事業の成長と社会貢献を両立させ、独自のSDGsに関する取り組みで注目を集める企業を紹介する本企画。今回は「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」をソーシャルビジョンに掲げる株式会社リジョブにインタビューしました。
リジョブは、業界課題を解決するソーシャルビジネスを展開するとともに、「咲くらプロジェクト」「つぼみプロジェクト」「真鶴サテライトオフィス」などのソーシャルプロジェクトにも取り組んでいます。さらに、「LOVE&POWERの両立」をテーマにした採用や人材育成方針にも力を入れています。これらの取り組みについて詳しくお聞きしました。
株式会社リジョブの企業理念:「all as one」で実現する社会貢献型ビジネス
2009年11月に設立された株式会社リジョブは、当初、美容・リラクゼーション業界に特化した求人サイト「リジョブ」を展開する企業としてスタートしました。業界で初めて「成果報酬ウェイト型」のビジネスモデルを導入したことで、設立から約5年で業界トップクラスのシェアを獲得する求人サービスに成長しました。
2014年には株式会社じげんの連結子会社となり、鈴木さんが代表に就任しました。この代表就任を機に、リジョブは経営の方向性を「事業を通してより多くの人に貢献でき、社会性のある会社にする」と定め、従来のビジョンを見直し、ソーシャルビジョンを策定しました。
創業10周年を迎えた際には、ビジョンを「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」と刷新し、CSV推進プロジェクトをスタートさせました。現在はSDGsの一環として、事業活動とソーシャルコミュニティづくりを通じた社会全体の課題解決に取り組んでいます。
会社名 | 株式会社リジョブ |
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住所 | 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 47F |
事業内容 | ・求人メディア事業 『リジョブ』『リジョブケア』 ・キャリアデザイン事業 『moreリジョブ BEAUTY』『moreリジョブ HEALTH&CARE』 ・CSV推進プロジェクト 『咲くらプロジェクト』 など |
設立 | 2009年11月 |
公式ページ | https://rejob.co.jp/ |
今回のインタビューでは、リジョブのSDGsへの取り組みとして展開しているCSV推進プロジェクトの概要や進捗状況、今後の展望などを中心にお聞きしました。また、若手の登用や人材の育成方針、採用のポイントについて、取締役の長南さんと広報の藤森さんにお話を伺いました。
リジョブの事業戦略:経済性と人とのつながりを両立させる価値創造
▲リジョブが運営する美容・リラクゼーション業界向け求人サービス「リジョブ」のトップページ。
編集部
本日はよろしくお願いいたします。最初に、リジョブさんの事業内容と将来的な目標についてお話しいただけますか?
藤森さん
当社はビジョンとして「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」を掲げています。そしてこのビジョンを念頭にして、「ビジネスの力で社会の課題を解決し、社会を豊かにすること」を目指しています。
そのための取り組みの方向性としては、「ソーシャルビジネス領域」と「ソーシャルコミュニティ領域」の二つがあります。まずソーシャルビジネス領域ですが、こちらの主力事業は、美容・リラクゼーション領域の求人メディア「リジョブ」、そして介護・看護・リハビリ領域の求人メディア「リジョブケア」などです。
▲リジョブが運営する介護・看護・リハビリ業界向け求人サービス「リジョブケア」のトップページ。
長南さん
もともと当社は2008年に、リラクゼーション業界向けの求人メディアを運営する会社としてスタートしました。その当時のリラクゼーション業界には、人材採用のコストが高騰し続けているという採用における課題があったんです。また、離職率が高く、採用をしても人が定着しないという課題も業界全体にありました。
その後、同様の業界課題を抱える美容業界のクライアント様に向けて事業を展開していきました。具体的には、3年以内の離職率が8割にも及ぶという業界であるうえに、多くの美容事業者が広告費の掛け捨てリスクの高い「掲載課金型」の求人広告を出しており、店舗経営をするオーナー様にとって採用にかかるコストは、経営上の大きな負担になっていました。
