独自の女性活用策や若手育成策、そして社員の新たなサポート体制などで注目されている企業を紹介するこの企画。今回は保育園や幼稚園へ体操の指導員を派遣している有限会社さわだスポーツクラブをインタビュー。飛躍のきっかけとなった規制緩和や指導方針の大転換、そして女性メンバーの活用策や独自のカルチャー、福利厚生、さらには採用におけるポイントを伺っています。
有限会社さわだスポーツクラブとは
1975年4月に設立された有限会社さわだスポーツクラブは、保育園や幼稚園への体操指導員の派遣を主力事業としています。理論と実践の両輪を基軸としており、近年では英語教育の要素を組み込んだ、新たな運動プログラムの展開に取り組んでいます。
また女性メンバーの積極的な活用でも注目されており、従来の体育会的なイメージを刷新しています。しかも早い段階からリモート会議や動画配信に取り組むなど、チャレンジ精神旺盛な社風でも知られており、2023年4月には「保育を支える企業アワード2022」を受賞しました。
会社名 | 有限会社さわだスポーツクラブ |
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住所 | 東京都練馬区下石神井4-28-13 塩谷ビル1F |
事業内容 | スポーツ教育産業社会体育(幼児体育~児童サッカー・体操・新体操・空手・チアダンス・キッズダンス)の指導と企画 |
設立 | 1975年4月 |
公式ページ | https://sawada-sc.com/ |
2000年に施行された「保育に関する規制緩和」を追い風に、急成長を遂げた有限会社さわだスポーツクラブは、創業以来のカルチャーとして「チャレンジ」と「教育」を徹底しています。取締役社長の澤田康徳様に、この価値観についてお聞きするとともに、「家族を大事にする」という方針に基づいた福利厚生、そして女性の活躍状況などを伺いました。さらには採用におけるポイントをお聞きしています。
一都三県の幼稚園や保育園に体操の先生を派遣
編集部
まずはさわだスポーツクラブさんの事業内容について、ご説明をお願いします。
澤田さん
私どもさわだスポーツクラブは、1975年に東京都練馬区で創業しました。東京・埼玉・神奈川・千葉の私立幼稚園様や社会福祉法人の保育園様、そして株式会社の保育園様に、体操の指導員を派遣する事業を行っています。
また、派遣先の施設を活用させていただき、体操やサッカー、新体操やチアダンスなどをコーチするビジネスも展開しています。弊社は2023年で設立から48年ですが、同業者の中には50年以上という大先輩もおられます。時代の流れが大きく変化している中で、我々の業界もこれから大きく変わっていくものと考えています。
編集部
体操の先生といっても、様々なスポーツを教えていらっしゃるんですね。
澤田さん
そうです。特定の種目に限ることなく、いろいろなことを教えています。
躍進を支えた規制緩和と指導方針の大転換
▲子どもの心に寄り添い運動嫌いをなくす、さわだスポーツクラブの「運動あそび」。
編集部
さわだスポーツクラブさんは2023年4月に「保育を支える企業アワード2022」(主催:株式会社エヴォルブド・インフォ)を受賞されるなど、非常に注目されています。ここまでの躍進を遂げた要因について教えてください。
澤田さん
我われの業界にとって一番の追い風は、2000年に施行された「保育に関する規制緩和」です。それまで保育園は、自治体か社会福祉法人しか設立できませんでした。ところが待機児童問題が大きくクローズアップされたことなどで、その解消を狙って規制が緩和され、株式会社による営利を目的とした保育園の設立が認められたんです。
これにより保育園の数が急増し、さわだスポーツクラブも株式会社の保育園様への派遣を急激に増やしました。これが飛躍の原動力になりました。
運動経験がない女性スタッフでも指導できる「運動あそび」で他社と差別化
▲社員研修では「誰もが実践できる運動指導」を念頭にしています。
編集部
さわだスポーツクラブさんにとって、規制緩和は大きな成長要因だったと思います。しかし同時に、独自性や強みによる他社との差別化策も、躍進を後押ししたのではないでしょうか。
澤田さん
おっしゃる通りです。弊社が今大切にしている指導のポイントは、「誰もが実践できる運動指導」です。規制緩和による保育園数の拡大にともなって、従来やっていた指導の内容を刷新しました。
それまでの指導は、学校体育の流れに沿った「跳び箱・マット・鉄棒」で、これをしっかりと教えることが基本でした。しかしながら、株式会社の保育園の増加にともなって、弊社はキーワードを「運動あそび」に変えたんです。
さらには男性中心だった指導者体制を改めて、女性を積極的に採用することにしました。たとえ運動経験のない女性でも短期間で指導ができるように、研修プログラムの刷新も行ったんです。
編集部
全面的なリニューアルですね。その一番の狙いは何だったのでしょうか?
