独自の社員育成方法や若手活用方法などで注目されている企業を紹介する本企画。今回は経営理念に「中小ベンチャー企業の社長を元気にする。」を掲げている白潟総合研究所株式会社をインタビューしました。
コンサルティング事業の根幹を成している「Why、How、What」を伺うとともに、独自の働き方である階層別ハイブリッドや持続可能なハードワーク、そして人材育成の3つのポイントをお聞きしました。さらに採用におけるポイントをお伺いしています。
白潟総合研究所株式会社とは
白潟総合研究所株式会社は、2014年10月にデロイトトーマツグループ トーマツイノベーションの前社長が立ち上げた、中小ベンチャー企業を支援する総合型コンサルティングファームです。
採用から育成、組織開発までの一貫した支援を得意としており、これまでに800社以上の中小ベンチャー企業経営者の悩みや課題を解決しています。また2028年9月末までに「3,000人のファン社長が集まるコミュニティの実現」をビジョンとしています。
会社名 | 白潟総合研究所株式会社 |
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住所 | 東京都中央区日本橋小伝馬町4-11 サンコービル7F |
事業内容 | 人・組織コンサルティング事業 M&Aコンサルティング事業 総合経営コンサルティング事業 |
設立 | 2014年10月 |
公式ページ | https://www.ssoken.co.jp/ |
白潟総合研究所株式会社のコンサルティングは、「Why(なぜやるのか)」「How(どうやるのか)」、そして「What(何をやるのか)」について、明快な信念をもっていることが特徴です。
取締役の石川哲也様にその詳細についてご説明をいただくとともに、「若手が主役」の方針に大転換した経緯や、そのための人材育成方法、そして独自の働き方である階層別ハイブリッドについてお聞きしました。さらには採用におけるポイントをお伺いしました。
中小ベンチャー企業経営者のお悩み解決に特化
▲白潟総合研究所さんの経営理念(公式ページより引用)
編集部
最初に事業内容のご説明からお願いいたします。
石川さん
白潟総合研究所は経営理念として「中小ベンチャー企業の社長を元気にする。」を掲げています。そして中小ベンチャー企業の経営者に特化した、総合型の支援を行っています。経営における各種のお悩みを、コンサルティングによって解決しているんです。事業部としては「人組織コンサルティング事業部」と「M&Aコンサルティング事業部」の2つが主力で、これらを包括する形で総合経営コンサルティング事業を展開しています。
まず人組織コンサルティング事業部がカバーしている支援領域は、人材の採用や採用した人材の能力開発、そして能力開発した人材をよい組織にまとめていくための組織開発などです。
そしてM&Aコンサルティング事業部は、基本的に中小ベンチャー企業同士のM&Aを支援しています。ただし、ただシンプルにM&Aを仲介して、A社とB社をくっつけますという話ではありません。単なる仲介ではなく、本当に経営上の歪みがないように企業同士を結びつける支援を行っています。
編集部
一言で経営コンサルティングといっても、白潟総合研究所さんは中小ベンチャー企業の経営者の、お悩み解決に徹していることが特徴なのですね。
石川さん
そうです。ただし、今お話ししたのは「Why、How、What」でいえばWhatですよね。「具体的に何を支援しているか」というお話です。しかし弊社は「How:どのようにやっているのか」の部分に、ものすごく癖があり、独自のノウハウがあるんです。
白潟総合研究所が提唱する「自在経営」とは?
編集部
Howの独自ノウハウとは、どういったことでしょうか?
石川さん
白潟総合研究所は基本的に、中小ベンチャー企業の経営では「社長から200%のエネルギーが出ていれば、何をやってもうまくいく」と考えています。これは弊社の信念なんです。経営者の目が輝いており、自分がやっている経営に納得している。そして、自分らしさが出ており、「楽しくてしょうがない」という状態ですね。これこそが経営における理想の状態だと考えています。
編集部
セオリーや理論などよりも優先するのですね。
石川さん
そうです。例えばAB二つの選択肢があり、A案が確率論的には最もうまくいきやすい手法だとしましょう。しかしながら、これを選ぶことで社長らしさが失われるようであれば、選択肢からはずします。そして社長の目が輝くB案を採用し、目標の達成方法を一緒になって立案します。
その社長が自分らしく、思いっきり経営できることが何よりも大切なのです。社長が自由自在に組織を動かして、想いを遂げるという意味で「自在経営」と呼んでいます。これが弊社のHowです。
そしてこのHowが、「Why:なぜやるのか」に繋がるわけです。Whyは非常にシンプルです。経営理念である「中小ベンチャー企業の社長を元気にする。」を実現するために「やる」ということになるからです。
編集部
その社長の強みを最大限に引き出すことが、御社のコンサルティングにおける最重要テーマということですね。
「How:自在経営」を実現するための4つのポイント
編集部
ではHowの自在経営を実現するためには、何がポイントになるのでしょうか?
