時代に対応した新しい働き方や、独自のカルチャー・制度を取り入れている企業にインタビューするこの企画。今回は、マイナンバーカードに特化したソリューションを提供するGovtech企業(※)であるxID(クロスアイディー)株式会社を取材させていただきました。
(※)Govtech:「Government(政府)」と「Technology(技術)」を合わせた言葉。行政のサービスに最先端のテクノロジーを取り入れて効率化を図る取り組みや、それを実施する企業を指す。
xID株式会社:マイナンバーカードを活用したデジタルIDソリューションの先駆者
xID株式会社は、「信用コストの低いデジタル社会を実現する。」というミッションを掲げており、マイナンバーカードと連携したデジタルIDを普及させることで、人々の暮らしをより便利にすることを目指して事業を展開しています。全国の自治体ですでに導入されており、今後さまざまなサービスとの連携が予定されています。
会社名 | xID株式会社 |
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住所 | 東京都千代田区内幸町2丁目1−6 日比谷パークフロント19F |
事業内容 | マイナンバーカードに特化したデジタルIDソリューション「xID」の提供 |
設立 | 2012年5月 |
公式ページ | https://xid.inc |
xID株式会社の特徴として、パフォーマンス向上などの理由からメンバーに多様な働き方を推奨していることが挙げられます。今回は、勤務地を自由に選べる制度に焦点を当て、実際に多拠点生活を送っていたプロダクト開発部の細井さんにお話を伺いました。
xIDの主力サービス:マイナンバーカードと連携した「xIDアプリ」の特徴と活用例
▲xIDさんが提供する「xIDアプリ」のイメージ。
編集部
最初に、xIDさんの事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
細井さん
私たちは、マイナンバーカードを活用し、手軽に本人確認や認証、電子署名をすることが可能となる「xIDアプリ」などのデジタルIDソリューションを提供しています。
提供するソリューションとしては、個人向けのxIDアプリのほか、マイナンバーカードを活用したオンライン本人確認などを簡単に実装できるAPI(※)である「xID API」や、自治体向け郵送デジタル化サービスである「SmartPOST」などがあります。
※API:ソフトやアプリの一部を公開することで、第三者が開発・連携しやすくなる技術。
サービスの展開においては、エンドユーザーに安心して使用いただくことはもちろん、さまざまな団体や自治体様と連携しています。これまでの導入実績も数多く、官民の両方の皆様に信頼されるため、日々改善を続けています。
編集部
ユーザーの立場として気になるxIDアプリについて、詳しくお教えいただければと思います。
細井さん
xIDアプリは、マイナンバーカードと連携させて独自のIDを生成することで、デジタル社会における「身分証」「カギ」「ハンコ」をすぐに手にすることができるアプリです。たとえば、オンラインサービスにログインするときや、インターネット上で銀行口座を開設する際の契約締結などのシーンにおいて、xIDアプリを使えばセキュリティと手軽さを両立して実行できます。
近年は、地方自治体と連携して行政手続きをデジタル化する取り組みも進めています。「xIDを利用すれば日常生活が便利になる」と言っていただけるように、これからも改善と普及を続けていきます。
xID社員の挑戦:入社1年目で始めた「多拠点生活」勤務の経緯
編集部
今回のインタビューでは、xIDさんの働き方、特に「全国どこでも働ける」という点について詳しくお聞きしたいと思います。まず、細井さんの経歴についてお話しいただけますか?
細井さん
私は大学時代のエストニア留学中に長期インターンとしてxIDに参画し、2021年の大学卒業後に正式に入社しました。xIDはまだ新卒採用を正式に始めていませんでしたが、卒業後のキャリアを上司に相談したところ、「一緒に働かないか?」とオファーをいただきました。
現在はプロダクト開発部門のテクニカルサポートチームでエンジニアとして働いています。業務内容は、アプリのユーザーやAPIを実装するクライアントに快適にサービスを使ってもらえるよう、日々施策の立案および実行を行っています。
テクニカルサポートチームは、私と上長のプロダクトマネージャーの2人で構成されています。上長は静岡県に在住しているため、普段はリモートで仕事をしていますが、東京で顔を合わせてミーティングをすることもあります。
編集部
細井さんは多拠点生活をしながら勤務されていたと伺いました。きっかけは何だったのでしょうか?
