若手社員の活躍を通じて企業の成長と持続可能な社会づくりに貢献している企業や団体にインタビューする本企画。今回は、東京23区内の中小企業を幅広く支援している東京商工会議所にお話を伺いました。
東京商工会議所:140年以上の歴史を持つ中小企業支援のリーディング組織
東京の商工業者の世論機関として、東京商工会議所は1878年、明治の時代に設立されました。明治維新を経て日本が資本主義を導入していく過程で、商工業者の声(=“世論”)を形成する組織として大きな役割を果たし、東京23区内の中小企業の経営支援や地域振興活動に努めています。
団体名 | 東京商工会議所 |
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住所 | 東京都千代田区丸の内3-2-2 |
活動内容 | 東京23区内の中小企業の経営支援活動、政策活動、地域振興活動 |
設立 | 1878年 |
公式ページ | https://www.tokyo-cci.or.jp/ |
一般的に堅いイメージを持たれがちな東京商工会議所ですが、若手の挑戦への思いに応える風通しの良さがあります。DX支援に関する提言書をまとめて国や東京都に提出したり、20代から国際会議の運営に携わるなかで海外に出張したりと、さまざまな形で若手職員が躍動しています。
また、DX支援については独自のデジタル人材育成プログラムを提供しており、技術革新の基礎作りというSDGsの理念の一つにも貢献しているのです。
東京商工会議所の働く魅力やDX支援の取り組みなどについて、総務統括部人事課主任の逸見愛梨さん、中小企業部主任の松浦啓志さんにお話を伺いました。
東京商工会議所の3つの柱:経営支援、政策提言、地域振興活動
編集部
初めに、東京商工会議所さんの取り組みについて伺わせてください。
逸見さん
東京商工会議所は全国にある商工会議所の一つで、東京23区内の企業の支援を行っております。
私たちが掲げているミッションは「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「わが国経済社会の発展」の3つです。東京商工会議所の会員企業の繁栄を通じて東京が発展し、最終的には日本経済の成長につなげていく、そんなビジョンを持って日々活動しています。
これらのミッションを達成するために取り組んでいる活動が「経営支援活動」「政策提言活動」「地域振興活動」の3つです。
編集部
3つの活動についてそれぞれ詳しくお聞かせください。
逸見さん
まず「経営支援活動」では、職員が経営者の方と直接対話しながら経営相談を行い、状況に応じたアドバイスや情報提供を行います。また、会員企業の従業員の能力開発や人材採用支援、販路開拓支援など、企業経営をサポートする100種類以上のサービスを提供しています。
次に「政策提言活動」では、会員企業の声を広く集め、国や東京都などに対して政策の提言・要望を行います。中小企業・小規模事業者が抱えている課題をアンケートやヒアリングで把握し、委員会で提言書や要望書としてまとめ、関係各所に提出します。また、実現した政策を広報することも重要な活動の一つです。
最後に「地域振興活動」は、地域の観光・ビジネスを推進するための施策を企画・実行し、地域を盛り上げていく活動です。地域の特性を生かす取り組みや課題解決に繋がる取り組みを行っています。例えば、既存の地域資源のブランド化やPR、地元の子ども達に向けた経営者の声や仕事のエピソード発信などがあります。
編集部
東京商工会議所さんというと経営相談に乗るというイメージがありましたが、幅広い活動に取り組まれているのですね。
逸見さん
その通りです。私たちの活動は非常に幅広く、一見バラバラに見える3つの活動も、すべてが「企業の発展に資する」点で深く結びついています。
「経営支援活動」を行う中で経営者の方から吸い上げた企業のニーズや課題をまとめあげ、「政策提言活動」を通じて国や都に要望していることが、その関係性を示す良い例です。企業との直接的な接点があるからこそ、経営者の方の"生の声"を把握することができるのです。
また、「政策提言活動」は企業のビジネス環境を整備することで、政策的な側面から「経営支援」を行っているとも言えます。
編集部
それぞれの活動は相互に繋がりあっているのですね。
若手職員の活躍:海外出張から政策提言まで、幅広い経験を提供
▲入所後、早い時期からペルーに出張したという逸見さん
編集部
東京商工会議所さんは国際的な活動もされているそうですが、具体的にどのような仕事をするのでしょうか?
