新時代の事業に取り組み、若手が生き生きと活躍している企業を紹介するこの企画。今回は、温浴・宿泊施設の運営を中心に、「地域を沸かす」をコンセプトに、多様な分野から地域活性化事業を全国的に展開する株式会社温泉道場を取材しました。
株式会社温泉道場:「おふろから文化を発信する」地域活性化のパイオニア
株式会社温泉道場は、「おふろから文化を発信する」という企業理念のもと、温浴・宿泊施設の開発や運営を中心に、地域の事業を引き継ぎ、その価値を高め、新たな魅力を付加する事業再生などを行う会社です。
地域を活性化する事業を展開する過程で、同時に人材を育成し「将来それぞれの地域で雇用を創出できるリーダーを輩出していく」というミッションを掲げています。そのため、年齢や経験に関わらず、若手社員が活躍できる企業文化や制度が整備されています。
会社名 | 株式会社温泉道場 |
---|---|
住所 | 埼⽟県⽐企郡ときがわ町⽟川3700番地 |
事業内容 | 温浴・宿泊施設の運営 |
設立 | 2011年3月 |
公式ページ | http://onsendojo.com/ |
今回は、株式会社温泉道場の特色ある地域活性化事業の内容や、若手社員が活躍できる働き方、スキルアップの仕組みなどについて、専務取締役・営業本部長の白石純也さん、管理部・HR&カルチャー室室長の小林佳奈さんにお話を伺いました。
若手社員の早期キャリアアップを可能にする独自制度「チャレンジ支配人制度」、毎年開催される社内ビジネスプランコンテスト「夢会議」、インターン受け入れプログラム「地域留学プログラム」、地方採用やUIJターン社員へのサポート、新規採用にあたって求めている人材像などについても詳しく説明していただきました。
温泉道場の多角的事業展開:温浴施設から地域資源の活用まで
▲「おふろcafé」utataneのセルフロウリュ付きサウナ
編集部
最初に、温泉道場さんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか?
白石さん
私たちは「地域を沸かす」をコンセプトに、温浴・宿泊施設を運営している会社です。埼玉県を中心に長時間滞在型の温浴施設「おふろcafé」をはじめ、さまざまな業態の温浴・宿泊施設の経営・運営をしています。現在、県外のパートナーシップ先の施設を含めて12拠点を展開しています。
また、温浴・宿泊施設だけでなく、食品やアパレルの商品開発など他分野も手掛けています。さらに、企業の経営コンサルティングやBCリーグの野球球団の運営まで、法人・行政とも連携して地域活性化につながる事業を幅広く行っています。
編集部
他分野の事業について、ひとつ事例をお教えいただけますか?
白石さん
温泉道場の本拠地は埼玉県ですが、海がない地域でサバを養殖する「温泉サバ陸上養殖場」を手がけています。また、パンの製造販売や、埼玉県産乳製品を100%使用したチーズケーキの製造販売など、温浴・宿泊施設以外の事業の拡大にもチャレンジしています。
各地域や地方にとって必要な事業開発を通じて、その土地ならではの価値・魅力の発信、雇用の創出をしていきたいと考えています。
▲埼玉県神川町にある「おふろcafé 白寿の湯」に併設されている、サバの陸上養殖場
編集部
温泉道場さんが掲げる、「おふろから文化を発信する」との理念はすごく斬新だと感じました。具体的にはどのような内容なのでしょうか。
白石さん
「おふろから文化を発信する」というキーワードは、社内的にも、採用の説明会などでもよくお伝えしています。
私たちには、「現代のおふろ文化を発信したい」という想いがあります。温泉とおふろは、日本人にとって切っても切り離せない大切な文化であり、身近なレジャーとしての魅力も兼ね備えています。
温浴施設には、ご高齢の方やファミリー、若いグループまで多くの方が訪れます。「地域のさまざまな属性・バックグラウンドをお持ちの方々が集まる場所」だと私たちは捉えていますので、そこから地域の文化や資源を積極的に発信することを大切にしています。
若手育成戦略:早期キャリアアップを実現する環境づくり
▲株式会社温泉道場管理部・HR&カルチャー室室長の小林佳奈さん
編集部
温泉道場さんで働いていらっしゃる社員の方の年齢層、経歴や男女比についてお教えいただけますか。
小林さん
現在、20代の社員は約40人おり、平均年齢は32歳と若い社員が比較的多いです。女性割合は、パートアルバイトスタッフを含めると6割、正社員のみだと4割です。また、新卒入社が6割、中途入社が4割となっています。
編集部
温泉道場さんでは、小林さんのように若手社員の方が活躍されていますが、その理由をご自身のご経験を踏まえてお話しいただけますか?
