株式会社東洋食品で働く総合職・専門職の女性社員

エコな調理と地域貢献。株式会社東洋食品の「SDGsに直結する学校給食事業」に迫る

SDGsの目標達成に積極的に取り組む企業や、女性の活躍が著しい企業を紹介する本企画。今回は、株式会社東洋食品にお話を伺いました。

1966年に創業した同社は、小中学校の学校給食の調理を、民間への委託が始まった直後から実施し続けるパイオニア企業です。北海道から九州にいたるまで約4,000校の小学校・中学校の給食づくりを手がけ、今では学校給食調理の国内シェアトップを誇ります。(2024年9月1日時点)

今回は、株式会社東洋食品の荻久保さんに、SDGsへの取り組みや女性活躍についてお話を聞かせていただきました。

本日お話を伺った方
株式会社東洋食品の専務取締役の荻久保さん

株式会社東洋食品
専務取締役

荻久保 瑞穂 さん

学校給食のパイオニア企業の、食品ロス削減をはじめとしたSDGsの取り組み

株式会社東洋食品が実施している給食センター親子探検の様子

編集部

はじめに、東洋食品さんの事業内容について簡単にご説明をお願いします。

荻久保さん

弊社は学校給食を専門とし、1日142万食を全国の小中学校に提供しております。現在、小・中学生の6人に1人が弊社の給食を食べていただいている形です。創立から57年間、食中毒ゼロを継続しています。

給食は給食センター方式と自校方式という二つのタイプに大きく分かれます。給食センター方式はセンターでまとめて調理して各校に配送していくスタイルで、自校方式は学校の中にある調理室で調理するスタイルです。

弊社は給食センター方式と自校方式の両方を受託しているのですが、特に得意としているのが給食センター方式で、全国で301ヶ所の給食センターを運営しています。

編集部

御社はSDGsにも取り組まれているとお聞きしたのですが、こちらについてお伺いできますか?

荻久保さん

実は、学校給食の仕事の全てがSDGsに結びついています。皆さんにイメージしていただきやすいのが食品ロス削減です。

子どもたちが残さないように美味しい食事を作ることはもちろん、普段捨てられてしまうような食材も活用して調理しています。

例えば、自治体さんとご相談の上で、キャベツの芯や人参の皮、野菜の端っこなど、出汁を取ってスープにしたり、食べやすいように柔らかくしたり細かく刻んだりしたりしています。こうした調理を「エコ献立」と呼んでおり、可能な限り食材ロスを減らすような調理の工夫をしています。

株式会社東洋食品の調理工程の風景とキャベツの芯を使ったメニュー
▲エコ献立の一例。キャベツの芯を捨てずに使い、「青じそ風味あえ」として美味しく仕上げている

編集部

食に関するSDGsの取り組みは他にありますか?

荻久保さん

食育の推進に取り組んでいます。給食に求められることは、ただ調理して提供するだけではありません。多くのお客様は給食を通した「食育」にも注目していらっしゃいます。

子どもたち自身で育てて収穫した野菜を給食にしたり、郷土料理や世界各国の料理を提供したりすることで、食に対する理解を深められるよう、食育にも積極的に関わらせていただいています。

他にも、給食センターの見学会や親子調理教室を開催していて、給食センターではお試しの釜を混ぜる体験もしてもらっています。また、実際に学校に行って栄養の授業の講師補助をしたり、最近では調理室と教室をZoomで繋いで調理の実況中継をしたりしています。

株式会社東洋食品が実施している給食センター親子探検の様子
▲実際に行われている、給食センターの見学会の様子

積極的な地産地消、地元雇用の創出などで地域に貢献し続ける

編集部

SDGsの取り組みとして地産地消も注目されていますが、東洋食品さんはいかがでしょうか?

荻久保さん

弊社でも地産地消はかなり重視していて、地場産物の積極的な使用を推進しています。地元農家さんの規格外野菜も使用し、虫や土・泥がついている野菜も異物混入がないように丁寧に取り除いて活用することで、地産地消を進めると同時に食品ロスも削減しています。

実際に自治体の直営から弊社の委託に変わって、地場産の野菜の使用率が5%〜10%上がった自治体さんの事例もございます。

我々は、地域の方と一体になって、地域経済のさらなる発展・活性化に貢献できるよう寄り添って支援をしていきたいと考えています。各地域のコミュニケーションの活性化や、子ども世代への地域の食文化の浸透をより図れるよう、積極的に関わらせていただいています。

編集部

給食事業を通して地域貢献にも取り組まれているのですね。地産地消以外に、地域とどのような関わり方をされているのでしょうか?