澤田さん
「運動あそび」を通じて、子どもたちの心の中から「運動嫌い」をなくすことです。そして「運動が好き」「運動は楽しい」という気持ちを心の中に芽生えさせ、そこから自分の好きなスポーツにチャレンジしてもらう。そういったステップを、すべての子どもたちに踏んでもらうことが、プログラム刷新の一番の狙いでした。
編集部
確かに跳び箱や鉄棒だけでは、すべての子どもが運動を好きになることは難しそうですね。
澤田さん
そう思います。ですから指導方針を、「幼児体育」から「運動あそび」へと思い切って転換したんです。それが結果として、他社との一番の違いになったのだと思います。遊びがテーマなので体育の専門家ではなく、運動経験のない方でも指導できる。これを実現するために、社内の研修内容もすべて一から組み直しました。
英語教育の要素を組み込んだ新たな運動プログラム
編集部
「運動あそび」の中に、英語教育の要素を組み込んだ取り組みもされていると資料で拝見しました。
澤田さん
はい。「えいごでからだあそび」というプログラムを作成して、サービス展開を始めています。これは英語と日本語の両方を使ったカリキュラムで、3歳から5歳のお子様が対象です。運動と英語とをコラボさせており、何よりも英語を五感で感じてもらうことに重点をおいています。
英語でのコミュニケーションを体で表現することで、英語への抵抗感をなくしてもらうんです。もちろん一般的な英会話レッスンも続けていただきたいですし、弊社のサービスと併用することで、英会話に迅速に馴染んでいただけると考えています。
編集部
運動をベースにした英語教育というのは、とても面白い発想だと感じました。
澤田さん
ありがとうございます。今はまだ国内だけの展開ですが、いずれは海外にも広げたいと考えています。
メンバーの女性比率を50%まで高めることが目標
編集部
では次に女性の活躍状況について伺います。今は何人の女性スタッフがいらっしゃるのでしょうか。
澤田さん
全社員25人中、女性社員は7人です。数年前は3人ほどでしたが、毎年1人ずつ増やしています。2024年も1名を増員しようと考えています。女性社員比率はまだ3分の1ほどですが、これを早期に50%まで高めたいと思っています。
編集部
女性比率を高めている理由をお聞かせください。
澤田さん
理由の一つは株式会社の保育園様が増えてきたことです。株式会社の保育園様からの女性スタッフを望む声に対応するためですね。そしてもう一つの理由が親近感です。派遣する先生を「体育のプロ」ではなく「運動あそびのプロ」として紹介していますが、お子様やその親御様からは「女性のほうが親しみやすい」といわれることがよくあります。
編集部
男性スタッフと女性スタッフとでは、やはりお客様の反応は違いますか?
澤田さん
それはもう顕著に違います。例えば株式会社の保育園様からは、「女性スタッフをもっと送り込んでほしい」という声がとても多くあがってきています。ところが私立の幼稚園様ですと、「男性スタッフがいい」という声がまだ主流です。
ですからさわだスポーツクラブとしては、どちらのご要望に対してもご満足いただけるように、スタッフ体制を強化しています。弊社のメンバーは男女を問わずに、きめ細かく子どもたちと接してくれているので、とても助かっています。
女性メンバーの増員がもたらした社内の変化
編集部
女性のメンバーを増やしたことで、社内の雰囲気なども変わってきましたか?
澤田さん
はい。一番の変化は、さわだスポーツクラブに「しなやかさ」が出てきたことです。男性中心だった時代はゴツゴツしていたというか、やはり部活のノリや、ある種の汗臭さなどが感じられたんです。しかし女性メンバーが増えたことで、そういったイメージが非常に薄らいできました。体育会イメージの強かった男性メンバーも、今では体操のお兄さん的なソフトイメージに変わり、指導の幅が大きく広がってきています。
編集部
さわだスポーツクラブさんの女性メンバーには、共通する資質などがありますか?
