新しい働き方を取り入れている企業を紹介していく企画。今回は「ペッツオーライ株式会社」をご紹介します。同社は普段はバーチャルオフィスを使ってフルリモートで働く一方、定期的に全社員がリアルで集まる場を設けているそうです。ペッツオーライのミッションや働き方、求める人材について、代表取締役CEOの小早川斉さんにお話を伺いました。
ペッツオーライ株式会社とは?
▲24時間365日、専門家に病気・フード・しつけについて相談できる「ペッツオーライ」サービス
「すべての動物たちが”正しく”健全である世界を創る」というミッションを掲げるペッツオーライ株式会社は、ペットを軸に様々なITサービスを展開し、業界に新しいスタンダードを創り出そうとしています。
主軸となるサービスはペットの病気、しつけ、フードなどの悩みを専門家に24時間アプリから相談できるオンライン専門家相談サービス「ペッツオーライ」です。電話相談やLINE相談など同様の相談サービスは世の中にありますが、ペッツオーライではあらゆる相談方法を検証した結果、独自の問診票と動画を使った相談方法を採用しました。
これにより、ユーザーは状況を正確に伝えられ、専門家はテキストと動画で素早く回答を行うことができます。さらに事務局が専門家の回答を一語一句チェックし、PDCAサイクルを回すことで品質を向上させており、ユーザー満足度は平均4.7(5段階中)と高い満足度を得ています。
▲ペッツオーライは独自の相談スキームを採用したことで、高い満足度を実現している(同社公式ページより)
リクルートの新規事業からスピンアウト
ペッツオーライ誕生のきっかけは、代表の小早川さんがリクルートに在籍中の2015年、ゼクシィ、R25、スタディサプリなど数多くの事業を創出してきた同社の新規事業提案制度「RING」でグランプリを獲得したことです。2016年に事業化し、黒字にまで成長させた後、2020年12月よりスピーディな事業成長を実現させるために、リクルートからスピンアウト(※)しました。
(※)スピンアウト:会社の一部門を切り離し独立させること
会社名 | ペッツオーライ株式会社 |
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住所 | 東京都江東区豊洲五丁目6番15号NBF豊洲ガーデンフロント6F |
事業内容 | Webサービスの運営、ペット関連サービス支援 |
設立 | 2020年9月10日 |
公式ページ | サービスサイト:https://petsallright.net/ コーポレートサイト:https://about.petsallright.net/ |
ペッツオーライは動物と他業界をつなぐ「ハブ」を目指す
▲「ペットの代弁者であり翻訳者でありたい」と語る小早川さん
編集部
現在、ペットに関するオンライン専門家相談などのサービスを展開されていますが、ペッツオーライさんの事業が目指すことを教えていただけますか?
小早川さん
私たちはペットを「共通言語を持たないパートナー」と定義し、ペットたちの気持ちを代弁できたり翻訳できたりする「専門家」の方々の力を活用しながら、ペットやオーナーの問題解決をしていこうという会社です。
会社は2020年の設立ですが、ペット業界歴だともう8年半近く経っているので、昨今、出てきているペット系スタートアップの中ではベテラン的な存在です。
そこで、今後は我々が持っている専門家の人脈や技術力を活用して、業界の仕組みづくりもしていきたいと考えています。この業界では単一サービスはあっても、業界を良くしていくための仕組みを提供する会社というのは意外となかったんです。
編集部
業界の仕組みづくりとは、具体的にどのようなことを想定されているのでしょうか?
