ワークライフバランス実現への取り組みや、子育て社員が働きやすい環境づくりを推進する企業を紹介する本企画。今回は、シートをはじめとする自動車の内装品を開発・生産する「テイ・エス テック株式会社」にインタビューしました。
テイ・エス テック株式会社とは
テイ・エス テック株式会社は、自動車用のシート(座席)をはじめ、ドアの内張りや二輪車用シートなどを開発・生産しており、世界13カ国の拠点からグローバルに製品を供給しています。
本田技研工業株式会社を中心とする大手自動車メーカーに製品が採用されており、ファミリーカーとして人気のミニバン「ステップワゴン」やスポーツカー「シビック タイプR」のシートも、テイ・エス テック株式会社が生産しています。
会社名 | テイ・エス テック株式会社 |
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住所 | 埼玉県朝霞市栄町3-7-27 |
事業内容 | 四輪車用シート、四輪車用内装品、二輪車用シート、二輪車用樹脂部品の製造販売等 |
設立 | 1960年12月 |
公式ページ | https://www.tstech.co.jp/ |
働き方 | ・コアタイムの無いフレックスタイム制度 ・在宅勤務制度(原則、月に5日まで) ・子どもが小学校を卒業するまで選択可能な育児短時間勤務制度 ・組合員は年次有給休暇の繰越分を100%取得 (10年間の平均年間取得日数:約19日) |
「人材重視」を企業理念の一つに掲げるテイ・エス テック株式会社は、労働生産性の向上とワークライフバランスの実現を目的に、コアタイムの無いフレックスタイム制度の導入や有給休暇の取得促進運動を行っています。また、社内保育園の開設や時短勤務制度の拡充などを通じて、子育てをする社員の働きやすさにも取り組んでいます。
今回は、人事部人事企画課で課長を務める尾崎智哉さんと人材開発係の木元さゆりさん、コーポレート・コミュニケーション部広報課の大森一樹さんに、ワークライフバランスを実現する制度や、社員が年齢・性別に関係なく活躍するための取り組みについて聞きました。
自動車の内装品を開発・生産。「ステップワゴン」のシートも手がける
▲テイ・エス テック株式会社の本社には、シートなどの自社製品を展示した「座ミュージアム」が併設されている。
編集部
はじめに、テイ・エス テックさんの事業内容について教えてください。
大森さん
弊社は、1960年の創業以来、自動車内装品の開発と生産を行ってきました。主力の製品は四輪車用シートで、ほかにも「ドアトリム」と呼ばれるドアの内張りや、二輪車用シート、二輪車用樹脂部品などを手がけています。
従業員数は連結グループ全体で1万5,171名、テイ・エス テック単体で1,710名で、収益については連結売上高4,092億円のうち、84.3%が四輪車用シートによるものです。(2023年3月期実績)
大森さん
主なお取引先様はホンダさんやスズキさん、フォルクスワーゲンさんで、二輪車メーカーでは国内4大メーカー(※)のほか、ハーレーダビッドソンさんにも製品を提供しています。
(※)ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ
編集部
大手メーカーの車にテイ・エス テックさんのシートなどが採用されているのですね。
大森さん
はい。自動車メーカーでは特にホンダさんが主要なお取引先となっており、ファミリーカーとして人気のミニバン「ステップワゴン」のシートも、弊社が開発から生産まで手がけています。
▲ホンダの新型ステップワゴンでは、2列目のシートに足を伸ばして座ることができるオットマンが採用されている。
編集部
新型ステップワゴンは、オットマンがついていると話題になりましたが、テイ・エス テックさんが開発されたのですね。
大森さん
はい。どのような仕様にするかホンダさんと話し合ったり、こちらから技術を提案したりしながら、一緒に製品づくりを行いました。
グローバルに事業展開し、次世代製品の開発にも積極的
編集部
テイ・エス テックさんは、海外でも事業展開していると伺いました。
大森さん
はい。1977年に二輪事業で北米に進出したのを皮切りに、アジアやヨーロッパにも進出し、現在は世界13カ国に45の法人、74の事業拠点を展開しています。
主な研究は栃木県の開発施設で行っており、ほかにもアメリカ、中国、タイ、ドイツにも開発拠点を置いています。
編集部
電気自動車や自動運転車など、自動車の技術はどんどん新しくなっていると感じます。それに合わせてシートなどの内装品も進化しているのでしょうか。
大森さん
はい。私たちは、量産品の開発生産だけでなく、10年後、20年後の世界を予想した次世代の商品開発にも力を入れています。
例えば、ヘッドレストにスピーカーを搭載し、サウンドとシンクロしてシートが振動するなど車室内空間全体で没入感を楽しめる仕組みや、植物由来の原料を活用した地球にやさしいシート、座るだけで姿勢の問題点を検知し、シートが自動で動いて適切な姿勢になるように促す技術などを提案しています。
編集部
自動車の進化だけでなく、シートをはじめとする自動車内装品の技術もこれからどのように進化していくのか楽しみです。
「人材重視」を理念に掲げ、ワークライフバランスを実現する
▲テイ・エス テック株式会社は「人材重視」を企業理念の一つに掲げ、誰もが能力を発揮できる職場づくりを推進している。(公式サイトから引用)
編集部
ここからは、ワークライフバランスをテーマにお伺いします。テイ・エス テックさんでは「人」を重視した経営を行っているということですが、詳しくお聞かせいただけますか?
