若手のエンジニアを育てる仕組みを作り、成長を続けている企業にインタビューする本企画。今回は、月額定額制のシステム開発・運用事業を展開している株式会社ソニックガーデンにお話を伺いました。
「納品のない受託開発」を手掛ける株式会社ソニックガーデン
株式会社ソニックガーデンが展開しているのは、月額定額制のシステム開発・運用です。「納品のない受託開発」というキャッチフレーズで、顧客からの依頼を受けてシステムを開発するだけにとどまらず、エンジニアが顧問となって継続的にシステムの改善や運用を手掛けています。
会社名 | 株式会社ソニックガーデン |
---|---|
住所 | 東京都大田区田園調布2-14-5 |
事業内容 | ・納品のない受託開発 ・自社企画のクラウドサービス |
設立 | 2011年7月1日 |
公式ページ | https://www.sonicgarden.jp/ |
若手のエンジニアを育てるために、株式会社ソニックガーデンが採用しているのが子弟制度です。ベテランエンジニアに後輩社員がついて一つのグループを作り、一人ひとりが自立して働けるようになるまでサポートを続けています。
同社の若手エンジニアを育てる仕組みや独自のインターンプログラムについて、社長室長の髙木咲希さんにお話を伺いました。
システム開発後も顧客に伴走し続けるビジネスモデル
▲システム開発後もエンジニアが顧客の顧問となってソリューションを提供し続けている
編集部
初めに、ソニックガーデンさんの事業内容について伺わせてください。
髙木さん
ソニックガーデンは、顧客からの依頼を受けてシステムを開発する受託開発を手掛けています。とはいえ、弊社で展開しているのはただの受託開発ではありません。私たちは「納品のない受託開発」と銘打ち、月額定額で開発と運用を提供し続けていくビジネスモデルを採用しています。
一般的な受託開発は「システムを開発して納品して終わり」というものですが、弊社はエンジニアが顧客の顧問となり、システム運用などで伴走していきます。税理士のような士業の方が顧客のサポートをしていく形を想像してもらうとわかりやすいでしょう。
ですので、弊社には営業担当がいません。システムの企画や改善点のヒアリングなど、全ての工程でエンジニアが顧客の声を伺う形を取っているのです。
編集部
「納品のない受託開発」を展開することで顧客はどのようなメリットを得られるのでしょうか?
髙木さん
「納品のない受託開発」の顧客にとってのメリットは、状況の変化に合わせて柔軟にシステムを構築できる点にあると思います。
例えば新規事業を展開するお客様は、「これは世の中に受け入れられるサービスだ」という思いで新規事業を進めていきますが、実際に展開してみると「別の部分にニーズがあった」と気づくケースも多いと思うのです。
納品型のシステム開発の場合は必要な機能を全てそろえたうえでリリースしなければならないため、改善は難しいでしょう。しかし、ソニックガーデンのような受託開発の方法だと、お客様の要望をリアルタイムで聞きながらシステムを改善していけます。
編集部
変化に柔軟に対応できる体制を提供できるということですね。
「顧客と受託企業」という関係を超えた顧客との絆を構築
編集部
ソニックガーデンさんのこれまでの実績についてお教えください。
髙木さん
私たちはこれまで100社以上のお客様のシステム開発を担ってきました。現在13期目にあたりますが、サービスを展開し始めた当初からお付き合いを続けているお客様もいらっしゃいます。
私がソニックガーデンに入社した理由は、このような伴走型の受託開発というサービスの形が世の中に少なかったこともあり、魅力を感じたためです。お客様のビジネスが成長していく姿を、伴走しながら見ることができます。
また、事業が成長すると、システム運用においても対応内容が変わってくるのです。そこにしっかりケアしていけるというのが、ソニックガーデンの強みだと思います。
編集部
顧客と受託企業という単純な関係よりも強い絆を感じますね。
髙木さん
ソニックガーデンとお客様の関係については、一緒にビジネスを進める仲間だといえますね。