細井さん
新卒で入社した後、高円寺で一人暮らしを始めたのですが、十分な検討をせずに狭い部屋を契約してしまいました。住居に不満を感じていたことと、xIDがフルリモートワークを可能にしていたため、「このまま住み続けるのもどうなのかな」と考えるようになりました。
入社して1年が経ち、仕事に慣れてきたタイミングで、不動産会社が提供しているホテルのサブスクリプションサービスを見つけました。会社の承認を得た上で、比較的気軽な気持ちで多拠点生活を始めることにしました。
多拠点生活の実態:ホテルサブスクを活用した全国各地での勤務スタイル
▲細井さんが最初の拠点にした京都の象徴的な風景(画像は京都駅)。
編集部
ホテルのサブスクリプションサービスを利用しながら働いてみたということですね。
細井さん
はい、その通りです。ホテル暮らしは高額に思えますが、私が利用したサービスは月額約7万円から始められました。ホテルのランクによって料金は変動しますが、平均すると月に10万円程度でした。これは一般的な家賃とそれほど変わりませんでした。
対象のホテルは全国にあり、関東圏が最も多いですが、京都や福岡、東北にもありました。1ヶ月間同じホテルに滞在する必要はなく、空室があれば各地を移動できる柔軟性があります。
編集部
具体的には、どの都市にどれくらい滞在されましたか?
細井さん
最初は京都に約2ヶ月住んでいました。その後東京に2週間、福岡に1ヶ月、千葉の津田沼に1ヶ月弱滞在しました。
京都をスタート地点に選んだのは純粋に「なんとなく」でした。あえて言えば、関東圏ではなく地方都市を体験したかったという思いはありました。滞在時期が紅葉シーズンだったこともあり、京都では多くの観光客で賑わっていました。
多拠点生活のメリット:仕事への集中と新しい環境での刺激
▲滞在していた福岡のホテル。コンパクトにまとまっていてデスクでの仕事も快適に行えます。
編集部
ホテルを拠点として全国各地から勤務されていた中で、特に良かった点はどのようなものでしょうか。
細井さん
大きなメリットとしては、シンプルで便利な生活を送れることでした。アメニティやタオルなどの消耗品について気にする必要がなく、仕事に集中できました。また、ホテルによって頻度は異なりますが、週に数回の清掃サービスがあり、快適に過ごせました。
さらに、その時々の予定や気分に合わせて滞在場所を変えられる点も魅力的でした。例えば、「友人と会う機会があるから、この期間は東京に滞在する」といった柔軟なライフスタイルは、ホテル暮らしならではだと思います。
▲京都の嵐山などの観光地も、人が少ない時間帯に訪れることができました。
編集部
様々な土地に滞在すると、週末の過ごし方も変わってきそうですね。
細井さん
京都滞在時はまさにそうでした。通常の2泊3日の旅行とは異なり、長期滞在ならではの体験ができました。街をゆっくりと散策したり、同じ場所を複数回訪れたりと、多様な風景を楽しむことができました。
平日は仕事に集中し、休日は新しい場所を楽しむことで、効果的に気分転換ができたと感じています。
編集部
そのような暮らしは魅力的ですね。うまく気持ちを切り替えられたことで、仕事にも良い影響があったのではないでしょうか。
多拠点生活の課題:食生活の管理と環境変化への適応
編集部
多拠点生活をしていた中で、デメリットと呼べるものはあったのでしょうか。
細井さん
人によって異なると思いますが、自分にとって少し難しかったのが健康管理です。多くのホテルにはキッチンが備わっていないため、食事の選択肢が限られてしまいます。出来合いのもの、スーパーやコンビニで購入したもの、または外食に限定されるため、どうしても偏った食生活になってしまいました。
また、実際にホテル暮らしを始めてわかったことですが、場所を変えるごとに生活のリズムを最適化する必要がありました。例えば、最寄りのスーパーやランドリーを見つけても、別の場所に移動するとまた一から探さなければなりません。振り返ってみると、このことも地味に大変だったと感じます。
新しい土地に移ることは楽しい面もありますが、頻繁な移動によってこのような作業が繰り返し発生すると、少し面倒に感じてくることがありました。
編集部
そうなんですね。仕事上のデメリットは何かありましたか?
細井さん
大きなデメリットと呼べるものはありませんでした。ただ、ネット環境はホテルに依存せざるを得ない状況でした。ホテルによっては時間帯によってほぼ使えなくなってしまうこともあり、その点は苦労しました。
また、滞在中はノートパソコン1台で仕事をしていましたが、久しぶりに東京のオフィスでモニターを使用してみると、作業効率が大幅に向上することに驚きました。大きな画面の便利さを再認識し、オフィスや自宅の環境との違いを実感しました。
支援体制:新しい働き方に対する会社のサポート
編集部
全国各地に移動しながら働かれていて、会社からの反応はいかがでしたか?