大森さん
弊社は、「人こそ企業の決め手」だと考えており、企業理念のひとつに「人材重視」を掲げています。
性別、年齢、国籍に関係なく、一人ひとりが能力を発揮できるような制度づくりや企業風土の醸成を行うとともに、その制度がしっかりと利用されるように取り組んでいます。
編集部
具体的な制度としては、どのようなものがありますか?
尾崎さん
労働生産性の向上と、仕事とプライベートの両立を目的として、2018年からコアタイム無しのフレックスタイム制度を実施しています。また、2020年から在宅勤務制度を導入し、現在は月に最大5日まで利用できるようにしています。
▲在宅勤務制度を導入するテイ・エス テック株式会社では、会議や研修をオンラインで行うことも多い。
編集部
社員の皆さんは、制度を活用してどのような働き方をしていますか?
尾崎さん
弊社では、午前5時から午後10時を勤務可能時間としており、1日の最小労働時間は1時間、最大労働時間は16時間としています。部署によっては、月初や月末の繁忙期は1日に12時間から13時間勤務し、それ以外の期間は3時間から4時間程度に減らすなどして、メリハリをつけて働いています。
編集部
忙しさに合わせて労働時間を変動できるので、仕事とプライベートのどちらも充実させられそうですね。
「有給休暇繰越分カットゼロ運動」で有休取得を促進
▲木元さんは、有給休暇を使って趣味の登山を楽しんでいる。
編集部
テイ・エス テックさんは、東洋経済が2023年4月に発表した「有給休暇の取得率が高い企業ランキング」で7位に選ばれています。有休についての具体的な取り組みを教えていただけますか?
尾崎さん
弊社が有休の取得を推進し始めたのは20年以上前のことです。当時はまだ、社会全体に会社を休みづらい雰囲気があったので、会社と労働組合が一体となり、有休を積極的に取ろうという活動を始めました。
具体的には、取得しきれず余った有休を、翌年に全て取得することを推進する「有給休暇繰越分カットゼロ運動」を行っています。有休は2年が経過すると権利が消滅しますが、そうなる前に全て取得してもらおうという取り組みで、これまで26年間連続で、全社で組合員の「繰越分カットゼロ」を達成しています。
編集部
会社や労働組合として取得を推進する運動があると、社員は遠慮することなく休むことができますね。
尾崎さん
はい。ほかにも、勤続10年ごとのリフレッシュ休暇や商品券を付与する制度があり、対象となる社員は休暇を使って気分転換しています。
柔軟な働き方ができるからプライベートが充実
編集部
木元さんは、フレックスタイム制度などを活用してどのような働き方をしていますか?
木元さん
制度導入前は、毎朝8時半に仕事をスタートしていましたが、今は用事がある日は先に済ませてから出社しています。また、特別な予定がなくても、気分転換のためにゆっくり出社することもあります。
終業時間も、以前は午後5時半と決まっていましたが、制度が導入されてからは早めに切り上げて用事を済ませたり、逆に時差のある海外拠点とのやり取りがある際には午後8時頃まで仕事をしたりと、スケジュール調整がしやすくなりました。柔軟な働き方ができるようになってからプライベートがより充実し、仕事にもプラスになっていると感じます。
編集部
大森さんは、双子のお子さんの育児をしながら勤務しているということですが、どのように仕事と両立させていますか?