「何かサービスを開発したい、そのためにエンジニアを雇用したい」と思っても、これまでエンジニアと縁がなかった企業からすれば見極めが難しいでしょう。
弊社には多くのエンジニアが集まっているため、エンジニアのマネジメントについても担えるという点も、お客様と長年お付き合いを続けられる要素だといえます。
セルフマネジメントを前提にして働くのがソニックガーデン流
編集部
ソニックガーデンさんにはエンジニアが何名在籍されているのでしょうか?またエンジニアを評価するポイントについてもお聞かせください。
髙木さん
ソニックガーデンには現在56人のメンバーが在籍していて、そのうち47人がエンジニアです。全体の84%がエンジニアということになりますね。
弊社の納品のない受託開発では月額定額で月々に頂く金額が決まっているので、お客さまと関係が長く続けば続くほど安定するビジネスモデルです。そのため、売上目標ではなくお客さまに満足して頂くことを目指すことができます。
また、それぞれのプログラマがさまざまな案件に取り組んでおり一律に評価することはできないので、一定の技術力のあるベテランプログラマを個別に評価することはありません。
編集部
エンジニアの働くスタイルについて、ソニックガーデンさんはどのような考えをお持ちでしょうか?
髙木さん
エンジニアが手掛けているのは、とてもクリエイティブな仕事です。そんなクリエイティブな仕事を手掛けている人に対しては、上司が指示したり管理したりするというのは合わないと考えています。
自律的に考えて行動するセルフマネジメントを前提にして働くというのが、ソニックガーデン流ですね。
上司が「このコードをこのように変更してください。」と指示できる業務ならば、その上司がやったほうが早いというのがエンジニアの仕事だと思います。ですので、一人ひとりが自分ができること、やるべきことを考えて動いていくことが大切だと考えています。
編集部
指示を待つのではなく、主体的に業務に取り組むことがエンジニアには求められるのですね。
「自立はするけれど孤立はしない」、社員同士の交流を生む仕組みづくり
▲バーチャルオフィスを導入するなど、社員を孤立させない環境を作っている
編集部
ソニックガーデンさんのエンジニアは基本的にリモートで仕事を進めていくのでしょうか?
髙木さん
ソニックガーデンはリモートワークを採用しています。また、勤務形態についてはコアタイムなしの完全フレックスです。
先ほどセルフマネジメントの重要性についてお話ししましたが、弊社では「自立はするけれど孤立はしない」という姿勢を大切にしています。
リモートワークで完全フレックス勤務制と聞くとかなり自由度が高い印象を受けられると思いますが、私たちはチームで動くことを重要視しています。
ですので、例えば「どうしてもこの時間は働けなくて中抜けする」というのは遠慮はいらないですが、「みんなが起きている時間帯に仕事をした方が相談がしやすい」というようなお互いへの配慮は社員に持ってもらいたいと考えています。
編集部
自立を大切にしつつ、社員さん同士のコミュニケーションも重視しているということですね。
髙木さん
ソニックガーデンでは毎週、互いの仕事について共有したり相談したりするミーティングをオンラインで実施しています。こういったコミュニケーションの機会が事業の見直しと個人の成長に結び付いていますね。
また、弊社では自社開発のバーチャルオフィスを導入しています。オンライン上であってもコミュニケーションが取りやすい環境を作っているのです。また、オンラインだけでなく、オフラインでの合宿や食事の機会も作るようにしていますね。やはり会うことで得られる情報はとても多いです。
編集部
社員さんを孤立させない工夫が随所に散りばめられているのですね。
若手エンジニア数名とベテランエンジニアでチーム組む子弟制度
▲ベテランのエンジニアと若手エンジニアが一つのチームを作る子弟制度を導入している
編集部
セルフマネジメントを重視されているとのことですが、入社したばかりの若手エンジニアだとよほどのスキルを持っていないと厳しいのではないかと思います。その点、ソニックガーデンさんはどのような工夫をされているのでしょうか?