石川さん
具体的な支援のポイントには次の4つがあります。「経営の在り方・やり方に、こだわりをもたない。正論・正解を押し付けない」「社長の話をとにかく『聴く』」「短期ではなく長期。買い続けられる価格にこだわる」、そして「複雑なモノをシンプルかつ本質的に」です。
白潟総合研究所は「このマネジメントの仕方が正しい」や「こういう経営をすべきだ」という考えを一切もっていません。「正論や正解を一切押し付けない」ということに徹しています。ですから、先生的にいろいろと教えるのではなく、社長の話をとにかくよく聴く。まずは、これに徹しています。社長のことを知れば知るほど、その社長らしい経営の支援策を提案できるからです。
そのためには弊社のサービスを、短期ではなく長期で使い続けていただかなければいけない。価格もそれが可能な設定でなければなりません。そして複雑ではなく、常にシンプルかつ本質的にやっていきたいと思っています。
編集部
会社のことを外側からではなく内側から把握することで、コンサルティングしているイメージですね。
石川さん
弊社のコンサルティングは社長だけを見据え続けるという意味で、BtoBよりもBtoCに近い側面があると思います。
紆余曲折を経てたどり着いた働き方「階層別のハイブリッド」
編集部
続いて働き方についてお聞きします。現状で出社とリモートワークの状況は、どのような感じでしょうか。
石川さん
白潟総合研究所の働き方の特徴は、「階層別のハイブリッド」を採用していることだと思います。弊社も過去にはフル出社やフルリモートなどと、いろいろな変遷がありました。それらから導き出した結論は、フルリモートの適用は「人としての成熟」と「自律・自走」の2つを前提とすること。そうしないと、マイナスの要素が多過ぎるということです。
コンサルティング業の場合、人が商品なんです。人の成長こそが、会社の成長に100%の影響を与えます。そうなると本当に成熟し、自律・自走できるようになり、しかも先ほどお話したWhy、How、Whatが自分のものになるまでは、フル出社の方がはるかに効果的でメリットが多いんです。
ところが、これをクリアしたコンサルタントに関しては、フルリモートの方が圧倒的に生産性が高くなります。ただし部下がいる場合には、彼らとのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが必要ですからハイブリッドになります。
編集部
リモートワークの是非を職種で判断するという話はよく聞きます。しかし、階層による是非の判断というのは初めて聞きました。
石川さん
いろいろと試行錯誤した結果です。要は「中小ベンチャー企業の社長を元気にする。」という経営理念を実践することが最重要なのです。そのために、最も高いパフォーマンスを発揮できる働き方を階層ごとに選択できるようになっている、ということです。逆にいえば働きやすさなどは、あまり考えていませんというのが正直なところです。
「持続可能なハードワーク」を徹底的に追求
編集部
「働き方で最優先すべきはパフォーマンスの最大化」というお考えは、白潟総合研究所さんの社風を表しているように感じます。
石川さん
そう思います。少し微妙な表現ですが、弊社では自分達の働き方を「持続可能なハードワーク」と呼んでいます。これは何もハードワークを是としているわけではありません。ただし弊社は中小ベンチャー企業の社長を元気にすることに、自分の人生を投じたいという人のための会社なんです。
ですから、やはりハードワークになります。ハードワークですし、ハードラーンですね。業務時間が終わった後でも、メンバーはみんな必死になって本を読んで勉強しています。お客様へのコンサルティングに向けて、必要になる書籍が相当な数になりますから。
もっとも、そのハードワークも「持続可能」でなければ意味がありません。ハードワークを続けた結果潰れてしまったのでは、本人にとっても、会社にとっても、お客様にとってもよくない。ハードワークをしたい人が、幸せにハードワークをし続けられる環境の整備が重要だと考えています。
そのための施策の1つとして、年4回の長期休暇を実施しています。ゴールデンウィークは9連休から10連休ですし、お盆休みも9連休です。そして冬休みも、暦によりますが11連休から15連休になります。
しかもプチ春休みとして、祝日を繋げて4日間ほど連休がとれるようになっています。日常的には仕事と学びを集中的にこなし、その分、休む時には思いっきり休む。そういった形で1年間のリズムが回るようになっています。
編集部
オンとオフのメリハリが非常に明確なのですね。
人材育成のための3つのポイント
編集部
先ほど「人の成長こそが、会社の成長に100%の影響を与える」と伺いました。では具体的に、どのような人材育成方法を実践されているのでしょうか?