小林さん
私の場合、2018年に新卒で入社し、2年後には「昭和レトロな温泉銭湯玉川温泉」の副支配人として責任ある立場を任されました。その1年後にはHR&カルチャー室の副室長となり、現在は管理部・HR&カルチャー室の室長として、新卒や中途採用、インターンシップ、全社のカルチャー発信、人材交流や戦略人事などを担当しています。
私のような若手社員にも、より大きな活躍の機会が与えられる最大の理由は、社長の山﨑寿樹の考えはもちろん、「年功序列ではなく、若手社員にも決裁権と、活躍の場を与える」という社内カルチャーが根付いているからです。
編集部
実際には、どのようにして若手社員は活躍の場を与えられるのでしょうか?
小林さん
温泉道場では、新しいプロジェクトを立ち上げるときには、自分から手を挙げた社員には、積極的にチャンスを与えるというシステムができあがっています。それにより若い社員はやりやすさとやりがいを感じ、さらに意欲を高めていると思います。
私自身も、これまでのキャリアでステップアップする際は、「チャレンジします」と自ら手を挙げてきました。
編集部
温泉道場さんの、若手社員のチャレンジ精神を支えるシステムは、どのような形で実を結んでいますか?
小林さん
新卒入社の社員も含めて、実際に支配人の役職に就いて果敢にチャレンジし、立派にこなしている社員が年々増えています。
周りの社員が次々と支配人などの管理監督者になって頑張っている様子を見て、若手社員たちの間にも「自分もチャレンジしたい」という思いが芽生え、より一層仕事に前向きに取り組む姿となって現れています。
若手社員への権限委譲:決裁権付与によるリーダーシップ育成
▲埼玉県ときがわ町にある「昭和レトロな温泉銭湯玉川温泉」
編集部
温泉道場さんが若手社員のチャレンジ精神を、会社を挙げて支え、バックアップする体制について、具体的にお聞かせください。
小林さん
チャレンジ精神のある社員には、早い段階から現場で決裁権を持たせています。決裁権を持ち、リーダーとなることで、向上心を持って活躍できる職場環境が生まれます。
決裁権が多いということは、自分で考え、決断しなければならない範囲が広がるということでもあります。同時に責任感も生まれるので、仕事を進めていく中でリーダーとしての自覚と誇りが育まれていきます。
私自身もHR&カルチャー室の室長を務めていますが、他の企業とは異なる形で、温泉道場に適した人事制度を自ら考案し実行しています。決裁権を持ち、自分で決定していく必要があるのはプレッシャーを感じますが、それ以上にやりがいを強く感じています。
編集部
そのプレッシャーをどのように解消されているのでしょうか?
小林さん
社内には相談しやすい環境があるので、それによってプレッシャーを解消できています。私の上司にあたるメンバーには営業本部の社員が多く、事業の進捗状況などを教えてもらえます。得られた情報を基に業務を多角的に見直し、自分が目指すべき方向性を冷静に考えるようにしています。
非常にフラットな職場環境で、プレッシャーも最小限に抑えられるので、大変ありがたく感じています。
「チャレンジ支配人制度」:若手の挑戦を支える温泉道場独自の仕組み
▲埼玉県大宮にある「おふろcafé utatane」
編集部
若手社員のチャレンジ精神を支えるために、温泉道場さんではどのような制度を設けているのでしょうか?
小林さん
温泉道場には、早期にキャリアアップできる独自の「チャレンジ支配人制度」があります。これは、役員へのプレゼンをして認められた上で、1年間の期限付きで支配人や室長などの責任ある役職にチャレンジできるという社内制度です。
編集部
「チャレンジ支配人制度」ではどのような人材が活躍していますか?