髙木さん
ソニックガーデンではセルフマネジメントができるレベルに達していない新卒、第二新卒のエンジニアを育てるため、子弟制度を導入しています。
これは若手のエンジニア3~4人とベテランのエンジニアで一つのチームを作って一緒に仕事をしていく仕組みです。指導役のエンジニアは親方と呼ばれています。
やはり新卒、第二新卒のメンバーは「自由にしていい」といわれても、逆に困ってしまうでしょう。弊社もかつてそのようなスタイルで仕事を進めてもらっていたこともあるのですが、辛い思いをさせてしまったという反省がありました。
編集部
子弟制度についてもリモートで実施されているのでしょうか?
髙木さん
子弟制度については、リアルの場に集まってもらう形で運用しています。先輩社員に話しかけるのは、リアルの現場でも難しい場面がありますよね。また、少し厳しめのフィードバックをする際は、リアルの場で行った方がフォローもしやすいです。
やはりオンラインよりも、リアルの場に集まったほうが学べるものは多いと考えています。
「やってきたこと」「わかったこと」「次やること」をすり合わせるYWT
▲若手育成において振り返りを重要視している
編集部
子弟制度の中で、実際にどのようにして若手エンジニアを育てていらっしゃるのでしょうか?
髙木さん
若手エンジニアについては、必ず毎週親方と振り返りをしてもらっています。自分の仕事の進め方の改善点や自分なりに良かったと思うことについて考えてもらったうえで、ソニックガーデンの価値観をもとにした親方のフィードバックを受けてもらっています。
そのほかにも、本人の成長という観点から見た仕事の取り組み方のアドバイスや、どんな目標を持てば良いかという部分についてもアドバイスするようにしていますね。
編集部
若手エンジニアの仕事ぶりについてフィードバックすることを重視されていることが伺えますが、毎週の定例のフィードバックのほかに、若手社員がアドバイスをもらえるような機会はございますでしょうか?
髙木さん
ソニックガーデンでは半年に1度に親方と若手エンジニアで今後の目標についてすり合わせを行う「YWT」という取り組みを実施しています。YWTとは「やってきたこと」「わかったこと」「次やること」の頭文字を取った略語です。
YWTではこれまでの取り組みを振り返ったうえで、今後挑戦していきたいことを親方と若手エンジニアで共有しています。
例えば、「ブログを書いて技術のアウトプットを増やしていきたい」と考えている若手エンジニアがいたとします。仕事をしながら1人でブログを続けるのは、なかなか難しいです。
なので、親方が企画を出すのを手伝うであったり、同じようなことをしたいと思っている社員を引き合わせたりなど、会社と一緒に個人の目標を立てていくのです。
本人にとっても会社にとっても意味のある目標を立てるという思考法は、セルフマネジメントの力をあげていく一歩だと考えています。自分のキャリアを考え自立的な思考法を身に付けるためのYWTなのです。
編集部
セルフマネジメントができるという最終目標をぶらすことなく若手エンジニアの育成に努めているのですね。
社外向けのプログラミング合宿の参加を通じて入社する社員も
▲1カ月間無料で実施するオンラインプログラミング合宿「ソニックガーデンキャンプ」では参加者がチームにわかれてアプリを開発する
編集部
ソニックガーデンさんではインターンシップを実施されているとのことですが、実施内容について伺わせてください。
髙木さん
ソニックガーデンのインターンシップは「インターンシップ」という名称で実施はしておらず、「ソニックガーデンキャンプ」「ソニックガーデンジム」という取り組みが結果的にインターンシップに代わるものとなっております。
ソニックガーデンキャンプは、1カ月間無料で実施するオンラインプログラミング合宿です。参加者には弊社のエンジニアがメンターに付き、2週間で「Ruby on Rails」を学んでもらい、残りの2週間でチームにわかれてアプリ開発をしてもらいます。
ソニックガーデンジムは、ソニックガーデンキャンプに比べてプログラミングの経験がある方向けのプログラムです。期間は3カ月ほどで、参加者は社会人の方が多いですね。
ソニックガーデンジムでは、弊社が用意した課題に取り組んでもらいます。課題提出後は、弊社のメンバーがコードレビューして参加者に返し、修正していくという流れです。
ある程度プログラミングを学ぶと、「もっと良いコードを書きたい」という意欲が出てきます。良いコードを学ぶ上で一番効率が良いのは実際にコードを書いてベテランエンジニアからフィードバックを受ける方法だと考えています。
編集部
プログラミングの習熟度に合わせたプログラムが用意されているのですね。参加者の反応としてはいかがでしょうか?