そこで弊当社は採用単価を1/3に下げることを目標に、労働集約型とされる美容業界全体を豊かにする構想を持ち、業界初の「成果報酬ウェイト型」のビジネスモデルを導入しました。簡単に説明をすると、月額で固定費としてかかる広告費を極力下げて、採用時の成果報酬を職種や経験に応じていただくというモデルです。
この取り組みが業界で採用に関わるオーナー様やスタッフ様に受け入れられて、設立から約5年で業界トップクラスのシェアを誇る求人サービスに成長することができたんです。
その後は、美容業界をより良くするために、「雇用支援」のほか美容専門学生に奨学金を支給する「育成支援」、業界応援Webマガジンの運営による「活躍支援」を行い、「育成→雇用→活躍」の各ステージを一気通貫で支援する「美容業界のSPA構想」を構築しています。
また、グループ会社の株式会社リザービアによる、サロンの自社集客システム事業を展開し、「活躍支援」をさらに加速させ、業界全体のご支援をしています。
編集部
もう一つのソーシャルコミュニティ領域では、どんな取り組みをされているのですか。こちらはSDGsにもゴールとして設定されている「社会課題へのアプローチ」というイメージが、非常に強いようにも感じます。
藤森さん
まず、当社では持続可能性と豊かさの広がりのためのソーシャルビジネス領域の深耕とともに、人とのつながりに価値を置き、ご縁のある社会課題に向き合うソーシャルコミュニティ領域の取り組みを推進しています。具体的なコミュニティの取り組みとしては、「咲くらプロジェクト」や「つぼみプロジェクト」、そして「真鶴サテライトオフィスの運営」があります。
はじめの「咲くらプロジェクト」ですが、これはSDGsのゴールの1つ目『貧困をなくそう』や、8つ目『働きがいも経済成長も』という課題に本質的にアプローチをすることを目指したプロジェクトになります。
途上国での雇用を創出して、現地の方々の経済的な自立を支援するもので、2015年にスタートしました。現在はフィリピンで、現地パートナーであるNPO法人アクションのご協力のもと、3カ月間受講料無料のセラピスト養成講座を運営しています。
また「つぼみプロジェクト」は、「事業以外の側面からも社会に価値提供をしたい」という想いで2019年にスタートしました。埼玉県の遊休農地から3反の田んぼを借り、地域のコミュニティづくりを目的に、社員や地域の皆さまをご招待しての田植えや稲刈り体験イベントなどを開催しています。
当プロジェクトで収穫したお米は、サテライトオフィスがある真鶴町のひとり親家庭や地域の子ども食堂など、当社とご縁のある地域の方々に寄付(2万食分/2021年)したりしています。
そして「真鶴サテライトオフィス」は、東京一極集中型の仕事を“仕事不足による労働人口流出が課題”の地方に分配し、地域の雇用を生み出すことを目的として、2020年に神奈川県真鶴町に設立しました。
過疎地域の働き方の幅を拡げる持続可能な仕組みづくりを実現し、リジョブの拠点がある東京や大阪などの都市部で行っている業務を切り出し、真鶴町に住む方々に就業いただいています。
ビジョンマップで見える化:社会課題と事業・コミュニティの相関関係
▲リジョブさんの「ビジョンマップ」。
編集部
公式ページに掲載されている「ビジョンマップ」は、今ご説明いただいた事業やコミュニティと、その取り組みが解決を目指している社会課題との関係性を、見える化したものという理解でよろしいでしょうか。
藤森さん
おっしゃる通りです。
編集部
最下段に書かれている「美容業界のSPA構想」について伺います。このSPAは製造小売業のことを指し、「企画から製造、製造から小売」という流れを一貫して行うビジネスモデルですが、この仕組みをそのまま美容業界に適用しようという構想なのでしょうか。
藤森さん
はい。「企画・製造・小売」というアパレル業界のSPAのモデルを美容業界向けにアレンジして、「育成支援・雇用支援・活躍支援」という流れに置き換えています。この構想を実現することで、技術やサービスを通してお客様に心の豊かさを届ける美容・ヘルスケア業界の課題を解決していきます。
そして、業界従事者のみなさまが長く活躍し続けられるよう、私たちがそれぞれのキャリアステージに応じたサービスを提供することで、業界をより良く、持続可能にしていきたいと考えています。