小早川さん
リクルート社内時代に開始したオンライン専門家相談サービス「ペッツオーライ」とは別に、2022年に新たにリリースしたペットとのお出かけを支援する「Wan!Pass(ワンパス)」というサービスで、業界の仕組みづくりに取り組み始めたところです。
「ワンパス」は狂犬病や混合ワクチンの接種証明書をデジタル化する機能に加え、ペットオーナーのリテラシーと犬のしつけ習得レベルを認定し、それを元に犬を連れて入店できるお店を探せるアプリです。ペットと入れるお店を探しているオーナーと、ペットオーナーの集客方法やマナーなどに頭を悩ませている店舗の両者にとってメリットがあります。
▲ワンパスは犬のしつけレベルを認定し、各店舗が定める「入店要件」と照合することで、ペット同伴での入店ハードルを下げる
小早川さん
「ワンパス」はペット業界以外の企業との取引を目指したサービスです。
例えば、お取引するのは、スーパーや小売店、遊園地、旅行代理店、都市開発を行うディベロッパー、自治体などが想定されます。ペットの行動圏内にあるすべてのタッチポイントにおいて、ペットと社会をつなげる仕組みを作りたいと思っています。
そして、私たちのサービスを使うことで、企業さんがビジネスをさらに円滑に進めることができたり、新しい他の企業さんとのビジネスを展開できるようにしたい。いわば、オープンイノベーションハブのような存在になりたいと思っています。
私たちは「ペッツオーライ」というサービスで既に1つグロースできているので、次の展開は動物と他業界をつなぐハブとなることでこの業界を変えていきたいのです。
編集部
「ペットと社会をつなぐ」取り組みは、ペッツオーライの企業理念が反映されているのでしょうか。
小早川さん
はい。企業ミッションには「すべての動物たちが“正しく”健全である世界を創る」を掲げています。ヒトも動物の一員ですが、私たちはヒト以外の動物が関わるものに対して、正しく健全である世界を作りたいと考えています。
社員の行動指針となる4つのルール「pets」
▲ペッツオーライの4つの行動指針は頭文字をとって「Pets」と呼ばれる(同社コーポレートサイトより)
編集部
企業理念の他に、ペッツオーライの社員さんに伝えていることはありますか?
小早川さん
社員の行動指針として、次のルールを定めています。positive(積極的に)、eccentric(新しく奇抜な発想で)、too efficient(効率的に素早く行動し)、strong(強い意志を持って実現させる)の4つで、頭文字をとって「pets」と呼んでいます。
歴史あるペット業界においては、積極的に取り組まないと業界をけん引することはできません。また、通常の発想ではなく、新しく奇抜な発想を持つことが必要です。私たちは社員が何百人もいる会社ではありませんので、いかに効率的に本質的に動くか、そして、行動をする上ではいかに強い意志を持って実現するかを大事にしています。
編集部
社員の方はこの「pets」を守るために、普段どんなことを意識して行動されているのでしょうか?
小早川さん
ペッツオーライでは「9つの約束」というものも定めており、社員にはみんなこういうことを考えながらやっていこうと伝えています。例えば「ニーズ(要望)を聞くのではなく、インサイト(本質)を知る」というものがあります。これは物事を表面的に受け取るのではなく、それらの背景にあるものは一体何なのかということを考えようという意味です。目的思考を持ち、それに対して何をすべきかを考え、試行することを意識しています。
▲ペッツオーライの9つの約束(同社コーポレートサイトより)
ペットを飼っていない社員の視点も大事にしている
編集部
ところで、ペット関連サービスの会社さんですので、社員の皆さんはやはりペットを飼っていらっしゃるんでしょうか?
小早川さん
いえ、実は全員がペットを飼っているわけではないです。ペッツオーライでは「ペットを飼育していること」を社員の要件には入れていません。理由はただ一つ、ペットを飼っていない人にしか気づけないことが多いからです。僕らペットオーナーが当たり前だと思っていることを「なぜ?」と投げかけてくれることで、新たに気づけるチャンスがあります。
編集部
ペットを飼っていない人から、例えばどんな疑問を投げかけてもらえるのでしょうか?