小林さん
私も実際に制度を利用していますが、「仕事を自分でとりにいくこと」「難易度の高い仕事を面白い仕事に変換すること」が自然とできている人は、チャレンジを成功させている印象があります。
白石さん
弊社のクレド(従業員の行動指針)には、「素直・勉強好き・プラス発想」というキーワードがあります。基本的にはその三要素を満たしている人が「チャレンジ支配人制度」に採用され、実際に活躍しています。
若いうちからリーダーになることで、決裁権の行使や意思決定の回数をたくさん積み、ステップアップしてほしいと考えています。そこで培われるのは、自分で責任を持って何かをやり遂げる経験から来る自信です。そのためにも大切なのは、勇気をもって飛び込むチャレンジ精神です。
編集部
温泉道場さんで実際に「チャレンジ支配人制度」を利用された方のエピソードを教えてください。
小林さん
「おふろcafé utatane」のチャレンジ支配人を1年間務めた社員がいました。任期満了後、その社員は新事業である「サバの陸上養殖」の立ち上げに注力し、現在は事業を統括する立場として活躍しています。
さらに、「もっとチャレンジしたい」と自ら手を挙げ、「おふろcafé 白寿の湯」の支配人にも抜擢されました。
再度挑戦する場があることで、そのときに得た経験や失敗もすべて次に活かし、より成長して活躍することができるのだと実感しました。この制度は、社員の継続的な成長を支援する重要な役割を果たしています。
温泉道場の独自福利厚生:社員の成長と交流を促進する多彩なプログラム
▲温泉道場では社員同士の交流が活発に行われている
編集部
福利厚生について伺いたいのですが、温泉道場には、キャリアアップのための独自の制度があるそうですね。
小林さん
はい。私たち温泉道場には、ユニークな福利厚生の制度が数多くあります。その中でも、「温泉道場ゼミ」という公休や有休を利用しての研修制度は、個人では体験しづらい経験やスキルアップの機会を提供しています。
社長の山﨑から学ぶマーケティング、温泉ソムリエ認定セミナーなどの座学から、ゴルフ、スノーボード、寿司を握るゼミ、海外視察ゼミなど、さまざまな内容のものが毎月開催されています。自分の興味関心に合わせて選ぶことができ、費用は会社が負担してくれます。参加は自由で強制ではありません。
私はこの社内制度を積極的に活用しています。例えば、高級レストランでの食事体験、社内で育てている和牛の視察、ワインのテイスティング講座への参加、さらには社員みんなでのプロ野球観戦なども行いました。
この制度は非常に学びが多く、仲間と一緒に参加することで新しいことへのチャレンジがしやすいと感じています。
▲越生町にある「BIO-RESORT HOTEL&SPA O Park OGOSE」で提供するコースメニュー
活発な社内コミュニティ:自発的に生まれる部活動の事例
編集部
温泉道場さんには、部活動もあると伺いました。公式サイトでゴルフ部の写真も拝見しましたが、皆さん楽しそうですね。
小林さん
はい、その通りです。温泉道場には多様な部活動があります。サウナ部、アウトドア部、ゴルフ部、芸術部などがあり、事前に活動申請をすると部活補助金が出るという制度を設けています。
部活動発足のきっかけは、温泉道場ゼミでのゴルフ体験でした。社員たちがゴルフに夢中になる姿を見て、社長の山崎が「ゴルフを部活にしよう」と提案し、全体会議で決定しました。初めて会社メンバーでゴルフに行ってからわずか3ヶ月で部活化が実現しました。
小林さん
社員同士の仲の良さは、日々の交流からも感じられます。特に新卒の若手社員は休日にも自主的に集まっています。
例えば、白石が呼びかけて20代の社員が集まる「20代会」という飲み会があります。また、休日に仲の良い社員同士で集まって、興味のあるお風呂屋さんやカフェなどを見学に行く「100店舗訪問」という活動も行っています。このように、社員間の交流は非常に活発だと感じています。
地域リーダー育成への取り組み:温泉道場が目指す人材輩出
▲株式会社温泉道場 専務取締役 営業本部長の白石純也さん
編集部
温泉道場さんでは、「地域で活躍するリーダーの育成、輩出」を掲げられていますが、この点についても詳しく教えていただけますでしょうか。
白石さん
私たちには「地方に行けば行くほどリーダーが不足している」という課題を解決するために、「将来それぞれの地域で活躍できるリーダーを育てたい」という思いがあります。先ほどお話した「チャレンジ支配人制度」もその思いから生まれた取り組みの一つです。
さらに、特徴的な人材育成の制度として、毎年開催する「夢会議」という社内ビジネスプランコンテストがあります。「夢会議」で優勝および入賞した社員のビジネスプランには温泉道場が出資しますので、実際に事業化に向けて始動したプロジェクトもあります。
これまでに、「夢会議」からオリジナルビールの製造販売事業や、新会社の設立などが実現しました。温泉道場では、社員が新たな事業を立ち上げることを会社として積極的に支援しています。このような取り組みを通じて、地方で活躍できる人材を積極的に育成し、輩出していきたいと考えています。
編集部
「夢会議」はどのように行われているのでしょうか。
白石さん
社内のビジネスプランコンテストという形式で開催しており、社長の山﨑や私が審査員となって、事業として成立するかどうかを厳しく審査します。応募条件は特に設けておらず、入社1年目の新卒社員から入社10年目のベテラン社員まで、誰でも応募できる制度となっています。
2023年は11月に開催予定ですが、ここ数年は金融機関の方々も参加され、優秀な企画には「このプランなら融資を検討します」といった話にもなってきています。コンテストへの期待が高まっており、いよいよ本格的なビジネスコンテストとして発展してきていることを実感しています。
「地域留学プログラム」:次世代リーダー育成を目指すインターンシップ
編集部
温泉道場さんでは、「地域留学プログラム」としてインターンを募集されていますが、募集に至った背景や思いを教えていただけますか?
