランを定めていきます。
■三井物産の新人事制度概要
https://career.mitsui.com/company/hrsystem/
制度改定は「三井物産で描きたいキャリアプラン」を主体的に考える契機
編集部
総合職への一本化、職務グループの新設は社員の成長も後押ししそうですね。
望月さん
そうですね。社員には「自分は三井物産でどのようなキャリアを描いていきたいのか」を主体的に考えてもらいたいと思っています。その意志に寄り添うためにも、社内ではD&Iや女性活躍の推進を進めています。
今回の制度改定は、当社にとって歴史的な大転換ともいえる改定でしたが、制度設計の過程では徹底的に社員のヒアリングを重ねました。「やりたいこと」「チャレンジしたいこと」がある人には、その機会を最大限与えられるような制度に近づいたのでは、と思っていますが、引き続き社員からの声に耳を傾けて、より良い人事制度に発展させていきたいです。
一人ひとりが「強い個」となり活躍することが、「強い会社」へとつながると私たちは考えているので、社員にはこの制度を最大限活用してもらいたいと思っています。
転勤の有無も選べるようになり、より柔軟なキャリア形成が可能に
編集部
ほかにも、人事制度改定で変わったことはありますか?
望月さん
社員の約65%を占める非管理職および管理職の一部階層で、一定期間ごとに「転勤の有無」を選べるようになりました。
これまでは入社時に決めた「転勤の有無」という条件が、退職までずっとついて回っていました。ですから、働いているうちに「海外で経験を積みたい」という気持ちが芽生えても、職種を変えない限りその夢は叶えられませんでした。
しかもその職種変更は片道切符で、一度転勤のある職種に移ると後戻りができませんでした。おそらく「将来の結婚や育児といったライフイベントを考えるとなかなか踏み出せない」という社員も少なくなかったはずです。
一方で、今回の制度改定によって「子育て中だから転勤が難しい」「大学院に通っていて今は動けない」といった要望を汲みやすくなりました。社員がそれぞれの事情に合わせてより柔軟に働けるようになった形です。
三井物産から転職希望者へのメッセージ
編集部
最後に、御社に興味を持った読者に向けてメッセージをいただけますか?
平野さん
私は入社以来、インフラ事業に関連する国内外の仕事に長く携わってきました。今は人事総務部におりますが、どこの部署でも共通して、正解が無い中でビジョンを描き、強い意志とオーナーシップを持って、周りを巻き込み仕事を推進していく方が多いと思います。
また、新しいことに挑戦する機会も多いので、好奇心を持って色んなことに取り組める方も当社に向いているのではないでしょうか。
私はこれまで積み重ねてきた経験全てが今につながっていると感じています。日々成長を実感でき、新しい可能性が広がっていく体験ができることも当社の魅力だと感じています。
望月さん
三井物産では、「世界中の未来をつくる」というMissionを掲げ、61ヵ国・地域125拠点(2024年時点)で事業を展開しています。
皆さんがやりたいビジネスに携われるチャンスは、全世界各地にありますので、「三井物産でこんな仕事をやってみたい」と明確に思い描けている人はもちろん、具体的なキャリアビジョンをまだ持っていない人も、当社の広いフィールドのなかできっとやりたいことを見つけられるのではないかと思います。
人は、三井物産にとって最大の資産です。本日ご紹介した通り、当社は、寛容や多様性を重視しています。多様な経験、能力、価値観をもった「個」が、お互いをプロフェッショナルとして尊重し、受け入れ、共に高めあうことのできるインクルーシブな環境の中で、ご自身の力を思う存分発揮してもらえればと思います。
編集部
貴重なお話をありがとうございました!
編集後記
この記事のまとめ
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三井物産株式会社の基本情報
住所 | 東京都千代田区大手町一丁目2番1号 |
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事業内容 | 金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開 |
設立 | 1947年7月 |
公式ページ | https://www.mitsui.com/ jp/ja/ |
採用ページ | https://career.mitsui.com/ |
募集職種 | 総合職 |