小早川さん
例えば、狂犬病や混合ワクチンなどは犬のオーナーにとっては打つのが当たり前という感覚ですが、飼っていない人からは「そもそも、なぜワクチンを打たなければいけないの?」「それは何の種類なの?」という声が挙がりました。
また、「ワンパス」のサービス開発の過程で、犬同伴で行ける店に「テラス席OK」という表記を入れたのですが、飼っていない人はなぜその表記が必要なのか分からないそうです。ペットと暮らしている人としては普段からそういう表記を見ているので、当たり前のように感じていましたが、「待てよ、そもそもなぜあの表記にしたんだっけ?」という本質で考え直すことができました。
編集部
確かに、犬を飼っている人は当たり前のことと思ってしまい、「なぜ?」と問い直さないかもしれません。当事者以外の視点や着想も大事なんですね。
小早川さん
そうですね、一番物事を邪魔するのは固定概念だと思っています。ペッツオーライでは、犬のことであれば、猫を飼っている人が結構意見を言ってくれますし、ペットを飼ってない人が「これ、何ですか?」と言ってくれるのも、すごくありがたいなと思っています。
バーチャルオフィスGatherを使ったフルリモート勤務
▲ペッツオーライのバーチャルオフィス。デザインはほぼ社員の皆さんで作り、内装も定期的に変更している
編集部
ペッツオーライ社員さんの働き方について教えてください。
小早川さん
弊社はリアルのオフィスを持たず、社員はバーチャルオフィスにアバターで出社しています。勤務時間はスーパーフレックス制度をとっています。これは私自身のこだわりでもあるのですが、「時間や場所にとらわれない」働き方を実現しています。
背景としては、私自身がリクルート在籍中の10年前くらい前からほぼリモート勤務をしており、作業効率の良さと、場所を選ばないことによる仕事の広がりを感じていたことがあります。その後、時代が変わってリモートワークという働き方が社会的地位を得たことから、オフィスをバーチャル化させました。
今はGatherというバーチャルオフィスを使っています。実はバーチャルオフィスツールの乗り換えも頻繁に行っており、現在で3つめです。4〜5年かけてツールを色々と試しましたので、おそらく、国内でフルリモートかつバーチャルオフィスを使っている企業の中では、相当早くから取り組んでいる方だと思います。
社員同士のコミュニケーションや情報共有にオンラインツールを積極活用
▲コーポレートサイトでは社員のインタビュー記事も読める
編集部
バーチャルオフィスの使い方や社員同士のコミュニケーションに工夫はありますか?
小早川さん
まず、定義をしっかり定着させました。バーチャルオフィス内には各自のデスクがありますが、「ここにいることが出社である」と定義しました。あとは会議室の待機ルールを作ったり、大広間を作ったり、日々ちょっとずつアップデートしながら、皆のコミュニケーションが取れるように工夫しています。
また、このGather上だけで完結させるのではなく、Slack(ビジネスチャット)も併用しています。Slackには各自、社内ツイッターのようなチャンネルを持っており、「今、何々してます」と自由に投稿できるようになっています。
編集部
業務上でも様々なオンラインツールを利用されているのでしょうか?
小早川さん
notion(メモやタスク管理に使えるアプリ)を活用しており、社員はタスク管理をnotionで行うほか、notion上に会社のすべての打ち合わせや商談記録を整理して登録しています。かなり階層深くデータベースを作り上げているので、notionが社内のイントラネットのような状態です。
あとはオンラインホワイトボードのMiroなど、オンラインコミュニケーションツールは、まだ日本語版が存在せず英語版しかなかったものも含め、積極的に取り入れてきました。
編集部
先進的にバーチャルオフィスやオンラインツールを多数試し、ペッツオーライの皆さんにとっての最適なオフィスやツールを見つけ出されたのですね。
ラフな交流は毎月のオフライン会や年2回の合宿で集中的に行う
▲月に1度、全社員で集まるオフライン会を行っている
編集部
フルリモート勤務でのコミュニケーションについて伺いましたが、皆さんがリアルで集まる機会もあるのでしょうか?
