新しい働き方を取り入れている会社にお話を伺うこの企画。
2008年の創業以来、企業のテレワーク導入支援やツールの開発・販売、講演や研修を通してテレワーク普及に取り組まれている、株式会社テレワークマネジメントさんにインタビューさせていただきました。
株式会社テレワークマネジメントとは
「テレワーク」という言葉はもはや何の説明も必要ない言葉になりましたが、「適切なテレワーク」がどういうものなのか聞かれると、答えられない人も多いのではないでしょうか。
テレワークマネジメントさんは、テレワークの問題点となりがちなコミュニケーション面やマネジメント面についてその企業に適した方法で改善することで、会社の業績も社員の満足度も向上するようなコンサルティングを実施しています。
会社名 | 株式会社テレワークマネジメント |
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住所 | 東京都千代田区二番町7-15-102(東京オフィス) |
事業内容 | テレワーク導入支援コンサルティング テレワークに関する講演・研修 テレワーク用システムの販売 テレワーク関連調査・分析 |
設立 | 2008年9月1日 |
公式ページ | https://www.telework-management.co.jp/ |
今回は、テレワークマネジメントが伝えたい理念や、実際にテレワークで勤務されている働き方を中心に、代表取締役の田澤さんにお話を聞かせていただきました。
理念は「適切なテレワーク」の普及
編集部
最初に、テレワークマネジメントさんが手掛けている事業についてお教えいただければと思います。
田澤さん
社名をご覧いただいておわかりかと思いますが、テレワークの導入支援や、テレワーク環境を改善したい企業へのコンサルティングが主な事業です。
それに関連して、テレワーク導入企業向けのツールであるバーチャルオフィス「Sococo(ソココ)」、そしてマネジメントツール「F-Chair+(エフチェアプラス)」の開発や販売もおこなっています。
ただ、我々はツールを売るための会社ではなく、「適切なテレワーク」を普及することを目標としているんです。テレワークに伴う問題を解決するために、結果として自社のツールを使っていただくことはありますが、押し付けるということはしていません。
編集部
適切なテレワークとは、どういう働き方を指すのでしょうか。
田澤さん
今、テレワークをするときの課題として一番挙げられているのが「コミュニケーション」と「マネジメント」なんですね。
まず、コミュニケーションの課題から説明します。「若い世代は職場でのコミュニケーションが少なくても問題ないと思っている」という俗説がありますが、私はそうは思いません。たとえば毎日顔を合わせて密接に話し合うことは望んでいなかったとしても、ふとしたときに雑談ができるような関係性は、決して嫌がっていないはずです。
そういったコミュニケーションから「こうしたらいいよね」というアイデアやイノベーションが生まれてくるものですし、過度にプライベートに干渉されなければ、仕事をする仲間と気軽に話し合える関係はむしろ望んでいる人が多いでしょう。
リモート環境だとテキストによるやり取りがメインで、ウェブ会議も基本は仕事の話題だと思いますので、日常的な声掛けや軽い質問などのコミュニケーションを取ることが案外難しかったりします。この課題をツールの導入や業務プロセスの改善などで解決することが、適切なテレワークのひとつの条件といえます。
基準を設けて緩やかに管理することで、社員がパフォーマンスを発揮
編集部
テレワークが抱えるもうひとつの課題「マネジメント」について、具体的にどのような点が問題なのか教えてください。
田澤さん
マネジメントの課題は明確で、「どこまで管理すればよいかわからない」という点です。今までは目で見て確認できていた社員の行動が、リモート環境ではまったく見えない。これに対して、どう管理していくか悩む企業は多いです。
管理体制については大きく3つのパターンに分かれます。細かい点までキッチリと管理する「管理型」と、あまり管理を行わず基本的に社員の自律性に委ねる「放任型」、その間の「ハイブリッド型」です。
編集部
3つの管理タイプのうち、どれが優れているのでしょうか?