澤田さん
弊社の女性メンバーは、チアダンスやヒップホップダンスの経験者が多く、とにかく明るいということです。今は小学校の体育にダンスの科目がある時代です。小さな頃からダンスに慣れ親しんでいるので、全員がダンスのノリを体得しており、本当に明るい。それがお客様にも自然と伝わり、いい評価につながっているのだと思います。
「失敗してナンボだよ」、「社員同士でも教えあい、育てあう」カルチャー
編集部
ホームページを拝見して「チャレンジを大切にする」ということを、非常に重視していると感じました。これがさわだスポーツクラブさんのカルチャーと考えてよろしいでしょうか?
澤田さん
そうですね。弊社は創業以来、「チャレンジをしよう」「どんなものにも手を出そう」という方針を一貫してきました。私もこの考えをそのまま引き継いでおり、「他社ではやらないことにチャレンジする」ということにこだわっています。そしてメンバーにも「チャレンジをしよう」「失敗してナンボだよ」という精神を、さらに深く根付かせたいと考えています。
編集部
メンバーは皆さんアスリートですから、チャレンジの大切さはよくご存じでしょうね。
澤田さん
おっしゃる通りです。それと同時に「教育」をとても大切にしています。そのため常に、「社員同士でも教えあい、育てあう」ということを言っています。
社員同士でも、子どもたちに対しても、他社様に対しても、お客様に対しても、常に「教えていただく」という気持ちと、「お教えする」という気持ちの両方が大切だと考えています。そのためには、上から目線ではなく、同じ目線に立つことがポイントだと思っています。
入社1年目からイベントの企画・開催にチャレンジ
編集部
カルチャーの一つであるチャレンジについては、どんな取り組みをされているのですか?
澤田さん
一つはメンバー全員が、論文を書いて学会に発表していることです。これは10年ほど前から続けているチャレンジです。幼児向け教育の実践だけでなく、理論を大切にするという狙いがあります。また今後のチャレンジという意味では、やはり英語ですね。「えいごでからだあそび」のより本格的な展開に、本腰をいれてチャレンジしてほしいと思っています。
編集部
他にはどんなチャレンジをされていますか。
澤田さん
例えばさわだスポーツクラブでは、たとえ入社1年目のメンバーであっても、自分のやり方でイベントを完結するというチャレンジができるんです。最初は小さなものでいいから、イベントをゼロから企画して、リサーチして、予算組みをするんです。
そしてまた、社員同士が楽しむためのイベントの企画にもチャレンジできます。社員同士といいつつも、時にはそこに子どもたちを巻き込むという展開もあります。弊社はそういったチャレンジをする機会がとても多い会社だと思います。
編集部
子どもたちを巻き込むイベントとは、どんなものでしょうか?
澤田さん
例えば夏のウォーターガンイベントですね。水鉄砲を使った、ビショビショに濡れながらの撃ち合いです。あるいはテレビの鬼ごっこ番組をモチーフにしたゲームイベントもあります。他にもハロウィンやクリスマスなど季節に応じたイベントを、さわだスポーツクラブ流に工夫して開催しています。
我われの業界には、こうしたイベントを「何千人集めましょう」という規模で企画する会社が多いんです。しかし弊社はそうではなく、これを一つの保育園単位で開催しています。身近な人たちを楽しませたいというのが、弊社のチャレンジ手法なんです。
「家族を大事にする」という方針に基づいた福利厚生
▲メンバー間の親交を深める社内イベントを積極的に開催しています。
編集部
では次に福利厚生についてお聞きします。さわだスポーツクラブさんでは、どういった制度を重視していますか。
澤田さん
弊社には「家族を大事にしよう」という基本方針があります。その一環として、例えば休日休暇の日数を増やすことに取り組んできました。そして同時に、有給休暇を取りやすいような会社の雰囲気づくりも積極的に推進しています。オフの時には、家族との時間を有意義に過ごしてほしいと思っています。
編集部
他にはどんな制度があるのでしょうか?