編集部
ビジョンマップには他にも「途上国の貧困問題解決」や「地域活性化」、そして「ケア業界の支援」といった課題が記されています。そこにリジョブさんの事業や取り組みがどう関連しているのかが、わかりやすくマッピングされていると感じました。
藤森さん
ありがとうございます。ビジョンマップがこの形に落ち着くまでには、かなりの試行錯誤がありました。事業とプロジェクトの関連性や、取り組みが本当にビジョンの実現に繋がっているのかということをすべて、マップとして見える化する必要があったからです。
そのために、長南を含むビジョンマップ策定の企画メンバーは、現場の最前線で事業創りをしているメンバーに何度も出向いてヒアリングを重ね、マップをブラッシュアップしていきました。
ソーシャルコミュニティへの取り組み:リジョブの新たな挑戦の原点
編集部
リジョブさんでソーシャルコミュニティ領域への取り組みがスタートしたきっかけについて教えていただけますか。
藤森さん
現代表の鈴木一平さんが新しいビジョンを創り、リジョブが経営において大切にする軸を確立させたことがきっかけです。鈴木さんは就任早々、今後のリジョブの方向性を考えるために、当時の全社員約70名と個別面談を行い、価値観や想いに対する理解を深めていきました。
面談以外にも、様々なメンバーと食事を共にするなどして、代表でありながらあくまでも一緒に会社を創る仲間として対話を重ね、新しいCI(コーポレートアイデンティティ)をつくり、事業の方向性を決めていきました。
そういったメンバーとのコミュニケーションの中で、鈴木さんは『会社を主語に語るメンバーが多いこと』、また『社会や業界のために何かしたいという利他の心を持ったメンバーが多いこと』に驚いたそうです。
また、鈴木さん自身が20歳の頃に創業した会社を利益優先で経営し、行き詰まった経験も影響し、メンバーとの対話を通じて「業界課題や社会課題の解決に取り組むことで、事業も会社も成長する。より多くの人に貢献できるよう、事業性と社会性を両立していく」という方向性が導き出されました。
この考えのもと、美容業界だけでなく介護業界の人材不足解決のため、介護業界特化の求人メディア事業を立ち上げました。さらに、フィリピンへの視察を経て現地の方々の経済的自立支援を目指し、2015年に「CSV推進室」(※)が設立されました。
(※)CSV:Creating Shared Value=共通価値の創造
編集部
CSVへの取り組み開始が2015年というのは、日本企業としてはかなり早かったのではないですか。
藤森さん
そう思います。特にリジョブのような規模のベンチャー企業では、当時CSVの概念はほとんど浸透していなかったと考えられます。
「咲くらプロジェクト」:途上国の貧困解決に挑むリジョブの取り組み
▲リジョブさんが実施する「咲くらプロジェクト」の受講メンバー。
編集部
では次に、個別のプロジェクトについて詳しくお聞きします。まず「咲くらプロジェクト」の概要についてご説明ください。
藤森さん
「咲くらプロジェクト」は2015年にスタートしました。当社と関わりの深い、日本の美容業界が持つ優れた技術力やサービス力を発展途上国に提供することで、現地における雇用の創造と貧困問題の根本解決を目指しています。
現在、フィリピンのオロンガポ市にセラピストの技術を3カ月間無料で学べる養成講座を開設しています。2017年からはフィリピンの国家機関であるTESDA(職業訓練庁)と連携しており、卒業生は正式な政府認定を受けることができます。2023年6月時点で666名の卒業生を輩出しており、そのうち少なくとも155名がセラピストとして活躍しています。
藤森さん
多くの卒業生を輩出できたことは喜ばしいですが、課題も見えてきました。それは「セラピストとして活躍している卒業生以外の人たちの生活改善が確認できていない」ということです。
そこで「咲くらプロジェクト」の現地パートナーであるNPO法人アクションの横田宗(よこたはじめ)代表が、現地での就業支援を目的に、2023年6月にマニラ市内にスパを開業しました。この施設では養成講座の卒業生のみを雇用し、初年度は8名の卒業生を採用しています。
▲リジョブさんの「咲くらプロジェクト」卒業生。
藤森さん
就業支援が第一の目的ですが、同時に日本式の技術やサービスにこだわったトップクラスのスパとして、現地の皆さまに末永くご愛顧いただけるように運営していく計画です。