石川さん
大きく3つあります。1つ目は、入社したばかりの新人に最初に叩き込んでいる「学び方を学ぶこと」です。Learning How to Learnという話ですね。学びといっても書籍などを読んで知識を学ぶものもあれば、現場での経験をどれだけ自分のものにするかという学び方もあります。
両者に共通することは、学び方にはうまい・へたが明確にあることです。そしてその違いが、成長速度の差になるということです。ですからまずは、学び方を学んでもらっているんです。
逆にいうと、弊社の「Why、How、What」に共感しているのであれば、あとは学び方さえ学べば、上司が何かしなくても人は育つということです。それどころか、育ちたいと思っており、自分で育つ力をもっている人にとっては、上司の教えは邪魔になる可能性だってあるんです。ですから、まず1つ目は弊社の想いに共感して入社してくれた人達に、学び方を叩き込んでいます。
2つ目は、可能な限りの経験をさせることです。結局、何によって人が成長するのかといえば、どこまでいっても現場であり、経験なんです。これが一昔前のコンサルティング業界との、一番の違いですね。過去には、お客様がもっていない知識を提供することに、価値を感じてもらっていました。しかし、ChatGPTなどが日常的になってきた今、知識や知恵は本当に価値がなくなると思っています。
それよりも、経験したことをどれだけ自分のノウハウとして使えるか、ということの価値の方が高まってきています。そうなると現場での経験数や技術の部分にしか、競合優位性を打ち出すことができません。ですから人材育成のポイントの2つ目は、チャレンジする場や経験ですね。その数をどれだけ与えられるか。そして、どれだけいい場であるのかという、経験の量と質に非常にこだわっています。
編集部
どちらのポイントも非常に実践的で理に適っているように感じます。3つ目はどんなことでしょうか?
石川さん
3つ目は、先ほど上司に邪魔をさせないといいましたが、それは「教える」という意味においてです。そうではなく、自分で学んでいる人にとっては、やはりチューターやコーチが絶対に必要なんです。
白潟総合研究所の上司達は、コーチングにものすごく時間を使っています。平均すれば週に20時間は、部下のために使っていると思います。すべての上司達が、人の成長が会社にとって何よりも大事だということをはっきりと認識しているからです。
編集部
コーチングに週20時間というのは驚きました。人材育成の重要性を言葉ではなく、実践しているからこその20時間なのでしょうね。
2023年、若手を主役にする方針へと大転換
編集部
お伺いした人材育成法などにより、若手メンバーもずいぶんと活躍されているようですね。入社2年で事業部長に昇進された方のインタビューを資料で拝見しました。
石川さん
まず正直に話しますと、今の環境がある中で、本当にチャンスをつかんで事業部長まで一足飛びに成長した若手は、やはりまだ数が限られています。なぜかといいますと、お客様に対してコンサルティングを行う主役が、やはり幹部クラスになってしまっていたからです。
むしろ「ならざるを得なかった」というのが、創業から2022年までの8年間でした。やはり幹部クラスのコンサルティングは、ものすごく質が高く、お客様からの指名も多いんです。その周辺の仕事やサポートを若手がするという状態になっていました。
しかし、「このままでは白潟総合研究所に未来はない」という危機感がわいてきたんです。例えば10人採用をしても、幹部クラスに育つのが1人という状況では、会社としては何が変わってきているのか、という話でしかありません。
そこで2023年に方針を大転換したんです。これからの3年間は、「若手こそが中小ベンチャー企業の社長を元気にする、最前線に立つ人間である」ということで、若手を主役にする方向へと思い切って舵を切りました。そのおかげで今は、少しずつ手応えを感じ始めています。
編集部
方針を大転換されて、若手にエネルギーを注ぎ、若手中心の組織作りをされているということですね。
石川さん
おっしゃる通りです。白潟総合研究所はもともと、文化として人を育てることが好きなんですね。特に若い人の成長を見るのが、ものすごく好きな会社なんです。これはもう哲学じみているというか、こだわりじみたものという感じで、創業当時から脈々と受け継がれてきた文化だと思います。もちろん、至らないところがまだ多くあるのですが、その想いだけは100%の自信があります。
中小ベンチャー企業の効率的な人材採用方法とは?