田澤さん
私たちが「適切なテレワーク」として提案しているのはハイブリッド型の管理です。なぜなら、世の中の6割の人は平均的な能力の持ち主であるミドルパフォーマーと言われていますので、ぎちぎちに管理されても、個人任せで放任されても、なかなか能力を発揮できない可能性が高いからです。
たとえば「1日8時間勤務を守れば中抜けOK」のように、ルールのなかで必要な部分はしっかり縛りながらも、自分の裁量で進められる部分も設けてあげることが大事です。
管理の基準が明確なら個人の事情にあわせて調整できますし、同じ条件なのでチーム内で不満が出ることも避けられます。柔軟に働ける職場を実現して、みんなが幸せになるのが、私たちが目指している「適切なテレワーク」なんです。
編集部
コミュニケーションとマネジメントの両方を改善することで、多くの方が活躍できる職場環境を整えていらっしゃるのですね。
テレワークのメリットは理解しながらも、運用面で悩まれている企業は少なくないでしょうから、その悩みを解消していけばますますテレワークが普及していくのではないでしょうか。そうなれば働きやすい社会へと変化し、自分や大切な人たちのワークライフバランスを改善することにも繋がります。そんな社会的に意義のある事業に携わる御社の業務は、とてもやりがいがありそうですね。
バーチャルオフィスを実際に使って効果を実証
編集部
次に、テレワークマネジメントさんの働き方についてお教えいただければと思います。
田澤さん
環境としては全社員が完全テレワークで、バーチャルオフィス「Sococo」に出社しています。
このSococoは、オフィス内のアバターを見れば出社している社員がひと目で把握できます。また、会議室に集まっていれば現在会議をしている、応接室にいれば社外の方と打ち合わせをしているなど、その人の状況が直感的にわかるのも優れた点です。
同じ部屋にいれば声も聞こえるので、本当に普通のオフィスに出社しているのと同じ感覚で働けるわけですが、テレワークなので実際にはバラバラの場所にいます。(アバターを操作して)では、部屋に入っていって声をかけてみましょうか。皆さん、今どこにいますか?
社員の皆さま(バーチャルオフィス内)
「千葉県です」「京都の自宅です」「北海道にいます」
田澤さん
ありがとうございます。このように、離れていても一緒に仕事をしているという環境や雰囲気ができているわけなんですね。一人で働いているわけではないという安心感もありつつ、いつ仕事の話が始まるかわからないという緊張感もある。これも、先ほどお伝えした「緩やかな管理」につながるかと思います。
編集部
リモート環境でも実際に出社しているときと近い感覚で働けるのは、まさに出社とテレワークのいいとこ取りですね。自分たちで体験しながら、ICTツールがテレワークの課題を解決できることを証明されているんですね。
テレワークでも顔を合わせてラジオ体操ができる
▲毎朝のラジオ体操。お手本の動画を共有しながら全員で体を動かしている。
編集部
同じ部屋にいれば気軽に話しかけられる環境だと思いますが、その他にコミュニケーションを促すような仕組みがあるのでしょうか。
田澤さん
Sococoを導入している企業によって異なりますが、弊社ではオフィスの中央下にある「マルチルーム」を雑談を推奨する部屋にしています。
もちろん、電話中や会議中でなければ基本的にはどこで話しかけてもよいのですが、マルチルームにいれば「コミュニケーションをとりたい」というサインにもなりますよね。私も社員と雑談することは多いです。
あと、決まりごととして、朝9時に出社したらマルチルームに全員そろってラジオ体操をするようにしているんですよ。やはりデスクワークなので、少しでも体をほぐせば健康のためになるということと、みんなの顔をそこで見られるわけです。
一緒に働く仲間がどんな調子なのか知っておいたほうが仕事もスムーズに進みますので、テレワークの中でも、顔を合わせる機会は積極的につくるようにしています。
編集部
ラジオ体操をみんなで一緒にするのは「昭和の会社」というイメージですが、それをバーチャルオフィスでおこなうのがすごくおもしろいですね!
「着席」「退席」を記録することで中抜けしやすくなる
編集部
冒頭でマネジメントについてお話しいただきましたが、テレワークマネジメントさんではどのように管理されているんでしょうか。
田澤さん
マネジメントについては、自社開発している「F-Chair+」を使用しています。このツールの特徴としては、まずタイムカードのようなイメージで「着席」「退席」を切り替えることで、働いている時間がすぐにわかることです。
どのように使うかというと、朝9時に仕事を開始するときに「着席」にして、12時の昼休憩で「退席」、13時に戻ってきて「着席」、14時半に子どものお迎えで「退席」というように、仕事ができる状況にあるときだけ着席、休憩中や用事で抜けるときは退席にします。すると、その時点で働いている時間が「4時間43分」のような形で表示されます。
もし中抜けをしたので定時になっても8時間に達していなかった場合、残業してもいいですし、企業の社内規定にもよりますが明日に回したり時間単位で有給を取ってもいい。いずれにしろ、自分の働いた時間を曖昧にしないことが大事だと思っています。
弊社の社員も、「この仕組みだと中抜けしやすい」とよく言っていますね。これまでだと学校のPTA会議に出席するのに午後半休を取らないといけないところを、退席した1時間半だけ取り戻せばいいんですから。いくら抜けても働く時間は共通なので、チーム内に不公平感も生まれないですね。
編集部
その他の機能についてはどうでしょうか。
田澤さん
着席中の画面をランダムに保存して、一覧として確認できる機能があります。この機能は導入された企業様にかなり評価されています。なぜなら、ずっと監視したいわけではないので録画はしなくていいけども、仕事の内容をざっと確認したいというニーズに沿っているからです。
加えて、弊社ではそれほど使っていない機能ですが、営業で外出している人の位置情報もわかるようになっています。もちろん記録するのは「着席」のときだけですので、自宅や休憩中のときの場所はわかりません。いろいろな企業様が、業態や勤務体系にあわせてツールを活用していらっしゃいますね。
編集部
管理する側の手間を省くことも含め、F-Chair+にはさまざまなニーズに沿った機能を付けているんですね。特に、それまでの労働時間がすぐわかるので「今日は通院で抜けるので、夕食後にカバーしよう」などと予定を立てやすいのは、テレワークをしている方も喜ぶのではないでしょうか。
テレワークで日本の働き方を変えたい人を歓迎
編集部
現在、採用活動はされているのでしょうか。
田澤さん
積極的に募集しているわけではありませんが、「適切なテレワークを広めたい」という思いを持っている方は、いつでも歓迎しています。単に在宅勤務ができるという点で応募するのではなく、子育て中でも地方在住でも関係なく、これからの日本の働き方を変えたいと思っている方は、ぜひ一度お話をさせていただければと思います。
編集部
理念に共感すること以外に、応募者に求めているものはありますか?