小林さん
インターンシップのプログラムは昨年度から行っており、今年度から「地域留学プログラム」というタイトルをつけて募集をしています。4、5年ほど前から、学生の皆さんからインターンシップの要望を数多くいただくようになりました。以前は応募を受け付けていましたが、具体的なプログラムがなかったため、全ての要望に応えることができませんでした。
新卒採用の際にも、意欲的な学生から「就職活動より早い段階で関わりたい」という希望が寄せられました。これらの声に応えるため、プログラムを立ち上げることにしました。
私たちの目標は、学生の皆さんが社会人になる前に自立して働ける力を身につけることです。さらに、地域に留学するという気持ちでインターンに挑戦して欲しいという思いから、「地域留学」という名称をつけました。
編集部
実際、インターンではどんなことをされるのでしょうか。
小林さん
基本的に、新卒の社員と同様に店舗の運営に携わっていただきます。店舗ごとに状況が異なるため、まずはお客様のニーズや店舗のコンセプトを理解してもらうために、接客や清掃などの基本的な業務を担当していただきます。
また、各店舗の支配人が設定した課題に、インターンシップ期間中に取り組んでいただくことも重要な内容となっています。これにより、実践的な問題解決能力を養うことができます。
編集部
インターンに参加される学生さんは何年生の方が多いのでしょうか?
小林さん
実際にインターンに参加されるのは大学3年生の方が多いです。ただ、1年生や2年生でも興味を持ってご連絡くださる方がいらっしゃいますので、そういった方々とはメッセージのやり取りを行っています。
UIJターン支援:温泉道場が提供する地方創生キャリアパス
編集部
地方採用について伺いたいのですが、これまで温泉道場さんの社員の皆さんはどのエリアから入社されているのでしょうか。
小林さん
北は北海道、南は鹿児島と、全国各地から入社してくれています。全体的には、故郷に戻る「Uターン」ではなく、これまで住んでいない土地に移住する「Iターン」の人が多いですね。
例えば、当社の取締役副社長の宮本昌樹は、温泉道場で約5年間事業に専念した後、現在は三重県でグループ会社の株式会社旅する温泉道場の代表取締役社長を務めています。将来的には、地元の和歌山県に戻り、そこで事業を展開したいと考えています。
若手社員の中には、温泉道場でノウハウを学び経験を積んだ後、自分の地元に戻って事業を展開したいと頑張っている人も大勢います。本人の努力次第で、さまざまな可能性が開かれると思います。
白石さん
温泉道場には「将来それぞれの地域に仕事を作ることができるリーダーを輩出していく」というミッションがあります。実際に「いずれは自分の出身地域を活性化させたい」と考えて頑張っている社員も多いので、会社としては、事業を成功させながら社員の将来の挑戦をしっかり応援していきたいですね。
温泉道場が求める人材像:地域活性化に挑戦する意欲的な人材
編集部
最後に、温泉道場さんに興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
小林さん
温泉道場は、若手社員の意見が通りやすく、社員から意見が活発に出てくる会社です。20代から30代以降まで、幅広い年齢層の社員がおり、全員のキャリアについて皆で考えています。
「みんなで会社を作っていこう」という社風があるので、既存の業務をこなすだけでなく、自ら新しいことにチャレンジしたい人にとって、活躍できる環境が整っています。
白石さん
温泉道場は、2023年4月から「ONDOホールディングス」という体制に移行し、第2・第3創業期として、さらに事業の多角化を進めています。
温泉、サウナ、ホテル、宿泊などの業種で活躍したい方、また地域振興に関わる事業など、様々な分野でチャレンジして活躍したい方は、ぜひ一緒に働きましょう!
編集部
自らの可能性を広げ、積極的に活躍したいという意欲のある方にとって、温泉道場さんは非常に魅力的な職場だと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社温泉道場:https://ondoholdings.com/
採用ページ:https://ondoholdings.com/recruit/