逸見さん
国際部では、両国の経済人同士の交流を促進し、外国における企業のビジネスチャンスを拡大するための活動を行っています。
私は東京商工会議所に新卒で入所し国際活動を担当する国際部に配属され、役員とともにペルーに出張しました。ペルー政府の大臣や大使、ペルーと日本をまたにかけてビジネスを行う方々が出席する国際会議の運営の仕事をしましたが、20代のうちにそのような重要な場所に携われるとは驚きました。
また、当時は南米地域とオセアニア地域を担当していたのですが、入所後初めて名刺交換をさせていただいたのが当時の駐日オーストラリア大使でした。大使との初めての名刺交換に、とても緊張して手が震えたことを今でも鮮明に覚えています。
編集部
一般的な仕事ではなかなか会える機会がないような方々にお会いできるのも東京商工会議所で働く魅力の一つだといえそうですね。逸見さんはなぜ東京商工会議所さんに入所することを決められたのでしょうか?
逸見さん
私は学生時代にオランダに留学していた経験があります。オランダの国土は九州ほどの大きさしかないのですが、世界2位の農業輸出額を誇り、非常に生産性が高く、強い経済力のある国だと感じました。また、人種・文化をはじめとする人々の多様性に対する寛容さ、「個」を認め、生かしていく風土に驚きました。
帰国後、日本の社会や経済にはどうも元気がないな、と感じました。私は日本が好きでしたし、日本やその首都である東京を元気にするような仕事に就きたいな、と考えたのが東京商工会議所を志望したきっかけです。
編集部
実際に入所してみてどういったところにやりがいを感じられていらっしゃるでしょうか?
逸見さん
東京の発展や中小企業の支援にさまざまな角度から携われるというのは、東京商工会議所で働くうえでの大きなやりがいだと思います。距離の近い事業者はもちろん、政府の大臣レベルから直接意見を頂くことも多いです。
現在は人事担当のため現場に出る機会は少なくなりましたが、中小企業を支援している職員のバックアップをさせていただいているという点で、やりがいを感じています。
また、学生さん向けにイベントを開催することも多いのですが、「東京商工会議所に入所したい」という声をいただく瞬間がとてもうれしいですね。
編集部
日本、そして東京の経済に貢献しているという実感を得られることが東京商工会議所さんで働く魅力の一つですね。
20代から社会を変える:若手職員による政策提言の実例
▲中小企業を支援できる唯一のパートナーになりたいという思いで入所した松浦さん
編集部
松浦さんの東京商工会議所への入所経緯についてお聞かせください。
松浦さん
父が中小企業に勤めていたこともあり、幼少期から商工会議所の存在を知っていました。そのため、就職活動では中小企業支援を行う組織を軸に探していました。
大学では経済学部に所属していたため、金融機関も検討していましたが、東京商工会議所の採用イベントに参加し、職員の話を聞くうちにその魅力に惹かれました。
編集部
東京商工会議所のどのような点に魅力を感じたのでしょうか?
松浦さん
東京商工会議所は公益性が高く、中立的な立場から中小企業支援に携わることができます。金融機関では融資が主なアプローチとなりますが、東京商工会議所では多様な支援方法があります。
中立的な立場から中小企業を支援できる唯一無二のパートナーという点に魅力を感じ、入所を決意しました。
編集部
これまでの仕事で特に印象に残っているものは何でしょうか?
松浦さん
現在、中小企業部に所属し、会員企業のデジタル化やDXを支援するIT活用推進担当を務めています。
異動して1年目に、政策提言活動の一環として中小企業のIT活用・デジタルシフト推進に関する意見書を主担当として取りまとめました。
2021年の取りまとめ時は、新型コロナウイルス感染症の影響で日本のデジタルシフトの遅れが顕著になった時期でした。日本企業の99.7%が中小企業であるため、中小企業のDXを推進することが日本社会全体のDX促進につながると考え、意見書を作成しました。
会員企業45社へのアンケートとヒアリングを実施し、委員会での議論を経て、2万4,000字に及ぶ意見書を作成し関係省庁に提出しました。
提出後、国や東京都のデジタル化・DX支援策が大幅に拡充されたことは、一つの成果と言えます。
編集部
社会を変える一因となったのですね。
松浦さん
社会を動かせるような仕事ができるというのが、東京商工会議所の一つの魅力です。もちろん大変な努力が必要ですが、自分の企画が形になり、社会に出て、メディアにも取り上げられ反響を得ると、大きなやりがいを感じます。
編集部
努力が目に見える形で成果として表れる点がやりがいの一つなのですね。
キャリア形成支援:自主性を重視した「選抜研修制度」の導入
編集部
若手のうちから活躍できる環境がある東京商工会議所さんですが、新入職員さんへのサポート体制はいかがでしょうか?
