SDGsへの取り組みや、女性活躍が著しい企業を紹介するこの企画。今回はサステナブル・ラボ株式会社を取材しました。
サステナブル・ラボが開発する非財務データプラットフォームの概要
サステナブル・ラボ株式会社は、国内最大級の非財務データプラットフォーム「TERRAST(テラスト)」、ESGカルテ作成ツール「TERRAST for Enterprise」を開発・提供し、サステナブル企業名鑑「テラスTV」を運営する企業です。
同社は、非財務指標と財務指標の因果分析、相関分析を行い、データサイエンス × サステナビリティ × 金融工学の専門家によって、社会・環境貢献と経済の融合を目指しています。
会社名 | サステナブル・ラボ株式会社 |
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住所 | 東京都千代田区大手町1丁目6-1 大手町ビル4階 FINOLAB 内 |
事業内容 | ESG/SDGsに特化した企業の非財務情報プラットフォームの提供および非財務を含めた企業価値評価に係る研究開発 |
設立 | 2019年1月 |
公式ページ | https://suslab.net/ |
働き方 | フルリモートワーク フルフレックスタイム制度 |
2019年に設立されたサステナブル・ラボ株式会社は、事業だけでなく働き方においてもSDGsを実践しています。今回は、同社の柔軟な勤務形態と女性活躍に焦点を当て、QAマネージャーの丸山智子さんと、広報・採用・ステークホルダー支援を担当する高木夏希さんにお話を伺いました。
サステナブル・ラボの目標:データを活用した経済・社会・環境への貢献
編集部
はじめに、サステナブル・ラボさんの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
高木さん
当社は「データサイエンスの力で、サステナブルな世界を創る」をミッションに掲げ、「非財務データ(※1)」をキーワードに事業を展開しています。具体的には、非財務データプラットフォームの開発、データ分析事業、ESG(※2)・サステナビリティ経営に関するコンサルティング等を行っています。社会や環境に関するデータを活用し、世の中のサステナビリティの向上に貢献することを目指しています。
(※1)ESGデータとも呼ばれる。企業のCO2排出量、女性管理職比率、障害者雇用数、社外取締役の数、取締役会の出席率等、財務データ以外の指標を指す。
(※2)ESG:環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(ガバナンス Governance)の頭文字を取った言葉
編集部
どのような層が顧客になるのでしょうか?
高木さん
提供するサービスによって異なりますが、主に金融機関、コンサルティングファーム、証券会社、事業会社(特にIR部門やサステナビリティ部門)等が顧客になります。非財務データの活用を求めている企業や、非財務に関するソリューションを必要としている企業が中心です。
TERRASTシリーズ:非財務データ分析とサステナビリティ経営のDX化を実現
▲同社が開発・提供する「TERRAST」は、企業のESG/SDGsの貢献度を可視化して「良い企業を照らす」ためのツール
編集部
開発、提供されているプロダクト「TERRAST」や「TERRAST for Enterprise」のそれぞれの特徴についてお聞かせいただけますでしょうか。
高木さん
「TERRAST」は、非財務データプラットフォームで、AIとビッグデータを活用してESG情報の収集・可視化・分析を支援するプロダクトです。主に金融機関や企業が、投融資判断やサステナビリティ経営の高度化に利用しています。
現在、多くの企業がコーポレートサイトで非財務情報を開示していますが、世界的な統一ルールがないため、その方法は企業ごとに異なります。そのため、投融資判断やコンサルティングを行う企業は、データの収集、整理、分析に多大な労力を要していました。「TERRAST」はこの作業を効率化し、高度化することを目的としています。
一方、「TERRAST for Enterprise」は、企業のサステナビリティ経営に関する業務を効率化するDXツールです。企業内での非財務データの管理や、投資家やステークホルダー向けの分析レポート作成など、従来アナログで煩雑だった業務をデジタル化し、効率化するSaaSツールとして機能します。
言わば、非財務データを「見たい側」が「TERRAST」を使い、「見てもらいたい・見せたい」側が「TERRAST for Enterprise」を使います。これらのツールを通じて、ESG投融資市場の活性化を目指しています。
さらに、統合報告書における非財務・財務の相関分析など、企業のサステナビリティ経営全般のサポートも行っています。
企業の持続可能な成長:経済と社会・環境貢献の両立の重要性
編集部
企業の非財務データが投融資の判断に必要とされる背景には、どのような理由があるのでしょうか。