荻久保さん

全国で給食調理を受託させていただいているので、各地域の特色を活かせるような調理の工夫を行っています。献立の作成を行う自治体の栄養士さんと連携をして「こんな献立もできると思います」「こういう調理方法にしたら、より美味しくなると思います」などの提案をしています。

例えば海沿いの自治体さんであれば、地元の魚を使った郷土料理を作ったりして、地元の食文化への理解に繋げています。

編集部

地元の食材を使った料理や郷土料理を食べることで、子どもたちが地元の魅力を発見して、愛着を感じる可能性もありますよね。他にも取り組んでいる地域貢献の事例はございますか?

荻久保さん

土日や学校給食の長期休暇期間中に、マラソンイベントや食育フェスのお手伝いなど、自治体主催のイベントやボランティア活動に積極的に関わらせていただいております。

さらに地域雇用も支えています。各地域で新規の給食の施設を受託すると、そこで新たに従業員を採用することになります。毎年全国で1,000名ほど新たに採用しており、各地方・各地域での雇用の活性化に繋げることができています。

雇用に関しては女性や高齢者の雇用を積極的にしており、特に給食の調理員は女性の方が非常に多く、従業員の8割ほどが女性です。

これまでの被災経験で培ったノウハウを活かし、速やかな災害支援に備える

株式会社東洋食品が実施した災害支援の様子
▲非常用電源で調理した実際の災害支援の様子

編集部

地域貢献に関連して、東洋食品さんでは災害時の炊き出しや物資支援も行っているそうですね。

荻久保さん

はい。震災や集中豪雨などの災害時には、給食センターは避難所や防災拠点になるケースがあります。東日本大震災や熊本地震、熊本豪雨など、実際に被災した経験から学び、蓄積したノウハウを活かして、危機管理体制を整えています。

学校給食は文科省の管轄なのですが、防衛省の事業とセットで「防災食育センター」を開設されている自治体さんもあります。こちらは、通常は給食センターとして機能し、災害時は備蓄食料の提供や炊き出しなどを行う施設です。

現在、給食センターは学校給食の調理・提供以外にも多様なニーズが求められているので、それらに応えられるようにしています。災害協定を37の自治体様と締結し、災害時はご協力させていただきます。

編集部

災害時の備えとして、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

荻久保さん

例えば、給食センターの設計から建設・維持管理・運営までを行っているPFI方式においては、設備面での防災対策として、給食センターの駐車場などに「かまどベンチ」を設置しています。かまどベンチは普段はベンチとして使用し、災害時に座板を外すことでかまどとして利用し、炊き出しを行えるものです。

レトルトの備蓄食を常備している給食センターもありますし、非常時にも速やかな対応ができるよう従業員に対し防災訓練や炊き出し用トレーニングを実施しています。

編集部

実際に災害支援を行われた事例はあるのでしょうか?

荻久保さん

いくつかあります。東日本大震災のときは、東北地方にも弊社の受託している給食センターが多数あり、そこで自分たちも被災しましたが翌日から災害支援を行いました。

自主的に炊き出しをしたり、給食の配送車で自衛隊の物資を運ぶお手伝いをしたり、自分たちができることは手広くやらせていただきました。

編集部

給食センターが地域に根ざし、地域を支える存在となっているのですね。

日本の未来である子どもの成長と健康を支える、やりがいのある仕事

株式会社東洋食品が実施している給食センター親子探検の様子

編集部

他にも行われている、SDGsの取り組みがあれば教えてください。

荻久保さん

環境問題の一つである気候変動対策への取り組みがあげられます。PFI方式の給食センターにおいては、太陽光発電をつけたり、残った食材を堆肥化するなど、各施設にさまざまな設備を入れることによって環境負荷を軽減する取り組みをしています。

さらに、給食を通して、子どもの貧困問題や困窮家庭の支援に取り組んでいます。夏休みでも給食を作って給食センターに食べに来てもらったり、学童に給食を提供したりしている自治体さんもあり、弊社はこれに全面的に協力させていただいております。

2022年の国民生活基礎調査によれば9人に1人の子どもが貧困状態です。家で十分な食事をとることが難しく、学校の給食が命綱になっている子どもたちがいる状況の中、​​学校給食のトップサプライヤーとして、栄養があって美味しい給食を提供し続けなければならないと考えています。

編集部

御社の事業は社会貢献度が非常に高く、従業員さんのモチベーションにもなっているのではないでしょうか。

荻久保さん

おっしゃる通りです。従業員には「未来を担う子どもたちの健康と成長に直結する仕事である」「子どもは日本の未来であり、我々は日本の未来をつくる仕事をしている」と話しています。

ただ食事を作るだけではなくて、日本の子どもたちの成長と健康を支える、社会貢献度が高く、やりがいのある仕事だと感じていただきたいと思っています。

編集部

実際、従業員の方から仕事のやりがいについてのお声は何か上がっていますか?