大森さん
朝は9時に子どもたちを車で保育園に送り、その後に出社しています。小さい子どもは急に体調を崩すことがよくありますが、フレックスタイム制度があることで、保育園から電話がかかってきた場合には早めに退勤することができます。
また、半日単位で有休を取得できるので、うまく活用しながら育児と仕事のバランスをとっています。制度にだいぶ助けられており、「この会社でなければ仕事を続けていられなかったかもしれない」と思うこともあります。
編集部
テイ・エス テックさんでは、制度がしっかり活用され、社員のワークライフバランスが実現していることがよく分かりました。
子育て社員も若手社員も。全ての人が活躍するためのテイ・エス テックの取り組みとは
編集部
テイ・エス テックさんは、厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定した証である「くるみんマーク」を取得しています。具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
大森さん
子育てしながら働く社員をサポートするため、約800人が勤務する栃木の事業所に、社内保育園を設置しています。1歳から小学校就学前までの子どもを預かっており、最大で午後8時まで保育が可能です。
大森さん
ほかにも、2019年に育児短時間勤務制度を拡充し、子どもが小学校を卒業するまで利用できるようになりました。
また、先ほど紹介した有休取得促進の取り組みも、子育て社員の働きやすさにつながっています。
編集部
テイ・エス テックさんの育休取得後の復職率はほぼ100%ということですが、このような取り組みが復帰を後押ししているのですね。
木元さん
そうですね。復職後の働き方も全員同じではなく、それぞれに合った形で制度を利用しています。そのため、育児短時間勤務制度を活用する社員もいれば、フレックスタイム制度や在宅勤務制度、社内保育園を活用しながらフルタイムで働いている人もいます。
編集部
制度だけでなく、育休を取ったり時短勤務をしたりしやすい雰囲気も、社内にあるのでしょうか?
尾崎さん
はい。先輩社員もみんな育休を取得してきたので、それが企業文化として浸透していると思います。
復職のタイミングに関しても、焦ることなく会社と面談をしながら決めることができるので、1年後や1年半後など、状況に合わせてしっかりと休むことができます。
年功序列ではなく、若手の活躍を後押しする制度が充実
編集部
若手社員の活躍やキャリアアップについては、どのような支援を行っていますか?
木元さん
一人ひとりの成長を後押しし、会社を担う人材に育成するため、さまざまな研修プログラムを導入しています。若手と言われる年次に受ける研修としては、新入社員向けの入社時研修や、入社3年目研修のほか、6年目の社員がリーダーマインドの醸成や経営の基礎知識を学ぶ中堅職研修があります。
また、自主的に勉強する社員を応援するため、通信教育の受講料を補助する制度があります。ビジネススキルの向上などに役立つ約100の講座からいくつでも選ぶことができ、決められた期限内に修了すれば受講料の半分を、優秀な成績で修了すれば全額を会社が負担します。
▲テイ・エス テック株式会社は、社員のステージに合わせてさまざまな研修を実施している。
編集部
教育制度に加えて、成長への意欲を高めるような取り組みや人事制度もあるのでしょうか?
木元さん
はい。以前は、勤続年数が長い人が昇格しやすい傾向があったのですが、2015年に人事制度が改訂され、年齢や年次は重視せず、本当に優秀な社員が昇格できるようになりました。
また、入社2年目のタイミングで人事部と面談を行う機会があり、不安や悩みの解決や目標の明確化をサポートしています。
編集部
尾崎さんは、ご自身が30代で早期に課長に昇格されたとのことですが、後押しとなった周囲のサポートはありますか?
尾崎さん
はい。上司が私の適性を見ながら、さまざまな仕事を経験させてくれたことが大きいと感じます。私は人事領域の経験が長いのですが、視野を広げるために数年間、総務部で経験も積ませてもらうなど、その時々に応じて私が成長できるような機会を提供してくれました。
編集部
テイ・エス テックさんには、若手社員をしっかりと育てようとするカルチャーがあるのですね。
女性も大歓迎。自分で考えて行動できる仲間を募集中!
編集部
最後に、記事を読んでテイ・エス テックさんで働くことに興味を持った読者の方にメッセージをお願いします。
尾崎さん
「人材重視」という企業理念にもあるように、私たちは「人こそ企業の決め手」という考えを持っています。そして、私たちが求める「人」とは、自分で考えて行動できる人、夢を持っている人、好奇心が旺盛な人です。
弊社のさらなる進化に向けて、このような方とぜひ一緒に挑戦したいと思っています。
木元さん
弊社には、ライフステージに応じた多様な働き方ができる環境があります。現在、社員の女性割合は1割程度ですが、製品づくりや会社の制度づくりに、もっと女性の視点や声を活かしたいと思っています。女性の皆さんからのご応募も、お待ちしています。
編集部
皆さんのお話から、働きやすい環境づくりに対する真剣な姿勢が伝わってきました。こうした取り組みが職場の生産性を高め、質の高い製品づくりにつながっているのではないかと感じました。
本日は、ありがとうございました。
■取材協力
テイ・エス テック株式会社:https://www.tstech.co.jp/
採用ページ:https://www.tstech-saiyo.jp/