高木さん
これまでの企業価値は、主に経済的な強さや収益性で判断されてきましたが、現在は気候変動や貧富の格差、人権問題など、さまざまな社会・環境問題が顕在化しています。このような状況下で、企業が長期的に選ばれ続けるためには、経済的な強さだけでなく、社会・環境への貢献といった「優しさ」も実践する企業経営のあり方、つまりESG経営の観点が必要不可欠という考えが世界中で広がっています。
ESGの視点で投資を行うことをESG投資と呼びます。このESG投資が世界的に加速する中、当社はデータ事業を通して間接的に社会全体のサステナビリティ(持続可能性)を向上させることを目指しています。
ビジネスとしてのサステナビリティ:社会貢献と収益の両立への挑戦
編集部
サステナブル・ラボさんの設立背景について教えていただけますか。
高木さん
代表の平瀬は大学で物理を学び、在学中から起業家として環境、農業、福祉などのサステナビリティ領域のベンチャービジネスに、環境エンジニアとして携わってきました。
起業する中で、社会環境貢献ビジネスが取り組みとして評価されても、収益性が低いとみなされることがありました。また、この分野に携わる仲間たちの苦労を目の当たりにしてきました。こうした経験から、経済的な「強さ」だけでなく、社会・環境貢献といった「優しさ」を客観的に示すことができれば良いのではないかと考えました。これがサステナブル・ラボを立ち上げたきっかけとなりました。
サステナブル・ラボの多様性:多国籍メンバーが織りなす独自の職場環境
▲お花見のようす。国籍や性別、年齢にとらわれない「ワンチーム」を作り上げているのがサステナブル・ラボの特徴
編集部
サステナブル・ラボさんでは現在、何名のメンバーが在籍されているのでしょうか。男女比についてもお聞かせください。
高木さん
30名弱のメンバーが在籍しており、そのうち約20%が女性となっています。
編集部
丸山さんはサステナブル・ラボさんにジョインして1年と伺っております。御社にジョインしたきっかけや理由についてお聞かせいただけますでしょうか。
丸山さん
前職で国・自治体向けコンサルティングをしていた私は、企業がサステナビリティに取り組む際、国・自治体起点で世の中に広めていくことをイメージして仕事に取り組んでいました。しかし、社会起業家やサステナビリティ経営について知るうちに、企業やNPO起点でサステナビリティに取り組む動きがあることを知りました。そこで、データの力でその動きを支援したいと考えたことが当社にジョインしたきっかけです。
また、企業によって深さや内容に幅のあるサステナビリティ経営の取り組み状況や考え方を、データで可視化する当社のプロダクトに共感できたことも大きな理由の1つです。各企業のサステナブルな取り組みを定性・定量的に見える化し、共感できる企業に資金や人が集まるような仕組みを作りたいと思い、入社を志望しました。
編集部
サステナブル・ラボさんには、さまざまな国籍のメンバーが在籍していると伺っております。ジョインから1年がたった今、多様性のある環境をどのように感じていますか?率直なご意見をお聞かせください。
丸山さん
当社には、国籍だけではなく、性別、年代も20代から50代と幅広いメンバーが在籍しています。メンバーと会話する中で、自分の中にある思い込みに気づかされることも多くあります。「これが常識」や「このやり方が普通」という前提で話をするのではなく、自分が当然と思っていることでも、なぜそう考えるのかを伝え、別の角度からの意見をなるべく引き出せるように心がけています。
そうすることで、多様性のある環境を活かせると実感しており、実際にそう感じた場面がこれまでに何度もありました。
フルリモート&フルフレックス:サステナブル・ラボが実践する柔軟な働き方
編集部
サステナブル・ラボさんの勤務形態はどのようになっているのでしょうか。
高木さん
フルリモートかつフルフレックスなので、働き方はかなり自由に選ぶことができます。本社は東京ですが、社員の中には関西や東北など地方在住の者の他、韓国、インドなど海外在住の者もフルリモートで勤務しています。私も普段は東京在住ですが、年に数回は地元の関西からフルリモートで数週間以上勤務することもあります。
海外在住のメンバーについては、時差をうまく活用して仕事の振り分けや会議の開催を行うなど工夫をしています。
出社勤務も選択可能で、丸山と私は週2、3回の頻度で出社しています。丸山は育児中のため、お子さんの体調や家庭の事情で出社が難しい時はフルリモートに切り替えています。このように、状況に応じてフレキシブルな働き方ができるのが、当社の特徴です。
編集部
働く場所や国、時間を自由に選択できるのですね。働き方にもサステナブル・ラボさんが実践する多様性が表れていると感じます。
リモートワークの日常化:子育て世代や地方在住者にも優しい職場環境
編集部
丸山さんは子育て中とのことですが、前職と比較し、子育てと仕事の両立など働きやすさの面で変化はありましたか?