細井さん
多拠点生活をしながら働いているのは私が初めてだったので、さまざまな反応がありましたが、どれも温かいものでした。メンバーの雰囲気でいうと、もともとフルリモートが前提の会社なので、寛容だったと思います。「どんな感じなのかレポートしてほしい」という連絡もありました。
制度面では、テレワーク手当の補助を受けることができたので、それもありがたかったです。全体としてこの働き方に肯定的な雰囲気だったので、かなり助けられました。
編集部
「レポートしてほしい」という声もあったということですが、自分から情報を発信することもあったのでしょうか。
細井さん
それほど頻繁ではありませんが、Slackに写真をアップしたり、メンバーに「今、京都にいるよ」などと伝えたりと、少しずつ発信していました。また、地方在住のメンバーと一緒に仕事をしたり、メンバーの出張先と自分の滞在地が近かったときは会って食事をしたりもしました。
編集部
会社としてサポートしてくれる姿勢があり、新しい働き方を受け入れてくれたというのはすばらしいですね。普段はなかなか会う機会がないメンバーと顔を合わせて仕事ができたというのも、大きなメリットだと思います。
xIDの企業文化:多様性の尊重とプロダクトへの強い自信
▲プロダクト開発チームのオンラインミーティング。海外のメンバーも多数参加している。
編集部
続いて、御社の社風についてもお伺いできればと思います。細井さんはどのような点がxIDのカルチャーだと感じていらっしゃいますか。
細井さん
まず、「多様性への寛容さ」というのはベースにあるのかなと思っています。先ほどお話ししたように、私が多拠点生活を始めるときも否定的な意見は一切出なかったですし、多様なバックグラウンドを持つメンバーが気持ちよく働けていることも関係しています。
弊社の開発メンバーはほとんどが海外の方で、カナダ、台湾、フィリピン、ロシア、エストニアなど、地域も幅広いです。また、キャリアとしてもメンバーの前職が外資系企業のコンサルタントから地方自治体の職員までさまざまなので、個人のライフスタイルやワークスタイルについて自由度が高いという特徴があります。
編集部
多様性を大事にしていらっしゃる文化があるんですね。その他の面はいかがでしょうか。
細井さん
会社全体をドリブンさせていく要素として、メンバー全員が「プロダクトへの自信」を持っていると感じています。xIDが提供するソリューションによって、相対する顧客の課題を解決する、さらに社会全体を良くしていくんだという実感があるので、日々の業務にも積極的に取り組むことができています。
また、弊社はフルリモート・フレックス制を導入しているので、個人の裁量に任される部分が多いんです。そのため、各メンバーが自律して能動的に仕事をしています。指示を待つというよりは、自ら動いて問題を解決するという姿勢の人が多いと思います。
xIDへの入社理由:人間性を重視した採用方針の魅力
編集部
採用に関するお話を伺いたいのですが、細井さんが入社を決断された理由は何だったのでしょうか。
細井さん
私はインターンを経て新卒でxIDに入社したのですが、入社に至った決め手はすごくシンプルです。それは「みんな良い人だった」ということです。
もちろんxIDのプロダクトに強く魅力を感じたというのもありましたが、それ以上に重要だったのは、インターン時代に経験した社内の雰囲気でした。当時、社内で一番若く経験がない立場だったにもかかわらず、みんなが1人の人間としてしっかりと話を聞いてくれたことが大きな印象を残しました。
先ほどお話しした多様性への寛容さとも通じますが、「ちゃんとメンバーとして尊重されている」ことが日々の交流を通じて伝わってきたのが、入社を決めた一番の理由です。
編集部
xIDの皆さんは経験豊かなメンバーが多いようですが、当時インターンだった細井さんに対して、そのような尊重する姿勢で接してくださったのですね。これは求職中の若い世代の方や、採用を行う企業の皆様にとっても、非常に参考になる話だと思います。
読者へメッセージ:プロダクトへの自信と成長機会の提供
編集部
最後に、この記事をお読みになった方に一言メッセージをいただければと思います。
細井さん
私たちは、急速に成長している段階にあります。そのため、制度面や組織文化については、まだ発展途上の部分が多いのが現状です。実際、私が入社した当時と比べると、組織の様相は大きく変化しています。
しかし、その中で変わらないものがあります。それは、先ほど触れた「プロダクトへの揺るぎない自信」です。現在、業務委託の方も含めて約40名のメンバーがいますが、全員がプロダクトに自信を持ち、誇りを持ってサービスを提供している雰囲気が醸成されています。
xIDのプロダクトや働き方に興味を持たれた方はもちろん、このようなカルチャーに共感していただける方は、ぜひ私たちの仲間になることを検討してください。皆さまのご応募をお待ちしています!
編集部
本日はありがとうございました。
■取材協力
xID株式会社:https://xid.inc/home
採用ページ:https://recruit.xid.inc/