また、支援の一環としてリジョブのグループ会社である株式会社リザービアが開発した美容・ヘルスケアサロン向けの予約システムを現地に導入しました。これにより、スパの安定的な集客が実現でき、働くセラピスト達の経済的な自立を積極的にサポートできると考えています。
藤森さん
今回のスパのオープンで、リジョブグループとして「育成から就業まで」という一つのサイクルを、形にすることができました。このモデルを今後さらに発展させることで、途上国の貧困問題解決という大きな課題に、着実に向き合っていきたいと考えています。
「つぼみプロジェクト」:お米を通じたコミュニティ力で遊休農地問題に挑戦
編集部
リジョブさんのソーシャルコミュニティ領域の取り組みである「つぼみプロジェクト」には、藤森さんも深く関わったと伺いました。
藤森さん
プロジェクトのきっかけは、長南の知人から「田んぼが余っているのだけれど、何か有効活用できないか」という相談があったことでした。
実際にプロジェクトを進めることになった時、長南から「藤森の実家は農家だったよね。やってみない?」と声をかけられました。祖父母が農家をしていたこともあり、「面白そうですね!ぜひやってみたいです!」と当時入社2年目の私が推進者の1人として手を挙げ、関わらせていただいています。
長南さん
「つぼみプロジェクト」の田植え・稲刈りの活動は、社会課題の解決だと捉えています。友人からは当初、「米を作っても作った分だけ赤字になる。かといって農地以外への転用もできない。結局この土地は放置しておく以外にない」という相談を受けたのです。
そういった困っている状況を、リジョブで何か解決できないだろうかと考え、その土地を有効活用する方法として2019年にこのプロジェクトを始めました。
収穫したお米の使用用途は、藤森をはじめとする推進メンバーに任せています。都内10箇所以上のこども食堂やリジョブのサテライトオフィスがある真鶴町のひとり親家庭への寄付、社内イベントでの活用など、お米を通した"心豊かな社会づくり"を目指し、プロジェクトを推進してきました。
編集部
当時入社2年目の若手に、こうしたプロジェクトの推進役を信頼して任せるところが、リジョブさんの社風なのですね。
「事業創造合宿」:リジョブの新規事業開発を加速させる独自の取り組み
編集部
次に「真鶴サテライトオフィス」について伺いたいのですが、この発端となったのはリジョブさんの経営幹部候補の方が参加されている「事業創造合宿」だとお聞きしました。これは、どういった内容の合宿なのでしょうか。
藤森さん
この合宿に参加する経営幹部候補メンバーは、年に1回社内公募をし、決定しています。新卒社員のほか、中途入社メンバーから経営幹部候補になった方もいます。
幹部候補メンバーには、全社視点をもって当事者として会社を創る側になりたいという意思と、その責任を担う覚悟を持っていることが求められます。経営陣との面談を経て正式にメンバーが決定します。
長南さん
合宿の内容としては、社会課題をリジョブのリソースを生かして解決するという観点を大切に、「事業」の開発に重きを置いています。基本的には毎回「次の新しい事業をどう開発し、どうインカムを得ていくか」ということがテーマになり、経営陣やマネージャーを含めた参加者全員でミーティングやプレゼンテーションを行っています。
編集部
過去にはどんなテーマがあったのですか。
長南さん
例えば、現在運営している求人メディア「リジョブ」の次なる展開の戦略構築です。また、組織に関することをテーマとした回もありました。現在20代の若手メンバーも将来30代になり、人生のフェーズが変わっていく中で、組織としてどうアップデートしていくかを、メンバーの内省を含め真剣に議論しました。
さらに、過疎地域対策も取り上げました。地方創生という観点で、私たちとして何か役立てることはないかと考えました。ただし、ボランティアではなく、あくまでも事業活動としてきちんと収益を上げることが前提です。それができなければ、地方創生を継続的に行うことが不可能だからです。このように毎年いくつかのテーマを決めて、全員で議論し、実行に移しています。
「真鶴サテライトオフィス」:事業創造合宿から誕生した地方創生の実践
▲古民家を活用した真鶴サテライトオフィス。
編集部
そして、事業創造合宿の議論の場から生まれたプロジェクトのひとつが、地方創生を目的とした「真鶴サテライトオフィス」なのですね。
長南さん