編集部
では次に採用について伺います。採用の専門家でもある石川さんは、中小ベンチャー企業の採用では何が重要だとお考えですか?
石川さん
いろいろな経営スタイルや考え方があるので、一概にはいえません。ただし、個人的に思うことは、本当に自分達の仲間がほしいのであれば、中小ベンチャー企業は万人に好かれることを「捨てる」ことですね。これが何よりも大事だと思っています。99人に嫌われても、たった1人に強烈に好かれること。その人のための採用をすべきだし、その人のための組織作りを行うべきだと考えます。
採用を起点にして、「うちは誰にとっての会社なのか」や「うちを心の底で嫌っている人は誰なのか」、そして「本当にうちの会社が好きな人は誰なのか」を考えるんです。これを突き詰めた上で採用を行えば、いい会社作りができると思っています。
結局のところ「誰にとってもよい会社」というのはあり得ません。うちは誰にとっていい会社なのかを突き詰めた上で、その人のための会社作りに邁進するという話になります。その結節点が、採用になるのだろうなと思っています。
編集部
なるほど。中小ベンチャー企業の採用というと、ともすれば「間口を広く」と考えがちですが、そうではないんですね。
石川さん
はい。間口を広げて1000人のエントリーを集め、20人を採用しましたという話ではありません。それよりもたった1人に好かれるという方針を打ち出した方が、結果的には採用率もアップするんですよ。
本当に誰に好かれているかを考えて、その人にとって入りたくて仕方がない会社にするんです。そうすれば50人のエントリーで30人採用できます。実際、白潟総合研究所も20人のエントリーで本当にいい人が9人いて、そこから7人を採用するというような、非常に効率のよい採用ができています。
白潟総合研究所の採用における3つのポイント
▲採用のポイントを「仕事中心の人生」「成長志向」そして「体育会系」と語る石川さん。
編集部
では最後に白潟総合研究所さんにとって、採用のポイントはどんなことでしょうか?
石川さん
まず大前提として、若手の採用ではどなたであれ「中小ベンチャー企業の社長を元気にする。」というWhyを実現できるかどうかは、実際にやってみないとわからないということです。特に新卒の場合ですね。
ですから応募のタイミングで「コンサルティング業が、自分の人生をかけるに値する天職だろうか」などと迷ったり、心配する必要はありません。そうした迷いを取り払うために、弊社は2023年2月に「キャリア・トライアル制度(CaT)」の導入を発表したんです。
これはコンサルタントを天職とするかどうかの判断を、入社3年後まで先延ばしにするものです。入社後、3年が経過したタイミングで上長と面談を実施し、その時にコンサルタントを継続するか、それ以外の道へ転職するかを意思決定してもらいます。
そして仮に転職を選択した場合には、次のキャリアを見つけるサポートを会社として全力で行うという制度です。ですからエントリーの段階では「コンサルタント業は、今のところよさそうに思える」ぐらいの気持ちで大丈夫です。まずこれが、弊社の採用における大前提になります。
編集部
転職を選択しても、全力でサポートを受けられるのは心強いですね。
石川さん
この制度の導入には、白潟総合研究所として、社会人キャリアの新しい在り方を提唱したいという想いを込めています。その上で採用の現実的なポイントは何かという話になります。これには3つあります。
まず1つ目は、「自分の人生の中心に仕事をおきたい」という人ですね。これは何も、仕事だけが人生ではないという生き方を否定するつもりはまったくありません。ただ、弊社のメンバーとしてフィットするのは「仕事を軸とした人生を歩みたい」という方になるということです。
2つ目は「貪欲なまでに成長志向型であること」ですね。自分を成長させることが大好きという方にとって、弊社は最適な環境だと思います。
そして3つ目は、体育会系の部活動のような気質に馴染める方ということです。弊社は非常に距離が近く、仲のよい組織が特徴です。そういう風土に適応できる方にとっては、とても居心地がよい会社だと思います。
編集部
求めている人材のポイントが明確でわかりやすいですね。本日はありがとうございました。
■取材協力
白潟総合研究所株式会社 https://www.ssoken.co.jp/
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