田澤さん
能力や経歴でいうと、「過去にテレワークでバリバリ働いていました」という人だけを求めているわけではないんです。
もちろん、さまざまなスキルがあってリモート環境でも成果を出せるいわゆる「ハイパフォーマー」も大歓迎です。でも、弊社にいるのはほとんどがミドルパフォーマーで、それで問題なく会社は運営できています。なぜなら、働きやすい環境で自分の力を発揮してもらえるよう、テレワークを活用しているからなんです。
「テレワークで働きたいけど、経験も自信もない」と思っていらっしゃる方がいるのなら、そんなことはないと言ってあげたいですね。すべての人が活躍できるようにサポートするのが、企業側の役割ですから。
編集部
ありがとうございます。テレワークで働くことは特別ではないので、その点での遠慮は必要ないということですね。
人生を良くするため、柔軟な働き方を選んでほしい
編集部
最後に、日本のテレワークを推進されてきた企業として、記事をお読みの皆さまにメッセージをいただければと思います。
田澤さん
ミライのお仕事さんで取材されているような企業はともかく、全国的にはまだまだ出勤がメイン、テレワークはサブという考え方の会社が間違いなく多いです。すると、地方と都会の格差が広がることであったり、これから自宅で介護をする人もどんどん増えてくることであったり、これから直面する問題に対応できなくなってきます。
それを解決するひとつの手段がテレワークです。「ウチはメーカーだからテレワークなんてできない」という声もよく聞きますが、どんな会社でも事務や営業の職種はありますよね。現場の人が不公平と感じるからテレワークを取り入れないのではなく、国がリスキリング(※)を提唱しているように、社内で学び直してITスキルを上げて、できる範囲でどんどん新しい働き方を採用すべきなんです。
(※)ビジネスモデルの変化や技術の進化に対応するため、新しい知識やスキルを習得すること
ましてや、日本はこれから人材不足の大きな波がやってくるとされています。企業様がそのような問題の危機管理をしながら上手くテレワークを導入できるよう、我々がお手伝いさせていただくことで、結果として社会も企業も働く人も幸せになればよいと考えています。
編集部
テレワークを通して企業とそこで働く人の環境を良くしていくことで、これから待ち受ける社会的な課題を解決しようとされているんですね。
田澤さん
そのとおりです。もう1点だけお伝えしたいことは、テレワークはやっぱり自分のための働き方なんですね。
私もそうでしたし、誰の人生にも「体力も気力も充実していくらでも働ける」という時期はあるでしょう。でも、人により違いますが、育児や介護の始まりといったターニングポイントは必ず訪れます。そのときに、テレワークという柔軟な働き方を選べるようになれば、皆さんの人生は必ず良いものになるはずです。
転職する際は、単にテレワークを導入しているかだけを確認するのではなく、ちゃんと働きやすい環境になっているかという点をしっかり調べて、会社選びをしていただければと思います。そしてテレワークマネジメントに興味を持っていただいたのであれば、ぜひ弊社ウェブサイトからお問い合わせいただければ幸いです。
編集部
テレワークによって働き方の選択肢が広がることで、さまざまな条件があっても自分らしく働ける人が増えるというわけですね。テレワークマネジメントさんの理念がもっと広がるよう、私たちも期待しています。
本日はありがとうございました!
■取材協力
株式会社テレワークマネジメント:https://www.telework-management.co.jp/
採用ページ:https://www.telework-management.co.jp/outline/recruit/