そうです。サテライトオフィスの設立は2020年2月でした。当時は、全国の自治体が企業誘致にかなり積極的でした。リジョブにも、いろいろな好条件で「サテライトオフィスを出しませんか」というお誘いを、たくさんいただいていました。
ただし当社としては最初から、「好条件だから」という理由だけで進出するつもりは、まったくありませんでした。本来の目的である社会課題の解決や、その町への持続的な貢献が実現できなければ、意味がないからです。
そんな中、「リジョブさんを誘致するからには、“真鶴町の活性化”という共通目標を持ち、パートナーとして伴走します」といってくださり、熱量を示してくださったのが神奈川県の真鶴町でした。
真鶴町のご担当者は当初から「金銭的な補助はしない。人と気持ちで支援します」という姿勢で一貫していました。それが当社の社風と合致したんですね。すぐに打ち解け合い、今でもパートナーとして良い関係を築けています。
編集部
「真鶴サテライトオフィス」の現在の状況はいかがですか。
長南さん
当初は真鶴町在住の4人の方の雇用でスタートし、それが2023年8月時点では7人にまで拡大しました。地域の方々には「町の中での存在感が増しているよ」「町に働く場所をつくってくれてありがとう」といった声をよくいただきます。私自身、定期的に現地へ赴きますが、感謝の気持ちを伝えられることが多く、取り組んでよかったと思っています。
「真鶴こども未来カレッジ」:地域の子どもたちの可能性を広げる職業体験イベント
▲「真鶴こども未来カレッジ」の開催風景。
編集部
2023年1月に第1回を開催した「真鶴こども未来カレッジ」は、どんな内容なのでしょうか。
長南さん
これは町内の小中学生とその親御さんを対象に、美容師のお仕事をテーマとした体験交流イベントです。将来の職業選択の幅を広げることが、一番の目的です。サテライトオフィスのつながりを通じて、町内の美容師さんや美容専門学校の現役学生などが講師を務めました。
長南さん
開催のきっかけは、「真鶴サテライトオフィス」に関わっている主婦のスタッフからの言葉でした。「真鶴町に住んでいる子ども達が将来の職業を選択するために、事前に体験したり学んだりできる場が少ない、もっと選択肢を広げたい」という思いがありました。
もちろん、解決策としては「町を離れる」という選択肢もあります。でもその方は「真鶴町の中でこれを解決したい」と。そこで「我々も協力しましょう」という話になり、町民の方々へのヒアリング会を経て、実際のプロジェクトとして始動しました。
編集部
こども未来カレッジは、第2回の開催もすでに決まっているのですか。
長南さん
現在は、第2回目の開催の構想を練っている段階です。将来的には、私たちのような民間主導の事業ではなく、町主導の展開が望ましいだろうと考えています。
当初は、学習塾のような形式で、当社が収益を得るモデルも検討しました。しかし、私たちの希望としては、当社が事業として推進するよりも、町が主導する魅力的なイベントとして位置づけることができれば、より大きな発展性があると考えています。
リジョブの意思決定プロセス:全員参加型で実現する組織の一体感
編集部
今まで伺ってきた各種プロジェクトの推進者は、どのように決定されるのでしょうか。
藤森さん
プロジェクトの規模や内容によって決定方法が異なります。例えば「咲くらプロジェクト」は、一人で担当できるような規模ではないため、社内の委員会制度を活用しています。「咲くらプロジェクト」専用の委員会が実際の運営を行っています。
編集部
「真鶴サテライトオフィス」の場合はいかがでしょうか。
藤森さん
サテライトオフィスプロジェクトの推進者は立候補で決まりました。基本的には事業創造合宿で推進者を決めています。このプロジェクトに強い思い入れを持ったメンバーが立候補し、その熱意を重視して参加者が了承するという流れでした。
長南さん
リジョブでは「みんなで一緒に決める」というプロセスを非常に大切にしています。例えば「こういうことをやりたい」と提案すると、「それなら、こういうことが必要だ」というアイデアが即座に返ってきます。
またボトムアップ的に上がってきた意見についても、みんなから建設的な提案が寄せられます。そこには上下関係はまったくなく、様々な議論が迅速かつ自然に交わされています。
編集部
そういう風通しのよさが、リジョブさんの企業文化であり強みなのですね。事業性と社会性を両軸で大切にし続けるために、企業文化として何を重視されていますか?