荻久保さん

給食センターの見学会のときなどに子どもたちから「美味しかった」「ありがとう」と直接声をかけてもらったり、感想文や手紙をいただいたりするのですが、その時はやはりやりがいを感じると聞いています。

学校給食は衛生基準も高く、限られた時間の中で大量調理・提供しなければならないので、大変な仕事ではあります。子どもたちからの感謝の声に「どんなに大変でも、つらさが吹き飛ぶ」という従業員が本当にたくさんいます。

編集部

社会貢献度が非常に高い仕事に携わっていることはもちろん、給食を食べた子供たちの喜ぶ顔を見たり感謝の言葉を貰えたりすると、よりモチベーションがアップしますよね。

全従業員の8割、役職者の6割が女性と、女性が多く活躍する職場環境

株式会社東洋食品の専門職の従業員の集合写真

編集部

東洋食品さんは従業員の8割が女性とのことですが、実際の人数はどれほどなのでしょうか?

荻久保さん

現在、パートを含め従業員は1万7,000人ですので、大体1万4,000人が女性ですね。正社員だけですと、男女比率は女性が6割で男性4割です。かつ、女性役職者割合が約6割と高めとなっています。

1万7,000人のうちの9割以上が専門職として現場の調理に携わっています。専門職は約3分の1が正社員で、残りがパートの方ですね。パートの方は近所で給食を作りたいという主婦の方が多いので、女性比率が非常に高いです。

編集部

御社は専門職と総合職に分かれていますが、それぞれどんなお仕事があるのですか?

荻久保さん

専門職は学校給食部門で調理師・栄養士としてご活躍いただきます。一方、総合職は管理部門と営業部門とバックオフィス部門に分かれています。

営業部門は新規営業先の開拓、バックオフィス部門は総務や人事、経理、購買などが当たります。管理部門は、各地域の給食施設数十ヶ所を取りまとめて、各現場の採用や人材育成、売上利益の管理、お客様窓口などの役割を持ちます。

各個人の希望するキャリアデザインを描ける職場・コースを用意

株式会社東洋食品の総合職の女性社員

編集部

女性の役職者割合が高めですが、女性社員のキャリア構築をサポートする制度などあるのでしょうか?

荻久保さん

働く場所に関して、先ほどお伝えした「自校方式」と「センター方式」から選べるほか、給食センターも小規模から大規模なものまでと幅広く、全国各地に様々なタイプの職場を用意しています。社内異動もできますので、学びたい方にとっては学ぶ機会がたくさんあり、希望すればどんどんキャリアアップも可能です。

また、ご家庭の事情などで積極的に転勤できる方、できない方がいらっしゃるので、弊社ではキャリアパスを2つのコースに分けています。

一つは自宅から通える範囲内で異動はあるのですが、地元でキャリアアップするコース。もう一つが全国に転勤して、新しい給食センターの立ち上げに関わってキャリアアップしていただくコースがあります。

編集部

全国転勤される方も一定数いらっしゃるんですか?

荻久保さん

はい。給食センターの立ち上げに関わるとたくさんのスキルや経験を得られて、視野も広げることができるので、「どんどんキャリアアップしたい」「立ち上げに携わりたい」という方はいらっしゃいます。

会社にとっては貴重な人材ですので、全国転勤が可能な方には遠隔地赴任手当など制度面での待遇を手厚くしております。

編集部

責任者になるまで平均8年で、31歳という若手の方も給食センターの責任者になられているようですが、会社として何かサポートをされているのでしょうか?

荻久保さん

まず給食センターの中では、一般調理員、班長、料理長、店長とわかれていて、班長以上が役職者に当たります。

レベル1からレベル5までのスキルマップを作成しており、各レベルで必要なスキルを明確にしています。レベル1が試用期間、レベル2が入社1年未満の一般社員、レベル3が入社1年以上の一般社員と、一般社員だけでも細かくレベル分けしています。レベル3をクリアして班長になった後はレベル4の料理長、と段階を踏んでさらにスキルを習得していき、レベル5をクリアすると店長になります。

レベルごとに、調理スキル・コミュニケーションスキル・マネジメントスキルと3つのスキルについて40項目ほどのクリア要件を定めており、「キャリアアップするには何が足りないのか」を客観的に把握することが可能です。

このレベルが昇進や昇給に結びついていて、レベルが上がるごとにキャリアアップしていきます。キャリアパスを見える化する形で人材育成に取り組んでいます。

育休後の復職率95%。育児と両立しやすいと転職してくる人も多数

ミーティング中の株式会社東洋食品の専門職の社員

編集部

育児と両立しながら働いている社員さんも多いのでしょうか?