逸見さん
東京商工会議所では、新入職員に1年間インストラクターが付き、基本的にはOJT(実務を通じた訓練)で仕事を教えていきます。現在、OJTをより効果的にするための職員向け研修も企画中で、新入職員がさらに働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
編集部
入所後の学習支援体制についてもお聞かせください。
逸見さん
当所ではジョブローテーション制を採用しており、部門ごとに必要な知識が異なります。若手職員が業務に関連した知識をすぐに学べるよう、オンライン学習プラットフォームを導入しています。これにより、ビジネスパーソンとして必要な基礎教養を幅広くカバーしています。担当企業の方との会話で未知の分野に触れた際も、すぐに学習できる環境が整っています。
また、将来希望する部署で必要となる基礎知識を事前に学ぶこともできます。
学習方法は、個人での動画視聴だけでなく、グループ学習や、当所でのキャリアや業務への応用について助言してくれる先輩職員"チューター"と一緒に受講するなど、様々な形式を人事課として提供しています。
チューターは内部公募で選ばれ、若手職員の指南役を務めます。チューター自身にとっても、後輩育成や若手とのコミュニケーションの機会となっています。
編集部
動画学習を職員間の交流にも活用されているのですね。他に特徴的な研修制度はありますか?
逸見さん
2023年度から「選抜研修制度」を試験的に開始しました。これは社費でのMBA通学のような選抜型研修に近いのですが、特徴的なのは「研修内容を自ら提案する」点です。公募プロポーザル形式で、大学院通学、シンクタンクへの出向、社会人インターンなど、多様な研修を想定しています。
入所3年以上の職員なら、年次や等級に関係なく応募可能で、所属部署の許可も不要です。事務局長が直接評価・選抜を行い、採択された場合は人事課が提案内容に基づいて研修をアレンジします。
予算の制約から採択数は限られますが、応募者は組織のサポートを得て自己成長の機会を得られ、キャリア形成に大きく貢献します。
人事異動や受入先との調整など組織の負担は大きいですが、外部で刺激を受けて大きく成長し、学んだことを東京商工会議所で発揮してほしいという思いが込められています。
編集部
職員の方々の視野を広げる貴重な機会となりそうですね。
風通しの良い組織文化:互助精神と主体性を重視する東京商工会議所
編集部
東京商工会議所さんにはどのような文化がありますか?
松浦さん
東京商工会議所には互いに助け合う文化があります。私も意見書の作成の際には上司や先輩をはじめ様々な方のサポートを受けました。
毎朝実施している朝礼では、個人の予定や業務をみんなで共有し、それぞれの状況を把握します。これにより、手伝いを必要としている方がわかり、実際に助け合いが行われています。
編集部
一般的に商工会議所と聞くと堅いイメージがありますが、風通しの良さを感じます。
松浦さん
東京商工会議所は業務面では堅いイメージを持たれるかもしれませんが、内部はわきあいあいとした雰囲気があります。比較的コミュニケーションを重視する職場なので、雑談をしながら仕事を進めています。
編集部
逸見さんは東京商工会議所さんの雰囲気についてどのように感じていらっしゃいますか?
逸見さん
私も現在、採用に関する施策や若手の研修に関しては企画から実行まで、基本的に自由に任せていただけているので、裁量の大きさを実感しています。組織全体でも「何か思いついたことがあればどんどん手を挙げてほしい」という風土があると思います。
松浦さん
東京商工会議所は職員500人ほどの団体で、大規模な組織ではありません。そのため、やりたいことを提案し、その内容に筋が通っていれば実行に移せるカルチャーがあると思います。
編集部
積極的な姿勢が評価される環境にあるということですね。
中小企業のDX推進:東京商工会議所ならではの「ぴったりDX」支援
▲東京商工会議所の創設者である渋沢栄一はSDGsの考え方を提唱していた
編集部
SDGsで掲げられている目標のうちの一つに「産業と技術革新の基礎をつくろう」というものがあります。まさに東京商工会議所さんが取り組まれている活動そのものだと思うのですが、技術革新の基礎作りという観点で現在力を入れていることは何でしょうか?