長南さん
当社では、創業当初からメンバーが圧倒的な「当事者意識」を持っており、これはリジョブの土台を支える企業文化として根付いています。
利他の心を持ち、「仲間のために」「部署のために」など、自分という枠を拡げて思考し行動を起こせるメンバーが多くいます。この枠の範囲を社内だけでなく、業界・社会にまで広げていくことができれば、社員とともに関わる方々の未来の選択肢が拡がり、結果として成長し続ける組織になっていけるのではないでしょうか。
これは、すべてはひとつにつながっているという「all as one」の精神とも言えます。
メンバーの共通資質は「LOVE&POWERの種」を持つこと
編集部
リジョブさんで活躍しているメンバーの皆さんには、共通する資質などはありますか。
藤森さん
それは当社の採用キーワードである「LOVE&POWER」という言葉に集約されます。
私は、LOVEとは「誰かの役に立ちたい」という気持ちだと考えています。例えば学生時代に地方創生を課題と感じていたメンバーは、「LOVEの種を持っている」と言えます。
また、そういった原体験がなくても、「その課題を知ったからには解決したい」と自分事として捉える姿勢があれば、確実に種を持っていると考えています。
藤森さん
ただし、当社では採用段階で「想いだけでは不十分」とはっきり伝えることもあります。願うだけでは社会は変わらず、課題は解決できません。LOVEは非常に重要ですが、それを実行するPOWERと併せ持つことで、初めて想いが形になるのです。
特に20代の若手メンバーは、まだ十分な力を持っていなくても、想いを力に変えていく「種」を持っていることを重視しています。
時にはつまずくこともありますが、そこから立ち上がり前進する。その繰り返しを通じて自らのPOWERを育てていくメンバーが、非常に多いと実感しています。
組織づくり:現場の権限委譲で実現する強靭な組織体制
編集部
リジョブさんでは、若手の人材を育成し、強い組織を作るためにどのような方針を持っているのでしょうか。
長南さん
当社にも育成のための制度やルールはありますが、強い会社とは、それらに頼り過ぎず、主体性と全体最適の視点で判断し実行できる組織だと考えています。新しい事業展開などの変化にも柔軟に対応できる組織を目指しています。
編集部
主体性と全体最適の判断軸を持った組織を実現するために、特に重視していることはありますか。
長南さん
「当事者意識を持ち、日々事業を推進している現場メンバーにいかに任せるか」ということを重視しています。自分たちで考え、実行し、成果に繋げる主体性を持った組織を作るためには、これが重要だと考えています。
人材育成の観点からは、「思考停止を生むようなルールや制度はなるべく作らない」ことが正しいアプローチかもしれません。
長南さん
「正解は自分たちで導き出す」ということが大切です。世の中の変化を見据えながら、自分たちで正解を探し続けること、あるいは自分たちが選んだ道を正解にすることを常に意識できている組織が「強い組織」だと考えています。
リジョブの目指す未来:働きがいと心の豊かさが共存する持続可能な社会
▲働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』を3年連続で受賞している。
編集部
リジョブさんは「ホワイト企業大賞」(※1)の受賞や、「働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』」(※2)に3年連続で選出されるなど、外部からも高く評価されています。これについてはどうお考えですか。
(※1)「第9回ホワイト企業大賞特別賞『LOVE&POWER賞』」受賞(主催:ホワイト企業大賞企画委員会)
(※2)「働きがいのある会社ランキング『ベストカンパニー』」3年連続選出/2020~2022年(主催:GPTWジャパン)
藤森さん
「働きがいのある会社ランキング」は、企業におけるメンバーの「やりがい」と「はたらきやすさ」を評価する、60か国・約7,000社が参加する世界最大規模の従業員意識調査です。日本における上位100社に贈られる「ベストカンパニー」に3年連続で選出されたことは、私たちにとって大きな励みになりました。
また、「社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にする企業」を表彰するホワイト企業大賞には、「社会にホワイト企業の数が増えれば幸せな人が増え、社会はより良い方向に進化する」という想いに共感し、エントリーしました。
特別賞受賞を糧として、メンバーひとりひとりが社会に対する愛情と力を大切にしながら、これからも「フラットで心の豊かさが持続可能な社会」づくりを目指していきたいと思います。
採用のポイントは「LOVE&POWERの両立」への共感
▲採用ページに掲載されているメッセージ。(公式サイトより引用)
リジョブさんは理想を追求しながらも、現実をしっかりと見据えています。インタビューで紹介された各プロジェクトから、「心の豊かさあふれる社会」の実現に向けた本気の想いが伝わったのではないでしょうか。
最後に、リジョブさんから読者の皆様へのメッセージをご紹介します。
今回の取材でお話しした「LOVE&POWERの両立」「社会性と事業性の両立」を図り、ビジョンを追い続けることは、非常に難易度の高い目標だと考えています。
しかし、どんなに高い目標であっても、未来を信じて挑み続けることがリジョブの在り方です。そして、本気で課題に向き合うためには、課題解決と同時に必要な資金を事業として生み出し続けることが重要です。
この両立ができて初めて、継続的な課題解決が実現できます。当社には社会をより良くしていくこと、誰かの困りごとを解決するために行動できるメンバーが集まっています。
このような「同志」と呼び合える仲間をこれからも増やし、共に歩んでいきたいと思っています。
■取材協力
株式会社リジョブ https://rejob.co.jp/
採用ページ https://rejob.co.jp/recruitment/