髙木さん
実は最近ソニックガーデンキャンプを実施したのですが、事後アンケートの「本イベントをエンジニア志望の友人に勧めたいか」という項目で、全ての参加者が10段階の9以上を回答してくれました。イベントの最後に開発したアプリについて発表する機会があり、弊社のメンバーも30人ほど参加して「いいね」「おもしろい」というようなコメントを送っていたのですが、その雰囲気がとても良かったとのコメントもありました。
これまで4回実施していますが、毎回そのような言葉をいただいています。
編集部
かなり好評を得ているプログラムですが、2つの取り組みがきっかけで入社するケースもあるのでしょうか?
髙木さん
ソニックガーデンキャンプ、ソニックガーデンジムともに、参加者が入社するケースがありました。プログラム中、参加者は弊社のメンバーと時間をかけてコミュニケーションを取っていきますので、人の雰囲気や在籍しているエンジニアのスキルがわかります。
なかでも、高いスキルを持ったエンジニアが在籍しているというのは、参加者が弊社に入社する理由となっているようです。
私たちはお客様と伴走するビジネスモデルを展開しています。自分でシステムの全てを運用し続けていく必要があるので、高いスキルを持っていないと自分が苦しくなってしまうのです。
エンジニアとしては、やはり良いコードを書けるプログラマーを目指していくことになります。自分のスキルを磨けるという点で、ソニックガーデンはエンジニアにとって魅力的な職場なのだと思います。
編集部
自分が成長する姿を思い描ける職場というのがソニックガーデンさんの魅力なのですね。
「プログラマーを一生の仕事に」、プログラミング好きを求む
▲「プログラミングがおもしろくてもっと極めたいと考えている方はフィットする」と話す髙木さん
編集部
ソニックガーデンさんではどういった方が活躍できるでしょうか?
髙木さん
ソニックガーデンは「プログラマーを一生の仕事に」というビジョンを掲げています。「プログラミングは単なる仕事ではなく、生涯かけて取り組む価値のあるものだ」と思っているメンバーが集まっているのです。
ですので、「仕事以外でプログラミングに触れたくない」ではなく、「プログラミングがおもしろくてもっと極めたい」と考えている方は、弊社にフィットすると思います。
そういった考えを持っている仲間たちで切磋琢磨したいという思いを持ち、良い意味で「プログラミングで遊ぶ」ことが好きな方を求めていますね。
編集部
最後に、ソニックガーデンさんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
髙木さん
先ほども「プログラミングで遊ぶ」という言葉を使いましたが、ソニックガーデンの社員の中にはもともと遊びでプログラミングを始めたという方もいます。「何かを作るのが楽しい」という思いでスタートしていて、まさに子どもが絵を描き始める感覚と同じなのです。
なので、弊社の社員は「こんなに良いコードが書けた自分はすごい」という気持ちで楽しんで仕事をしています。プログラミングについて休憩中や食事中に楽しそうに話したり、帰り道で熱く語ったりする社員ばかりなのです。
プログラミングが好きな方にとってはのびのびと働ける環境にあると思いますので、自分の技術を極めたい方はぜひ入社いただければと思います。
編集部
「プログラミングが好き」という思いを素直に表現できる。そんな職場だからこそ顧客から愛され続けているのだと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
株式会社ソニックガーデン:https://www.sonicgarden.jp/
採用ページ:https://www.sonicgarden.jp/join_us