荻久保さん

多いですね。別の飲食業で働いていて、育児と両立するために弊社に転職する方もたくさんいらっしゃいます。

出勤時間は早いですが、学校のスケジュールに合わせて調理を行うため、残業もほとんどなく土日祝はお休みなので、小さいお子さんがいらっしゃる方も安心して働ける環境です。また、学校給食は夏休みなど長期休暇があるため有休も取りやすく、会社としても有休取得を推進しています。

編集部

育児と仕事の両立には周囲の理解も必要だと思うのですが、いかがでしょうか?

荻久保さん

周りにも子育て中の社員がいるので、「お互い様」と協力しあっているので育休が取りにくい雰囲気は全くなく、育休後の復職率は95%です。育休明けもポジションを確保されているので、安心して復職できます。

専務自身の経験をもとに、メンター制度など育児と両立しやすい環境を整備

打ち合わせ中の株式会社東洋食品の総合職の女性社員たち

編集部

女性がたくさん働いているということで、女性のご活躍を後押しするためのサポートはありますか?

荻久保さん

上司以外に気軽に相談できる先輩を作れるようにと、メンター制度を作りました。新卒と育休から復帰する社員を対象とした制度で、月1で先輩社員が面談してくれます。

違う職場の2〜3つ上の先輩社員にメンターになってもらえるため、人事評価する直属の上司と比較すると、リラックスして話すことができているようです。普段の業務で困っていることを相談でき、「他の職場だとこういうやり方もあるんだな」と視野を広げることができるため、新卒社員の離職防止にもなっています。

始めてから3年ほど経ち、全体としては好評です。まだパイロット的な取り組みですが、将来的には中途社員も希望すれば受けられるようにしたいと考えています。

編集部

メンターを他の職場の先輩社員の方から選ばれるようですが、その選定方法はどうなっているのですか?

荻久保さん

管理担当者という各職場を統括しているマネージャーが、メンティーのニーズと相性を踏まえてマッチングをします。メンターの方は事前研修を受けていただき、教え方や面談力などメンターとしてのスキルを身につけていただきます。

編集部

メンター制度を作られた背景をお伺いできますか?

荻久保さん

メンター制度を整えたのは、自分自身の経験が背景にあります。私自身も育児経験があるのですが、育休から復職する時に非常にハードルが高く感じていました。

それまで新聞も読まず、お化粧もせずに子どものお世話だけを考えていた育休中の生活から、いきなり毎日決まった時間に出社するようになる、それだけでも大変なことでした。

同じ課題を持つ従業員は多いと考え、日々の業務の悩みや不安を解消して、いきいきと業務に臨めるようにとメンター制度を作りました。

入社してから8年、育休を取りやすく、復職もなるべくスムーズにできるような仕組みを整えていて、メンター制度はその一環です。

編集部

ご自身の経験をもとに、育児をはじめとした悩みを打ち明けられるような環境を整えられているのですね。

東洋食品が求めるのは、お客様や仲間との「信頼」を大切にする人

インタビューに応じてくれた株式会社東洋食品の荻久保さん
▲インタビューに応じてくれた株式会社東洋食品の荻久保さん

編集部

それでは最後に、東洋食品さんが求めている人物像も含めて、読者の方へメッセージをお願いします。

荻久保さん

学校給食の仕事は子どもたちの成長を支える仕事で、日本の未来をつくる社会貢献度の高い仕事です。「社会貢献につながる仕事に携わりたい」という思いがある方には、ぜひ働いてもらいたいです。

また、弊社は給食のトップ企業ですので、多くのノウハウ・いろいろなタイプの営業所があります。技術を磨いたり、経験を積んだりと学ぶ機会は多く提供できると思いますので、学ぶ意欲が強い方にとっては魅力的ではないでしょうか。

さらに、給食調理は運動にもなり、お昼には栄養バランスを考えて作られた給食を食べていただけるので、健康維持できるお仕事だと思います。夏休みなどにはまとめて有休が取れる、残業はほとんどないのでメリハリのある働き方ができるのも魅力の一つです。仕事とプライベートの質を向上させたい方にもおすすめの職場だと思っています。

弊社の社是である「信頼」をベースに、お客様と信頼関係を築き、仲間同士との信頼を大切にして仕事ができる人と、ぜひ一緒に働きたいと思います。

編集部

御社は業界でトップクラスのシェアを誇る会社でありながら、やりがいを得つつ、育児との両立やキャリアアップなど各々の希望を実現しやすい職場だと感じました。色々なニーズを持つ求職者の方にフィットしそうですね。

本日はありがとうございました。

株式会社東洋食品の基本情報

住所 東京都台東区東上野1-14-4
事業内容
  • 集団給食の受託(主として学校給食)
  • 食堂経営及び食料品の販売
  • 文房具及び書籍の販売
  • 労働者派遣業
  • 損害保険の代理及び生命保険の募集に関する業務
  • 上記に付帯する全ての業務
創業 1966年10月31日
公式ページ https://www.toyo-foods.com/
採用ページ https://www.toyo-foods.com/recruit/