松浦さん
東京商工会議所は企業のデジタル化・DXを進めるための「ぴったりDX」という支援事業を展開しています。「ぴったりDX」はデジタル人材育成プログラムやデジタルツール導入の相談、サイバーセキュリティ対策支援など、企業のデジタル化・DXを総合的にサポートする取り組みです。
具体的には、会員企業向けにデジタルツールやリスキリングサービスの優待案内、さらにデジタル人材育成のための研修サービスを提供しております。
編集部
「ぴったりDX」を始められた背景について伺わせてください。
松浦さん
「ぴったりDX」の前身として、2019年11月から2022年10月まで「『はじめてIT活用』1万社プロジェクト」を実施し、中小企業の生産性向上を目的とした初歩的なIT導入・活用を支援してきました。
2021年の会員企業アンケートで、コロナ禍を経て中小企業のITの「導入」は進んだものの、業務効率化・差別化・競争力強化に「活用」できている企業はまだ半数に留まることが分かりました。
この結果を受け、ITの「導入」から「活用」へのシフト、さらに「活用」の中でも守りから攻めへのレベルアップ支援に主眼を置いた「ぴったりDX」を2022年11月からスタートしました。
編集部
中小企業がDXを進めていくためにはどういったことが必要になるのでしょうか?
松浦さん
中小企業がDXを進めていくためには、旗振り役となる人材の育成が欠かせません。そのため、デジタル分野でのリスキリングを応援するメニューやデジタル人材育成講座の提供など、デジタル人材育成の支援に力を入れています。
また、デジタル化・DXにあたっては、適切なITツール・サービスの選択が重要です。現在、多種多様なツールが存在し、企業にとって最適な選択が難しくなっています。
「ぴったりDX」では、会員優待付きのデジタルツール・サービス紹介、IT相談・商談会「中小企業とIT ベンダーの"ぴったり"マッチング」の開催など、ITベンダーと中小企業ユーザーとのマッチング創出に努めています。様々な業種の企業・団体が会員として所属する商工会議所の特性を活かし、ITベンダーとの連携による支援を行っています。
商工会議所の重要な役割の一つは「企業と企業をつなぐ"マッチング"」だと考えています。これまでもビジネス交流会などを通じて、会社と会社、人と人をつなぐ役割を担ってきましたが、今後はデジタル・IT分野でも注力していきます。
編集部
SDGsと東京商工会議所さんの相性の良さを感じます。
松浦さん
東京商工会議所の創設者・初代会頭である渋沢栄一は、100年以上も前にSDGsの考え方に通底する「道徳経済合一説」を提唱していました。歴史的にみても、東京商工会議所はSDGsと親和性が高い団体だといえるのではないでしょうか。
東京商工会議所が求める人材:社会貢献への熱意と学び続ける姿勢
編集部
東京商工会議所さんにはどういった方が入所されるのでしょうか?
逸見さん
東京商工会議所には「中小企業支援がしたい」「東京や日本経済の発展に貢献したい」という思いを持った方が入所しますね。日本企業のほとんどが中小企業のため、そういった思いを実現できる団体だと思います。
社会人採用で入所される方については、東京商工会議所と何かしらで接点を持っていたというケースが多いです。実際に支援に携わっていた企業に勤めていた方が興味を持ってくれる場合もありますし、経営者の方と話す機会があって東京商工会議所の存在を知ったという場合もあります。
編集部
最後に、東京商工会議所さんに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いいたします。
逸見さん
最初にお話しした通り、東京商工会議所の事業範囲は非常に幅広いです。職員がよく、「部署を異動しただけで転職したような感覚になる」と言うように、さまざまな経験を得られるというのは魅力の一つだと思います。また、自分がすでに持っているスキルを何かしらで生かせる環境があるともいえるでしょう。
そんな職場ですので、やったことのない分野に対しても好奇心を持ちながら仕事ができるという方が当所には合っていると感じます。さまざまな側面から中小企業の支援をして、東京を元気にしたいという気持ちを持った方と一緒に働きたいですね。
松浦さん
東京商工会議所で働く魅力は中立的な立場から中小企業の支援ができて良きパートナーとなれること、そしてスケールの大きい仕事ができるということです。だからこそ人の役に立ちたいという思いを持った方、探究心が強い方にはぴったりの職場といえます。
幅広い仕事をすることになりますので、謙虚に貪欲に学び続け、努力できる方を歓迎したいですね。
編集部
日本経済に貢献したいという思いを持ち、学び続けられる人にとって魅力あふれる職場だと感じました。本日はありがとうございました。
■取材協力
東京商工会議所:https://www.tokyo-cci.or.jp/
採用ページ:https://www.tokyo-cci.or.jp/saiyo/