小早川さん
フルリモートですが、実は今は月1回、全社員リアルで会うことにしています。そこで集中的にいわゆるラフコミュニケーションをやってしまう形です。
この全社会は、情報共有が目的です。最初はみんな雑談で始まり、各部署で今やっていることやちょっとした悩みを共有しあいます。その後、参加できる人たちでランチや夜ごはんを一緒に食べに行ったりします。我々はオフィスという固定費を必要としないぶん、こうした交流には会社がお金を出すことにしています。
あとは、年に2回ぐらい、社員旅行も行っています。最近は遠くまでは行けませんでしたが、みんなで合宿的なことを行って交流を深めています。
▲社員旅行で訪れた軽井沢ではカーリングを体験
編集部
普段はフルリモートの働き方であるぶん、社員同士がリアルで集まる時には社内イベントのような仕組みにしていらっしゃるんですね。
求める人材は、「目的思考」ができて「探求心」がある人
編集部
採用についてお伺いしたいと思います。ペッツオーライにフィットする人材とはどのような人でしょうか?
小早川さん
目的思考ができる方です。リモートワークかつ人数の少ない会社なので、仕事は「タスク」で落ちてくることはなく、「目的」で落ちてくることが多いです。社員は「目的」を理解し、それを自分でタスクに落とし込んで実行することが求められています。
また、リモートで働くことをリモートと捉えないことが大事です。どういうことかと言うと、実際のオフィス空間にいれば、話したい人の隣に行って「ねえねえ」と話しかけたりしますよね。しかし、バーチャルオフィスを「バーチャル空間だ」と思ってしまうと、隣に行って話かけることを遠慮してしまうんですよね。これはバーチャルとリアルという場所で切り分けてしまっているから起こることです。
そもそも会社という組織において何をするべきかという目的から考えれば、バーチャルであっても実際のオフィスと同じ行動を取るべきです。
編集部
組織の目的を考えれば、バーチャルでもリアルでも行動に違いはないということですね。目的を考える、本質を見るという点は、これまでのお話に共通する部分もありました。他に採用において、重視していらっしゃるポイントはありますか?
小早川さん
探究心があるということです。できればジャンルに偏りなく、自然界にある物事すべてに興味を持てるぐらいの人に来てほしいなと思います。
編集部
今後の様々な展開を考えると、ラーニングアニマル(常に学び続ける主体)であることが求められているんですね。
伸びしろがある会社だからこそ、伸びしろがある人に来てほしい
▲Wantedlyページでは採用情報や社内の様子を発信している
編集部
少数精鋭の会社さんですと、何かのスペシャリストでないと入れないのかなという印象もありますが、そこはいかがですか?
小早川さん
スペシャリストは業務委託で採用することもできます。ですので、社員となる人は既存スキルが豊富な方というよりは、伸びしろがある方に来てほしいです。
何か1つに長けたスキルがあるというよりは、どんどん必要になってくることを学習して身に着けていけるような方です。例えば、データベース言語のSQLが今は書けないとしても、集中して学べば、現場で使えるレベルにはなれますよね。そういう思考を持っている方が理想的です。
私たちの会社は今がてっぺんではなく、伸びしろがまだまだある状況です。会社の成長スピードに合わせて、その方自身もアップデートしていけるような、そんな方を求めています。
編集部
本日はありがとうございました!
ペットオーナーのお悩み解消サポートだけでなく、ペット業界の枠組を超えて動物と社会をつなぐ存在を目指すペッツオーライさん。その取り組みはどんどん進化しており、2022年10月には「ワンパス」に新機能がリリースされました。興味を持った方は同社のコーポレートページのニュース欄も、ぜひご覧ください。
■取材協力
ペッツオーライ株式会社:https://petsallright.net/
コーポレートページ:https://about.petsallright.net/
採用ページ:https://www.wantedly.com/companies/petsallright