澤田さん
家族関連でいえば、有給休暇とは別に、家族と一緒に過ごしてもらうための特別休暇を制度化しています。この休暇は家族全員分の食事代などを会社が負担しており、「家族で楽しむ」ということを、できる限りサポートする内容になっています。
あとは社内イベントや社員食事会などの開催にも、積極的に取り組んでいます。これにより社員間のコミュニケーションを、より深めていただきたいと思っています。そのためには、メンバー皆さんの意見を取り入れながら、常に改善していく必要があると考えています。
オンラインへの取り組みは業界トップクラスの早さ
編集部
さわだスポーツクラブさんはリモート会議や動画配信サービスなど、オンラインの活用にも積極的ですね。
澤田さん
その通りです。例えばリモート会議やテレワークなどへの取り組みは、世間に浸透し始める前の、かなり早い段階からスタートしています。しかも、最近はオンラインが収束傾向というニュースも耳にしますが、弊社は依然として積極的に活用しています。
編集部
かなり早い段階から取り入れてきたのですか?
澤田さん
一ついえることは、Zoomを使ったリモート会議を導入し、そのためのプログラムを作成したのは、業界では弊社がトップクラスの早さだったということです。当時、業界内の同業他社様に聞いた際には、「まだやっていない」という回答ばかりが返ってきていました。
弊社は数十名という小さな規模なので、取り組みやすかった側面があるとは思います。これを差し引いたとしても、一般的な会社との比較で、オンラインの導入は半年や1年は早かったと自負しています。
採用のポイントは「子どもが好き」&「自分がまず楽しむ」
編集部
では次に採用についてお伺いします。さわだスポーツクラブさんには、どういったタイプの方が向いているのでしょうか?
澤田さん
一番大切なポイントは「子どもが好き」ということですね。子どもが好きではないと続きません。これは絶対条件ですね。そしてもう一つは、何をするにしても「まずは自分自身が楽しむ」ということです。「これはつまらない」とか「これは嫌だ」などと思ってしまったら、もうチャレンジはできません。
そうではなく、「まずは、とにかくやってみよう」という精神でチャレンジすること。そして楽しむことが大切だと考えています。極論すればお子さんよりも、「まずは自分が先に楽しむ」というぐらいの気持ちで取り組んでほしいと思っています。
運動経験の有無や資格の所有について
編集部
運動経験の有無についてはいかがでしょうか?
澤田さん
絶対ではありませんが、部活動の経験者が望ましいことは確かです。何部でもいいですし、全国大会出場などの実績は必要ありません。競技の実績ではなく、先輩後輩という縦社会での活動経験ですね。これをお持ちの方が、スムーズに会社に馴染んでいただけると思います。
編集部
所有していたほうが望ましい資格などはありますか?
澤田さん
我われの業界に直結するような国家資格はありません。しかしながら、子どもの教育にかかわる資格は、持っているに超したことはありません。ですから保育士資格などを持っている方を優遇して採用しています。
資格をお持ちでない場合には、業務提携している日本幼児体育学会が認定している「幼児体育指導員」資格制度などを受講してもらっています。さわだスポーツクラブは理論と実践の両方を重視しており、そのために日本幼児体育学会と提携しています。
今後の重点テーマは「100年先の未来の子どもたちのために」
▲「ぜひとも一緒にやりましょう」と語る、さわだスポーツクラブ取締役社長の澤田さん
編集部
では最後に、記事を読んでさわだスポーツクラブさんに興味を持った読者に向けて、メッセージをお願いします。
澤田さん
弊社のメンバー全員に共通する資質は、「新しいものが好き」「みんなと協力しあって、仕事に取り組むことが好き」、そして「家族を大切にしたい」ということです。こういった部分に共感いただける方をお待ちしています。
特には今は、「100年先の未来の子どもたちのために」というテーマを掲げて、運動プログラムを策定しています。100年先の子どもたちにかかわる、非常に大切な仕事をしています。ここに興味を持たれた方がいらしたら、ぜひとも一緒にやりましょう。
編集部
非常に力強いメッセージですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
有限会社さわだスポーツクラブ:https://sawada-sc.com/
採用ページ:https://recruit.sawada-sc.com/
公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCFe0Sq8Hoxo89fF6vLOD_2A