丸山さん
当社は出社回数などのルールを定めていないので、働き方を柔軟に自分で決めることができます。業務に支障が出ないことが大前提ですが、1日の時間の使い方や仕事の場所を自分で決められることは、働きやすさにつながっていると感じます。
コロナ禍の収束傾向に伴い、リモートワークから出社勤務に切り替える企業も多いと思われますが、当社は海外や地方在住のメンバーが多いこともあり、リモートワークが標準的です。お客様との打ち合わせも、地方在住のメンバーはオンラインで参加することがほとんどです。
高木さん
全社員が共有しているスケジュールを見ると、4月から5月は入学式や参観日の予定があるメンバーが多くいます。会社として、家族のイベントにも当たり前に参加しながら働いてほしいと考えています。子供の行事以外に通院などがある場合も、皆さんフルフレックスを活用して、うまくスケジュール管理されていますね。
効率重視の勤務体制:社員全員で構築した理想の働き方
編集部
サステナブル・ラボさんに、フルリモートやフルフレックスによる柔軟性のある働き方が根付いた理由について教えてください。
高木さん
会社としては「社員一人ひとりが最も効率的に働ける時間を尊重し、過度な制限を設けないこと」「そのうえで確実に成果を出せる仕組みを構築すること」を重視してきました。広報兼人事担当として、会社のルールは人事部門だけでなく、全社員で協力して作り上げてきたと考えています。
また、採用面でもリモートワークを希望する応募者が多かったため、自然と柔軟な働き方を導入せざるを得なかったというのが実情です。出社を義務付けると、必然的に東京近郊の方のみを採用対象とせざるを得なくなります。リモートワークを導入することで、世界中から人材を募ることができるようになりました。
編集部
サステナブル・ラボさんの女性に配慮した雇用環境や、ESG経営をはじめとしたサステナブルな事業に共感する方々が集まることで、柔軟性のある働き方が徐々に根付いていったということですね。
オンラインでも繋がる工夫:ランチ制度とエクササイズタイムでコミュニケーション活性化
▲「照らしんぐ」という取り組みでは、メンバー同士が互いの長所や感謝の気持ちを伝え合い、チームビルディングを行っている
編集部
リモートワークやフルフレックス制での勤務の場合、社員間のコミュニケーションが課題になると思われます。サステナブル・ラボさんで工夫されていることがあれば、ぜひお聞かせください。
丸山さん
リモートで離れているからこそ、直接会える機会の価値を感じています。例えば、地方在住のメンバーが東京のメンバーと交流したい場合、顧客とのミーティングで上京した際に皆で食事をすることがあります。また、会社が月2回まで一定の金額を負担するランチ制度を設けており、対面またはオンラインでコミュニケーションを図っています。
高木さん
他にも、週1回、任意参加の10分間エクササイズの時間を設けています。眠気が襲う時間帯にヨガや運動プログラムなどを行っています。さらに、毎週15分間の全社員シャッフル1対1面談を実施するなど、必須ではない「あると嬉しい」小さなきっかけを日常に取り入れることで、リモート環境下でもコミュニケーションが取れるよう工夫しています。
しかし、やはりリモートワークではコミュニケーションに限界があり、1人で黙々と仕事をすることが多いのが現状です。意図的に会話の機会を作り、この課題を解消する工夫は常に進化させていきたいと考えています。
サステナブル・ラボが求める人材像:自由と責任のバランスを取れる、社会貢献志向の方
▲社内のBBQイベントのようす。責任を持って仕事に注力しながら生活を楽しむメンバーが揃う
編集部
最後に、サステナブル・ラボさんの事業や働き方に興味を持った読者の方へメッセージをお願いします。
高木さん
当社は子育てと仕事の両立や、勤務地を限定しないなど、柔軟な働き方ができる環境が整っています。ただし、フルリモートワークでは自ら積極的に発言し、アピールすることが求められます。
また、外国籍メンバーが多いため、直接的なコミュニケーションが重要です。好奇心旺盛で積極性があり、素直に発言できる方や外国の文化に慣れている方を歓迎します。
スタートアップとして、挑戦し続ける当社では前向きな姿勢が求められます。育児と仕事を両立させながら両方を追求したい方にはとても適した会社です。自由と責任は表裏一体です。サステナビリティに興味ある方からのご応募をお待ちしています。
丸山さん
私自身、当初の想定以上に幅広い仕事を担当しています。サステナビリティの領域は世界的な潮流もあり、変化の速い業界です。スタートアップの特性上、会社の動きも早く、必要とされる仕事も変化します。仕事の幅が広がることを楽しめる方は当社に適していると感じます。
当社は個人の裁量が大きく、自由度は高いですが、期日までに一定の成果をあげることが前提です。会社の期待値に対する達成度を評価指標とし、チームでToDoリストを管理するなど、目標達成までの過程や進捗状況を定期的に確認しています。
編集部
サステナブル・ラボさんは、事業だけでなく働く環境もサステナブルを実現されており、責任に基づいた自由を体現されていると感じました。
高木さん、丸山さん、本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
■取材協力
サステナブル・ラボ株式会社:https://suslab.net/
採用ページ:https://suslab-recruit.net/