新しい取り組みで社会にインパクトを与えているスタートアップを紹介するこの企画。今回は、農業とITを融合させ、生産者と消費者をつなぐ新しい流通モデルを構築するYACYBER(ヤサイバー)株式会社にインタビューしました。
同社は「生産者と消費者を繋ぐ」という思いを持ち、全国の直売所と消費者をつなぐプラットフォーム「YACYBER」webサービス、アプリの開発や、無人直売所の運営、さらには全国の生産者の商品を販売するなど、多角的な事業を展開しています。
登録直売所数2万5,000件を超える実績を持つ、会社と同名のサービス「YACYBER」は、オフラインからオンラインへの独自アプローチで、生産者の販路拡大と消費者の新鮮な農産物へのアクセス向上を実現。さらに、生産者支援として、パッケージデザインや販路開拓のサポートも行っています。
そんなYACYBER株式会社の事業や働き方の魅力について、代表取締役の唐澤さん(※1)と、制作・技術グループのディレクターである水野さん(※2)にお話を聞かせていただきました。
(※1)唐澤さん略歴:1982年生まれ。キッチンメーカーや電機メーカーに在籍後、2014年にWebシステム開発会社の取締役に就任。2015年、分社化により株式会社YACYBERを設立し、代表取締役に就任した
(※2)水野さん略歴:1983年生まれ。紙媒体のデザイン制作業務を経験後、2013年にWeb業界へ転身。YACYBERでは各種CMSやMAツールを使用したサイト制作・運用、Webディレクション、社内業務改善などに取り組む
YACYBERのミッションは生産者と消費者をつなぐこと
▲美味しそうなサツマイモを手に持っているのは、取材にご対応いただいた唐澤代表
編集部
最初に、YACYBERさんのミッションについてお聞かせください。
唐澤さん
私たちのミッションは「生産者と消費者の思考と嗜好を繋ぐ」というものです。こだわりを持って農作物を育てている生産者の各種情報をデータ化し、美味しく安全な野菜を食べたいと思っている消費者と繋げることで、出会いを生み出すのがYACYBERの事業目的だと考えています。
編集部
その背景には、日本の農業全体に対して貢献したいという想いもあるのでしょうか。
唐澤さん
おっしゃるとおりです。私は車や新幹線、飛行機でしょっちゅう日本中を飛び回っているのですが、改めて実感しているのが、「日本はどの地域でも食事が美味しい」という素晴らしさなんですよ。そこには、食を追求する国民性が影響していると思います。
日本人の特徴として、0から1を生み出すのは苦手かもしれませんが、1から100にするスキルは卓越していますよね。農業もそうで、例えばトマトの品種改良などがその良い例です。20年前には「トマトが嫌い」という子どもたちも多かったのですが、今では好きな野菜のランキング上位に入っている。品種改良がどんどん進んでいるからです。
この優れた食のインフラを守るためには、デジタルによる効率化を進めて、生産者さんの利益率を上げる必要があります。そうしないと、農業を引き継ぐ人が出てこなくなってしまうからです。そして最終的には、日本の農産物や加工品を海外にも認知してもらいたいですね。
ただ、食べ物を事業にするわけですから、そこには「安全なものを食べたい」など、消費者をはじめとするいろんな感情が絡んできます。生産者さんは口下手な方が多いので、そういったところを私たちが代わりにアピールしていくことが大切だと考えています。
編集部
日本の農業の価値を高め、海外展開も視野に入れながら、生産者と消費者をつなぐ新しい流通モデルを作っていくという大きなビジョンを持っていらっしゃるんですね。
直売所の検索サービスで日本一の規模。新事業としてプライベートブランドの開発、販売も
編集部
YACYBERさんが展開されている事業について、もう少し詳しくお聞かせください。
唐澤さん
先ほどのミッションを体現する主力事業が、スマホ向けWEBサービス「YACYBER」です。これは消費者が現在地の近くにある農園や直売所を見つけ、そのまま向かって購入できるというものです。直売所の登録やスケジュールの把握、直売所によってはキャッシュレスでの決済など、便利な機能も設けています。
YACYBERは、2024年8月末で開始から10周年を迎えました。登録直売所の数も2万5,000件を超えて、同様のサービスでは日本最大です。その最大の魅力は、ついさっきまで土の中に埋まっていたような採れたての野菜を購入できる点でしょう。
リアルでの買い物は新しい出会いの場でもあります。直売所に買いに来てもらうことで生産者との繋がりができるので、「実際に農園に行ってみようか」という行動のきっかけとなり、やがては生産者が運営するECサイトから購入することも考えられます。生産者さんは自分たちで営業や販路開拓をするのが難しいので、オフラインからオンラインに移行する橋渡しをするというのも、狙いのひとつですね。
編集部
その他の事業についても教えていただけますか?
唐澤さん
実はいま「食べるラー油」の企画開発を進めているんです。繋がりのある生産者の作物を集めて、にんにくやゴマなどすべての原料について純国産にこだわっています。ブランド名は「Made by Japanese」としていて、食べるラー油に続けて加工品をどんどん出していく予定です。
YACYBERの組織:異業種からジョインして活躍する人も多い
編集部
ここから、YACYBERさんの組織について伺っていきます。御社を支えているメンバーについて、特徴的な点はありますか?
唐澤さん
弊社はIT企業というカテゴリには入りますが、農業と食関連の事業を行っているので、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっているのが特徴ですね。
例えば、デザイナーとして入社した人は、前職が全く異なる業種だったケースもあります。販売員からデザインを勉強して入社した人や、調理師から転職してきた人などがいます。いわば、ハイブリッドなスキルを持つメンバーが多いです。
元々販売員をしていたメンバーは、すごくコミュニケーション能力が高いんです。デザイナーとしてのスキルだけではなく、クライアントと話して円滑にディレクションをしていける。また、調理師だったメンバーも知識や経験を活かして商品のパッケージデザインに反映しているし、ときにはレシピの作成に関わることもあります。
近年はAIの現場活用が進んでいますが、お客さんの声色から要望を察しなければいけない場面や、デザインでオリジナリティが求められる場面だと、まだまだ担えない領域も大きいですよね。その点で、いろいろな経験をしてきたメンバーは入社後に活躍してくれています。
編集部
代表の唐澤さんから見ても、メンバーの成長は速いと思いますか?
唐澤さん
はい。日本の農業に関してもAIの活用に関しても時代はどんどん動いていますが、私たちはその「スキマ」を狙って常にチャレンジを続けています。それが先ほどの食べるラー油の開発だったりするのですが、新事業に携わる機会も多いので自然と成長できるのだと思います。
YACYBERのカルチャー:素直かつ生産者を大事にする姿勢が共通
編集部
御社のカルチャーについては、どのような特徴がありますか?
水野さん
会社全体でいうと、和やかな雰囲気ですし、休みも取りやすい風土だと思います。新入社員の歓迎会を開くのはもちろん、誰かの誕生日にはケーキでお祝いしたりもします。制度として「アニバーサリー休暇」を設けているので、メンバー自身ではなく大切な人の誕生日でも休暇を取っていますね。
あとは、素直な人が多いですね。私は制作部門のディレクターとして指示や依頼をすることも多いのですが、そのときの姿勢を見ていていつも感じています。
唐澤さん
仕事面では、「言い訳する人が少ない」会社だと感じています。できない理由を探すのではなく、どうすればできるかを考える姿勢が根付いてきている印象です。私を含めてみんながコミュニケーションを大切にしていて、細かいニュアンスをしっかり伝えていることが良い影響を与えているのだと思います。
編集部
その他に、メンバーに共通していることはありますか?
唐澤さん
あとは、クライアントファーストの姿勢でしょうか。クライアントである生産者さんのことを第一に考える社員が増えてきているので、私としても非常に嬉しく思っています。
それは仕事で生産者と接するときだけではなく、メンバーの日頃の行動にも表れています。例えば、みんな実際にYACYBERのサービスを使って野菜を買ったりしているんです。旬の野菜を採れたてで手にするので、やっぱり新鮮さは段違いですよ。
消費者の皆さんからも「スーパーで買うのとぜんぜん違う」など多くの声をいただいていますが、メンバー自身も実感しているようです。
YACYBERの採用:「日本の食と農業」に関心を持つ人を歓迎
編集部
YACYBERさんは、現在どのような人材を求めていらっしゃいますか?
水野さん
多様なポジションで募集していますが、デザイナーに関しては、先ほどお伝えしたようにハイブリッドな人材か、経験は少ないがやる気のある新卒を求めています。YACYBERでは過去のキャリアを活かして働いていただけるので、社会人経験のある方も歓迎します。
また、必ずしもデザイナーとしての経験が豊富でなくても大丈夫です。デザインスクールを卒業した程度の能力は必要となりますが、別の仕事をしながら勉強して入社したというメンバーもいますので、あまり気にせず応募いただければと思います。
編集部
農業関連の仕事に携わった経験は必要なのでしょうか。
唐澤さん
いえ、それは必須ではありません。知識は入社後に身につけることができますので、それよりは「食の未来」や「日本の農業」などについて興味や関心がある方のほうが、よりマッチするのではないでしょうか。
編集部
社員数と勤務地についても教えてください。
唐澤さん
現在、全体で12名ほどです(取材を実施した2024年10月時点)。その大半が大阪本社に出社していますが、東京オフィスと沖縄オフィスで働くメンバーもいます。
生産者と食への感謝を事業に結びつけられるのがYACYBERで働く魅力
編集部
最後に、YACYBERさんに興味を持った読者の方々へメッセージをお願いします。
唐澤さん
私たちは事業として「農業」と「食」に携わることで、日本の既存の仕組みを変えていきたいと考えています。近年の社会の見通しは決して明るくはないですが、私は日本にはまだまだチャンスがあると信じています。日本の良さを、国内、そして海外の人々にもわかりやすく伝えていきたいんです。
そんな目的を持っている会社ですので、「毎日温かく美味しいご飯が食べられて幸せ」と感じられるような感受性を持った方は、ぜひうちに入ってほしいですね。生産者に感謝し、食事を大事にするという気持ちを事業に結びつけることができるので、一緒に大きなことを成し遂げられると思います。
編集部
農業とITを組み合わせて様々なサービスを展開されているYACYBERさん。これから新商品も世に出ていき、事業のフィールドがどんどん広がっているということで、食に関心があり新しいビジネスに携わりたいという方にピッタリだと感じました。本日はありがとうございました。
YACYBER株式会社の基本情報
住所 | 大阪府大阪市中央区平野町1-6-9 KIビル 5F,6F(大阪本社) |
---|---|
事業内容 | 【YACYBER事業】 ・農産物直売所の検索サービス「YACYBER」の開発、運営 ・食と農のお役立ちメディア「やさコレ」の企画、運営 【store事業】 ・農業生産者D2Cプラットフォーム「YACYBER store system」の開発、運営 【クライアントワーク事業】 ・webサイト制作、システム開発 etc... |
設立 | 2015年6月 |
公式ページ | https://yacyber.co.jp/ |
採用ページ | https://yacyber.co.jp/recruit |
募集職種 | ・デザイナー ・その他(管理部門、カスタマーサポート、広報など) |